正しく使えば怖くない!ステロイドの塗り薬でよくある疑問をQ&Aで解決!
湿疹やかぶれ、虫刺されなど、あらゆる皮膚トラブルに対して使用されるステロイドの塗り薬。
しかし、どこか怖いイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。
確かにステロイドはとても優れた作用がある一方、使い方を間違えれば思わぬ副作用が出てくる可能性もあります。
市販でもステロイドの塗り薬は購入できますが、ステロイドに関する知識を持たないまま、漫然と使用するのは危険と言えるでしょう。
この記事では、ステロイドの副作用や商品の選び方など、よく抱かれる疑問に対して、Q&A形式でお答えしていきます。
正しい知識を身につけ、ステロイドの力で皮膚トラブルを適切にケアしていきましょう。
ステロイドとは
Q.そもそもステロイドって?どんな効果があるの?
A.ステロイドは、もともと身体の中で作られるホルモンの一種。
アレルギーや炎症など、過剰な免疫反応を抑える作用があります。
飲み薬や注射剤など、幅広い剤形で用いられるステロイドですが、その中でも塗り薬のステロイドは以下のような効果があると言われています。
● 抗炎症作用・・・炎症反応を抑えます
● 細胞増殖抑制作用・・・炎症反応の原因となる細胞の増殖を抑えます
● 血管収縮作用・・・炎症部位の血管を収縮させ、皮膚の赤みを抑えます
● 免疫抑制作用・・・炎症やアレルギーを引き起こしている免疫の働きを抑えます
ステロイドの副作用について
Q.ステロイドって全身に副作用が出るんでしょう?
A.塗り薬のステロイドでは通常の使い方をしていれば、全身性の副作用はほとんど起こりません。
ステロイドは副作用が怖いというイメージを持たれやすいですが、そういうイメージは飲み薬のステロイドから来ていることも多いです。
確かに、内服や点滴でステロイドを摂取する場合は、さまざまな全身性の副作用が出てくる可能性があるので、医師が状態を見て、慎重に服用量を決めていく必要があります。
塗り薬においても、強いステロイドを長期に渡り使用し続けた場合、全身性の副作用が起きる可能性はゼロではありませんが、通常の使い方であればまず心配はいりません。
Q.ステロイドの塗り薬はどんな副作用があるの?
A.塗った場所における以下のような局所的な副作用が起こる可能性があります。
・毛が太くなる
・皮膚が薄くなる
・皮膚の毛細血管が拡張し、赤く見える
・色素が薄くなり、皮膚が白っぽくなる
・ニキビができやすくなる
・水虫やカンジダなどの真菌(カビ)感染を起こしやすくなる
ただ、局所的な副作用のほとんどは一過性であり、正しい治療により元に戻りますし、ステロイドの塗り薬を正しく使用すれば、ほとんど現れないと言われています。
しかし、正常な皮膚に使ったり、症状がなくなった後もダラダラ使用し続けたりしていると、こういった副作用が出てくることがあります。
ですので、ステロイドは怖いからと言って、弱いステロイドを長期で使用することは避けましょう。
Q.ステロイドを使用すると皮膚が黒ずむって本当?
A.ステロイドを使用すると皮膚が黒くなるという副作用は起こらないと医学的に証明されています。
むしろステロイドの副作用としては、皮膚の色素が抜けて白っぽくなることの方が報告されています。
ただ、湿疹などの炎症が治まってきたときに色素沈着が起こることがあり、その影響により皮膚が茶色や黒っぽく変化することがあります。
傷がかさぶたになった後に少し茶色くなる現象と同じことですので、特別ステロイドを使った後だけに起こるものではありません。
ステロイドの使い方について
Q.ステロイドには強さがあるって聞くけど?市販で購入可能なステロイドの強さは?
A.ステロイドの強さは5段階に分類されます。
1. 最も強い(strongest)
2. とても強い(very strong)
3. 強い(strong)
4. 普通(medium)
5. 弱い(weak)
これらのうち、効果の強い「strongest」と「very strong」は医療用医薬品でのみ使用されます。
市販薬で購入可能な強さは、強い方から3段階「strong」「medium」「weak」のものに限られています。
市販薬で使われるステロイド成分一覧を作成しました。
成分名称 | 強さ |
ベタメタゾン吉草酸エステル | 強い(strong) |
フルオシノロンアセトニド | 強い(strong) |
プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル | 普通(medium) |
ヒドロコルチゾン酪酸エステル | 普通(medium) |
コルチゾン酪酸エステル | 普通(medium) |
デキサメタゾン | 普通(medium) |
デキサメタゾン酢酸エステル | 弱い(weak) |
ヒドロコルチゾン酢酸エステル | 弱い(weak) |
プレドニゾロン酢酸エステル | 弱い(weak) |
プレドニゾロン | 弱い(weak) |
ヒドロコルチゾン | 弱い(weak) |
例えば、市販で最も強いランクの「strong」には以下のような商品があります。
フルコートf
有効成分:フルオシノロンアセトニド、フラジオマイシン硫酸塩
特徴:抗生物質のフラジオマイシンが加わることで、化膿を伴う湿疹やかぶれ、ただれなどにも効果が期待できます。
リンデロンVsクリーム
有効成分:ベタメタゾン吉草酸エステル
特徴:軟膏、クリーム、ローションの3タイプが販売されていますので、使用感や塗る部位によって商品が選択できます。
特にローションタイプの市販ステロイドはあまり販売されていないため、頭皮などの湿疹におすすめです。
Q.どの強さのステロイドを使えばいいの?使い分けは?
A.身体の部位や年齢を使い分けの目安に。
ステロイドは、身体の部位によって吸収率が大きく異なることが知られています。
以下の表は、腕の内側を1とした場合、各部位の吸収のしやすさを倍率で表したものです。
身体の部位 | 吸収のしやすさ |
---|---|
頭皮 | 3.5 |
頬 | 13.0 |
前頭 | 6.0 |
腋窩(えきか) | 3.6 |
背面 | 1.7 |
前腕(外側) | 1.1 |
前腕(内側) | 1.0(基準) |
陰嚢 | 42.0 |
手掌 | 0.83 |
足底 | 0.14 |
足首 | 0.42 |
参考:Feldmann RJ,et al:J Invest Dermatol 1967:48(2):181-183
身体の異なる場所で同じような症状が現れても、こちらに表した吸収率を踏まえて、ステロイドのランクを決めることが重要です。
吸収率が高い部位ほど、長期に渡って使用した場合に局所性の副作用が出やすくなると言われています。
顔や首などは吸収率が高く、陰嚢に関しては前腕に比べて42倍も高くなっているため、こういった部位に使用する場合は、なるべくmediumやweakランクのステロイドを使うようにしましょう。
また、赤ちゃんや子供は皮膚のバリア機能が未熟であるため、ステロイドの吸収率も高いと言われています。
大人が使用するものに比べて、1〜2段階弱いランクの使用を心がけてください。
赤ちゃんでも使用できるweakランクのステロイドには以下のようなものが販売されています。
コートf MD軟膏
有効成分:プレドニゾロン、グリチルレチン酸
特徴:赤ちゃんにも使用できる一番弱いランクのステロイドを主成分とする軟膏です。
グリチルレチン酸は炎症を抑える働きのサポートを行います。
Q.ステロイドの使用期間の目安は?
A.市販薬でのセルフケアの目安期間は「5〜6日」
ステロイドはなるべく長期間使用し続けないようにしたいものの、アトピー性皮膚炎など必要な場合には数ヶ月や数年の単位で使用することもあります。
そういった場合を含め、長い期間ステロイドを使用するにあたっては、必ず医師の指示に従う必要があるため、1週間塗っても症状が回復しない場合は、市販薬を使い続けず、必ず医療機関を受診しましょう。
購入時の選び方について
Q.ステロイドの塗り薬に一緒に配合されている成分の役割は?
A.かゆみ止めや抗生物質が配合されていることが多いです。
市販のステロイドの塗り薬は、補助成分の有無や種類によって、3パターンで販売されていることが多いです。
オススメの症状や商品例を以下の表にまとめましたので、商品選びの際は参考になさってください。
種類 | こんな症状に | 商品例 | ||
---|---|---|---|---|
商品名 | ステロイド成分 (強さ) |
補助成分 | ||
ステロイド単剤 | 皮膚の炎症を純粋に抑えたいとき | ベトネベートクリームS | ベタメタゾン吉草酸エステル (strong) |
なし |
ステロイド +かゆみ止め |
かゆみが強い炎症に | ムヒアルファEX | プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル (medium) |
ジフェンヒドラミン、クロタミトンなど |
ステロイド +抗生物質 |
細菌に感染している可能性があるとき | クロマイ-P軟膏AS | プレドニゾロン (weak) |
クロラムフェニコール、フラジオマイシン硫酸塩 |
Q.アンテドラッグステロイドってなに?
A.アンテドラッグは、特定の部位でのみ作用を発揮するように作られた製剤という意味です。
ステロイドの塗り薬においては、皮膚で抗炎症効果をしっかり発揮した後、速やかに代謝されることで、全身に回らないよう工夫されています。
代表的なものに、mediumクラスのプレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステルが挙げられます。
ただ、元からステロイドの塗り薬においては長期に渡って大量に使用したりしない限り、全身性の副作用は起きにくいとされています。
市販薬で使用する5〜6日の間では、ほとんど影響は変わらないと言えますが、より全身への影響を気にされる方はアンテドラッグステロイドを選ばれると良いでしょう。
まとめ
ステロイドの塗り薬に関してよく抱かれがちな副作用や使い方への疑問に対して、お答えさせていただきました。
ステロイドは「適切な強さのものを適切な期間使用する」というポイントを守れば、過度に副作用に怯えずとも、優れた効果が期待できます。
市販薬でケアするときは、漫然と使用せず、5〜6日で効果が見られない、また、ひどくなっていく場合には、必ず皮膚科を受診するようにしましょう。
ステロイドの塗り薬を使用される際に、この記事がお役に立てることを祈っています。