ガスター(医療用医薬品)は市販で買える?
「ガスター」という胃薬をご存知の方は多いのではないでしょうか。
この薬はもともと医療用医薬品として使われているものですが、市販薬としても購入することができます。
今回は、「ガスター」についての使い方や注意すべき点についてご紹介します。
購入可能な市販薬とは?
「ガスター」の有効成分は「ファモチジン」で、胃酸の分泌を抑える作用があります。
医療用医薬品のガスターは、1錠(包)10mgと1錠(包)20mgの2種類があり、そのうち市販薬として購入できるものは、「10㎎」のみです。
医療用医薬品と市販薬では、適応症が異なります。医療用医薬品は「逆流性食道炎、上部消化管出血」などにも使えますが、市販薬では「胃痛,もたれ,胸やけ,むかつき」の適応のみという点にご注意ください。
ガスター10
有効成分「ファモチジン」が10㎎含有された錠剤です。直径7mmと小さめなので飲みやすいでしょう。糖衣錠といってコーティングされた錠剤なので、味はしません。
ガスター10 S錠
口の中で溶け、水なしで服用できるタイプの錠剤です。メントールが含まれているので、飲んだときにスーッとした清涼感があります。
ガスター10〈散〉
粉薬のタイプです。「ガスター10 S錠」と同様にメントールが含まれています。水に溶けやすいので、水に溶かして飲むことも可能です。
ファモチジン錠「クニヒロ」
ガスターと同じ有効成分「ファモチジン」を10㎎配合した錠剤です。メーカーが異なるだけで有効性に違いはありませんが、ガスターシリーズと比べてお手頃価格になっています。
医療用医薬品としての基本情報
医療用医薬品の「ガスター錠」について、その働きや使い方をご紹介します。
ガスターの主成分とは?
主成分は「ファモチジン」で、H2ブロッカーという種類の胃薬です。
胃もたれや胸焼けといった症状は、胃酸が過剰に分泌されて胃の粘膜が傷つくことが原因で生じます。そこで、ファモチジンは胃酸が分泌されるのを抑えるように働き、症状を改善してくれます。
比較的即効性があるので、症状を感じたときに頓服で使用しても効果を実感できるでしょう。
ガスターの効能は?
ガスターは、以下のような疾患やそれに伴う症状に効果を示します。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、上部消化管出血(消化性潰瘍、急性ストレス潰瘍、出血性胃炎による)、逆流性食道炎(胃食道逆流症)、 Zollinger-Ellison症候群、急性胃炎や慢性胃炎による胃粘膜の病変(出血、浮腫、びらん)
いずれの病気も、何らかの原因で胃酸が過剰になったことで胃や食道の粘膜が傷ついて生じるものです。
ガスターの使い方
ガスターは、適応症によって使用量が異なります。
(1) 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、上部消化管出血(消化性潰瘍、急性ストレス潰瘍、出血性胃炎による)、逆流性食道炎(胃食道逆流症)、 Zollinger-Ellison症候群の場合
1回20mgを1日2回、あるいは1回40mgを1日1回内服します。
(2) 急性胃炎や慢性胃炎による胃粘膜の病変(出血、浮腫、びらん)の場合
1回10mgを1日2回、あるいは1回20mgを1日1回内服します。
ただし、腎臓の機能が通常よりも落ちている場合や高齢者の場合など、量を減らして使うこともあります。
ガスターの医療用医薬品の種類
ガスターは医療用医薬品として非常に多用されており、さまざまな種類があります。
【内服薬】
・ガスター錠10mg/20mg
・ガスターD錠10mg/20mg(口の中で溶けるタイプ)
・ガスター散2%/10%(粉薬)
【注射薬】
・ガスター注射液10mg/20mg
注射薬には、内服薬にはない以下の適応もあります。
侵襲ストレス(手術後に集中管理を必要とする大手術、集中治療を必要とする脳血管障害・頭部外傷・多臓器不全・広範囲熱傷)による上部消化管出血の抑制、麻酔前投薬
ガスターの注意点
胃薬は「体に悪いことはない」「安全な薬」のように思われている方も多いのですが、ガスターには注意しなければならない点があります。
腎機能の低下している方は量に注意が必要
ガスターは、体に入ったあと腎臓から排泄されます。腎臓の機能が低下している方はガスターを排泄する力も弱まっているため、飲む量を調節しなくてはなりません。
「腎臓が悪い」「腎不全・CKD」「透析中」のような方は、ご自身の判断でガスターを購入することは控え、薬剤師等に相談してください。
ご自身の腎臓の機能に合わない量を長く内服していると、腎臓の機能がさらに低下する、貧血、不整脈といった副作用が出てしまうことがあります。
高齢者の方
高齢者の方は、ガスターの量を調節するか、別の薬へ変更したほうがよい場合がありますので、市販薬を購入するときは薬剤師へ相談してください。
年齢を重ねるにつれ、腎臓の働きは自然と低下します。30歳以降から、腎臓の機能は10年ごとに10%ずつ低下するともいわれているのです。そのため、おおよそ60歳以降の高齢者の方は、とくに腎臓が悪いといわれていなくても、若い人と同じ量の薬を飲むのが難しいことが多くなります。
また、高齢の方がガスターを腎臓の機能に合わない量を内服することで、せん妄※や幻覚を生じるリスクがあることもわかっています。胃のムカムカなどの症状がある場合、安易にガスターを購入せず、薬剤師や主治医に相談しましょう。
※せん妄:時間や場所がわからなくなったり、注意力が低下したりする状態。一時的な場合もあれば、長く続くこともあります。
持病で薬を飲んでいる方
持病で薬を飲んでいる方は、すでに胃薬を処方されている可能性があります。
ガスター(ファモチジン)以外にもH2ブロッカーという種類の胃薬はありますし、プロトンポンプ阻害薬(PPI)という別の働きの胃薬を使っている方も非常に多いです。H2ブロッカーの多くは腎臓から排泄されるため、重複して飲むことで腎臓に負担がかかってしまいます。また、PPIとガスターは、併用する必要がありません。
不必要に薬を飲むことがないよう、いつもと違うクリニックを受診するときやガスターを購入したいときにはお薬手帳を持参しましょう。
まとめ
今回は、胃薬としてよく知られている「ガスター」について、使い方や注意点を解説しました。ガスターは、さまざまな胃の病気や症状に効果があり、非常によく使われる胃薬です。
ガスターは、体の状態に合わせて量を調整しなくてはなりません。今回ご紹介したように、腎臓の機能が低下している方や高齢者の方は、ガスターを購入する際には薬剤師等へご相談ください。