ポイントは迅速な治療開始!決して他人事ではない帯状疱疹のお話
「帯状疱疹」という病気について、「名前は聞いたことがあるけれど、あまり詳しくは知らない。」そういう人は多いのではないでしょうか。
実際、グラクソ・スミスクラインという製薬会社が行った調査でも、帯状疱疹という名前の知名度は高いのに対し、病気自体に関しては誤った認識を持った人が多いという結果が出ています。1)
帯状疱疹は決して他人事ではなく、80歳までに3人に1人がかかると言われています。
発症した際は迅速な治療開始が鍵となるため、ぜひとも知っておいていただきたい帯状疱疹に関する情報を、この記事ではお伝えさせていただきます。
帯状疱疹とは
帯状疱疹はヘルペスウイルスが原因となり、赤い斑点や水ぶくれと共に、ピリピリとした神経痛が皮膚表面に現れる疾患です。 免疫が弱った時に発症しやすく、体の左右どちらか一方に帯状に出るのが特徴です。 |
原因は?
帯状疱疹の原因となるウイルスは「水痘・帯状疱疹ウイルス」と呼ばれ、ヘルペスウイルスの一種です。
こちらは文字通り、いわゆる水ぼうそう(水痘)と帯状疱疹を引き起こすウイルスであり、最初に感染した時は「水ぼうそう」として発症します。
おおよその人が、子供の頃に水ぼうそうにかかりますが、症状が治ってもウイルスは体内に残り続けます。
そして、免疫が落ちた時に再度活発化し、今度は「帯状疱疹」として発症するのです。
口唇ヘルペスと同じウイルス?
口唇ヘルペスと帯状疱疹は、両者ともヘルペスウイルスが原因ですが、厳密に言うと、ヘルペスウイルスの種類が異なります。
帯状疱疹は「水痘・帯状疱疹ウイルス」ですが、口唇ヘルペスは「単純ヘルペスウイルス」というウイルスによって引き起こされます。
そのため、口唇ヘルペスがうつって、水ぼうそうや帯状疱疹にはなりませんし、逆もあり得ません。
どんな人がなりやすい?
帯状疱疹は免疫力や抵抗力が落ちた時に発症します。
特に加齢により、発症リスクが高くなり、50歳を過ぎた頃から特に注意が必要であると言われています。
しかしながら、10代や20代の若者でも、疲労やストレスにより抵抗力が落ちると、発症する可能性は十分にあります。
帯状疱疹の症状は?
一般的な症状の経過
<神経痛>
帯状疱疹の症状として、まずは皮膚表面に神経痛のような痛みが起こります。
痛みについては個人差が大きいですが、ピリピリやチクチクといった、針で刺されるような痛みであることが多いです。
ただ、違和感やかゆみを感じる程度の人もいれば、焼けるような痛みや電気が走るような痛みで夜も眠れないという人もいます。
神経痛は帯状疱疹が発症している間ずっと、もしくは発疹などが治っても長期に渡って残り続けることもあります。
<発疹・水ぶくれ>
その後、水ぶくれを伴う赤い発疹が帯状に現れます。
この水ぶくれにはウイルスがたくさん存在し、まだ水ぼうそうになったことない子供などが触れると感染してしまうため、注意が必要です。
<かさぶた>
やがて水ぶくれはかさぶたになり、痛みもそれと共に徐々に治ってきます。
かさぶたが剥がれた後、色素沈着や跡が残ってしまう場合もあります。
どこにできる?
症状は、主に体の左右どちらかに見られるのが特徴です。
腕や胸、背中など、多くは上半身にみられますが、顔や首などに現れることもあります。
鼻の周辺に症状が現れた場合は、目にも影響を与え、結膜炎などにより視力低下を引き起こす可能性があるため、特に注意が必要です。
いつまで続く?
症状は、最初に違和感や痛みの初期症状が現れてから、約3〜4週間続きます。
ただ、だいたい1〜2割の人には数ヶ月以上神経痛が残ると言われており、「帯状疱疹後神経痛(PHN)」と呼ばれます。
このPHNは高齢者や、症状が重かった人で起こりやすいと報告がありますが、早期の治療開始により、リスクが低減することも分かってきています。
帯状疱疹の治療
帯状疱疹に対する治療にあたっては、必ず医療機関を受診し、医師の指導のもとに行われる必要があります。 帯状疱疹へ向けた市販薬は販売されておらず、セルフケアでは対応できませんので注意しましょう。 そして、帯状疱疹の治療における大きなポイントは「早期の治療開始」です。 |
抗ウイルス薬
ウイルスのDNA複製を妨げることで、ヘルペスウイルスの増殖を防ぎます。
ただ、ウイルスが増殖しきった状態では効果は薄いとされているため、可能な限り発症してからすぐ(目安は72時間以内)に服用を開始するのが望ましいです。
服用期間については、基本は7日間で終了します。
鎮痛薬
辛い症状である神経痛を抑える目的で用いられます。
発症時の炎症を伴う痛みには、カロナールやロキソプロフェンなどの痛み止めが用いられることが多いでしょう。
長引くPHNに対しては、神経痛に効果が望まれる鎮痛薬が用いられます。
それらの特徴として、眠気の副作用が出ることが多いため、服用後のふらつきや車の運転などには注意が必要です。
塗り薬
帯状疱疹に対しては、飲み薬以外にも、塗り薬で対応していくことがあります。
帯状疱疹の症状が軽い場合は、飲み薬でなく、軟膏・クリームとして抗ウイルス薬を使用することがあります。
また、患部の赤みや炎症が強い時には、抗炎症作用のある軟膏やクリームが用いられる場合もあります。
神経ブロック
日常生活に支障が出るほどの強い痛みが続く場合には、神経ブロック療法という治療が行われることもあります。
神経ブロック療法とは、神経や神経の周辺に局所麻酔薬を注射することで、痛みの伝わる経路をブロックし、症状を和らげる方法です。
患部の血流を良くする作用もあるため、帯状疱疹による皮膚の赤みなどの症状にも効果を示します。
まとめ
帯状疱疹は、幼い頃にかかった水ぼうそうのウイルスが原因で引き起こされる疾患であり、発疹が引いた後も、辛い神経痛に長期間悩まされることがあります。
辛い痛みを長引かせないためにも、発症した際は「可能な限り早くに治療を開始すること」が重要になってきます。
主に腕や胸、背中などの上半身にできますが、顔や首を含め、全身に症状が出る可能性があるため、場所に限らず、普段は感じないような皮膚のチクチクとした違和感を覚えた際は、なるべく早く医療機関を受診するようにしましょう。
また高齢のご家族などがそういう症状を訴えられた際は、帯状疱疹である可能性も踏まえ、迅速に対応してあげられることが望ましいです。
現在ではリスクの高い50歳以上の人を対象に、帯状疱疹に対するワクチン接種も呼び掛けられています。
2016年から始まり、現段階では自費負担にはなりますが、予防法の選択肢が一つ増えました。
こうした予防や迅速な対処を行うことで、辛い帯状疱疹の症状に悩まされることがないようにしていきたいですね。
この記事がそのお役に立つことを祈っています。
<参考資料>
1)GSK 「帯状疱疹とワクチン接種に関する日本人の意識調査」
2)Shiraki K. et al.: Open Forum Infect Dis. 4(1), ofx007, 2017