消化不良による胃もたれなどに、頼もしい味方の消化酵素とは?
『最近、以前に比べて、食べ過ぎるとすぐ胃もたれや胸やけをよく感じるようになった。
よく飲む薬に「消化酵素」って書いてあるけど、そもそも「酵素」ってなに?』
なんとなく体に良いイメージがあって、サプリメントなどでもよく見かける「酵素」ですが、実は種類によって大きく働きが違うことをご存知でしょうか。
今回は酵素の中でも「消化酵素」についてお伝えしたいと思います。
消化不良による胃もたれなどの症状に対して、オススメの消化酵素が含まれる市販薬もご紹介させていただきますね。
酵素とは
酵素とは、タンパク質で成り立つ、生命活動を行う上で必要不可欠な物質です。
体の中において、物質の分解や運搬、排泄などのさまざまな働きをサポートする役割を持ちます。
私たちの体の中で働く酵素は、以下の3種類に分かれています。
・消化酵素
食物を分解し、体内に吸収できる栄養素の状態にする酵素。
・代謝酵素
吸収された栄養素を生命活動に必要なエネルギーへと変換する酵素。
体内で作られる消化酵素以外の酵素を指し、新陳代謝や免疫反応など、あらゆる生体反応をサポートする。
・食物酵素
消化酵素の働きをサポートする酵素。
生野菜や果物、発酵食品などの食べ物から得られる。
サプリメントで「酵素」と記載があるものは、おおよそ食物酵素であることが多い。
このうち、消化酵素と代謝酵素は体の中で作られ、互いに支え合う関係にあります。
例えば、食べ過ぎなどで消化酵素が大量に必要になれば、代謝酵素の分が割り当てられることで、ニキビができたり、風邪をひきやすくなったりします。
逆に病気などで代謝酵素が必要なときは、消化酵素が減るため、おかゆなど消化に良いものが好まれたりもします。
そして、これら2つの酵素とは異なり、食物酵素は食事として体外から摂取します。
食物酵素は体内に入ることで、消化酵素の働きを助けますので、間接的に代謝酵素のサポートにも繋がります。
消化酵素と消化不良
それでは、体の中での消化酵素の働きについてもう少し詳しく見ていきましょう。
消化酵素は主に唾液や胃液、膵液などに含まれており、食物が口から入り、直腸で排出されるまで、さまざまな臓器で消化反応に関わります。
消化される栄養素と臓器によって、関わる酵素もそれぞれ異なり、「糖質の大部分を占めるでんぷん」「タンパク質」「脂質」に対して、多数の消化酵素が働きます。
食べたものに対してこれらの酵素の働きが足りないと、消化不良状態になり、胃もたれや胸やけ、吐き気などの症状が現れてきます。
特に年齢を重ねると、胃腸の蠕動(ぜんどう)運動の衰えに加えて、体の中で作られる消化酵素が少なくなるため、以前に比べて胃もたれなどを感じやすくなる人が多いです。
こういった消化不良の状態に対して、食物酵素を取り入れることでカバーすることも可能ですが、今感じている胃もたれや胸やけの症状には、消化酵素の形として摂取する方が、即効性が期待できるでしょう。
市販の医薬品に含まれる消化酵素
市販薬に含まれる消化酵素は、主に以下のようなものが挙げられます。
酵素名 | 消化を助ける栄養分 |
ビオヂアスターゼ | でんぷん&タンパク質 |
タカヂアスターゼ | |
プロザイム | タンパク質 |
ニューラーゼ | |
リパーゼ | 脂質 |
ポリパーゼ | |
パンクレアチン | でんぷん&タンパク質&脂質 |
セルラーゼ | 食物繊維 |
表に挙げたもの以外にも、体内で作られる消化酵素と同じように、でんぷん・タンパク質・脂質に対して、さまざまな消化酵素が存在します。
しかし、食物繊維であるセルロースは、本来人間の体内では消化されない成分です。
腸の中で有害なものを吸着させながら便として排出するという、大切な役割を担っている食物繊維ですが、消化されずに消化管に留まる時間が長いことで、消化不良状態においては食物繊維の存在が負担になることもあります。
そのため、医薬品によっては食物繊維の消化酵素も配合させているのです。
消化酵素が含まれる市販薬
実際に消化酵素が含まれる市販薬をご紹介します。
胃もたれや胸やけなどの症状に対して効果があるよう設計されているため、おおよその市販薬は消化酵素に加えて、胃腸の機能改善を目的とする成分が複数種類配合されています。
ベリチーム酵素
有効成分 | 効果の分類 |
ビオヂアスアーゼ | でんぷん・タンパク質分解酵素 |
パンクレアチン | でんぷん・タンパク質・脂質分解酵素 |
リパーゼAP6 | 脂質分解酵素 |
セルラーゼAP3 | セルロース分解酵素 |
特徴:市販薬では珍しく、消化酵素のみを配合した薬で、2018年に医療用医薬品から市販に移行し、スイッチOTCとして発売されました。
でんぷん、タンパク質、脂質に加え、食物繊維の消化酵素が配合されています。
体内での消化運動に対して幅広く対応できる消化酵素を含んでいるため、消化不良によるさまざまな症状に効果を示します。
第一三共胃腸薬細粒s
有効成分 | 効果の分類 |
タカヂアスターゼN1 | でんぷん・タンパク質分解酵素 |
リパーゼAP12 | 脂質分解酵素 |
ケイ酸アルミン酸マグネシウム 水酸化マグネシウム |
制酸薬 |
合成ヒドロタルサイト | 制酸薬、胃粘膜保護 |
オウバク末、ケイヒ末、 ウイキョウ末、チョウジ末、 ショウキョウ末、l‐メントール、アカメガシワエキス、カンゾウ末 |
胃の働きをサポートする生薬 |
特徴:胃腸の不調に対して、全体的にアプローチする設計がなされています。
2種類の消化酵素に加え、健胃作用がある生薬が含まれていることで、消化不良による胃もたれなどの症状に効果を示します。
また、胃へのダメージを軽減する成分(制酸薬)と、胃粘膜を保護する成分も配合されているため、胃痛や胸やけなどにも効果が期待できます。
太田胃散A
有効成分 | 効果の分類 |
リパーゼAP6 | 脂質分解酵素 |
プロザイム6 | タンパク質分解酵素 |
ビオヂアスターゼ1000 | でんぷん・タンパク質分解酵素 |
ウルソデオキシコール酸 | 脂質の消化を助ける作用 |
炭酸水素ナトリウム 合成ヒドロタルサイト 沈降炭酸カルシウム |
制酸薬 |
ケイヒ、レモン、ウイキョウ | 胃腸の働きをサポートする生薬 |
特徴:太田胃酸は昔から胃の不調に対するさまざまな医薬品を開発している会社です。
その中でもこの太田胃散Aは、3種類の消化酵素にプラスして、脂質の消化促進作用があるウルソデオキシコール酸を含み、より消化不良に特化した胃腸薬です。
まとめ
酵素は人間の生命活動に欠かせないものです。
その中でも、消化酵素は食物を分解し、栄養として吸収するための重要な働きをしています。
ところが、摂取した食べ物に対して消化酵素が不足すると、消化不良が起き、胃もたれなどの症状として現れてきてしまいます。
医薬品として消化酵素を補うことで、そういった症状の改善が期待できますが、長期に渡って市販薬から消化酵素を補い続けるのは注意が必要です。
胃などの消化管に何かしらの病気が隠されている可能性もゼロではありません。
一過性の食べ過ぎなど、理由がないにも関わらず、慢性的に消化不良の症状が続いている場合は、必ず医療機関を受診しましょう。
消化酵素が含まれた医薬品を上手に使って、消化不良からくる辛い症状を和らげていきたいですね。
この記事がそのお役に立てれば幸いです。