

冷え性の原因はなぜ起こる?女性・男性別に違う理由と自律神経・漢方まで薬剤師が解説
「冬だけじゃなく一年中、手足が冷たい」「女性だから仕方ない?」そう思っていませんか。
実は冷え性の原因は、血流・自律神経・筋肉量・ホルモンなど複数が絡み合っています。
しかも、女性と男性では冷えの起こり方がまったく違います。
この記事では、冷え性はなぜ起こるのかを医学的に整理し、タイプ別の改善策や漢方、病院に行くべきサインまで薬剤師目線で解説します。


第1章:冷え性はなぜ起こる?医学的な本当の原因
冷え性は「血の巡りが悪いから起こる」と言われがちですが、実際はそれだけでは説明できません。
血流、自律神経、筋肉、ホルモン、貧血など、複数の要因が重なって起こる“体の調整トラブル”です。
この構造を知らないまま対策をしても、冷えはなかなか改善しません。
冷え性は「血流」だけが原因ではない
体温は血液によって全身に運ばれています。
冷え性の出発点として多いのが、末梢血管の収縮による血流低下です。
寒さやストレスを受けると、交感神経が優位になり、血管は自然に収縮します。
この反応が一時的なら問題ありませんが、ストレスが続くと血管は縮んだままになります。
その結果、手足の血流が回復せず、冷えが慢性化します。
さらに冷え性の人では、体温を戻す調整機能(温度感受性)そのものが低下しています。
つまり「冷えたら温める」という自動調節がうまく働かなくなっている状態です。


筋肉量・ホルモン・貧血が冷えを悪化させる
体の熱は、血液で運ばれるだけでなく、筋肉で作られます。
筋肉量が少ないと、それだけで冷えやすくなります。
女性に冷え性が多い理由の一つが、この筋肉量の差です。
ここに女性ホルモンの変動が重なります。
月経周期や更年期では、自律神経の働きが不安定になりやすく、血管の開閉調整が乱れます。
さらに、鉄欠乏性貧血があると、末端まで酸素と熱が届きにくくなり、冷えが強くなります。
また、甲状腺ホルモンの低下でも、代謝が落ちて寒がりになります。


冷え性のタイプ分類(漢方的視点)
冷え性は医学的には「血流・自律神経・代謝」の問題として整理できます。
一方、漢方では体質の偏りとして次のように分類します。
・血虚(けっきょ)タイプ:血が不足し、末端まで熱が届かない
・瘀血(おけつ)タイプ:血の巡りが悪く、下半身が冷えやすい
・気滞(きたい)タイプ:ストレスで自律神経が乱れやすい
・水滞(すいたい)タイプ:むくみと冷えがセットで出やすい
ここでは考え方だけ押さえておきます。
具体的な漢方の選び方は、第3章であらためて整理します。


第2章:女性と男性で違う冷え性の原因とは?
冷え性は「体質だから」「女性に多いもの」と一括りにされがちですが、実際には女性と男性では冷えが起こる仕組み自体が違います。
この違いを無視したまま対策をすると、思ったような改善が得られません。
ここでは、医学的に見た男女それぞれの冷え性の原因と、冷え方の特徴を整理していきます。
女性に冷え性が多い医学的理由
女性に冷え性が多い理由として、まず外せないのが月経周期による体温変動です。
月経周期では、高温期と低温期がはっきり入れ替わり、そのたびに血流と体温の調整が必要になります。
この繰り返しが自律神経に負担をかけ、冷えやすい体の状態を作ります。
妊娠・産後も、女性の冷えに大きく関係します。
妊娠中は血液量の増加とホルモン変動が同時に起こり、産後は逆にホルモンが急激に変化します。
この落差が自律神経の調整を乱し、冷え・のぼせ・だるさが同時に出やすくなります。
さらに、女性は低血圧の人が多く、末端まで十分な圧で血液を送り出しにくい傾向があります。
ここに鉄欠乏性貧血が重なると、酸素と熱の運搬効率が下がり、冷えと疲労感が同時に現れやすくなります。
女性の冷え性で特徴的なのが、冷えとむくみがセットで起こりやすい点です。
これは、水分代謝と血流調整が同時に乱れやすい体の構造が関係しています。


女性に多い冷え方の特徴
女性に最も多い冷え方は、下半身の冷えです。
骨盤周囲の血流が滞ることで、太ももから足先にかけて冷えが集中します。
次に多いのが、お腹の冷えです。
腹部が冷えると、消化機能の低下や月経トラブルと連動しやすくなります。
さらに、手足の末端冷えも女性に非常に多いタイプです。
室温に関係なく、指先や足先だけが氷のように冷たくなる状態が続きます。
加えて、冷房に極端に弱いタイプも女性に多くみられます。
外は暑いのに、室内に入った途端に冷えが強く出る、という冷え方です。
これらの冷え方は、漢方的には血虚タイプ・水滞タイプに該当しやすい特徴です。
男性の冷えは「生活習慣型」が中心
男性の冷え性は、女性とは原因の性質が大きく異なります。
最大の要因は、仕事ストレスによる自律神経の乱れです。
長時間労働、緊張状態の継続、対人ストレスが重なると、交感神経が休まらず、血管は収縮したまま固定されます。
この状態が続くことで、手足やお腹の血流が慢性的に低下します。
次に影響が大きいのが、飲酒と喫煙です。
アルコールは一時的に血管を広げますが、その後は反動で強い収縮が起こります。
喫煙は末梢血管を継続的に収縮させ、冷えを慢性化させます。
さらに、筋力低下と睡眠不足が重なることで、熱を作る力と回復力の両方が落ちていきます。
男性の冷えは、生活習慣の積み重ねがそのまま冷えとして表に出る構造になっています。
男性に多い冷えの特徴
男性に最も多いのが、お腹の冷えです。
腹部の冷えは、内臓血流の低下と直結し、胃もたれ、下痢、食欲低下などの胃腸不調を同時に引き起こしやすくなります。
また、夜間に目が覚めるタイプの冷えも男性に多くみられます。
これは自律神経の切り替えがうまくいかず、体温調整と睡眠が同時に乱れている状態です。
これらの冷え方は、漢方的には瘀血タイプ・気滞タイプに該当しやすい特徴です。


女性と男性の冷え性の違い【早見表】




第3章:原因別に整理する冷え性の改善法
冷え性は「とりあえず温めればいい」という単純な話ではなく、原因ごとに改善アプローチが変わります。
血流なのか、自律神経なのか、食生活なのか、あるいは体質なのか。
自分の冷えがどこから来ているのかを知るだけで、効果の出方がまったく違ってきます。
ここでは、原因別に“今日からできる改善ポイント”を整理します。
血流が原因の冷え
血流に問題があるタイプの冷えは、「巡らせる力」を高めると変化が出やすいです。
代表的なのは、ふくらはぎの運動です。
ふくらはぎは“第二の心臓”と呼ばれ、下半身から心臓に返す血液をポンプのように押し上げています。
椅子に座りながらでも、つま先立ちの上下運動を数回繰り返すだけで、末端温度に変化が出ることがあります。
あわせて取り入れたいのが、足首回しです。
くるぶし周囲には細かい血管と筋が集まっていて、ここが固まるだけで足先が冷えやすくなります。
入浴は、40℃のお湯に10分程度つかるのが目安です。
熱すぎる湯は交感神経を刺激し、かえって血管を収縮させるため逆効果になりやすいです。
最後に、足先・ふくらはぎの軽いマッサージも血流サポートになります。
強く押す必要はなく、撫でるような刺激でも問題ありません。


自律神経が原因の冷え
自律神経が乱れると、血管が「縮む・広がる」の切り替えがうまくできなくなります。
このタイプの冷えは、温めるよりもまず生活リズムの立て直しが効果的です。
最優先は睡眠の改善です。
寝不足は交感神経を優位にし、翌日の血流にも影響を与えます。
特に寝る前のスマホやPCの光は、眠気ホルモンの分泌を妨げるため、就寝1時間前には控えるのがよいです。
次におすすめなのが朝散歩です。
朝の光を浴びると、自律神経が安定し、体内時計が整います。
体温リズムも正常化しやすくなり、冷えを感じる時間帯が減っていきます。
ストレス調整も欠かせません。
深呼吸やストレッチといった短時間のリラックスでも、自律神経には十分作用します。


食生活が原因の冷え
食事が原因の冷えは、改善ポイントが明確です。
まず重要なのが鉄分で、特に女性は不足しやすい栄養素です。
鉄が不足すると、体温を作るための酸素が運ばれにくくなり、冷えと疲労が同時に起こりやすくなります。
次にたんぱく質です。
筋肉を作る材料であり、体温産生のもとになります。
肉・魚・卵・大豆など、バランスよく取り入れることが大切です。
野菜では、根菜類が冷え対策に向くことが多いです。
大根、にんじん、ごぼうなどは消化しやすく、体を内側から温めてくれます。
そして意外と見落とされがちなポイントが、冷たい飲み物を控えることです。
胃腸が冷えると体温調整がうまくできなくなり、末端の冷えも長引きます。
冷え性に使われる代表的な漢方薬
第1・2章で触れてきた「冷えのタイプ」を、ここで漢方と結びつけます。
漢方では“冷えの原因がどこか”によって処方が変わります。
当帰芍薬散
血虚(血不足)タイプに向き、むくみや下半身の冷えが気になる人に使われることがあります。
桂枝茯苓丸
瘀血タイプに向き、下腹部の冷え、のぼせ、生理痛が気になる場合に選ばれることがあります。
四物湯
貧血傾向・疲れやすい人に使われることがあり、体を内側から補う方向の処方です。
加味逍遙散
ストレス型の冷えに向き、不眠・イライラと冷えがセットで起こる場合に使われます。
市販の漢方薬は手軽ですが、体質と合わないと症状が強く出ることがあります。
また、妊娠中や持病がある場合は自己判断を避ける必要があります。
漢方こそ、“自分の冷えの原因”を知ることが大切です。
生活環境が原因の冷え
生活環境による冷えは、日常の工夫で大きく変わります。
まず意識したいのが、首・お腹・足首の3点保温です。
ここは太い血管が通る部分で、温めるだけで全身の体感温度が上がりやすいです。
次に、冷房対策です。
夏でもカーディガンや薄手のブランケットを常備すると、体温の急降下を防げます。
そして、湯たんぽや電気毛布などの冷えグッズは“使い方”が重要で、体を温めすぎると汗が引く際に冷えてしまうことがあります。
ほんのり温めるくらいがちょうどよいです。
以上が、原因別に整理した冷え性の改善法です。
次の章では、読者がよく抱く疑問をQ&A形式で補足していきます。


第4章:冷え性のよくあるQ&A
Q1|夏でも冷え性は起こる?
A|起こります。特に夏は悪化しやすい季節です。
冷房による急激な温度差で自律神経が疲れ、血管の収縮と拡張がうまく切り替わらなくなります。
さらに冷たい飲み物が増えることで内臓が冷え、手足の冷えにもつながりやすくなります。
Q2|冷え性は年齢で治る?
A|“自然に治る”とは言い切れません。年齢でタイプが変わります。
若い女性はホルモン変動や鉄不足の影響を受けやすく、40代以降は筋肉量と基礎代謝の低下が関係して冷えが長引きます。
ただし生活習慣・食事・睡眠を整えると改善しやすく、年齢だけで決まるものではありません。
Q3|漢方は自己判断で使っても大丈夫?
A|短期間なら可能ですが、体質に合わないと悪化することがあります。
漢方は“証(体質)”の見極めが前提で、冷えの原因が違うと効果が出ないだけでなく、のぼせや胃の不快感が出ることもあります。
妊娠中・持病がある・他の薬と併用している場合は、必ず専門家の確認が必要です。
Q4|低血圧と冷え性は関係ある?
A|関係はありますが、低血圧=冷えとは限りません。
血圧が低いと末端まで十分な圧で血液が送られにくく、冷え・だるさ・めまいが一緒に起こることがあります。
特に鉄不足と低血圧が重なると、冷えが強く出やすくなります。
Q5|冷え性は病気のサインになる?
A|なる場合があります。特に急に冷えが悪化したときは注意が必要です。
甲状腺機能低下症、重度の貧血、自律神経失調、レイノー症状などが背景にあるケースがあります。
手足の色が白や紫に変わる、強い疲労感が続く、動悸や息切れがある場合は、早めの受診が安心です。
まとめ|“冷えの本質”だけを4つに凝縮した最終チェック


冷えは“体質だから仕方ない”ではなく、理由のあるサインです。
ほんの少し生活を整えるだけで驚くほど動きやすくなることもあります。
まずは、今日からできる小さな一歩をひとつ。
ふくらはぎを動かす、温度差を減らす、眠る前だけスマホを置く──その積み重ねが一番効きます。
無理なくできる範囲で、体が喜ぶ選択を続けてみてください。




