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お薬コラム
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更新日:2022/12/31
市販の葛根湯は、医療用と同じ効果?葛根湯の基礎とおすすめ市販薬を解説!

葛根湯といえば、漢方薬のなかでもとくにメジャーなものでしょう。医療機関で処方されることもあれば、ドラッグストアや薬局で購入することもできます。

 

ところで、処方される葛根湯とドラッグストアや薬局で購入できる葛根湯はまったく同じ効果が期待できるものなのでしょうか?

 

今回は医療用と市販薬の葛根湯にどのような違いがあるのかについて解説します。市販で人気の葛根湯についても紹介しているので、こちらもぜひ参考にしてみてください。

監修薬剤師 ハラクロ
薬剤師ライター 岡本 妃香里

葛根湯とは?

葛根湯は風邪の引き始めによく用いられる漢方薬です。次の7種類の生薬が配合されています。

• 葛根(カッコン)
• 大棗(タイソウ)
• 麻黄(マオウ)
• 甘草(カンゾウ)
• 桂皮(ケイヒ)
• 芍薬(シャクヤク)
• 生姜(ショウキョウ)

体力が比較的あり、寒気や熱、肩こりなどがある方に用いられます。葛根湯は、体を温めることでウイルスと戦う力を高めるものです。体を温める成分として麻黄や生姜、桂皮が配合されています。人間の体は体温を上げることでウイルスと戦う力が高くなるため、これをサポートしてあげるのです。

肩こりにも効くのは、葛根湯に体を温める働きがあることと、水代謝を整える働きがあることが関係しています。漢方薬には気(き)、血(けつ)、水(すい)という考えがあり、水は生命活動を支える体液のことです。

水の代謝が正常に行われなくなると、筋肉が引きつったり痙攣したりするため、こりが生じやすくなります。葛根湯に含まれている葛根が筋肉にうるおいを与え、芍薬が筋肉のけいれんを抑えることで、肩こりを緩和することができるのです。

風邪の引き始めに服用する意味は?

葛根湯は風邪の引き始めに服用しなければ十分な効果が得られません。「風邪といえば葛根湯」と、なんとなく服用している方も見られますが、実は初期の段階で服用することが大切なのです。

というのも、葛根湯はウイルスが体内で増殖する前に飲むことで効果を発揮します。風邪を引いてしばらく時間が経っていると、ウイルス量が増えているため葛根湯では太刀打ちできません。

また、葛根湯には体を温めて汗をかかせることで体温を下げる効果があります。風邪が進行すると体は自然と汗をかき、体温を下げようとするものです。このタイミングで葛根湯を服用すると、体温を上げようとする葛根湯は逆効果となってしまいます。

ウイルス量がまだ少ない時期に服用する必要があること、体温を上げる効果があることから葛根湯は風邪の引き始めに服用することが推奨されているのです。

市販薬の葛根湯の効果は医療用に劣らない!

葛根湯は医療用でも市販薬でも、ほとんどは同じ生薬で構成されています。そのため、医療用と市販薬とで葛根湯の効果が大きく変わることはありません。ただし、葛根湯の種類によって配合されている生薬の量は下記のようにやや異なります。

医療用の葛根湯には10種類以上のものがあり、それぞれ生薬の配合量が異なるため、「医療用と市販薬はまったく同じ効果」と言い切ることはできません。しかし、配合量の違いは小さな差でしかないため、医療用と市販薬とで効果が大きく変わることはないと考えられます。

また、市販薬の場合は、配合されている生薬の種類は同じでも濃度が異なるものもあるので注意してください。できるだけ医療用と同じものを使いたい方は、「満量処方」と記載されているものを選びましょう。

医療用と市販薬の配合成分比較
製品名 種類 配合成分
ツムラ葛根湯エキス顆粒 医療用
・葛根:4g
・大棗:3g
・麻黄:3g
・甘草:2g
・桂皮:2g
・芍薬:2g
・生姜:2g
クラシエ葛根湯エキス細粒 医療用 ・葛根:8g
・大棗:4g
・麻黄:4g
・甘草:2g
・桂皮:3g
・芍薬:3g
・生姜:1g
カコナール葛根湯顆粒[満量処方] 市販薬 ・葛根:8g
・大棗:4g
・麻黄:4g
・甘草:2g
・桂皮:3g
・芍薬:3g
・生姜:1g

市販薬の葛根湯に記載されている「満量処方」とは?

満量処方とは、日本薬局方で定められている葛根湯の処方通りの分量で作られた漢方薬のことです。つまり、基準内の最大量の生薬を配合したものが満量処方ということになります。

日本薬局方とは、医薬品の性状や品質を定めるための教科書的なものです。最大量の生薬を配合したものは満量処方、半分しか使用していないものは1/2量と記載されています。医療用と同等の効果が期待できる葛根湯が欲しい方は、できるだけ満量処方と記載されたものを選びましょう。

ただし、満量処方だから効果が高い、1/2量だから効果が低いとは一概には言えません。漢方薬は体質に合うかどうかが大事であり、生薬の配合量はあまり関係ないという考え方もあります。そのため、満量処方にこだわりすぎず、自分が使いやすいものを選ぶことが大切です。

市販薬の葛根湯のおすすめ3選!

では、ここからは市販で人気の葛根湯を3つ紹介します。メーカーや1日の服用回数などを見て自分に合うものを見つけてみてください。

 

カコナール葛根湯顆粒[満量処方]

メーカー:第一三共ヘルスケア
1日の服用回数:3回
第一三共ヘルスケアから販売されている葛根湯です。顆粒タイプなので漢方薬の味が苦手な方は飲みづらいと感じるかもしれませんが、満量処方なので医療用と近い処方になっています。一日に3回、食事の前もしくは食間に服用してください。似ている商品に「カコナール2葛根湯顆粒[満量処方]」がありますが、こちらは一日の服用回数が2回になっています。お昼に飲み忘れやすい方は、一日2回で済むタイプがおすすめです。

クラシエ葛根湯液II

メーカー:クラシエ
1日の服用回数:2回
風邪の症状が気になるときにさっと飲めるよう、液体タイプになっています。漢方薬を液体にしているので味はあまり美味しいものではありませんが、顆粒や粉を飲むのが苦手な方にはぴったりです。

「クラシエ」漢方葛根湯エキスEX錠

メーカー:クラシエ
1日の服用回数:3回
錠剤タイプの葛根湯です。フィルムコーティングされているので、漢方薬の味が苦手な方でも飲みやすいでしょう。葛根湯エキスが2/3量配合されています。満量処方ではありませんが、錠剤で飲みやすいこと、味やにおいが抑えられていることが特徴です。

まとめ

市販の葛根湯は医療用のものとほとんど変わりません。商品によって配合されている生薬のグラム数が異なる場合もありますが、使用されている生薬の種類は同じであることがほとんどです。

ただし、市販薬の場合は1/2量や2/3量など、満量処方でない商品も多くあります。満量処方だから効果が高いというわけではありませんが、できるだけ医療用に近いものを服用したい方は、満量処方と記載されているものを選びましょう。