毛髪用薬（女性向けの抜け毛、薄毛）

女性が薄毛になる原因は1つではありません。下記のように、さまざまな要因が絡んで薄毛を引き起こしているといわれています。

• 加齢
• ホルモンバランスの変化
• ストレス
• 自律神経の乱れ

男性の薄毛はほとんどがジヒドロテストステロン（DHT）という男性ホルモンが原因ですが、女性にはこのように明確な原因があるわけではないことが特徴です。

以前は、男性の薄毛をAGA（男性型脱毛症）と呼ぶのに対して女性はFAGA（女性男性型脱毛症）と呼ばれていました。しかし現在は、女性の薄毛が男性ホルモンのみによる影響ではないことがわかったため、FPHL（女性型脱毛症）と呼ばれることが一般的です。

女性が薄毛になる原因としては、おもに次のものが知られています。薄毛や抜け毛が気になるときは、まずは自分がどのタイプの薄毛なのかを確認してみましょう。

更年期に入る40代から50代で見られやすいのが、壮年期脱毛症です。髪の毛全体のボリュームが少なくなっていき、症状が進むと地肌が透けて見えるようになります。また、1本1本の髪の毛が細くなってやわらかくなることも特徴です。

更年期に入ると相対的に男性ホルモンの量が増えることが関係していると考えられていましたが、女性が壮年期脱毛症になる原因ははっきりとはわかっていません。

髪の毛の一部が円形状に抜け落ちる疾患です。ストレスが原因だと考えられていましたが、近頃では免疫機能の異常が原因ではないかと考えられています。

日本人の1～2％に見られ、男女差はほとんどありません。円形脱毛症になるかたの4分の1は15歳以下の方です。家族に円形脱毛症の方がいると遺伝しやすいこともわかっています。

円形脱毛症が疑われる場合は、専用の飲み薬や塗り薬などを使った治療が必要になるため、できるだけ医療機関を受診するようにしてください。

壮年期脱毛症や円形脱毛症のほかに、次のものも薄毛や抜け毛の原因です。

• 甲状腺疾患
• 過度なダイエットによる栄養不足
• 分娩後脱毛症
• 批糠（ひこう）性脱毛症

甲状腺は髪の毛の成長に関わりがあるため、甲状腺ホルモンの量が低下すると抜け毛が増えることがあります。また、ダイエットによる栄養不足は髪の毛の成長を阻害して抜け毛を増やす原因です。

出産後は、女性ホルモンバランスの変化により多くの髪の毛が一気に成長を止めるため、抜け毛が急に増えることが多く見られます。批糠性脱毛症といって、頭皮環境の悪化により抜け毛が増えることも少なくありません。

いくつか種類がある脱毛症のうち、市販薬で対処できるのは壮年期脱毛症や円形脱毛症、批糠性脱毛症のみです。これら以外の原因が考えられる場合は、適切な対処が必要となるので医療機関を早めに受診してください。

なお分娩後脱毛症については、自然と改善していくため頭皮に異常が起きていたり産後1年以上治まらなかったりする場合を除いて、特別な対処は必要ありません。

ミノキシジルは、壮年期脱毛症への効果が認められている成分です。市販のなかでは唯一の発毛成分として認められています。

日本皮膚科学会が公表している「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」でもミノキシジルの外用剤は推奨度A（行うよう強く勧める）とされているため、市販で薄毛の治療を行う場合の第一選択薬となるでしょう。

ただし、高血圧や狭心症、不整脈などがある方は使用できない場合があります。これらの疾患がある方は担当医に相談してから使用してください。妊娠中や妊娠の可能性がある方、授乳中の方も使用できません。

カルプロニウムは、育毛剤に配合されている成分です。男性を対象とした試験では脱毛の減少や発毛が確認されました。しかし、女性の脱毛症についてはどの程度の効果があるかについてはまだ詳しく調べられていません。

ただし、カルプロニウムは壮年期脱毛症のほかに円形脱毛症や批糠性脱毛症に対しても効果が認められています。

エストラジオールとは、女性ホルモンのことです。壮年期脱毛症や円形脱毛症、批糠性脱毛症に対して効果が認められています。ただし壮年期脱毛症の治療においては、ミノキシジルほどの有用性は確認されていません。

「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」にもエストラジオールについては触れられていないため、壮年期脱毛症の治療を行うのならミノキシジルの使用を優先しましょう。

女性の薄毛や抜け毛に効果がある市販薬をここでは3つご紹介します。市販薬を選ぶときの参考にしてみてください。

発毛成分であるミノキシジルが配合された代表的な薄毛治療薬です。主成分であるミノキシジルがヘアサイクルを整えて発毛を促し、トコフェロール酢酸エステルやパントテニールエチルエーテルなどが頭皮の環境を健やかに整えます。

カルプロニウムが主成分の商品です。壮年期脱毛症や円形脱毛症、粃糠性脱毛症などに効果があります。かゆみ止めの成分も配合されているため、頭皮のかゆみが気になる方にも向いているでしょう。

主成分としてエストラジオールが配合されています。ホルモンバランスを整えることで脱毛を抑える成分です。このほか、かゆみ止めのジフェンヒドラミン塩酸塩、血行をよくするトコフェロール酢酸エステル、炎症を抑えるヒドロコルチゾンなどが配合されています。

女性の薄毛は、加齢やホルモンバランスの変化、ストレスなどさまざまな要因によって起こるものです。脱毛症にはいくつか種類がありますが、壮年期脱毛症と円形脱毛症、粃糠性脱毛症は市販薬でも対処できます。壮年期脱毛症の場合は、ミノキシジルが主成分のものを選ぶとよいでしょう。

円形脱毛症や粃糠性脱毛症に使える市販薬もありますが、こちらは医療機関でより適切な治療を受けられるため、できれば受診するのが無難です。壮年期脱毛症が疑われる場合も市販薬を4か月以上使用しても効果を実感できない場合は、一度受診するようにしてください。

<参考資料>
脱毛症 – 皮膚科Q＆A（公益社団法人日本皮膚科学会）
男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版
発毛促進薬 カロヤン プログレ EX D｜第一三共ヘルスケア