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更新日:2025/11/07

妊婦の風邪薬、どこまでOK?薬剤師が語る「避けたい成分」と「頼っていい薬」

薬局で「妊娠中なんですが、風邪薬はどれが安全ですか?」と尋ねられることがよくあります。

 

大切なのは“飲むか飲まないか”ではなく“何を選ぶか”。

 

薬剤師の立場から、妊娠期でも安全に使える風邪薬の考え方と、避けたい成分・セルフケアのコツを、やさしく解説します。

薬剤師ライター クロロボ
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第1章|妊娠時期で変わる「薬の影響リスク」

妊娠中でもっとも薬の影響を受けやすい時期——それが妊娠4〜7週の“絶対過敏期”です。

ただし、薬のリスクは妊娠の進行とともに変化します。

その違いを理解するには、まず妊娠週数の数え方を知っておくことが大切です。

 

妊娠週数の数え方と時期の区分け

妊娠の週数は、最終月経の初日を「0週0日」として数えるのが医学的なルールです。

つまり、まだ受精もしていない時期が“妊娠期間”に含まれます。

これは意外と知られていませんが、薬の影響を判断するうえで非常に重要なポイントです。

妊娠していないのに“妊娠0週”?ちょっと混乱しちゃうかも…

妊娠中に薬を使う際、「どの時期に飲んだか」でリスクがまったく異なります。

次に紹介する“4つの時期”を理解すると、妊娠中の薬との付き合い方がぐっと明確になります。

 

薬の影響が異なる4つの時期と特徴

 無影響期(0〜3週)

受精から着床までの時期で、薬の影響は「すべてか、まったくないか(all or nothing)」です。

この期間に薬を飲んでしまっても、胎児に形態異常が起こることは基本的にありません。

もし影響がある場合は妊娠が継続しないケースが多く、“奇形が残る”ことはほとんどないとされています。

 

 絶対過敏期(4〜7週末)

この時期は、心臓・脳・脊髄など主要な臓器が形成される“器官形成期”です。

最も催奇形性のリスクが高く、妊娠全体で最も慎重な管理が求められます

とくにビタミンA誘導体、抗てんかん薬、NSAIDs系(ロキソプロフェンなど)は、奇形リスクとの関連が知られており、医師の判断なしに使用すべきではありません。

この時期は薬剤師としても、自己判断での服薬は絶対に避けるよう伝えます。

妊娠がわかるのは、ちょうどこの時期(妊娠5〜6週ごろ)であることが多いです。

これは、次の月経予定日を1週間ほど過ぎても生理が来ないため、

「おかしいな?」と感じて妊娠検査薬を使うタイミングが妊娠4〜5週ごろに当たるからです。

妊娠検査薬は、受精後に分泌されるホルモン(hCG)が一定量に達すると陽性反応を示す仕組み。

このhCGが上昇するのが妊娠4〜5週目なので、医療機関で確定診断されるのが妊娠5〜6週となります。

つまり、「妊娠に気づく時期」と「薬の影響が最も大きい時期」が重なっているのです。

そのため、妊娠を希望している方や月経が遅れている方は、

「もしかしたら妊娠しているかも」と感じた時点から、不要な薬の使用を控える意識を持ちましょう。

“検査薬が反応する頃”って、いちばんリスクが高い時期なんだね…。

 

 相対過敏期(8〜15週)

器官形成が終わり、形態的な奇形リスクは下がりますが、神経系や生殖器系への影響は残ります。

たとえば、ホルモンに影響する薬や抗菌薬の一部は、胎児の機能発達に影響する可能性があります。

この時期も、服薬は必ず医師の判断のもとで行うことが大切です。

 

 比較過敏期(16週以降)

妊娠中期以降になると、奇形リスクはかなり低下します。

しかし、薬によっては機能的な影響(動脈管閉鎖など)が出ることがあります。

NSAIDs(ロキソプロフェン、イブプロフェンなど)は代表例で、妊娠後期では避ける必要があります。

また、母体への影響(胃腸障害・腎機能変化)も軽視できません。

 

妊娠時期ごとの薬の影響まとめ

区分 週数 胎児の状態 薬の影響と注意内容 ① 無影響期 0〜3週 受精〜着床前 影響があれば妊娠が継続しない。 奇形として残ることはない。 ② 絶対過敏期 4〜7週 器官形成期(心臓・脳など) 催奇形性リスクが最も高い。 自己判断での服薬は避ける。 ③ 相対過敏期 8〜15週 神経・生殖器などが発達 奇形リスクは減少。 機能発達への影響に注意。医師の管理下で服薬。 ④ 比較過敏期 16週以降 臓器の機能成熟期 薬の影響が最も少ない時期。 ただしNSAIDsなど一部薬で機能障害の恐れあり。

妊娠初期の「絶対過敏期(4〜7週)」は、薬の影響を最も受けやすい時期です。

ですが、この時期を正しく理解していれば、怖がりすぎず、また軽視もしないというバランスが取れます。

“薬を避ける”ではなく“薬を理解する”。

それが、妊婦さんと赤ちゃんを守る第一歩です。

 

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第2章|妊婦でも使える薬・避けたい薬

妊娠中に薬を使うかどうかは、「成分」で判断することが何より大切です。

つまり、どの薬が“使っていい成分(OKライン)”で、どの薬が“避けたい成分(NGライン)”なのか。

ここでは、その見分け方を具体的に紹介していきます。

妊婦が比較的安全に使える成分

妊娠中でも、症状に応じて安全に使える薬はあります。

その代表が アセトアミノフェン(例:カロナール) です。

解熱鎮痛薬の中で最も安全性が高く、医療機関でも第一選択薬として使用されます。

発熱・頭痛・喉の痛みなどの症状にも適応できますが、自己判断での長期使用は避けましょう。

妊婦さんにとって大切なのは、“薬を避ける”ことではなく、“安全な薬を正しく使う”という意識です。

“使える薬”があるって分かるだけでも、ちょっとホッとするよね~

 

避けたい・注意が必要な成分

NSAIDs系(イブプロフェン、ロキソプロフェンなど)

これらの薬は妊娠後期に使用すると、胎児の動脈管が早く閉じてしまうリスクがあるため避けましょう。

特に妊娠28週以降の服用はNGです。

 

総合感冒薬に含まれる成分

パブロン・ルル・ベンザなどの総合感冒薬には、カフェインエフェドリンアスピリンなどの刺激性成分が含まれている場合があります。

これらは胎児の発育や循環に影響を与える可能性があるため、妊娠中は避けるのが安全です。

また、複数成分を含む「総合薬」は、どの成分が影響するか判断しにくいため、単剤で処方される薬を選ぶことが基本です。

総合感冒薬って“万能”に見えて、妊娠中はリスクが増えるんですね

 

抗ヒスタミン・咳止め成分

アレルギー症状や咳止め成分の中には、胎盤を通過するものもあります。

安全性データが十分でない成分も多く、眠気や神経系への影響を考慮して、使用する際は必ず医師・薬剤師へ相談を

 

漢方薬は“自然=安全”ではない

「自然由来だから安心」と思われがちですが、漢方薬にも注意が必要なものがあります。

たとえば 葛根湯麻黄湯 に含まれる「麻黄(まおう)」は、血圧や心拍を上げる成分(エフェドリン)を含みます。

そのため、母体の血流や胎盤の循環に影響するおそれがあり、妊娠中の使用は避けたほうがよいとされています。

一方で、妊婦さんの体調や週数に合わせて医師が慎重に判断して使う漢方もありますが、

「自然だから安全」と思い込んで自己判断で服用するのは危険です

“漢方なら安心”って思ってたけど、そうとは限らないんですね…

妊娠中は、薬が「使える」「避けたい」と線引きされているものの、“使える薬だから安心”とは限りません。

最も大切なのは、自己判断で服用しないこと。

症状や週数、体調によって安全性は変わります。

「少し熱があるだけだから」「市販薬なら大丈夫」と考える前に、専門家に相談して判断することが何より重要です。

薬は正しく使えば支えになりますが、誤った使い方をすればリスクにもなります。

不安なときこそ、薬剤師や医師と一緒に安全な選択をしていきましょう。

 

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第3章|妊婦の風邪Q&A|薬・ワクチン・市販薬・受診のギモン解決

Q1:妊娠中に風邪をひいたら、すぐ病院へ行くべき?

A:まずは産婦人科やかかりつけ医に“電話で相談”を。症状が重いときは早めに受診を。
妊婦の風邪は悪化しやすく、脱水や早産につながるおそれがあります。
38℃以上の発熱が続く、強い咳が出る、呼吸が苦しい、出血やお腹の張りがある場合は、すぐ受診してください。
軽い症状なら、まず電話で症状を伝え、受診のタイミングや行動の指示を仰ぐのが安全です。

 

Q2:妊婦が市販の風邪薬を飲んでも大丈夫?

A:自己判断での服用は避け、医師・薬剤師に確認してください
総合感冒薬(パブロン・ルルなど)は複合成分が多く、妊婦には不向きです。
特にイブプロフェンやカフェインを含む薬は避けましょう。
使う場合はアセトアミノフェン単剤を、医師の管理下で使用するのが安全です。

“一回だけなら…”って考える前に、相談が大事ですね。

 

Q3:妊娠中でもインフルエンザ予防接種は受けていい?

A:はい、妊婦も接種可能で、厚労省も推奨しています。
使用されるのは不活化ワクチンで、胎児への影響はありません。
むしろ、妊婦が感染した場合の重症化リスクを防ぐ意味でも接種は有効です。
さらに、母体の抗体が新生児にも移行するため、生まれたばかりの赤ちゃんを守る効果もあります。

ママを守れば、赤ちゃんも一緒に守れるってことだよね!

 

Q4:妊娠中に漢方薬(葛根湯など)は使える?

A:種類によっては避けるべきです。
「麻黄(まおう)」を含む漢方(葛根湯・麻黄湯など)は、血圧や循環に影響するおそれがあります。
妊娠中は自己判断での服用を避け、必ず医師に相談して処方を受けましょう。

“自然の薬”でも、妊婦には合わないことがあるんですね。

 

Q5:家族が風邪をひいたとき、妊婦はどう予防すべき?

A:マスク・換気・加湿を徹底してください。
同じ部屋で過ごすときは1m以上の距離を保つのが理想です。
部屋の空気を定期的に入れ替え、手洗い・うがいも忘れずに。
家族がインフルエンザ予防接種を受けておくことも、妊婦への感染防止につながります。

 

Q6:妊娠初期に薬を飲んでしまった…赤ちゃん大丈夫?

A:多くの場合、過度に心配しなくても大丈夫です。
影響は服用時期・薬の種類・量によって異なります。
妊娠4〜7週が最も注意すべき時期ですが、1〜2回の服用で重大な影響が出るケースはまれです。
慌てずに服薬日と薬名を記録し、医師・薬剤師に相談してください。

つい飲んじゃっても、落ち着いて相談すれば大丈夫なんだね〜。

 

まとめ|“避ける”より、“理解する”が妊婦の安心

妊娠4〜7週は最も慎重に:薬の影響を受けやすい“絶対過敏期”。この時期の自己判断服薬は避ける。 アセトアミノフェンは比較的安全:解熱鎮痛薬の第一選択。ただし長期連用や複合剤は避ける。 妊娠中の薬は専門家に相談を:妊娠週や症状で判断が変わるため、医師・薬剤師の確認が基本。

薬を避けるよりも、正しく知って上手に使うことが大切です。

不安なときこそ、医師や薬剤師に相談することが“安心の近道”。

無理せず、赤ちゃんと自分の体を同じように大切にしてくださいね。

 

【参考情報】
この記事の作成にあたり、以下の公的・医療機関・メーカー公式情報を参考にしています。
妊娠中の服薬や体調管理に不安がある方は、ご自身でも公式情報をご確認ください。
厚生労働省|妊娠・基礎疾患等をお持ちの方々へ
日本小児科学会|妊婦への接種が推奨または考慮されるワクチン
福岡県薬剤師会|妊娠中の風邪に葛根湯を使用することはあるか?