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お薬コラム
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更新日:2022/05/02

保険治療の禁煙治療について

止めたい気持ちはあるのに、なかなか続けられない禁煙治療。2006年4月から禁煙治療が保険適用になり、禁煙ブームも始まったことから禁煙に対する意識をもつ方は増えてきました。

 

平成元年には男性でことからも、禁煙の意識が高まってきていることがわかります。

 

ところで、保険適用の禁煙治療ではどのような薬を使って行っていくのでしょうか。今回は、禁煙補助薬の種類や特徴、保険適用で治療するための条件などを解説します。

監修薬剤師 ハラクロ
薬剤師ライター 岡本 妃香里

保険適用での禁煙治療は誰でもできる?

どなたでも禁煙治療が保険適用になるわけではありません。保険適用で治療するためには、次に挙げる4つの条件を満たす必要があります。

1. ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)で5点以上、ニコチン依存症と診断された方
2. 35歳以上の場合、ブリンクマン指数(=1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上の方
3. 直ちに禁煙することを希望されている方
4. 「禁煙治療のための標準手順書」に則った禁煙治療について説明を受け、当該治療を受けることを文書により同意された方

禁煙治療を保険適用で始めるにあたり、ニコチン依存症に係るスクリーニングテストを受ける必要があります。「はい」は1点、「いいえ」は0点で計算して合計点を出してください。5点以上あれば、ニコチン依存症と診断されます。

ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト

問1 自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか?
問2 禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか?
問3 禁煙や本数を減らそうとしたときに、タバコがほしくてほしくてたまらなくなることがありましたか?
問4 禁煙したり本数を減らそうとしたときに、次のどれかがありましたか?
(イライラ、神経質、落ちつかない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加)
問5 問4でうかがった症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか?
問6 重い病気にかかったときに、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか?
問7 タバコのために自分に健康問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか?
問8 タバコのために自分に精神的問題(喫煙により神経質になったり不安や抗うつなどの症状が出現したりしている)が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか?
問9 自分はタバコに依存していると感じることがありましたか?
問10 タバコが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか?

禁煙補助薬の種類は?

保険適用で使用できる禁煙補助薬には、ニコチンパッチと飲み薬のチャンピックスとがあります。

ニコチンパッチ(貼付薬)

ニコチンが含まれているパッチを貼付することで、ニコチン欠乏による離脱症状を抑えて禁煙をスムーズに進めるための貼付薬です。
医療用では「ニコチネルTTS」というものがあり、徐々にニコチンの含有量が少ないパッチに変えていくことで、12週間かけて禁煙を目指します。

チャンピックス(飲み薬)

バレニクリンという主成分が配合された飲み薬です。禁煙を始める1週間前から飲み始め12週間かけて服用することで禁煙を目指します
バレニクリンはニコチンを含んでいませんが、喫煙時の離脱症状や喫煙による満足感を抑えられることが特徴です。自力で禁煙するときと比べ、バレニクリンを使用した場合は禁煙成功率が約3倍高くなることが分かっています

ニコチンパッチについて

医療用では、ニコチネルTTSという商品を使います。市販薬でもニコチンパッチは購入できますが、ニコチネルTTSとは使い方やニコチンの含有量が異なることが特徴です。

ニコチンパッチの特徴

禁煙を始めるその日からニコチネルTTSを使い始めます。最初はもっともニコチンの含有量が多いニコチネルTTS30を4週間使い、次の2週間はニコチンの量が少ないニコチネルTTS20、さらにその次の2週間はもっともニコチンの量が少ないニコチネルTTS10を使用し、最後の4週間は何も貼らないまま過ごすことで禁煙を成功に導く薬です。
市販のニコチンパッチよりも、ニコチネルTTSのほうがスタート時に使うパッチに含まれるニコチン含有量が多くなっています。またニコチネルTTSは24時間貼り続けることができますが、市販のニコチンパッチは起床時から就寝時までしか貼付できません。
これらのことを考えると、医療用のニコチネルTTSのほうが無理なく禁煙できると考えられます

ニコチンパッチの副作用

ニコチネルTTSの副作用としては、嘔気や嘔吐、腹痛や下痢、食欲不振が代表的です。そのほか、血圧上昇や便秘、動悸や不整脈なども知られています。

チャンピックスについて

12週間服用することで、禁煙を目指す飲み薬です。最初の1~3日目は1回0.5mgを1日1回食後に、4~7日目は1回0.5mgを1日2回朝夕食後に、8日目以降は1回1mgを1日2回朝夕食後に服用します。

チャンピックスの特徴

喫煙が止められないのは、ニコチンの働きによってドパミンが放出されるためです。チャンピックスは、少量のドパミンを放出させ、さらに体内に入ってきたニコチンの働きを弱める効果があります。そのため、ニコチン欠乏による離脱症状を抑えながら、たばこを吸ったときの満足感を抑えることが可能です。

チャンピックスの副作用

副作用としては不眠症や異常な夢、嘔気や頭痛が出やすいことが知られています。とくに嘔気は、28.5%の方で出てしまうため必ず食後にコップ1杯程度の水で飲むようにすることが大切です。

嘔気は一時的なもので自然に症状は治まっていきますが、どうしてもつらいときは吐き気止めを処方してもらったり服用量を調節してもらったりしましょう。

禁煙の影響で薬の効き方が変わることがある

喫煙中に何か薬を服用していた方は、禁煙により薬の効き方が変わってしまう可能性があります。薬は酵素の働きによって代謝されていくのですが、喫煙は酵素の働きを強めてしまう効果があるのです。

禁煙すると酵素の働きが落ちることで、薬が代謝されづらくなり血中濃度が上がって効果が強く出てしまう可能性があります。喘息治療薬のテオドール降圧薬のプロプラノロール精神安定剤のジアゼパムなどは禁煙により効果が強まりやすい薬です。

禁煙してすぐに薬の効果が強く出やすくなるわけではありませんが、服用中の薬がある方は念のため処方医に禁煙することを伝えるようにしましょう。

まとめ

保険適用で使用できる禁煙補助薬には、ニコチンパッチとチャンピックスがあります。1回目の治療は保険適用となりますが、2回目を受ける場合は初回の診察日から1年以上あけないと保険適用になりません。1年以内に禁煙治療を再開する場合は自費となるので注意しましょう。

 

<参考資料>
・健康ネット | 最新タバコ情報 | 成人喫煙率(厚生労働省国民健康・栄養調査)
・禁煙治療ってどんなもの? | e-ヘルスネット(厚生労働省)
・TDSニコチン依存度テスト | e-ヘルスネット(厚生労働省)