やけど
熱いものを触ってしまったり、お湯がかかってしまったりと、ちょっとした「やけど」を作ってしまった経験、誰でも1度くらいはあるでしょう。
水ぶくれは潰さない方がよい、消毒はした方がよいなど、さまざまな情報が溢れていますが、やけどの正しい対処法をご存じですか?今回は、やけどの正しい対処方法をお伝えするとともに、軽いやけどに使用できる市販薬をご紹介します。
やけどの分類
やけどは、熱によって皮膚がダメージを受けた状態のことです。自分で処置できるような表面だけのやけどから、皮膚の深い部分までダメージを受けたものまで4段階に分けられます。夏に外遊びをして真っ赤になったひどい日焼けは、以下にお示しする「I度」のやけどにあたります。熱いトースターに触れて小さな水ぶくれができた場合は、「II度」が多いでしょう。
深度分類 | ダメージ部位 | 見た目・症状 |
I度 | 表皮のみ | 皮膚の赤み、痛み、乾燥 |
浅層II度 | 真皮浅層まで | 皮膚の赤み、強い痛み、赤い水ぶくれ |
深層II度 | 真皮深層まで | 皮膚の赤み(紫〜白っぽい場合もある)、軽度の痛み、白い水ぶくれ |
III度 | 表皮と真皮全体、皮下組織 | 皮膚は黒〜褐色(白っぽい場合もある)、水ぶくれなし、痛みなし、乾燥、皮膚の硬化 |
やけどの深さは、触れたものの温度と、触れた時間の長さによって変わります。また、当日はやけどの深さが見た目ではよくわからない場合も少なくありません。
やけどができた当日は、赤い水ぶくれだったので浅層II度だと思っていても、数日すると実際には深層II度やIII度だったということもよくあります。正しく判断するためにも、皮膚科や形成外科などを受診することが大切です。
やけどの対処法とは?
やけどを作ってしまったとき、どのように対処したらよいでしょうか。
何よりも先に冷やす
まずは、流水でしっかりと冷やすことが何よりも大切です。冷やすことで、やけどの広がりや痛みを抑えることができます。少なくとも15分程、できれば30分流水でしっかりと冷やしてください。
衣服の上からお湯や油などがかかって火傷になった場合、衣服を脱ぐよりも冷やすことを優先します。脱ぐまでの時間でやけどが深くなったり、脱ぐときに熱い衣服があちこちに触れて、やけどの範囲が広がったりする可能性があるためです。
深いやけどの場合、のちのち腫れてきますので、腕時計や指輪などのアクセサリーは早めに外しておきましょう。
早めに受診する
流水で冷やした後は、保冷剤などで冷やしながら皮膚科や形成外科を受診します。(保冷剤をあてる場合は、直接皮膚に当てず、清潔なタオルなどで包んでください。)
小さく浅い、I度までの軽いやけどの場合は、医師の指示を受けて自宅で処置することも可能です。きれいに、しっかりと治したい場合や、やけどが少し深い場合には、毎日受診した方がよいこともあります。細菌が入り込むとやけどが深くなったり治りにくくなったりするため、医師の指示を無視した自己流の処置はしないようにしましょう。
特に注意してもらいたいのが、ホッカイロや湯たんぽによる「低温やけど」。お子さんや高齢者は皮膚が弱く、低温やけどを起こしやすいです。低温やけどは、45〜55度くらいの物が皮膚に長時間触れるとできることがあります。見た目以上に深いやけどになっていることが多いので、すぐに受診するのがよいでしょう。
I度までのやけどなら市販薬対応も
それでは、自宅でできるやけどの対処法をお伝えします。水ぶくれができていない、少しヒリヒリする程度の「I度」までのやけどであれば、市販薬で対応できます。冷やすなどの応急処置ができていれば、その後の処置もそれほど必要ではありません。
ですが、日にちが経って水ぶくれができてきた場合には、念のため医療機関を受診してください。水ぶくれは、破れてしまうと感染の危険性があるので、むやみに触らないのが吉ですよ。
消毒をやりすぎない
基本的に、I度のやけどには頻繁な消毒は必要ありません。やけどをした皮膚の表面には、傷口を治すためのタンパク質などが自然と集まってきます。消毒をしすぎることによって必要な成分が洗い流されてしまったり、消毒液の刺激で皮膚がダメージを受けてしまったりと、悪影響もあるのです。
水ぶくれのない軽いやけどであれば、ガーゼ交換の際に石鹸で優しく流す程度でよいでしょう。医師から消毒の指示があれば、以下にご紹介するような殺菌消毒成分・抗菌成分が売られていますので、使用してください。
I度までのやけどは、たいていの場合、1週間程度できれいに治ります。
<殺菌消毒成分>
ポビドンヨード、クロルヘキシジングルコン酸塩、イソプロピルメチルフェノール など
・やけどの消毒には手指消毒用注のものは使用できません。
・ポビドンヨードは、耳や目に入ると悪影響があるため、顔には使用を避けましょう。
<抗菌成分>
コリスチン硫酸塩、バシトラシン など
ドルマイシン軟膏
2種の抗菌薬、コリスチン、バシトラシンがやけど等の化膿予防、治療に効果を発揮します。
軟膏での保護
やけどは、時間が経つと痒みが出てくることが多いです。こする・掻くなど、皮膚に刺激を与えすぎないよう、軟膏で保護してからガーゼ等で覆うとよいでしょう。
炎症を抑えるステロイド成分や、痛みや痒みを抑える成分の含まれる軟膏がおすすめです。ステロイドの軟膏は、あまり長期間使わないことが推奨されています。やけどができて3日程度にとどめましょう。
とくに症状がなく、シンプルに保護したい場合は、ワセリンでもかまいません。
<炎症を抑える成分(ステロイド成分)>
ヒドロコルチゾンなど
コーチゾン雪の元
ステロイド成分、ヒドロコルチゾン酢酸エステルや消炎作用のある酸化亜鉛が皮膚の炎症を鎮めます。また、痒み止め成分、ジフェンヒドラミンが配合されているので、虫刺され、あせも等のかゆみを伴う皮膚疾患にも使用できます。
<痛みを抑える成分(局所麻酔成分)>
ジブカイン塩酸塩、アミノ安息香酸エチル など
メモA
痛みを鎮める成分ジブカインや殺菌消毒成分クロルヘキシジングルコン酸塩を配合した伸びのよい軟膏です。軽いやけどの他、切り傷、すり傷にも使用できます。ケガ、やけどに対する家庭の常備薬としておすすめです。
<痒み止め成分>
ジフェンヒドラミン、dl-カンフル、l-メントール など
漢方の軟膏も
日本生まれの「紫雲膏」という軟膏も、軽いやけどに有効です。紫雲膏は、やけど以外にも切り傷やひび割れにも使われるため、置き薬として役立ちます。水ぶくれはないけれど、ヒリヒリと炎症を起こしているようなやけどにおすすめです。
クラシエ紫雲膏
漢方で有名な「クラシエ」が販売している紫雲膏です。
まとめ
今回は、やけどの種類と対処法、そして自宅で処置する場合に使用できる市販薬についてご紹介しました。
やけどは、深さと範囲によって重症度が決まります。当日はさほど症状がひどくないように見えても、翌日になって悪化することがあるため、軽いように思えたとしても出来るだけ皮膚科や形成外科などを受診しましょう。
水ぶくれがない、軽いやけどであれば、市販薬を使って自宅で対処も可能です。今回ご紹介した内容を参考にしてみてください。
<参考資料>
日本皮膚科学会. 皮膚科Q&A