いざというときのために知っておこう!命に関わるアナフィラキシーショックとは?
アナフィラキシーショックという言葉をご存知でしょうか。
食物アレルギーをもつ人が、原因となる食物を食べてしまった時に起こったりするイメージを持つ方も多いと思います。
ただ、アナフィラキシーショックは食物だけでなく、ハチや医薬品などさまざまな原因で起こるため、誰しも起こりうる可能性があります。
アナフィラキシーショックになった時は迅速な対応が鍵となるため、正しい知識を持って、不測の事態に備えましょう。
アナフィラキシーってなに?
アナフィラキシーは「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応」と定義される、重篤なアレルギー反応です。
ここで言う複数臓器とは、皮膚や粘膜、呼吸器、消化器、循環器などが挙げられ、特にじんましんなどの皮膚症状は9割以上のケースで出現すると言われています。
アナフィラキシーの中でも特に、血圧低下や意識障害を伴う場合をアナフィラキシーショックといい、命に関わる状態であるため、可能な限り迅速な治療が求められます。
どういう状態?
なにかしらの刺激を体がアレルゲン(異物)と認識し、アレルギー反応を起こすことで、ヒスタミンなどの化学物質が大量に放出されます。
これらの化学物質が、血管の拡張作用により急激な血圧低下などを起こしたり、じんましんを誘発させたりと、全身のアレルギー症状を引き起こします。
ハチなどは、一度刺されることで、体の中でハチ毒に対する抗体ができるため、2回目以降に刺された際に、アレルギー反応を起こす可能性が高くなります。
どんな症状が出る?
・皮膚・粘膜
じんましん、湿疹、口の中や唇が赤く腫れる、目やまぶたの充血など
・呼吸器
呼吸困難、声がかすれる、強い咳が持続するなど
・消化器
強い吐き気、下痢、腹痛など
・循環器・神経
失禁、血圧低下、顔面蒼白、意識混濁など
どれくらいの時間で現れる?
アナフィラキシーは、原因となる物質との接触後、数分〜1時間以内に現れる割合が高いです。
この時、重症になるほど発症までの時間が早いとも言われます。
原因によっても、発現までの時間に差があり、食物が原因のものは30分ほどで発現することが多いですが、ハチ刺されによるものはほとんどで15分以内に出現しています。
アナフィラキシーに対する治療
アナフィラキシーに対しては、アドレナリンの注射が第一選択です。
アドレナリンは過剰放出されたヒスタミンなどの化学物質を抑える作用や、皮膚・粘膜の血管及び気道平滑筋に直接作用して、それぞれの症状を緩和させる作用があります。
アナフィラキシーショックが起きた際は、いかに迅速にアドレナリンの投与を行えるかが重要であると言えるでしょう。
対策として、過去にアナフィラキシーを起こしたことのある人に対してはエピペン®︎というアドレナリンの自己注射が処方されることもあります。
また、アドレナリン以外にも、医療機関では必要に応じて、呼吸困難があれば気管支拡張剤や酸素の投与、じんましんなどの皮膚症状には抗ヒスタミン薬など、その他の投薬や処置も行います。
自己判断での投与は難しく、かつ危険も伴うため、ためらわずに救急車を要請してください。
アナフィラキシーショックを起こさないために知っておくこと
アナフィラキシーショックを起こす原因は?
・食物(約35%)
発生頻度順に、①卵 ②牛乳 ③小麦 ④そば ⑤ピーナッツ
・医薬品(約20%)
解熱鎮痛薬や抗生物質、麻酔薬、造影剤など
・虫(約20%)
主にハチ
・その他・不明(約25%)
ラテックス(ゴム)など
食物、医薬品、ハチがアナフィラキシーの主な原因ですが、国内では食物が最も多く約35%を占めています。 1)
その中でも卵と牛乳が約半数を占め、次いで小麦、そば、ピーナッツなどが続きます。
また、医薬品とハチによるものはそれぞれ20%と、発生頻度は食物より低くなっていますが、アナフィラキシーショックで死亡に至った人の原因内訳としては、食物に比べて医薬品・ハチの割合が圧倒的に高いという報告もあります。 2)
アナフィラキシーショックを起こす可能性のある人は?
● 過去にアナフィラキシーショックを起こしたことのある人
● 乳幼児
● 喘息を持っている人
● ハチに刺されたことのある人
乳児期は、食物アレルギーを起こす抗体を作りやすいのに対して、アレルギーを防ぐ能力や、消化能力が弱いため、食物アレルギー症状を起こしやすい時期です。
異常を自分で伝えることも難しいため、特に新しい食べ物を摂取する際は慎重に行う方がいいでしょう。
また、喘息を持っている人は重症化しやすいと言われているため、注意が必要です。
ハチに刺されたことのある人は、体内で抗体が作られてアナフィラキシーを起こす可能性が上がっているため、夏場に不用意に山に入らないなど、身を守る行動を心がけましょう。
対策は?
上記に挙げたようなアレルギーの原因となるアレルゲンを把握しておくことが大切です。
特に、過去にアナフィラキシーショックを起こしたことのある人は、なにがアレルゲンとなったかをしっかりと把握し、その要因に接触しないよう注意を払いましょう。
ただ、気をつけていても予期せぬ形でアレルゲンを摂取してしまうこともあるでしょう。
そのため、万が一の時に備えて、エピペン®︎ を事前に処方してもらうことも有効な対策です。
家庭内ではもちろん、保育園や学校での給食時に現れる可能性があるため、エピペン®︎を2本処方してもらうケースも多く見られます。
不安がある方は医療機関に相談してみましょう。
アナフィラキシーショックだと疑われるときは?
救急車を呼ぶ目安は?
アナフィラキシーと思われる症状が出た場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
目安として、皮膚症状に合わせて、呼吸困難や繰り返す嘔吐、意識混濁などの症状が出現した場合は、すぐに119番をして、指示を仰ぎましょう。
一回吐いただけや、じんましんなど皮膚症状のみの出現であれば、様子見でそのまま治ってくることもありますが、以前に重篤なアナフィラキシーショックを起こしたことのある人は、軽い症状でもアナフィラキシーの前兆の可能性があります。
手元にある場合はエピペン®︎の自己注射を使用し、かつ救急車を呼ぶようにしましょう。
現場での対応は?
救急車が来るまでの間は、なるべく立ったり動いたりせず、できれば横になって安静に待機します。
この時、ぐったりしていたり、意識朦朧としている場合は血圧が低下している可能性が高いため、足を少し上げた状態にしておくことが望ましいです。
また、嘔吐がある場合は仰向けにすると嘔吐物が喉に詰まる可能性があるため、横向きに寝かせておくと良いでしょう。
ただ、ハチに刺された場合には、毒液のフェロモンで、さらに多数のハチを集め、攻撃を受ける可能性があると言われているため、安静にするのと同時に、速やかにその場から離れることも重要となってきます。
まとめ
アナフィラキシーは食物や医薬品、ハチが原因で起こる全身性のアレルギー反応です。
その中でも特に命に関わるものをアナフィラキシーショックと言いますが、万が一発生してしまった場合は、アドレナリン投与を含めた、迅速な救命対応が何よりも重要となります。
アナフィラキシーショックを疑う全身の症状が現れたら、ためらわず119番にかけ、救急車の要請を相談してください。
過去にアナフィラキシーを起こしたことのある人など、アナフィラキシーショックを起こす可能性が高い方は、医療機関からエピペン®︎というアドレナリンの自己注射を処方してもらうこともできます。
アナフィラキシーショックを起こさないよう、日頃から対策をしておくと安心ですね。
<参考資料>
1)Golden, D.B.:Novartis Found Symp 257:101, 2004
2) Akiyama, H., Imai, T. and Ebisawa, M.:“Japan Food Allergen Labeling Regulation-History and Evaluation” Advances in Food and Nutrition Research Taylor, S.L. editor Vol.62 Academic Press:139, 2011より