痔
「トイレに行って排便をした後に、トイレットペーパーに血がついていた」
「お尻にできものがあって、少し痛みもある。市販薬で対処できるかな」
痔の急な症状に驚いてしまう人も多いのではないでしょうか。
痔の症状を感じても、病院へ行くのはなかなか踏み切れない人も多いと思います。
今回は痔に関して種類、原因、市販薬の解説、受診の目安など幅広く解説していきます。
仕事が忙しくてなかなか受診が出来ない
市販薬でまずは対処したい
病院に行きたいけど何科を受診したらいいのかわからない
という人はこの記事を読んで、自分の痔が市販薬でケアできる範囲か、病院に受診しなければいけない状態なのかを理解してくださいね。
痔の種類と原因
痔といってもさまざまな種類があるのは知っていますか?
「いぼ痔(痔核)」「きれ痔(裂肛)」「痔瘻」の3種類です。
いぼ痔、切れ痔はみなさんもよく聞くと思います。
それぞれ特徴を解説していきます。
いぼ痔(痔核)
いぼ痔とは、肛門周辺に「しこり」が出来てしまい、出血、痛みを伴う状態です。
出血、痛みの度合いは「しこり」が出来る場所により大きく違ってくるので、痛みがほとんどないこともあります。
いぼ痔は出来る場所により内痔核、外痔核と呼び方も変わってきます。
肛門の大腸側に出来るいぼ痔を「内痔核」、外から見てわかる場所に出来るいぼ痔を「外痔核」ですので、いぼ痔に触れるようであれば外痔核と考えてもいいでしょう。
外痔核は痛み、出血を伴うことが多く、内痔核は痛みがない場合もあり、出血によって気がつくことの多い痔核です。
いぼ痔の原因は肛門に対する圧力が原因といわれています。
肛門に圧がかかる要因としては、力仕事による過度な力み、便秘による排便のときの力み、妊娠なども要因として考えられています。
きれ痔(裂肛)
きれ痔はみなさんもイメージがしやすいのではないでしょうか?
堅い便などが原因で肛門に傷がついてしまった状態です。
堅い便だけでなく、頻繁な排便でも肛門が傷つくこともあります。
排便後の痛みが強く、出血を伴い、排便後にしばらくすると痛みはなくなる傾向があります。
痔瘻
痔瘻(じろう)はあまり聞いたことがないかもしません。
肛門直腸瘻(こうもんちょくちょうろう)とも呼ばれ、肛門や直腸から肛門付近の皮膚へとつながるトンネルが出来てしまっている状態です。
いぼ痔、きれ痔とは症状が違い、血の混じった膿がでること、細菌感染による熱がでることもあります。
痔瘻の治療に関しては市販薬での対応は難しく、手術が必要になるケースが多いため、受診が必要です。
市販薬で対応可能な痔は?
市販薬で対応可能な痔は下記のような痔です。
「いぼ痔、切れ痔で軽度な痛みや出血の場合」
受診が必要なのは、
• 大きな外痔核
• 痛みが強い、出血量が多い
• 下着に膿のような汚れがつく
• 市販薬を使用しても症状がよくならない
• 痛み、出血以外に「発熱」がある
上記のような場合は医師に相談するようにしましょう。
「消化器科」「肛門科」の受診をおすすめします。
痔に効果がある市販薬は?外用薬・内服薬の紹介
痔に対する市販薬は外用薬、内服薬が販売されています。
ここからは外用薬、内服薬の使い分け、市販薬の紹介、詳しい成分の解説をしていきます。
外用薬と内服薬の使い分け
外用薬は「坐薬」「軟膏」「注入軟膏」があり、痔の症状がでている場所に直接効果を発揮するため、痛みや出血の症状を直接やわらげてくれます。
痔の種類により外用薬の中でも使い分けが必要です。
• 坐薬:内痔核
• 軟膏:外痔核、きれ痔
• 注入軟膏:内痔核、外痔核、きれ痔
注入軟膏は幅広い痔に対応できるため、迷ったときにはおすすめです。
外用薬を毎日続けるのが大変と思う人は、内服薬を選んでみると良いでしょう。
外用薬でおすすめの市販薬
ボラギノールA注入軟膏
肛門の内側、外側に使える注入軟膏タイプ。
出血、腫れ、かゆみを抑えてくれるステロイドを配合し、その他にも痛みを抑える成分などを4種類配合しています。
専用の注入容器が外側、内側の両方のいぼ痔、きれ痔などの幅広い症状に使用できる製品となっています。
注入容器は基本的に1回使いきりタイプですので、衛生的に管理できること、外出先での使用を考えて持ち運びがしやすいことも特徴です。
ボラギノールM坐剤
同じボラギノールですが、ボラギノールMは副腎皮質ステロイドを配合していない外用薬です。
ステロイドの代わりにグリチルレチン酸という抗炎症成分を配合しており、坐薬以外にもチューブタイプの軟膏外用薬も販売されています。
プリザエース注入軟膏T
プリザシリーズの中でもプリザエース注入軟膏Tは使いきりタイプの容器になっています。
出血、腫れ、かゆみを抑えてくれるステロイドや痛みを抑える成分の他にも、殺菌成分も配合されており、7種類の成分が配合された外用薬です。
また、特徴的な成分としてメントールを配合しており、爽快感のある使用感となっています。
内服薬でおすすめの市販薬
「クラシエ」漢方乙字湯エキス錠
痔に対する漢方の中でも有名なのが「乙字湯」です。
漢方薬の味、粉薬が苦手という人でも飲みやすい錠剤タイプです。
ヘモリンド舌下錠
舌下錠が特徴の市販薬です。
舌の下(裏)で溶かして服用することで、下の粘膜から有効成分が吸収され、効果を発揮します。
静脈血管叢エキスと言う成分が、いぼ痔の腫れてしまった状態を改善してくれます。
内服ボラギノールEP
内服薬において独自の生薬配合処方により、いぼ痔、きれ痔に効果がある内服薬です。
炎症を抑えてくれる、ボタンピ、セイヨウトチノキ、シコンという3種類の生薬を配合しています。
いぼ痔やきれ痔の痛み、かゆみ、出血を改善してくれます。
内服薬ジーフォー
有効成分カルバゾクロムが血管を強化して、痔による出血を防ぎます。
いぼ痔、きれ痔に効果がある乙字湯加大棗エキスを配合しています。
飲みやすい錠剤タイプです。
痔で使われる市販薬成分の解説
ここでは外用薬や内服薬に含まれる成分に関して解説していきます。
市販の外用薬(坐薬、注入軟膏、塗り薬)に含まれる主成分の効果、特徴について
副腎皮質ステロイド成分(抗炎症成分)
プレドニゾロン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン酢酸エステル
炎症や腫れを鎮めてくれる成分です。
抗炎症成分
グリチルレチン酸
非ステロイド性の抗炎症成分で、ステロイド成分と同様に炎症や腫れを鎮めてくれる成分です。
局所麻酔成分
リドカイン、ジブカイン、アミノ安息香酸エチル
痔による痛みやかゆみを抑えてくれます。
抗ヒスタミン成分
クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジフェンヒドラミン塩酸塩
抗ヒスタミン成分は、かゆみを鎮める目的で配合されます。
かゆみを抑える成分といえば、抗ヒスタミン以外にも「メントール」があり、爽快感をプラスする目的の他にも、かゆみを鎮める目的でも配合されます。
血管収縮成分
テトラヒドロゾリン塩酸塩、ナファゾリン塩酸塩、フェニレフリン塩酸塩、dl-メチルエフェドリン塩酸塩
患部周辺の血管を収縮させ、出血を抑えてくれる成分です。
殺菌成分
クロルヘキシジン塩酸塩
殺菌を目的に配合され、細菌感染を抑えてくれます。
市販の内服薬に含まれる成分の効果、特徴について
漢方製剤「乙字湯」に関して
乙字湯の対象となる痔の症状とは、便が硬く便秘がちの人への処方となっています。
痔の症状は血がうまく流れず、滞ってしまうために起こる症状と考えられるため、血流を改善しうっ血をとる方向に効果を発揮する生薬の配合となっています。
しかし、下痢の影響で痔になってしまった人にはあまり向かない漢方薬です。
痔の市販薬に配合される生薬成分
ボタンピ、セイヨウトチノキ種子エキスなど血液循環を改善し、炎症を鎮めてくれる成分となっています。
止血成分
カルバゾクロムが内服では使用されます。
細かい血管を補強し、出血を抑えてくれます。
その他
静脈血管叢エキスとは、主に動物の血管のタンパク質を分解して作られた成分です。
痔の血液循環を改善し、浮腫の改善、炎症を鎮める効果があります。
まとめ
痔に関して市販薬として購入できる外用薬、内服薬を説明してきました。
痔の原因は排便時の過度な力みが原因となることもあり、食生活などの生活習慣が影響します。
市販薬などを使用した治療だけでなく、予防としても、痔になってしまった後も排便時に肛門に負担がかからない食生活を心がけることも大切です。
それぞれの市販薬を使用していても痔の痛み、出血が改善しない場合には放置せずに、消化器科や肛門科の受診を検討してくださいね。
<参考資料>
ボラギノール公式HP
痔核(いぼ痔):メルクマニュアル 家庭版
裂肛(切れ痔):メルクマニュアル 家庭版
痔瘍:メルクマニュアル 家庭版
ボラギノール公式HP 製品一覧
プリザエース注入軟膏T
「クラシエ」漢方乙字湯エキス錠 [96錠]
ヘモリンド舌下錠