発熱
発熱すると、体がだるくなって動くのもつらいですよね。少しでも体を楽にするために、解熱剤や漢方薬などを使う方も多いのではないでしょうか。
しかし、解熱剤や漢方薬などのお薬は、熱が出たからといって必ずしも使わなければならないものではありません。今回は熱が出る原因やメカニズム、解熱剤を使う必要性や発熱を楽にする市販薬などを詳しく解説します。
発熱の意味について
発熱は、風邪を引いたり体調を崩したりしたときに見られることが多い症状です。熱が出ると頭がぼーっとしたり食欲がなくなったりするため、一刻も早く熱を下げたいと思われる方がほとんどでしょう。しかし発熱は、体を守るうえで必要不可欠な存在なのです。 |
発熱する原因
発熱する原因としては、主に次の4つが知られています。
• 感染症
• 膠原病
• 悪性腫瘍
• うつ熱
よく見られるのは、感染症によるものでしょう。ウイルスや細菌の感染が原因となります。感染症が原因の場合は、長くても2週間程度でおさまることがほとんどです。
そのほか、膠原病や悪性腫瘍でも発熱が見られることがあります。気温が高いところに長時間いることで起こる熱中症も、発熱が見られることで有名です。
発熱するメカニズム
感染症にかかると発熱するのは、体内に侵入してきた異物を効率よく排除しようとするためだといわれています。体温を上げることで免疫機能のはたらきがよくなるため、ウイルスや細菌を排除する力が強くなるのです。
解熱剤の必要性
熱が出たからといって、必ず解熱剤を飲む必要はありません。解熱剤を飲んでも飲まなくても時間が経てば熱は下がってくるためです。
解熱剤は、高熱が出たとき、もしくは発熱による体力の消耗が著しいときに服用しましょう。
ただし、高熱が出ても体がきつくなければむりに服用する必要はありません。ここで注意したいのは、解熱剤に熱を治す働きはないということです。一時的に体温を下げることはできますが、発熱の原因となるウイルスや細菌を抑えるものではありません。
「解熱剤を飲めば風邪が治る」ということはなく、あくまで一時的に熱を下げるものに過ぎないので注意しましょう。熱を下げることで免疫機能がうまく活性化せず、治りが遅くなってしまう可能性もあります。
受診勧奨のポイント
次のような症状があったら、医療機関を受診するようにしましょう。
• 39℃以上の高熱が出ている
• 水分が摂れていない方
• 息苦しさがある方
• 嘔吐をくり返している方
• 発熱により体力が著しく低下している方
39℃以上の熱が出ていたり、高熱が数日間にわたって続いたりするときは早めに医療機関を受診してください。風邪以外にも急性腎炎や肺炎など、高熱が出る原因はいろいろとあります。
また、水分がしっかり摂れていない場合は脱水を起こす可能性があるので注意してください。尿量が減っている様子があれば水分量がたりていないかもしれません。
息苦しさがあったり嘔吐を繰り返していたりしている方、体力の消耗が激しい方も急激に体調が変化することがあるので、早めに受診しましょう。
発熱に効果がある市販薬
発熱を抑える市販薬としてよく知られているのが解熱鎮痛薬です。解熱鎮痛薬とひとくちに言っても、次のようにいくつか種類があります。効果の高さや胃の負担の大きさ、使える年齢などが違うので、自分に合ったものを選ぶようにしましょう。
アセトアミノフェン
体温は、視床下部にある体温調節中枢の働きによって調整されています。アセトアミノフェンは、この体温調節中枢に働きかけることで血管や汗腺を広げ、熱を下げるお薬です。
大人だけでなく、小さな子どもでも服用できます。ほかの解熱鎮痛薬と比べて胃の負担が少ないことが特徴です。
小児用バファリンCII
3才から服用できます。小さな子どもでも飲みやすいフルーツ味です。小粒なので、飲み込むのが苦手な子どもでも服用しやすいでしょう。
バファリンルナJ
7才から服用できる解熱鎮痛薬です。噛んでそのまま服用できます。水なしで服用できるので、症状がつらいときや飲食が難しいときでも使いやすいでしょう。
タイレノールA
15才から服用できる解熱鎮痛薬です。大人が使えるアセトアミノフェン製剤のなかでも、とくに名前がよく知られています。
NSAIDs
NSAIDsとは、非ステロイド性抗炎症薬のことです。イブプロフェンやロキソプロフェンなどが知られています。アセトアミノフェンと比べて解熱効果は高めです。
ただし、胃に負担がかかることがあるので空腹時は避けて服用しましょう。解熱効果はロキソプロフェンのほうがイブプロフェンより高くなっています。
リングルアイビー
イブプロフェンが配合された解熱剤です。眠くなる成分は含まれていません。液体カプセルになっているので素早く溶けて、つらい症状を速やかに緩和してくれます。
ロキソニンS
ロキソプロフェンが配合された解熱剤です。プロドラッグといって体に吸収されて代謝を受けてから薬効を発揮するように設計されています。
漢方薬、葛根湯、麻黄湯の効果について
熱を下げる市販薬といえば解熱剤が一般的ですが、実は漢方薬を使っても発熱に対処することが可能です。発熱に使える漢方薬としては、葛根湯や麻黄湯が知られています。
漢方薬が熱を下げるメカニズム
漢方薬でも熱を下げることが可能です。解熱剤とは違い、体を温めて汗をたくさんかくことで体温を下げていきます。汗をかけば自然と体温は下がるため、漢方では熱があるときこそ体を温めることが大事なのです。
葛根湯と麻黄湯の使い分け
葛根湯(かっこんとう)も麻黄湯(まおうとう)も、体温を上げることで発汗を促し、熱を下げるものです。一般的には麻黄湯のほうが体を温める働きが強いといわれています。そのため、インフルエンザのように高熱が出やすい疾患に麻黄湯の使用が向いているといえるでしょう。
インフルエンザではなくても、ゾクゾクするような寒気があったり節々の痛みがあったりする方は麻黄湯を選んでみてください。一方で葛根湯は、寒気があり頭痛や肩こりを伴う場合に向いています。
ツムラ漢方内服液葛根湯、ツムラ漢方内服液麻黄湯
急な発熱に、すぐに飲める液剤タイプです。
医薬品以外で解熱作用のある製品
発熱があるときは、解熱剤や漢方薬を使うのもよいですが、そのほかのアイテムなどもうまく使って体を楽にしてあげましょう。
冷えピタ
体温を下げる効果はありませんが、体を冷やすことで火照りを楽にしてくれます。小さな子どもに使うときは窒息の危険性があるので、鼻や口を塞がないように注意して使用してください。
氷嚢(ひょうのう)
氷嚢とは、氷が入った袋のことです。おでこや頭を冷やすことで、熱による不快感をやわらげられます。
氷枕
氷枕は、大きな血管が走っている首回りを冷やすのに効果的です。近頃では凍らせても固くならないタイプの氷枕が販売されています。
まとめ
発熱は、体がウイルスや細菌と効率よく戦うために起こるものです。膠原病や悪性腫瘍、熱中症などでも発熱が見られることがあります。感染症が原因の場合、熱を下げることで免疫機能がうまく上昇せず、治りが遅くなる可能性があるので注意しましょう。
熱があっても体がつらくないときは、解熱剤などはむりに使う必要はありません。解熱剤のほかに葛根湯や麻黄湯などの漢方薬、冷えピタや氷嚢などつらさをやわらげるアイテムなどもあるので、うまく活用していきましょう。