整腸薬に含まれる菌はどれも一緒?基本知識やおすすめ製品を薬剤師が解説
「なんとなくお腹の調子が優れず、下痢気味の状態が続いている。下痢止めの薬を飲むほどではないけれど・・・」
そんな時は整腸薬の出番です。
整腸薬は腸の環境を整える作用があるため、こういった慢性的な下痢だけでなく、便秘にも効果を示します。
ただ、整腸薬の成分を見ても、難しい菌の名前が並んでいて、どういった効果があるのかピンときにくいですよね。
このコラムでは、整腸薬の役割や効果的な飲み方、そして含まれる生菌の特徴や選び方のポイントを踏まえ、おすすめの整腸薬をご紹介させていただきます。
整腸薬とは?
整腸薬は文字通り、腸内の環境を整える薬です。
そもそも、人間の腸内にはおよそ1000種類、100兆個もの細菌が生息していると言われており、人間にとって良い作用をもたらす善玉菌、有害な悪玉菌、そしてどちらにも属さない菌がバランスを取って存在しています。
ただし、そこに食事・生活の乱れや、ストレスが加わると、善玉菌が減り、悪玉菌が増えてしまうことで、下痢や便秘、お腹の張りなどといった不快な胃腸症状が現れてきます。
整腸薬は腸内環境において、善玉菌を増やして、悪玉菌を減らすよう、働きかける作用があるため、崩れた腸内細菌のバランスを回復させ、不快な胃腸症状を和らげる効果が期待できるのです。
整腸薬の効能・効果は?
整腸薬の効能・効果は「整腸(便通を整える)、軟便、便秘、腹部膨満感」であり、便秘、下痢のどちらにも有効です。
下痢に対しては止瀉薬(下痢止め)を用いることもできますが、特に感染症など菌が原因で下痢を起こしているときは、お通じを無理に止めてしまうと菌が体内から排出されなくなってしまうため、菌で乱された腸内環境を整える整腸薬を使う方が好ましいでしょう。
また、便秘に対しては、下剤を用いるという方法もありますが、あくまで一時的な解決策であり、基本的に常用するものではありません。
慢性的な便秘については、腸内環境自体を整える整腸薬を用いることで、副作用などの心配や体への負担もなく、改善が期待できるでしょう。
整腸薬を服用するタイミングは?
「乳酸菌は胃酸によってやられてしまうから、結局生きたまま腸までたどり着かない」
そういった話を聞いたことはありませんか。
実際、整腸薬に含まれる乳酸菌などは胃酸の影響を受け、減少することが報告されています。1)
しかし、空腹時の胃酸は確かに強い酸性(pH1〜2)ですが、食後には酸性の度合いはかなり落ち着いてくるため(pH4〜5)、胃酸の影響なく腸まで到達すると言われています。
そのため、市販の整腸薬は用法が食後服用となっている製品が多いのです。
ただ、食前に服用したからと行って、乳酸菌などが完全に死滅してしまうわけではありませんので、食欲がなく、食事が摂れない場合でも、服用するようにしましょう。
抗生物質(抗生剤)により整腸生菌は死滅する?
傷が化膿したり、副鼻腔炎などを起こしたりした際に病院から処方される抗生物質は、体の中に入り込んだ細菌を退治する作用があると同時に、腸内細菌にも影響を及ぼしてしまいます。
それゆえ、抗生物質を飲むと下痢の副作用が現れる人も多いですが、抗生剤は元からある腸内細菌だけでなく、整腸薬に含まれる生菌成分もやっつけてしまうため、通常の整腸薬を一緒に飲んでも望まれる効果を発揮できません。
そこで、医療用医薬品では抗生物質の影響を受けない整腸薬が一緒に処方されることがあり「耐性がある(Resistance)」という意味を示すRが製品名についています。(ビオフェルミンRやエンテノロンRなど)
ただ、酪酸菌など一部の整腸生菌は、元から抗生物質に耐性があるとも言われていますし、抗生剤の種類によっては耐性乳酸菌であっても効果がないものもあります。
抗生剤が原因による下痢に対して整腸薬を用いるときは、処方医か薬剤師に適した整腸薬を相談するようにしましょう。
整腸薬に含まれる生菌成分の種類は?
整腸薬の多くが、主な有効成分として整腸生菌を含み、製品によって複数種類配合していることもあります。
市販薬に含まれる代表的な整腸生菌薬成分をご紹介します。
・酪酸菌(宮入菌)
体内で酪酸・酢酸を作り出す細菌です。
酪酸は悪玉菌の増殖を抑え、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌の活動しやすい腸内環境を整える働きがあります。
また、芽胞(がほう)という強い膜に覆われているという特徴があります。
芽胞のおかげで、胃酸などの影響を受けずに生きたままで腸に到達しやすくなりますし、抗生物質の影響も受けにくいとされています。
・ビフィズス菌
体内で乳酸・酢酸を産生する細菌です。
悪玉菌の増殖を抑制する働きがありますが、胃酸に弱いため、なるべく胃酸の影響を受けない食後に服用することが好ましいです。
・フェーカリス菌
人間の体内に元から存在する乳酸菌の一種で、生きたまま効果を発揮するビフィズス菌などと違い、死んだ状態の死菌として配合されます。
他の善玉菌のエサとなり、増殖を促す作用があると共に、免疫力を向上する効果が高いという特徴があります。
・アシドフィルス菌
人間の体内に元から存在する乳酸菌の一種で、胃酸に強いため、直接腸に働きかけることができます。
悪玉菌の増殖を抑え、腸内環境を整える働きがあります。
・糖化菌(枯草菌、納豆菌など)
糖化作用を持つ細菌をまとめて糖化菌と呼びます。
腸内で善玉菌のエサとなり、働きをサポートする役割があります。
また、芽胞を持つため、熱や酸に強く、生きたまま腸まで届きます。
・ラクトミン
ラクトミンは一部の乳酸菌において、生菌を集め、乾燥させ添加物を加え製造したもの、と定義されています。
そのため、ラクトミンと記載があるものでも、原料となる乳酸菌はさまざまです。
主にフェーカリス菌が用いられることが多く、その他アシドフィルス菌やブルガリア菌なども挙げられます。
整腸薬の選び方のポイント
<乳酸菌の種類で選ぶ>
生菌成分で働きの差はありますが、人によって腸内細菌の環境は全く異なるため、効果があると感じる整腸薬も人によって異なることも多いです。
また、効果が出るまでの時間もさまざまで、服用後すぐに効果を実感する人もいれば、効果を感じるまで1週間程度かかる人もいます。
生菌を取り入れてから、腸内環境が整うまで2週間かかるという見解もあるため、2週間かけて期待以上の効果が得られない場合は、違う製品に切り替える目安時期であるとも言えるでしょう。
また、1ヶ月位服用しても効果が見られない場合は、隠れた疾患などが原因である可能性もあるため、病院を受診するようにしましょう。
<錠剤か散剤かで選ぶ>
製品によっては錠剤と散剤どちらの剤形も用意していることがあります。
(今回ご紹介する3製品は全て両方の剤形があります。)
錠剤は、手軽に飲めますが、5歳未満の子供には与えてはいけません。
散剤は、スプーンで計量する手間はありますが、水に溶かして飲むこともでき、月齢3ヶ月以上であれば赤ちゃんでも服用できます。
両者ともメリット、デメリットがあるため、家庭によって相応しい剤形を選びましょう。
<病院でもらったものと同じ成分で探す>
今回ご紹介する製品は、医療用医薬品の整腸薬を手がける会社が販売しているものであり、その中には有効成分の種類が同じ製品もあります。
もし、医療用の医薬品で効果を実感した整腸薬があるのであれば、そちらに合わせて製品を選ぶのも良いでしょう。
ただし、それとは逆に、名前は医療用のものと同じでも、中身の成分は異なるものもありますので、注意が必要です。
おすすめの整腸薬3選
強ミヤリサン(錠)
有効成分:酪酸菌(宮入菌)
散剤:新ミヤリサンアイジ整腸薬
特徴:酪酸菌のみを含む製品で、ミヤリサン株式会社という、医療用の酪酸菌製剤であるミヤBMも手がける会社の製品です。
医療用のミヤBM錠と有効成分は同じですが、含まれている量は少し異なります。
成人の服用量は1日あたり9錠で、90錠、330錠、1000錠と幅広いラインナップが用意されています。
新ビオフェルミンS錠
有効成分:ビフィズス菌、フェーカリス菌、アシドフィルス菌
散剤:新ビオフェルミンS細粒
特徴:ビオフェルミン製薬が製造しており、医療用のビオフェルミン錠やビオフェルミン配合散と同じ名前がついていますが、中身の成分は異なり(※)、3種類の乳酸菌を配合した整腸薬です。
さらにロンガム菌を追加し、4種類の乳酸菌で構成される、新ビオフェルミンSプラスも販売されています。
(※ビオフェルミン錠剤:ビフィズス菌、ビオフェルミン配合散:ラクトミン(フェーカリス菌)、糖化菌)
ビオスリーHi錠
有効成分:ラクトミン、酪酸菌、糖化菌
散剤:ビオスリーH(散剤)
特徴:医薬品のビオスリーを手がける東亜薬品工業株式会社が生産する製品です。
乳酸菌、酪酸菌、糖化菌 を含むことで、それぞれがサポートし合って腸内環境を整える効果があります。
医療用のビオスリー配合錠と有効成分、また含有している生菌数も同じです。
180錠や270錠入りの瓶以外にも、1錠ずつシート包装になっている42錠入りも存在するため、持ち運びに便利です。
まとめ
整腸薬の役割から効果的な飲み方、また含まれる生菌成分やおすすめの製品まで幅広くお伝えさせていただきました。
整腸薬は腸内環境を整えることにより、下痢や便秘などの胃腸の不快感に関して、穏やかな作用を持って改善することが期待できます。
含まれる生菌の種類によって、さまざまな製品が販売されていますので、自分の腸内環境に合うかどうか、また飲む人に合わせた剤形などをポイントに製品を選ぶようにすると良いでしょう。
このコラムが整腸薬をお探しのあなたにとって、お役に立てれば幸いです。