医療用医薬品とOTC医薬品の違いとは?
お医者さんが出してくれる薬と、薬局やドラッグストアで自分で購入できる薬、これら2種類はなんとなく違うというイメージがありますよね。
「医者が出してくれる薬の方が効き目は強い」と思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
実はあながちそういうわけでもなく、全く同じ成分のもので、市販されている薬もたくさん存在しています。
今回は2種類の薬の違いについて、また、医療用と同じ成分が入っている市販の薬について身近な薬の例を挙げながらご説明させていただきます。
医療用医薬品とは?
一般的に病院でもらえる、または医師が発行する処方箋でもらえる薬を医療用医薬品と言います。
医師がその人の症状や年齢、体質などを考慮して診断・服用の指示をしますので、医師や薬剤師などの指示・管理なしに自己判断で服用してはいけません。
思いがけない副作用が現れたり、また思っている効果が出なかったりする可能性があります。
専門性の高い成分が多いですが、全てが効果や副作用の強い薬ばかりではありません。
あくまでも、医療用医薬品の最大の特徴は「医師の指示に基づいて使用される薬」です。
効果の強い弱いは関係なく、幅広い医薬品が医療用医薬品として登録されています。
OTC医薬品(市販薬・大衆薬)とは?
医療用医薬品に対して、薬局やドラッグストアで購入することができる薬をOTC医薬品と言います。
OTCとは「Over The Counter」の頭文字で、「カウンター越しに販売される薬」という意味で付けられましたが、その前までは市販薬や大衆薬などと呼ばれていました。
OTC医薬品はさらに要指導医薬品と第1類〜第3類の一般用医薬品、合計4種類に分かれます。
これら4種類がどのように分類されているかを、以下の表にまとめました。
分類 | 専門家による 情報提供 |
販売可能な専門家 | 陳列場所 | ネット 購入 |
|
---|---|---|---|---|---|
要指導医薬品 | 義務 | 薬剤師 | 客が直接 手に取れない場所 |
× | |
一般用 医薬品 |
第1類医薬品 | ○ | |||
第2類医薬品 | 努力義務 | 薬剤師・登録販売者 | 客が直接 手に取れる場所 |
○ | |
第3類医薬品 | 規定なし | ○ |
要指導医薬品
要指導医薬品には以下の種類があります。
・医療用からOTCに移行した医薬品(スイッチOTC)で、移行して間もないもの。
・医療用として実績のない成分を用いた医薬品(ダイレクトOTC)で、承認されて間もないもの。
・毒薬・劇薬:薬の作用が強く、リスクが高い医薬品。
これらは慎重に販売する必要があるため、薬剤師が対面にて購入者の情報を聞き取った上で、書面にて説明を行うことが義務付けられています。
そのため、インターネット等での購入はできません。
店舗においても、薬剤師の説明を聞かずに購入することがないよう、棚には空き箱を置き、製品自体は客の手の届かない場所に陳列することとされています。
一般用医薬品
一般用医薬品の中でも、副作用や飲み合わせなど、使用にあたってのリスクを考慮して、3種類に分類されています。
第1類医薬品は最もハイリスクであるため、要指導医薬品と同じく、薬剤師が販売することとなっています。
しかし、要指導医薬品と違う点は、インターネットでの購入ができる点です。
第2類、第3類とリスクが低くなっていくことで、薬剤師だけでなく、登録販売者でも販売することができるようになります。
医療用医薬品と同じ成分のOTC医薬品
医療用医薬品の中で、比較的副作用も少なく、安全に使える成分は、OTC医薬品でも購入することが可能です。
先ほど要指導医薬品で少しお話ししましたが、医療用医薬品の成分をOTC医薬品に移行したものをスイッチOTCと言います。
スイッチOTCは、医療用から移行して数年は要指導医薬品として扱われますが、その後は一般用医薬品に分類されます。
ですので、要指導医薬品だけでなく、一般用医薬品にもスイッチOTCとして、医療用成分が含まれているものはたくさんあります。
ただしそれら全てにおいて、医療用と同じ成分が同量含まれているものばかりではありません。
成分の量が異なっていたり、他の補助的な成分が配合されていたりするものもあります。
身近な医薬品の中から、以下に例を挙げてみますね。(令和4年1月現在)
医療用と同じ有効成分・量のOTC
薬の効果 | OTC医薬品 | 医療用医薬品 | 分類 |
---|---|---|---|
解熱鎮痛薬 | ロキソニンS | ロキソニン錠60mg | 第1類 |
解熱鎮痛薬 | タイレノールA | カロナール錠300mg | 第2類 |
抗アレルギー薬 | タリオンAR | タリオン錠10mg | 要指導 |
抗アレルギー薬 | アレグラFX | アレグラ錠60mg | 第2類 |
胃薬 | ガスター10 | ガスター錠10mg | 第1類 |
乗り物酔い用薬 | トラベルミン | トラベルミン配合錠 | 第2類 |
目薬 | ヒアレインS | ヒアレイン点眼液0.1% | 要指導 |
解熱鎮痛薬として幅広く使用されている、ロキソニン錠やカロナール錠なども、同じ成分が同量入っている市販薬が発売されています。
また、トラベルミンやヒアレインなどのよく処方が出る薬も、OTCで販売されています。
ただ、同じ成分・量であっても、購入・使用には注意点があります。
◎分類は改定されることがある
日本人は花粉症に悩む人の割合が高いことから、スイッチOTCとなった抗アレルギー薬は、表に挙げたタリオンAR、アレグラFX以外にもたくさんあります。
アレジオン20やクラリチンEXなどもそのひとつで、これらの特徴として、医療用で慣れている人がそのまま移行しやすいよう、同じ成分・量で販売していることが多いです。
しかし、似たような抗アレルギー薬の中でも、OTCの分類は異なるため注意が必要です。
スイッチOTCとして移行したてのタリオンARは要指導医薬品となっており、アレグラFXは数年前に第1類から改定されて第2類になりました。
要指導医薬品に限らず、分類は定期的に見直されることがありますので、欲しい薬の分類・購入方法は確認するようにしましょう。
◎医療用と成分・量が同じであったとしても、認められている用法・用量が異なる場合も
例えばカロナール錠は、医師の指示があれば1日合計1500mg〜4000mgまで服用することができますが、タイレノールAは1日900mgまでしか認められていません。
900mgを超える量を服用しなければならないほどの痛みであれば、タイレノールAに頼るのではなく、病院を受診するべきだということですね。
またガスター10に関しても、OTCの方は有効成分のファモチジンを1回10mg、多くても1日2回までとしていますが、医療用は診断によって1回20mg1日2回で服用できますので、同様のことが言えるでしょう。
医療用とメインの有効成分は同じでも、量や付随する成分が異なるOTC
薬の効果 | OTC医薬品 | 医療用医薬品 | 分類 | 医療用医薬品と異なる点 |
---|---|---|---|---|
解熱鎮痛薬 | ロキソニンSプレミアム | ロキソニン錠60mg | 第1類 | 鎮痛補助成分・胃保護成分をプラス |
便秘薬 | 酸化マグネシウムE便秘薬 | マグミット250mg、330mg、500mg | 第3類 | 1錠あたりの成分量が異なる(333mg) |
胃薬 | セルベール整胃錠 | セルベックスカプセル50mg | 第2類 | 生薬成分をプラス |
ビタミン剤 | アリナミンA | アリナミンF糖衣錠 (ビタミンB1) |
第3類 | B2、B6、B12などのビタミン成分をプラス |
目薬 | ソフトサンティア | 人工涙液マイティア | 第3類 | 防腐剤無添加(ソフトコンタクトにも使える) |
湿布 | フェイタスZαジクサス | ボルタレンテープ15mg | 第2類 | 清涼成分メントールを3.5%配合 |
医療用医薬品に対し、より高い効果を狙うための成分がプラスされていたり、消費者が使いやすいような工夫が施されていたりすることが多いです。
例えば、ロキソニンSは医療用ロキソニン錠と同じ成分・量ですが、同ブランドのロキソニンSプレミアムになると、胃保護成分や鎮痛補助成分がプラスされています。
ソフトサンティアは人工涙液マイティアから防腐剤を除外することで、ソフトコンタクトレンズを装着した上からでも使用できるようになりました。
ただ、ロキソニンSプレミアムにプラスされた鎮痛補助成分はアリルイソプロピルアセチル尿素といい、眠気が出る可能性がある成分ですし、ソフトサンティアは防腐剤がないことで、開封後の期限が短くなっています。
このような医療用と違う点を意識しないまま使用していると、思わぬ弊害が出る可能性もあります。
「医療用医薬品と同じ成分含量」などと記載があっても、中身が少しずつ異なることがありますので、同じものと思って購入しないよう注意が必要です。
まとめ
あくまで医療用医薬品は「医師の指示に基づいて使用される薬」であり、それと比較して、OTC医薬品は効果の低い薬であるとは決して言い切れません。
医療用と同じ成分が用いられていることも多いため、使用方法を間違えれば、副作用などの有害な効果が出てくる可能性も十分にあります。
スイッチOTC医薬品であれば、「医療用のものを飲んだことがあるから」と安心することもあるかもしれませんが、必ず配合されている成分の確認を行い、使用説明書を読むようにしましょう。
そして、説明書上の服用では効果を感じられなかったり、気になる症状が出てきたりする場合は、薬剤師に相談するか、病院を受診するようにしてください。
OTC医薬品は、自分自身で選択ができる医薬品ですので、正しい使用方法により、自己の健康管理を行えるようにしていきたいですね。