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お薬コラム
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更新日:2025/07/13

処方薬と何が違う?市販薬アラセナSの効果と再発時の使いどころ

「処方薬と同じ成分って本当?」──アラセナSは、医療用で長年使われてきた抗ウイルス成分「ビダラビン」をそのまま配合したスイッチOTC医薬品です。

 

ただし、使えるのは“再発”と診断された経験のある場合に限られます。

 

本記事では、市販薬としての実力と限界、処方薬との違いを薬剤師が詳しく解説します。

薬剤師ライター クロロボ
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第1章|アラセナSってどんな薬?再発専用の理由とは

そもそも口唇ヘルペスって何者?

唇のまわりが「ピリピリ」「チクチク」する…。

そんな不快な前兆に覚えがある方、実はそれ口唇ヘルペスかもしれません。

この症状の原因は、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)と呼ばれるウイルスです。

一度感染すると、ウイルスは体の中の神経節という部分に潜伏し、完全には消えません。

そして、疲れやストレス、風邪、紫外線などで免疫力が下がったとき、再び活動を始めて、同じ場所に症状が現れるというわけです。

つまり、ヘルペスというのは一度かかると、繰り返しやすいウイルス感染症というわけですね。

ボクも仕事が立て込むと、ピリピリしてきて…あっ、また来たかも…ってなるんだよね〜。

 

アラセナSは“再発専用”の市販薬

ここで登場するのが、今回ご紹介するアラセナS

これは、再発性の口唇ヘルペスに対応した市販薬です。

特徴的なのは、医療用として処方されていた「アラセナA軟膏3%」と同じ有効成分「ビダラビン」を配合している点。

このビダラビンは、ウイルスのDNA複製を妨げる抗ウイルス薬で、口唇ヘルペスの進行を抑えてくれます。

そして、「スイッチOTC」として承認されたことで、薬局やドラッグストアで購入できるようになったのです。

ただし、注意しておきたいのは「誰でも使ってOKな薬じゃない」ということ。

 

使えるのは「再発したことがある人」だけ

アラセナSのパッケージをよく見ると、こんな注意書きがあります。

「※本剤は、過去に医師の診断・治療を受けたことがある方の再発に限り使用してください。」

これはつまり、初めて口唇ヘルペスになった人は使用できないという意味です。

では、なぜ初発に使ってはいけないのでしょうか?

それには、いくつか理由があります。

 

初発は自己判断NG|その理由とは?

まず、初感染のヘルペスは重症化しやすいという特徴があります。

発熱や倦怠感を伴うこともあり、自己判断で市販薬を使うのはリスクが高すぎます。

さらに、口唇に似た症状を起こす病気は他にもあります。

たとえば、

・アトピー性皮膚炎
・口角炎
・ニキビ
・接触性皮膚炎

など、見た目が似ているだけの別の疾患かもしれません

たぶんこれもヘルペスだよね?」って決めつけてくる人、意外と多いんですよね…。

このようなリスクを避けるため、厚生労働省ではアラセナSの使用には、医師による過去の診断が前提というガイドラインを設けています。

だからこそ、自己判断で初めて使うのはNGなんです。

 

薬局でもよくある質問「今回が初めてだけど使っていい?」

薬局でよくあるケースがこれです。

「今までは出てなかったけど、急にピリピリしてきて…。アラセナS塗ってもいいですか?」

この質問、実際によく受けます。

でも、答えはひとつ。

「ダメです!」

アラセナSは、「過去に医師の診断を受けた口唇ヘルペスが再発したとき」だけに使える薬です。

初発かどうか分からないときは、自己判断せず皮膚科で診てもらうのが最善です。

“初めてかも”と思ったら、迷わず受診を。自己判断はNGです。

 

アラセナSは“再発の味方”、でも使いどころを守ること

アラセナSは、成分的には処方薬と同等のパワーを持つ市販薬です。

けれど、だからといって誰でもいつでも使えるわけではありません。

・過去に医師の診断を受けていること
・今回の症状が「再発」であること
・初発や別の皮膚疾患の可能性がないこと

これらを確認したうえで、正しいタイミングで使用することが大切です。

再発に悩んでいる方にとっては、非常に心強い存在。

それがアラセナSなんです。

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第2章|処方薬とアラセナSは同じ?実は“使いどころ”が違います

成分は同じ「ビダラビン3%」だけど…

「処方薬と全く同じ成分が入ってるってことは、同じように使って大丈夫なんですよね?」

こんな質問、薬局でもよく耳にします。

確かに市販のアラセナSは、医療用のアラセナA軟膏3%とまったく同じビダラビン3%を配合しています。

つまり、有効成分の“中身”に違いはありません。

アラセナSに含まれるビダラビン(抗ウイルス薬)は、1日1~4回の使用で、ヘルペスウイルスのDNA複製を3方向からブロックします。

・DNAの伸長を止める

・ヌクレオチドの生成を抑える

・ウイルスのたんぱく質合成を妨げる

この3つの作用で、ウイルスの増殖をしっかり抑えてくれるというわけです。

“中身”は処方薬と同じでも、市販薬には“使う条件”があります。

 

市販薬としての“制限”がある

ここからが重要なところです。

市販薬のアラセナSには、いくつかの使用条件(制限)があります。

 

1. 使えるのは「唇とそのまわり」だけ

唇の外側や周辺の皮膚だけが対象です。
口の中や目のまわり、陰部などには使用不可です。

 

2. 適応は「再発」のみ

繰り返しになりますが、アラセナSは過去に医師の診断を受けた口唇ヘルペスの“再発”時に限って使用可とされています。
「初めて出た気がする…」という段階では使ってはいけません。

 

3. 使用対象者にも条件あり

・6歳以上(小児への使用には注意が必要)
妊婦さんや授乳中の方は事前に医師・薬剤師へ相談
・アレルギー体質、皮膚が弱い人も注意が必要

このように、市販薬としての安全性確保のために、「使える範囲」と「使える人」が明確に限定されているわけです。

妊娠中とか授乳中って、再発しやすくなる人も多いんだよね〜。体調変わる時期だから、ムリしないでほしいなぁ…!

 

適応症の違いにも要注意

さらに、市販薬と処方薬では効能・効果(=適応症)そのものが異なります。

これは公式に定められている重要なポイントです。

【アラセナS(市販薬)】

・適応症:口唇ヘルペスの再発
※過去に医師の診断・治療を受けたことがある人に限る

 

【アラセナA軟膏3%(処方薬)】

・適応症:単純疱疹、帯状疱疹

 

つまり、処方薬は唇に限らず、顔や陰部、粘膜なども含めた広範囲の単純疱疹に使えるうえ、帯状疱疹にも対応可能です。

それに対し、市販薬のアラセナSは、唇周囲の「再発性ヘルペス」に限定されており、他の用途には使えません。

この「適応症の差」を理解せずに使用すると、治療効果が出ないばかりか、悪化を招くリスクもあります。

成分は同じでも、使える範囲は違います。“唇の再発だけ”が市販薬のルールです。

 

処方薬は“広い範囲”と“重症例”に対応できる

処方薬には、市販薬にはない大きなメリットがあります。

それは、「初感染(初発)や広範囲の症状にも使える」ことです。

例えば、次のようなケースは処方薬の出番です。

・顔全体に赤みや水ぶくれが広がっている
・初めてヘルペスと思われる症状が出た
・口の中や陰部など、市販薬の適応外の部位に出ている
・全身症状を伴っている(発熱、倦怠感など)

また、医師の判断で、

・バルトレックス(バラシクロビル)
・ゾビラックス(アシクロビル)

などの内服薬との併用が行われることもあります。

これにより、全身のウイルス増殖を抑え、より早く確実な治療が期待できます。

広がった症状や初発は処方薬の出番。飲み薬との併用も医師が判断します。

 

“使いどころ”を理解したうえで選ぶのが大切

アラセナSは、成分的には処方薬と同じでも、使える症状・部位・対象者に明確な違いがあることがわかりました。

市販薬である以上、誤用を防ぐために使用範囲を絞るのは当然のこと。

一方で、再発に気づいたときにすぐ対処できる手軽さは、忙しいビジネスパーソンにとって大きな魅力でもあります。

「処方薬と同じだから大丈夫」と過信せず、

市販薬でどこまで対応できるのか?」を理解したうえで、

必要なら迷わず医療機関を受診する。

このバランス感覚が、セルフメディケーションにおける一番のカギです。

次章では、「アラセナSをどう使えば一番効果的なのか?」という視点で、使い方のコツと購入時の注意点を紹介していきます。

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第3章|アラセナSの効果的な使い方と、買うときの注意点

◆“ピリピリ”感じたらすぐ塗る!

口唇ヘルペスの治療でいちばん大事なのが、「どのタイミングで薬を使い始めるか」です。

ウイルスが活性化して皮膚に出てくる直前、つまり「ピリピリ」「ムズムズ」といった前駆症状が出たタイミングで、すぐにアラセナSを塗り始めましょう。

この“スピード勝負”が、悪化を防ぐ大きなカギになります。

ちなみに、かさぶたになってから塗っても使用は可能ですが、ウイルスの活性が落ちてくるため、効果は初期ほど期待できません

ウイルスが活性化して皮膚に出てくる直前には「ピリピリ」「ムズムズ」と前駆症状がみられます。

前兆に気づけるかどうかが、本当に重要なんですよね…。

 

◆塗り方の基本ルール

アラセナSの使用方法は、1日1〜4回

清潔な指先や綿棒を使って、患部にうすくのばすように塗ります。ゴシゴシ擦るのはNGです。

軟膏とクリームの2種類がありますが、軟膏は保湿性が高く、乾燥防止に向いています。

クリームはベタつきが少なく、外出時でも使いやすいタイプです。

ベタつき気になるときはクリーム、乾燥気になるときは軟膏…って感じで使い分けてみるのもアリかも〜!

 

◆使い終わる“目安”も大事

使い始めが大切なのはもちろんですが、使い終わりのタイミングも重要です。

かさぶたがはがれて皮膚が修復されてきたら、塗布は終了の目安

症状が落ち着き、皮膚の再生が進んできたら、無理に塗り続ける必要はありません。

皮膚が再生してきたら“もう塗らなくてOK”のサイン。治りかけには休ませることも大切です。

 

◆5日使っても改善しないなら…

使い始めて5日間たっても症状の改善が見られない場合は、単なる再発ではなく、重症例や別の皮膚疾患(ニキビ・口角炎など)の可能性があります。

さらに、治癒までに2週間以上かかる場合も要注意。

そのまま市販薬で引き伸ばすのではなく、皮膚科を受診しましょう。

 

◆予防目的での常用はNG

前駆症状が出る前に予防として塗りたい…という声も聞きますが、アラセナSは予防薬ではありません

ウイルスが活性化していないときに塗っても意味がなく、むしろ耐性や副作用リスクを高める恐れがあります。

 

◆買うときは“第1類”に注意!

アラセナSは第1類医薬品に分類されています。

つまり、購入時には薬剤師の説明と確認が必須です。

店頭では以下のような質問がされることが一般的です。

・今回が初めての発症ではないか?
・医師による診断歴はあるか?
・妊娠、授乳の有無や他の薬との併用状況

ネットでも購入可能ですが、チャットや問診フォームで薬剤師の確認を受ける必要があります

 

◆ヘルペシアクリームとの違いは?

市販の口唇ヘルペス用薬には、「ヘルペシアクリーム(アシクロビル)」という製品もあります。

これも抗ウイルス薬ですが、アラセナSとは成分が異なります。

製品名 有効成分 剤形 使用回数 アラセナS ビダラビン 3% 軟膏/クリーム 1日1~4回 ヘルペシアクリーム アシクロビル 5% クリームのみ 1日3~5回

さらに、アラセナSは軟膏とクリームの2タイプから選べるのも特長です。

また、使用回数が少なく済むのも魅力です。

アラセナSに含まれるビダラビン」は、ウイルス耐性が起こりにくいとされています。

そのため、再発を繰り返している人でも長期的に使いやすいというメリットがあります。

まとめ|市販薬アラセナSを使う前に知っておきたい5つのポイント

・アラセナSは再発時専用:唇まわりの再発ヘルペスにのみ使用可能。初感染や広範囲には使えない。
・成分は処方薬と同じだが制限あり:効果は期待できるが、使用範囲や対象年齢に注意。
・“ピリピリ”にすぐ塗布がカギ:初期段階での使用がもっとも効果的。
・使い終わりの目安も大切:かさぶたが取れ、皮膚が再生すれば終了でOK。
・ヘルペシアとの違いは成分・使用感:アラセナSはビダラビン/軟膏とクリームの選択が可能。

市販薬でもしっかり対処できることは多いですが、“初期症状かも?”と思ったらすぐに使う判断が重要です。

使い続けるタイミングにも注意して、症状に合わせた正しいケアを心がけましょう。

 

【参考情報】
この記事の作成にあたり、以下の公式情報を参考にしています。
ご自身での確認や商品選びの際にご活用ください。

佐藤製薬|アラセナS 製品情報
佐藤製薬|アラセナS よくある質問
医薬品医療機器総合機構|アラセナS 添付文書
大正製薬|ヘルペシアクリーム 製品情報