口唇ヘルペス
少し仕事で無理なスケジュールを組んだら、唇の端がムズムズしてきた。
口唇ヘルペスによくかかる人は、もうその時点で嫌な予感がしてきますね。
口唇ヘルペスは、どうしても完治が難しい病気で、何度も再発するのが特徴です。
しかし、その分市販薬でのセルフケアが認められているため、早く対処することで、辛い症状を短期間で終わらせることが期待できます。
今回はやっかいな口唇ヘルペスについて、原因や症状を踏まえつつ、おすすめの市販薬をご紹介させていただきます。
口唇ヘルペスとは?
口唇ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス1型が原因の感染症で、発症すると唇やその周りの皮膚に、痛みを伴う赤く小さな水ぶくれができる疾患です。
原因となる単純ヘルペスウイルス1型は、成人の約半分の人が既に感染していると言われ、そのほとんどが子どもの頃に感染します。
この時に発熱を伴う無数の口内炎「ヘルペス性口内炎」の症状が出る人もいますが、無症状で、感染に気づかない人も多いでしょう。
しかし、一度感染した単純ヘルペスウイルスは、その後ずっと体内に潜伏し続け、風邪や疲労など、免疫力や抵抗力が落ちたときに活発化し、口唇ヘルペスとして発症します。
一度治っても、そうして何度でも活発化し、再発するのが口唇ヘルペスの特徴です。
口唇ヘルペスを発症する人はだいたい10人に1人で、年に1〜2回の頻度で再発すると言われています。
口唇ヘルペスの症状は?
口唇ヘルペスは次のような経過を辿りながら発症していきます。
<予兆期>
単純ヘルペスウイルスが活発化すると、まず始めにピリピリ・ヒリヒリとした違和感や火照りを感じることが多いです。
<発症>
予兆が出てから半日ほど経ち、発症すると、唇の一部に腫れや赤みが現れます。
<増殖期>
それからさらに半日ほど経つと、水ぶくれが出現します。
水膨れは一箇所に複数できることが多く、数日間続きます。
<回復期>
時間の経過とともに、水ぶくれはかさぶたに変化し、治っていきます。
早ければ、最初に違和感を覚えてから5日ほど、長ければ2週間近くかかる時もあります。
口唇ヘルペスはうつるの?
単純ヘルペスウイルスは感染性のウイルスです。
そのため、口唇ヘルペスは他の人にもうつります。
ただ、ヘルペスウイルスの感染はほとんどが「接触感染」です。
「ウイルスの付いた手や物が接触」することで他人に感染させてしまう可能性があります。
そこで、気を付けるべきは、キスやほおずり、タオルや食器の共有です。
相手側の皮膚が健康な状態であれば、これらの行為でも感染を免れる可能性があります。
しかし、肌荒れがある状態や、免疫力の低い赤ちゃんなどはうつりやすいので、より注意が必要でしょう。
口唇ヘルペスに効果のある薬
いつ使用する?
重要なのは「ウイルスが増殖する前に治療を開始すること」です。
口唇ヘルペスに対する薬はウイルスの増殖を抑える作用を持ちますが、既に増えてしまったウイルスを死滅させるような作用はありません。
可能であれば口唇ヘルペスの予兆が起こっている段階、もしくは発症してすぐ使用を開始するのが良いでしょう。
病院に行かなくていいの?
口唇ヘルペスは市販薬でのセルフケアが可能な病気です。
しかし、それには条件があり「再発した口唇ヘルペス(過去に医師によって診断・治療を受けたことがある)」のみとなっています。
そのため、
● 初回の感染時
● 6才未満の乳幼児(初回感染である可能性が高いため)
の人は市販薬では対応できません。
また、市販薬は「軟膏・クリームなどの塗り薬」しか販売されていません。
● ただれや強い痛みがあるなど、症状が重い時
● 再発の頻度が高い時
● 市販の塗り薬を使用しても効果がない、または悪化する時
これらの際は、飲み薬や点滴による治療が必要であったり、別の病気が隠されていたりする可能性もあるため、医療機関を受診するようにしましょう。
ちなみに、口唇ヘルペスに対する市販薬の購入時には、再発した口唇ヘルペスであるかどうか、薬剤師が確認する義務があります。
これらは第1類医薬品に分類され、オンライン、もしくは薬剤師がいる薬局やドラッグストアでないと購入できないので注意しましょう。
市販薬の分類(第1類医薬品)については、こちらの記事をご参照ください。
どんな有効成分があるの?
市販薬に含まれる、抗ウイルス作用を持つ成分は「アシクロビル」と「ビダラビン」の2種類です。
共にヘルペスウイルスのDNA複製を阻害する作用があるため、それによりウイルスの増殖を防ぎます。
ビダラビンは、アシクロビル耐性(注1)のウイルスにも有効です。
また、ビダラビンのみ、同じくヘルペスウイルスが原因の疾患、帯状疱疹に対しても使用することができます。
しかし、帯状疱疹に使用する際は市販薬でのセルフケアは認められておらず、必ず医師の診断のもと、医療用の軟膏を処方してもらう必要があります。
帯状疱疹については、こちらの記事をご参照ください。
口唇ヘルペスに使用するにあたっては、どちらかで効果が強かったり、副作用が出やすかったりなど、明らかな有意性は報告されていませんので、どちらの成分の薬を選んでいただいても問題ないでしょう。ただし、塗る回数については、市販のアシクロビル製剤は1日3~5回に対して、ビダラビン製剤については1日1~4回と塗る回数が少なくても効果を発揮するため、1日に何回も塗るのが面倒な方はビダラビン製剤を選ぶと良いでしょう。
(注1)アシクロビルが効き難くなったウイルス
口唇ヘルペスに効果のある市販薬
アラセナS
有効成分:ビダラビン
特徴:唯一、ビダラビンを有効成分とする市販薬で、軟膏とクリームタイプの2種類があります。
アシクロビルを成分に持つ市販薬が最低1日3回塗布であるのに対して、1日1回の使用でも効果が示されています。
軟膏はベタつきがある分、患部を保護する力が強いです。
クリームはべたつきが少なくさらっとした使用感ですが、患部へのもちは軟膏に比べて劣ります。
アクチビア軟膏
有効成分:アシクロビル
特徴:医療用のアシクロビル製剤(ゾビラックス軟膏)を製造販売しているグラクソ・スミスクラインという会社が販売する市販薬です。
医療用と同じ会社が作っているということで、安心感もありますね。
ヘルペシアクリーム
有効成分:アシクロビル
特徴:アシクロビルを有効成分に持つクリームタイプの市販薬です。
以前は軟膏タイプで販売されていましたが、使用感を求め、2012年に今のクリームタイプに移行されました。
ほのかにメントールが含まれており、スッと馴染みやすいのが特徴です。
まとめ
口唇ヘルペスの症状や原因、効果のある市販薬についてお伝えさせていただきました。
口唇ヘルペスの原因となる単純ヘルペスウイルスは、ごくありふれたウイルスであるため、残念ながら、感染を完全に避けることは難しいでしょう。
また、一度発症すると、完治できない分、どうしても長くお付き合いしていく必要があります。
ただ、口唇ヘルペスに対して効果がある塗り薬は、薬局などでも購入することが可能です。
口唇ヘルペスは予兆が現れてから、ウイルスが増殖するまで時間との勝負ですので、よく再発する人は、市販薬が手元にあると安心して過ごせると思いますよ。
しかしながら、口唇ヘルペスと思っていたら、別の病気が隠されている可能性もゼロではありません。
市販薬をしばらく使っても効果が感じられない場合や、症状がひどい場合には必ず皮膚科など医療機関を受診するようにしましょう。
辛い口唇ヘルペスの再発にお悩みのあなたにとって、この記事がお役に立てれば幸いです。