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お薬コラム
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更新日:2022/03/13
漢方薬の使い分けは?風邪症状に使う漢方は葛根湯だけじゃない!

風邪には葛根湯が良いと聞くけど、自分にあっているのか知りたい。
漢方薬って種類がたくさんあって、どれを使ったらいいのかわからない?

 

薬局やドラッグストアなどで棚を見ると、風邪に対する漢方薬など、さまざまな種類が並んでいます。たくさんの漢方薬から症状にあったものを選ぶのは、難しいですよね。

 

漢方薬は「効果が緩やか」「効果を実感できるまで時間がかかる」と聞く方も多いのではないでしょうか。しかし、効果が遅いというわけではなく「症状」「飲むタイミング」があっていれば、効果を早くに実感できる薬です。

 

今回は、漢方薬のメリットの解説から、風邪の症状によって使い分け方を紹介します。紹介している漢方薬は市販でも販売されています。セルフメディケーションとして、風邪に対してできる対処法の参考になれば幸いです。

監修薬剤師 ハラクロ
薬剤師ライター 中森 彩斗

漢方薬のメリット、デメリットを解説

漢方薬の効果は、症状を抑えるのではなく、体本来の治癒力を高めてくれるのが特徴です。

「痛みに対しては、鎮痛剤」など西洋医学の薬とは少し考え方が違うのです。

漢方薬のメリット、デメリットを解説します。

漢方薬のメリット、デメリットの比較
メリット ・体本来の治癒力を高めてくれるため、症状がでていない場所も正常な状態にしてくれる。
・自分の症状、状態にあった薬を選べる。
・西洋医学の薬に比べて、眠気などの副作用が少ない。
デメリット ・苦みなど、味に特徴があるため、飲みにくいと感じる方も。
・自分に合った漢方薬を選ぶのが難しい。
漢方薬のメリット

漢方薬は体本来の治癒力を高めてくれると紹介しました。頭痛、熱、咳などの症状だけでなく、その人にどの程度体力があるのか?という体質なども考慮して使用する漢方薬を選びます。このため、状態にあった漢方薬を選べると効果を早くに実感できるのです。

今回紹介する漢方薬に関しては、眠気の副作用はありません。西洋医学の「総合感冒薬」の中には、眠気がでてしまうために、車の運転など注意が必要です。ですが、漢方薬では眠気がないため、車を運転する方にも安心して使用できます。

ただし、漢方薬に副作用が「まったくない」わけではありません。あくまでも漢方薬も薬です。漢方薬にも副作用があることは覚えておいてくださいね。

漢方薬のデメリット

漢方薬は、自分の症状や体質にあわせて選べると解説しました。選べるというのはメリットでもあり、種類が多いために選ぶのが難しいというデメリットでもあるのです。漢方薬を使いはじめたけど効果を実感できない方は、選んだ漢方薬が「今の症状にあっていない」可能性があります。

漢方薬は、とくに服用を続ける上で問題になるのが味です。漢方薬を使用して味に驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。漢方薬の苦み、甘みなどが苦手という方もいらっしゃると思います。

覚えておいて欲しいのは、漢方において「味」「香り」も薬の一部と考えられています。漢方薬を飲むときは「良薬、口に苦し」という言葉を思い出しながら飲んでみてください。とはいえ、味や香りが苦手なものを、いくら薬だからと飲むのは大変ですよね。漢方薬の中には錠剤タイプが販売されているものもあります。購入する際に、探してみてくださいね。

漢方医学から見みる風邪の症状

漢方薬の対象となる風邪とは、発熱、鼻水、咳、頭痛だけでなく、腹痛、吐き気などの「お腹の風邪」と呼ばれる「急性胃腸炎」にも対応できる範囲となっています。

漢方医学は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」のバランスが崩れることによって病気になると考えられています。風邪という病気も、ウイルスによって体が影響をうけてバランスが崩れ、それぞれの症状がでていると考えるのです。

風邪の時に漢方薬をどう使い分ける?

漢方医学で考える風邪症状の範囲が広いことを解説しました。漢方薬を選ぶポイントとして「風邪のひき始め」「症状がではじめてから時間が経過している」なども重要です。ひき始めを「急性期」、時間が経過したものを「慢性期」と呼ばれています。

急性期ではとくに「体力があるのか」「寒気は全身か」「汗はかいているか」などが、どの漢方を使うかのポイントとなります。

慢性期になると、急性期よりも「どのような症状が残っているか」が使い分けるポイントです。急性期の漢方薬を使用していたけど「咳が残ってしまった」「微熱だけ残っている」などの場合は、漢方を途中で切り替えるのもいいでしょう。

急性期に使える漢方薬の使い分けは?

実際の漢方薬を3つ紹介します。

葛根湯(かっこんとう)
麻黄湯(まおうとう)
小青竜湯(しょうせいりゅうとう)

それぞれ詳しく解説します。

葛根湯:汗がなく、頭痛、鼻水など体の違和感に

葛根湯(かっこんとう)は、風邪のときに使用する漢方として有名ではないでしょうか。「体力が中程度以上で、首筋がゾクゾクする、肩がこり、寒気がする」などの風邪の急性期に使用する漢方薬です。

葛根湯は、体温を上げることで風邪に対抗する免疫力を高めてくれます。汗がでていない、首や肩が凝る、頭痛、鼻かぜなどの症状がある方は葛根湯が効果的です。

麻黄湯:節々の痛み、発熱などの症状がある方に

麻黄湯(まおうとう)も葛根湯と並んで風邪に良く使用される漢方薬です。急性期の症状の中でも「体力が充実している方で、全身の寒気、節々の痛みが強く、発熱、咳、鼻水」の場合に選択される漢方薬とされています。

葛根湯のとの違いは「全身の寒気、節々の痛み」です。葛根湯よりも体温を上げる作用が強く、体の震えるような寒気を感じている場合などは、麻黄湯が効果的でしょう。

小青竜湯:鼻炎や痰などの風邪症状&アレルギー性鼻炎にも効果あり

小青竜湯(しょうせいりゅうとう)は「風邪かな?」と思うきっかけが、鼻水などの鼻症状のときに使用される漢方薬です。鼻水の中でも、さらさらとした透明な鼻水に小青竜湯は使用されます。体力としては、中程度、または体力がなく疲れやすい方に使用される漢方です。

鼻水の症状が強いというのは、漢方医学として「体の水の巡りが滞ってしまっている」と考えられます。そこで、小青竜湯は「体を温めて水分の代謝を促す」作用があるのです。

鼻水の症状と言えば花粉症も代表的な病気の一つですね。小青竜湯は花粉症による鼻水の症状にも効果があるとされています。ただし、鼻水の色が黄色や緑色に変わってきたときは、風邪の悪化が考えられますので、病院への受診をおすすめします。

慢性期に使える漢方薬の使い分けは?

続いては風邪の慢性期に使用する漢方薬を2つお伝えします。

柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
竹筎温胆湯(ちくじょうんたんとう)

それぞれ詳しく解説します。

柴胡桂枝湯:吐き気や微熱を伴う風邪に

柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)は風邪の中でも「お腹の風邪」に伴う症状に有効です。症状としては腹痛、微熱、頭痛、吐き気の症状に効果があります。お腹の風邪とは、風邪の原因であるウイルスが感染し、鼻や喉ではなくお腹に症状がでていると考えられます。

柴胡桂枝湯は、体の中でもお腹の調子を整えてくれる漢方です。長引く風邪により、関節の痛み、微熱が続くときも胃腸を元気にすることで風邪に効果を発揮する漢方薬といえるでしょう。

竹茹温胆湯:熱が長引く、回復期に咳や痰が残ってしまった風邪に

竹筎温胆湯(ちくじょうんたんとう)は、風邪の回復期に使用できる漢方薬です。風邪の回復期に、微熱、咳、鼻水などが残ってしまい、すっきり風邪が治らない方も多いのではないでしょうか。原因は消化器の疲れです。

漢方医学から見ると、消化器から排泄されるはずだった「水(すい)」が、体に溜まってしまい、咳や痰として体の外に排泄しようとして症状がでると考えられています。

消化器の疲れを癒やすことで、水分の排泄を改善し、症状を緩和させてくれます。また、風邪だけでなく、インフルエンザや肺炎といった病気の回復期にも使用されるのが竹筎温胆湯の特徴といえるでしょう。

漢方薬の使い分けまとめ

風邪に使用できる漢方薬を紹介しました。風邪の症状によって使い分けることで、症状の緩和や体力の回復を実感できるのが漢方薬です。風邪薬としては眠気も少なく、セルフメディケーションに使用するには、とても使いやすい薬といえます。

注意したいのは、急激な発熱、漢方薬を使用しても良くならない場合です。自己判断で治療を継続せず、病院への受診も検討してくださいね。

今回紹介した漢方の使い分けのポイントが、漢方薬選びのお役に立てれば幸いです。

 

<参考資料>
かぜに効く漢方薬 | クラシエの漢方 かぜシリーズ (kracie.co.jp)
風邪 : 悩み別漢方 | 漢方について | ツムラ (tsumura.co.jp)
漢方とは?~西洋医学やハーブとの違いを含めわかりやすく解説~
漢方薬とは?~漢方薬の考え方や効果・服用する際の注意点も解説~