やけどのあとの皮ふのしこり
うっかりやけどをしてしまった後、皮膚にあとが残って悩んでいませんか?少しずつ治っていく場合もありますが、あとやしこりが一生残ってしまうケースもあります。やけどのあとは時間が経つと治りにくくなるため、気になる場合は早めに対処することが大切です。
では、どうすればやけどのあとを目立たなくできるのでしょうか。今回は、やけどのあとに使える市販薬の種類や選び方、おすすめの製品について紹介します。
やけどの種類
高温の物質が触れることでやけどすることは知られていますが、低温(44~50℃)のものでもやけどすることがあります。いわゆる、低温やけどです。
また、化学物質によってやけどする例もあります。軽いやけどなら命に関わることはないものの、範囲が広く重症のものだと命に直結することもある侮れないものです。
Ⅰ度のやけど
やけどは皮膚のどの程度まで深くダメージを受けているかによって、大きく3つに分類されます。そのうち、もっとも程度が軽いものがⅠ度のやけどです。
皮膚のもっとも表面にある表皮のみがダメージを受けており、日焼けしたときと同じくらいの痛みしかありません。とくに治療をしなくてもあとが残る心配はまずないでしょう。
Ⅱ度のやけど
表皮の下にある真皮までダメージが進んだ状態です。水ぶくれができたり、ヒリヒリとした痛みを伴ったりします。やけどの深さによって、さらに浅達性Ⅱ度と深達性Ⅱ度にわけられることが特徴です。
浅達性Ⅱ度の場合は適切な処置を行うことであとが残るリスクはかなり減らせますが、深達性Ⅱ度は適切に処置をしたとしてもあとやひきつれが起こる可能性が高くなります。
Ⅲ度のやけど
Ⅲ度になると、神経まで損傷されているためあまり痛みは感じません。やけどした部位が白くなったり、ときには焼けて黒くなってしまったりすることもあります。あとやひきつれが残るだけでなく体の機能に影響が出ることもあるため、医療機関での一刻も早い対処が必要です。
やけどあとの治療の基本は医療機関
やけどのあとが気になる場合は、皮膚科や形成外科などを受診することが基本となります。とくに深達性Ⅱ度以上のやけどをした場合は、治るまでに時間がかかり、あとも残りやすいため適切な処置を行わなければなりません。
もっとも理想的なのは、やけどをしたその日のうちになるべく早く医療機関を受診することです。もしもすでにあとが残っている場合は、医療機関を受診することで専用の貼り薬や塗り薬、包帯やサポーターなどでの処置を行ってもらえます。
市販薬でやけどのあとを治すのも悪くはありませんが、医療機関と比べると時間がかかりやすく、また、あとになってから1~2年以上経っているものには効果がない場合もあるので注意しましょう。
やけどのあとの治療ができる市販薬は?
浅めのやけどのあとであれば、ヘパリン類似物質を含む市販薬で治療ができます。ヘパリン類似物質には血が固まるのを送らせる働きがあるため、やけどの傷口が完全に塞がってから使用が可能です。
効果が出るまでには個人差があり、人によっては1か月ほど使用してあとが薄くなってきたと実感できるようになります。
ヘパリン類似物質の効果
ヘパリン類似物質がやけどのあとに効くのは、皮膚の新陳代謝を促進して皮膚を修復する働きがあるためです。また、血行を促進したり炎症を抑えたりする働きもあります。
ヘパリン類似物質のその他の効果
ヘパリン類似物質は、保湿効果にも優れていることが特徴です。医療機関で処方されるヒルドイドをはじめ、市販にも保湿を目的とした製品がいくつもあります。
保湿剤として販売されているヘパリン類似物質を含有した製品も、パッケージの効能効果を見てみると「きず・やけどのあと」などの文言が書いてある場合がほとんどです。
ヘパリン類似物質を含む製品の選び方
ヘパリン類似物質を含む製品は、どれも同じに見えるかもしれません。しかし、製品によってヘパリン類似物質の濃度が違ったり、配合されている成分に違いがあったりします。
製品の分類で選ぶ
やけどのあとにヘパリン類似物質を使用する場合は、必ず「医薬品」として販売されているものを選びましょう。「医薬部外品」や「化粧品」として販売されているものは、製品中にヘパリン類似物質がどれくらい配合されているかがわかりません。そもそも化粧品にいたっては、何かを治療する効果はないので注意しましょう。
剤形で選ぶ
ヘパリン類似物質を含む製品には、クリーム、ジェル、ローションの3つのタイプがあります。どれを使っても効果に変わりはないので、自分が好みの使い心地のものを選んでみてください。
しっとりと保湿したい方はクリーム、さっぱりした使い心地が好みの方はジェル、化粧水のような感覚でさらっと使いたい方にはローションがおすすめです。
配合されている補助成分で選ぶ
製品によっては、主成分のヘパリン類似物質以外に次のような補助成分も配合されているものがあります。
• アラントイン:皮膚を修復する
• グリチルリチン酸二カリウム:炎症を抑える
• ビタミンA油:新陳代謝を促進
より高い効果を期待する方は、これらの成分が配合されているものを選ぶとよいでしょう。
ヘパリン類似物質を含むオススメの市販薬
では、実際にどのような市販薬があるのか、ここでは代表的な3つの製品を紹介します。
アットノンEX
傷あと、やけどあとを治す市販薬としてもっともメジャーな製品です。主成分のヘパリン類似物質のほかに、アラントインやグリチルリチン二カリウムも配合されています。ジェルのほかにクリームやコンシーラータイプのものもあるので、使いやすいものを選んでみてください。
メンソレータムアトキュア
ヘパリン類似物質のほか、ビタミンA油も配合された製品です。乳状のローションになっているため、患部に馴染みやすい仕様になっています。
HPローション
ヘパリン類似物質のみが配合されたローションタイプの製品です。乾燥肌の方をターゲットとしたパッケージにはなっていますが、やけどのあとにも問題なく使用できます。
まとめ
やけどのあとは、ヘパリン類似物質が配合された医薬品を使用することで改善できます。ヘパリン類似物質は新陳代謝を促進し、皮膚を修復する働きがあるためやけどのあとを治すことができるのです。
Ⅰ度や浅達性Ⅱ度など、比較的軽めのやけどあとには効果がありますが、ダメージが深いあとには使用できません。あとが気になる場合は、皮膚科や形成外科を受診することで適切な治療を受けられます。あとになってから時間が経つと治りづらくなることもあるので、早めの受診を心がけましょう。
〈参考資料〉
・やけど Q3 – 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)
・昔できた、古い傷あと・やけどあとでも使用できますか? | よくあるご質問(製品Q&A) | 小林製薬株式会社