インフルエンザに市販薬は効果ある?安全な使い方と選び方を薬剤師が解説
インフルエンザの高熱や関節痛が辛いとき、市販薬で対処したいと考える方も多いでしょう。
しかし、市販薬の中にはインフルエンザ時に使用を避けるべき成分も含まれています。
本記事では、インフルエンザ時に安心して使える市販薬の選び方や、安全な使用方法を薬剤師の視点で解説します。
市販薬はインフルエンザに効くの?その実態を徹底解説
突然の高熱、こんなとき市販薬は使える?
突然、38度を超える高熱が出て全身がダルくなるインフルエンザ。
病院に行きたい気持ちはあっても、体が動かない……。
「市販薬で何とかなる?」と考えたことがある人は少なくないはずです。
しかし、インフルエンザと風邪は似ているようでまったく異なる病気です。
この記事では、市販薬の役割やリスク、安全な使い方について徹底的に解説します。
正しい知識を持つことで、不安や迷いを解消しましょう。
市販薬の役割は「症状を和らげる」だけ
まず最初に知っておきたいのは、市販薬ができることは 「対症療法」 だけだという点です。
市販薬はインフルエンザウイルスを直接抑えることはできません。
ウイルスそのものを不活化するには、病院で処方される抗ウイルス薬(タミフル、リレンザなど)が必要です。
では、市販薬は役に立たないのでしょうか?
そうではありません。
インフルエンザの症状を一時的に和らげ、体力を温存する助けになることがあります。
例えば、喉の痛みや咳を抑える成分を含む薬は、つらい時間を乗り越えるためのサポートとして有効です。
ただし、ここで重要なのは 市販薬の使い方を間違えないこと です。
間違った薬を選んでしまうと、思わぬリスクを招くことがあります。
アスピリンやジクロフェナクには注意!脳症のリスクも
市販薬を選ぶとき、特に注意したいのが 解熱成分 です。
インフルエンザ時に使用を避けるべき成分として、以下の3つが挙げられます。
・アスピリン(アセチルサリチル酸)
・ジクロフェナクナトリウム
・メフェナム酸
これらの成分は、インフルエンザ脳症やライ症候群などのリスクを高める可能性があります。
特にアスピリンは、小児が使用すると深刻なライ症候群を引き起こす危険性があるため、15歳未満には使用禁止とされています。
厚生労働省の指針でも、インフルエンザ時にはこれらの成分が含まれる薬を避けるよう明確に示されています。
体力の低下している状態で間違った薬を使用すると、重篤化するリスクが高まるため注意が必要です。
市販薬を使うなら安全性の確認が必須!
市販薬は、あくまで症状を一時的に緩和するための対症療法の一環です。
そのため、使用する場合は 添付文書を必ず確認し、成分に注意すること が大切です。
また、インフルエンザが疑われる場合は、安易に市販薬に頼らず、可能であれば早めに医療機関を受診しましょう。
特に高熱や倦怠感が続く場合、放置すると合併症や重篤化のリスクがあります。
「市販薬で何とかなる」と思い込まず、正しい情報をもとに行動することが健康への近道です!
インフルエンザに安心な市販薬の選び方3つのポイント
風邪薬選び、どうすれば安心?
ドラッグストアで見かける数多くの風邪薬。
「どれを選べばいいんだろう?」と迷ったことはありませんか?
特にインフルエンザ時は、症状を和らげたい気持ちから市販薬に頼りたくなるものです。
しかし、第一章でも触れた通り、解熱剤の成分によっては インフルエンザ脳症 のリスクを高めるものもあります。
選び方を間違えないためには、知識を持つことが何より大切です。
本章では、インフルエンザ時に安心して使える市販薬を選ぶための3つのポイントをご紹介します。
ポイント1:インフルエンザ脳症のリスクが少ない「アセトアミノフェン」を選ぶ
インフルエンザ時に使用できる安全な解熱剤として、厚生労働省も推奨しているのが アセトアミノフェン です。
その最大の理由は、インフルエンザ脳症のリスクが低い という点にあります。
第一章で述べたように、アスピリンやジクロフェナクなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、インフルエンザ脳症やライ症候群のリスクを高める可能性があるため、使用は慎重さが求められます。
一方で、アセトアミノフェンはこれらのリスクが少なく、安心して使用できる解熱成分として広く認識されています。
さらに、アセトアミノフェンには以下のような特徴もあり、インフルエンザ時に適していると言えます。
・胃腸への負担が少ない
他のNSAIDsに比べて胃粘膜への影響が少なく、胃腸が弱い方でも使いやすい。
・子どもや妊婦にも使用可能
小児用製品に広く採用されており、乳幼児や妊婦にも比較的安全に使える成分。
代表的な市販薬には、「カロナールA」や「タイレノールA」があります。
どちらもアセトアミノフェンを主成分としており、インフルエンザ時に安心して使用できる製品です。
ポイント2:市販薬選びで避けたい成分に注意する
市販薬を選ぶ際、避けるべき成分を把握しておくことが重要です。
以下の成分が含まれる薬は、インフルエンザ時には要注意です。
・アスピリン(アセチルサリチル酸)
特に15歳未満の小児に使用すると、ライ症候群を引き起こす可能性があります。
・ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸
一部のNSAIDsであり、インフルエンザ脳症の発症リスクが指摘されています。
・複合成分製剤に注意
抗ヒスタミン剤やカフェインを含む製品は、インフルエンザ時の体調に負担をかける場合があります。
添付文書や成分表を確認し、不安があれば薬剤師に相談しましょう。
間違った薬を選ぶことで、症状が悪化するリスクもあります。
ポイント3:特別な状況に応じた薬の選び方
薬を使用する際、特定の状況に応じた選び方も重要です。
・子ども向け
小児用製品には、アセトアミノフェンを主成分とする「小児用バファリンチュアブル」や「小児用バファリンCII」が適しています。
用法用量を厳守し、症状が改善しない場合は速やかに医療機関を受診してください。
・妊婦や授乳中の方
妊婦が使用可能な市販薬は限られています。自己判断で薬を選ばず、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
・高齢者向け
胃腸が敏感な高齢者には、アセトアミノフェン単一成分の製品がおすすめです。少量から試し、必要に応じて病院で処方薬を受けることを検討してください。
市販薬選びは慎重に、迷ったら薬剤師へ相談を
インフルエンザ時に市販薬を選ぶ際には、次の3点を意識しましょう。
1.アセトアミノフェンを主成分とする薬を選ぶ。
2.危険な成分が含まれた薬は避ける。
3.年齢や状況に応じた薬を選ぶ。
薬選びに迷ったときは、薬剤師に相談するのが一番安心です。
適切な薬を使い、インフルエンザのつらい症状を安全に乗り切りましょう!
市販薬を使う際に知っておきたい5つの注意点
市販薬、飲む前にちょっと待って!
「とりあえず薬を飲めば大丈夫」と思いがちですが、市販薬には正しい使い方があります。
使い方を誤ると、症状が悪化したり副作用を引き起こすことも。
本章では、市販薬を使用する前に確認しておきたい5つの注意点を詳しく解説します。
これを知っておけば、安全に市販薬を活用できます!
注意点1:用法用量を守ることの重要性
市販薬は、正しい量を守ってこそ効果を発揮します。
「熱が引かないから」といって、1回の服用量を増やしたり、服用間隔を短くするのは危険です。
例えば、解熱鎮痛薬を過剰に摂取すると、胃腸障害や肝機能障害といった副作用のリスクが跳ね上がることがあります。
特にアセトアミノフェンは安全性が高い成分とされていますが、それでも過剰摂取は肝臓に負担をかける可能性があります。
服用時には必ず添付文書を確認し、用法用量を守ることが最も大切です。
注意点2:飲酒との相互作用や食後服用の重要性
飲酒と市販薬の相性が悪いことをご存知ですか?
一部の解熱鎮痛薬には、飲酒と組み合わせると鎮静作用が強くなり、意識が朦朧とするリスクがあります。
また、空腹時の服用も避けましょう。
空腹状態で薬を飲むと、胃粘膜を刺激し、胃痛や胃もたれの原因となることがあります。
市販薬を使用する際は、できるだけ食後に服用し、飲酒は控えることを徹底してください。
注意点3:効果がない場合はすぐに医療機関へ
市販薬は一時的に症状を和らげるためのもので、根本治療を目的としていません。
そのため、2日以上使用しても症状が改善しない場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
特にインフルエンザの場合、抗ウイルス薬が必要になるケースが多いため、市販薬で対処し続けるのは危険です。
早めに医師の診断を受けることで、重症化を防ぐことができます。
注意点4:市販薬と処方薬の併用時の注意点
処方薬と市販薬を併用する際には、成分の重複に注意が必要です。
例えば、処方薬にも市販薬にもアセトアミノフェンが含まれている場合、無意識のうちに過剰摂取となり、副作用のリスクが高まります。
特に風邪薬や解熱鎮痛薬は成分が似ていることが多いため、併用する際は必ず医師や薬剤師に相談してください。
注意点5:購入前に薬剤師に相談することの重要性
市販薬を購入する際は、必ず薬剤師に相談することを心がけましょう。
薬剤師に相談することで、自分の症状に合った薬を安全に選べるだけでなく、不安な点を解消することもできます。
また、妊娠中や授乳中、小児用の薬を選ぶ場合など、特別な配慮が必要なケースでも、薬剤師から適切なアドバイスを受けられます。
市販薬は一時的な手段、迷ったら薬剤師へ!
市販薬は一時的に症状を緩和するための手段に過ぎません。
症状が続く場合や悪化した場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。
また、使用する前に注意点を確認し、薬剤師に相談することで、安全性を確保することができます。
正しい知識と選択で、インフルエンザの症状を乗り切りましょう!
まとめ
ポイント1:インフルエンザ脳症のリスクが少ない「アセトアミノフェン」を選ぶ
・胃腸への負担が少なく、子どもや妊婦でも使用可能。
・代表的な市販薬は「カロナールA」や「タイレノールA」。
ポイント2:市販薬選びで避けたい成分に注意する
・アスピリンやジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸などは避ける。
・複合成分製剤(抗ヒスタミン剤やカフェインを含む薬)も注意が必要。
ポイント3:特別な状況に応じた薬の選び方
・子ども向け:アセトアミノフェン主成分の小児用薬(例:「小児用バファリン」)。
・妊婦や高齢者:自己判断せず薬剤師や医師に相談を。
インフルエンザ時の市販薬選びは、安全性が最優先であることがよくわかります。
添付文書を読む習慣を持つことや、疑問があれば薬剤師に相談する姿勢が大切です。
適切な薬選びで体調をしっかり管理しましょう!
《参考資料》
・市販の解熱鎮痛薬の選び方 | 厚生労働省HP
・カロナールA | 製品情報
・タイレノールA | 製品情報
・小児用バファリンCII | 製品情報
・小児用バファリンチュアブル | 製品情報