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更新日:2025/08/25

インフルエンザワクチンを徹底解説|従来の注射と新しい点鼻タイプの効果

毎年のように話題になるインフルエンザワクチン。

 

従来の注射タイプは広く使われていますが、近年「鼻から吸入する点鼻タイプ」という新しい方法も登場しています。

 

本記事では、従来の注射ワクチンの特徴を押さえつつ、点鼻ワクチンとの違いや効果を比較。

 

予防接種を考えるご家庭が知っておきたい最新情報を薬剤師がわかりやすく解説します。

薬剤師ライター クロロボ
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第1章|インフルエンザワクチンの基本と新しい点鼻タイプ

定番の注射ワクチン

インフルエンザ予防の中心といえば、やはり「注射ワクチン」です。

日本では 生後6か月以上 の方が接種できるようになっており、毎年の流行前に打つことで 重症化を防ぐ効果 が確認されています。

注射タイプは不活化ワクチンです。

ウイルスそのものを不活化した成分を体に入れ、血液中でIgG抗体 をつくる仕組みです。

発症そのものを完全に防ぐわけではありませんが、かかっても重症化しにくくなるのが最大の役割です。

 

鼻から吸入する点鼻ワクチンの登場

ここ数年で新しく選択肢に加わったのが「点鼻ワクチン(フルミスト)」です。

2023年に厚生労働省が承認し、2024年秋から国内導入されました。

フルミストは生ワクチンに分類されます。

弱めたインフルエンザウイルスを鼻の粘膜に投与し、体の中でごく限られて増えることで、自然感染に近い形で免疫が働きます。

このため、二つの免疫が誘導されます。

IgG抗体(血液中)

→ 体全体でウイルスの増殖を抑える。

 

IgA抗体(粘膜)

→ 鼻や喉の入口でウイルスをブロックする。

 

つまり点鼻ワクチンは、体の中で重症化を防ぐ力(IgG)入り口で感染を防ぐ力(IgA) の両方を持ち合わせているのが特徴です。

注射では得にくい「粘膜免疫」を誘導できる点が、点鼻ワクチンの大きな強みといえます。

点鼻ワクチンは、重症化を防ぐ力に加えて鼻や喉で感染を防ぐ“粘膜免疫”も得られるのが特長です。

注射と点鼻の整理 注射ワクチン(不活化) ・6か月以上で接種可能 ・IgG抗体を誘導 ・強み:重症化予防 点鼻ワクチン(生ワクチン) ・2024年秋から国内導入 ・IgG+IgA抗体を誘導 ・強み:発症予防+痛みがない

注射ワクチンは長年の実績があり、重症化を防ぐ「安心感」があります。

一方で点鼻ワクチンは、鼻や喉の粘膜でも免疫が働くため「発症予防」にも期待できるのが魅力です。

どちらが優れているというよりも、年齢や家庭の状況に合わせて選べるようになったこと自体が大きな進歩です。

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第2章|効果・副反応・対象年齢の違い

効果の違い

インフルエンザワクチンは「どのくらい効くのか」が一番気になるところです。

注射タイプと点鼻タイプでは、効果の出方や持続期間に違いがあります。

注射ワクチン

接種から 2週間ほどで効果が出て、約5か月程度持続 します。
そのため秋に接種すると、冬の流行期をしっかりカバーできます。
重症化予防に優れており、流行株が完全に一致しなくても一定の効果が確認されています。

 

点鼻ワクチン(フルミスト)

粘膜でも免疫が働くため、発症そのものを抑える効果 が期待できます。
効果は およそ1年間持続 とされ、特に小児での高い有効性が報告されています。
流行期を超えて長めに効果が続く点は、注射との大きな違いです。

点鼻ワクチンは発症予防効果が高く、1年近く持続するのが注射との大きな違いです。

 

副反応の特徴

どちらのワクチンにも副反応はありますが、その内容は少し違います。

注射ワクチン

接種部位の腫れ赤み発熱、倦怠感などが起こることがあります。
これらは数日で治まることが多く、重大な副反応はまれです。

 

点鼻ワクチン

鼻汁、鼻閉、咽頭痛、咳などが30〜40%の割合でみられます。
多くは軽度で数日以内に改善し、臨床試験でも 重大な副反応は報告されていません

鼻にちょっと症状が出るのは不便だけど、軽いなら安心だよね〜

 

対象年齢と制限

接種できる年齢や条件も、選択において重要です。

注射ワクチン

生後6か月以上であれば全年齢が対象です。
妊婦や高齢者を含め、幅広く使えるのが特徴です。

 

点鼻ワクチン

対象は 2〜19歳 です。
一方で、妊婦や免疫不全の方には使用できません。
適応に制限がある点は注意が必要です。

 

項目 注射ワクチン(不活化) 点鼻ワクチン(フルミスト・生) 効果 重症化予防に優れる 発症予防に強み 持続期間 約5か月(シーズンをカバー) 約1年持続 副反応 腫れ・赤み・発熱・倦怠感 鼻汁・鼻閉・咽頭痛・咳(軽度) 対象年齢 6か月以上の全年齢 2〜19歳のみ 特徴 実績が長く安心感がある 痛みがなく小児に受けやすい

 

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第3章|価格と助成制度の現状

ワクチンは自由診療

インフルエンザワクチンは、注射も点鼻も健康保険の対象外 です。

どちらも「自由診療」として扱われるため、医療機関が独自に価格を設定しています。

そのため、同じ地域でもクリニックによって金額に差が出ることがあります。

特に新しい点鼻ワクチンは取り扱う施設が限られており、費用も高めに設定されるケースが多いです。

同じワクチンでも病院ごとに料金が違うんだね〜。予約する前に確認する方が安心だね。

 

注射と点鼻の費用の目安

注射ワクチン

多くの医療機関では 3,000〜5,000円程度 が目安です。
さらに、自治体によっては助成があり、自己負担が1,000〜2,000円程度になる場合もあります。

 

点鼻ワクチン(フルミスト)

費用は 8,000円前後 に設定されているケースが多いです。
まだ導入されたばかりで、扱う医療機関も限られています。
ただし、一部の自治体では助成が始まっており、自己負担が軽減される例も出てきています。

 

助成制度は自治体ごとに異なる

助成制度は自治体ごとに異なる

インフルエンザワクチンの助成制度は、自治体ごとに内容が異なります

同じ県内でも市町村によって金額や対象が違うことがあり、「去年は助成があったのに、今年はなくなった」というケースも珍しくありません。

特に点鼻ワクチンは新しいため、まだ助成の対象にしていない自治体も多いのが現状です。

一方で、子どもの予防接種に力を入れている地域では、試験的に助成を始める動きも見られます。

 

インフルエンザワクチンは注射も点鼻も自由診療です。

助成や価格は毎シーズン変わるため、接種前に自治体やクリニックで最新情報を確認することが一番大切です。

まとめ:注射と点鼻の選び方

・注射ワクチン:重症化予防が強み。全年齢で接種でき、助成制度も広く活用できる。
・点鼻ワクチン(フルミスト):発症予防に強み。持続は1年。2〜19歳が対象で、痛みがないのが特徴。
・副反応:注射は腫れ・発熱、点鼻は鼻症状が中心。どちらも重大な副反応はまれ。
・価格・助成:自由診療扱い。助成制度は自治体ごとに異なるため、毎シーズンの確認が必須。

 

インフルエンザ予防は「受けること」が一番の目的です。

注射か点鼻かで迷う場合は、家族の状況(年齢・体質・費用)に合った方法を、自治体やクリニックで最新情報を確認したうえで選ぶことをおすすめします。

無理なく受けられる方法を選び、この冬を安心して迎えてください。

 

【参考情報】
この記事の作成にあたり、以下の公式情報を参考にしています。
ご自身での確認やワクチン選びの際にご活用ください。
第一三共株式会社|フルミスト点鼻液 公式情報
厚生労働省|インフルエンザワクチンに関する情報
日本小児科学会|インフルエンザワクチンに関する見解