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お薬コラム
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更新日:2022/03/14
便秘

「何日も便秘が続いてお腹が痛い」「いつもお腹がぽっこりしている」など、便秘でお悩みの方は多いでしょう。
実際、日本では60歳までの方はおよそ5%、それ以降では年齢ともに増加し、10%以上の方に便秘症状があります。
市販の便秘薬はたくさんありますが、便秘タイプに合ったものを使わなくてはうまく効果が出ません。今回は、便秘タイプの見分け方と、それに合った便秘薬を紹介します。

監修薬剤師 ハラクロ
薬剤師ライター 中山 歩実

便秘の基礎知識

まずは、便秘について知りましょう。

便秘とは?

便秘の特徴として、以下のようなものがあげられます。

・排便時に強くいきむ必要がある
・残便感がある
・ウサギのようなコロコロ便や、表面がでこぼこした固い便が出る
・肛門がつまったような感覚、排便しにくい感覚がある
・排便が週に0〜2回

こうした症状が排便の25%以上の頻度であれば、便秘といえるでしょう。もし排便が1日おきだとしても、スムーズに排便ができているのであれば気にする必要はありません。「1日1回以上の排便が健康的」と聞いたことがあるかもしれませんが、すっきりと便が出ているのであれば、毎日でなくともよいのです

 

便秘の原因

便秘は、生活習慣と関わりがあります。改善できそうなものがないか、確認してみましょう。

・食物繊維の不足
・水分不足
・運動不足
・睡眠不足
・精神的なストレス
・環境の変化
・便意を我慢するクセがある

また、女性は男性に比べて便秘を起こしやすいです。原因として、腹筋が少なくいきむ力が弱いこと、黄体ホルモンが腸の動きを抑えてしまうことなどがあげられます。

便秘の種類

便秘は、大きく3種類に分けられます

 弛緩性便秘 腸の動きが悪くなり便が出ない状態。お腹が張る、便が硬いことが多い、女性や高齢者に多い。
 けいれん性便秘 腸の動きすぎによるけいれんで便を肛門に送り出せない状態。食後の腹痛、便秘と下痢を繰り返すなど。
 直腸性便秘 便意を感じにくい、排便に関わる筋肉の動きがうまくいかない状態。肛門付近に便があると感じることもある。

慢性的に便秘が続いている方は、3つのうち複数が合併していることも。しっかりと排便をコントロールするために、便秘の種類に合った薬を選ぶ必要があります。

便秘薬の選び方

便秘は生活習慣と関わりがありますが、便秘が長く続いている場合・薬の影響である場合などには生活習慣の改善だけで便秘を解消するのはとても難しいです。
大きくて、ある程度やわらかい便がよいとされます。薬を使って便の大きさ・固さを調節し、排便のサポートをしてあげましょう。便秘の種類に合う市販薬の選び方をお伝えします。

便が固い方に

便が固いなら、まずは「酸化マグネシウム」「硫酸マグネシウム」という成分の塩類下剤を試してみましょう。弛緩性便秘の方に多いお悩みです。
「酸化マグネシウム」は、子どもから高齢者まで比較的安全に使うことのできる便秘薬で、病院の処方薬としても用いられます。
塩類下剤は、腸の中で便に水分を含ませる薬です。便をやわらかくするだけでなく、水分によって大きくすることで腸を刺激する効果も期待できます。

 塩類下剤 酸化マグネシウム
硫酸マグネシウム

 

〈塩類下剤〉酸化マグネシウムE便秘薬

塩類下剤成分、酸化マグネシウム配合で、クセになりにくい下剤です。
5歳から飲むことができます。

便が小さい方に

便が小さくコロコロしている方は、膨潤性下剤・湿潤性下剤を試してみましょう
けいれん性便秘の方は、コロコロ便と下痢を交互に繰り返すことが多いです。

小さなコロコロ便では、腸をうまく刺激できません。
膨潤性下剤は、腸の中で水分を含むことで膨らみ、便を大きくする薬です。 腸への刺激を増やし、便が肛門までスムーズに運ばれるように働きます。水溶性の食物繊維と似た働きで、それほど強い効果があるわけではありませんが、習慣性(クセになること)も少なく使いやすい薬です。

湿潤性下剤は、便の表面から水分を吸収させて、硬くなった便をやわらかくする効果があります。副作用が少なく、習慣性も少ない下剤です。効果が強くはないため、他の刺激性下剤等とともに配合されています。

 膨潤性下剤 プランタゴ・オバタ種皮
 湿潤性下剤 ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DDS)

 

〈膨潤性下剤含有〉新ウィズワン

食物繊維(プランタゴ・オバタ種皮)と生薬(センノシド,カスカラサグラダ)を配合した,自然に近いお通じを促す便秘薬です。

〈湿潤性下剤含有〉コーラックII

DSS※が便に水分をふくませ適度に軟らかくし,ビサコジルが大腸を直接刺激して運動を活発にすることにより,便秘にしっかり効きます。 ※ジオクチルソジウムスルホサクシネート

便が肛門付近で固まっている方に

肛門付近で便がカチカチになっている直腸性便秘の方には、坐薬浣腸がおすすめです。何十分もトイレでいきんで大変な思いをしている、という場合には試してみてください。
このタイプの方は、便意を我慢するくせなどによって肛門付近にある排便をつかさどる神経がうまく働かなくなっています。

坐薬は、直接的に神経を刺激することで排便を起こします。坐薬を入れてから10分前後ですぐに効果が出るため、使いやすいです。ただし、少し習慣性があるため、毎日ずっと使用していると自然に排便するのが難しくなる場合があります。
浣腸は、滑りをよくすること・腸に刺激を与えることで排便を起こします。少し手間がかかりますが、10分ほどで効果が出るので、便秘が辛いときには使ってみましょう。

 

〈坐薬〉新レシカルボン坐剤S

排便に固有の重要な生理的役割りを持つ炭酸ガスを微細な球の状態で発生することによって,自然に近いおだやかなお通じをもたらします。

〈浣腸〉イチジク浣腸30

今すぐに出したい便秘に。

漢方薬も選択肢に

漢方薬の中にも、便秘に使用できるものがいくつかあります。体質によって合う漢方薬が異なりますので、わからない時には薬剤師や登録販売員などに相談しましょう。
妊娠中の方は使えない漢方薬がありますので、産婦人科で相談して処方してもらうのが安心です。

 

冷えがなく、肥満体型の方:防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)

防風通聖散は、体力がある方向けの漢方薬です。冷え性や虚弱体質の方にはあまり向きません。

体力が少なく、残便感や腹痛の気になる方:桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)

桂枝加芍薬湯は、便意があるのにうまく排便できない、腹痛がある方に向いている漢方薬です。刺激の強い生薬は入っていないので、胃腸の弱い方にも使いやすい作りになっています。腸の動きをちょうどよく保つので、便秘にも下痢にも使用できるのが特徴です。

体力が少なく、便の固い方:麻子仁丸(ましにんがん)

麻子仁丸は、腸内の水分を増やし、便を柔らかくする働きがあります。また、便秘に伴うお腹の張りや食欲不振にも効果的です。

体力は普通程度で、便の固い方:乙字湯(おつじとう)

乙字湯は、便をやわらかくするほか、炎症を抑える生薬の働きで切れ痔などにもよい漢方薬です。

比較的どんな体質の方にも使いやすい:大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)

体質がよくわからない方は、大黄甘草湯からはじめてみるのもよいでしょう。比較的誰にでも合うように作られた漢方薬です。

頑固な便秘には刺激性下剤の頓用も

腸の動きを促す刺激性下剤は、効果も強く頑固な便秘の方にもよい選択肢です
だいたい8〜10時間程度で効果が出ます。寝る前に飲む方が多いですが、仕事中に便意を催したくない方などは飲む時間を調整してください。

 刺激性下剤 センノシド
センナ
ピコスルファート
ビサコジル

刺激性下剤は、効果が強い分習慣性があるため、毎日ではなく時々の使用にとどめるのがよいでしょう。刺激性下剤を毎日使わないと出ないくらい頑固な慢性便秘の方は、受診をおすすめします。市販薬にはない働き方をする便秘薬がたくさんありますので、合う便秘薬を処方してもらいましょう。

 

ピコラックス

おやすみ前の服用で翌朝効果があらわれます。
・大腸粘膜だけに作用するので,栄養の吸収を妨げません。
・のみやすいグリーンの小粒の錠剤です。
ピコスルファートナトリウム水和物は,ドイツ,イギリス,スイスなど各国で使われている便秘治療薬です。

コーラック

慢性便秘や常習性便秘にしっかり効く便秘薬です。ビサコジルが大腸を直接刺激して運動を活発にすることにより,お通じを促します。

まとめ

多くの方が悩んでいる便秘にはいくつか種類があり、その時々に合わせて便秘薬を選ぶ必要があります。
市販薬でもたくさんの便秘薬が売られていますので、自分の便秘タイプを見極めて試してみてください。合う便秘薬がわからない場合には、薬剤師や登録販売員などに相談してみましょう。
頑固な便秘が長く続いている方は、医療機関の受診が必要かもしれません。市販薬にはない新しい作用の便秘薬もありますよ。

 

<参考資料>
慢性便秘症診療ガイドライン2017 at a glance. 日内会誌 109:254-259, 2020.
慢性便秘症の診断と治療
日本消化器病学会 ホームページより