

その夏バテ、自己流は危険!薬剤師が教える「タイプ別 食欲不振」の正しい対策法
「とりあえずサプリ」「冷たいものは避ける」…間違いではありませんが、それで本当に改善しますか?
薬剤師の立場から言えば、夏の食欲不振は原因によって“効く対処法”が違います。
今回は「冷房バテ」「消化機能の低下」「水分代謝の乱れ」などタイプ別の症状と、正しい対策を医学的視点でご紹介します。


第1章:その「なんとなく不調」…原因は“冷えバテ”かも?
「最近なんだかだるい」「食欲がない」「夜もぐっすり眠れない」
こうした“なんとなく不調”の背景に、実は冷えによる夏バテが隠れているケースが増えています。
かつての夏バテは、強い暑さや発汗による体力消耗が主な原因でした。
しかし現代では、エアコンの効いた室内で長時間過ごすことが多く、体の深部が冷えることで自律神経が乱れやすくなっています。
このような状態を「冷えバテ」と呼びます。
内臓の働きが低下し、胃腸の不調、睡眠の質の低下、疲れやすさなど、さまざまな不調の原因になります。
■ こんな人は要注意!冷えバテ セルフチェック
以下の項目に当てはまる数をチェックしてみてください。
エアコンのある室内で過ごす時間が長い
冷たい飲み物やアイスをよく摂る
夜に寝つきが悪く、睡眠が浅い
食欲がわかない日が増えた
手足やお腹が冷えやすい
肩こりや生理痛がいつもよりつらい
3つ以上当てはまる場合、「冷えバテ」の可能性があります。
特に女性は筋肉量が少なく、冷えによる不調が出やすい傾向があります。
■ 放っておくと秋以降まで不調が続くことも
「夏の終わりになれば自然と治る」と考えて油断していると、秋まで不調を引きずってしまう人も少なくありません。
自律神経の乱れが慢性化すると、疲労感・睡眠障害・消化不良といったトラブルが続きます。
そのため、早めの対策と生活の見直しがとても重要です。


第2章:タイプ別に解説!夏バテ食欲不振の生活改善法
夏バテの症状といっても、原因は人それぞれ。
自律神経の乱れ、内臓の冷え、栄養不足――バテ方のタイプによって、対処法も変わります。
この章では、代表的な3タイプの「夏バテ食欲不振」に合ったセルフケアをご紹介します。
どのタイプも、まずは生活習慣の見直しがカギです。
【冷房バテタイプ】:自律神経が乱れて、だるさも食欲も回復しない
冷房の効いた部屋で長時間過ごすと、体の芯が冷え、自律神経のバランスが崩れがちになります。
眠りが浅くなったり、胃腸の働きが落ちたりして、なんとなく不調が続いてしまう――これが「冷房バテ」です。
◆ 睡眠環境を整える
夜は部屋の明かりを少し暗めにして、スマホやPCの使用を控えましょう。
眠りの質を高めるメラトニンの分泌が促され、体が回復しやすくなります。
◆ 服装で冷えをブロック
室温がちょうどよくても、足元やお腹は意外と冷えています。
薄手のカーディガンや腹巻き、レッグウォーマーなどで体を冷やしすぎない工夫を。
◆ 入浴で副交感神経を優位に
38〜39℃のぬるめのお湯に10〜20分つかると、リラックスモードに切り替わり、体がゆるみやすくなります。
【食冷えバテタイプ】:冷たい飲食物が、内臓の元気を奪う
氷たっぷりのドリンクや冷たい麺類は、夏の定番。
ですが、摂りすぎると胃腸が冷えきって、働きが落ち、食欲不振や下痢を引き起こします。
◆ 常温の飲み物を意識する
1日1回でもいいので、白湯や常温の水に切り替えてみましょう。
それだけで胃腸の負担がかなり軽くなります。
◆ 味噌汁を1品追加するだけで違う
あさりやワカメ、豆腐を入れた味噌汁は、内臓を温めるだけでなく、汗で失ったミネラルも補えます。
夏でも「汁物」は回復の鍵です。
◆ 夏野菜は火を通して取り入れる
トマトやきゅうりも、スープや炒め物にすれば冷えすぎを防げます。
体を温める調理法で“内臓の保温”を意識しましょう。
【栄養不足バテタイプ】“食べられない”ことで、さらに食べられなくなる悪循環
食欲がないと食事が簡素になり、エネルギー不足に。
結果、疲れやすさ・だるさが続き、胃腸の動きも鈍くなってしまいます。
◆ 朝食は抜かない。軽くてもOK
バナナ+味噌汁、ゆで卵+トーストなど、ちょっとした組み合わせでも、体のスイッチが入りやすくなります。
◆ ビタミンB1+アリシンのセットが効率的
・ビタミンB1:豚肉、玄米、カツオ、枝豆
・アリシン:ネギ、玉ねぎ、にんにく
これらを一緒に摂ると吸収率がアップし、疲労回復につながります。
◆ 脂っこい肉=スタミナ、は誤解も
胃腸が弱っているときに鰻や焼肉は逆効果になることも。
赤身肉や豆類、魚など、消化に優しいタンパク質源を選びましょう。
■ 生活改善が“体調の土台”を作る
食欲不振を感じたとき、つい市販薬に手が伸びがちですが、まずは日々の食事や睡眠、冷え対策を整えることが先決です。
生活習慣こそが、体調を支える“ベース”になります。


第3章:それでもつらい時に…薬剤師おすすめ市販薬
生活習慣を見直しても、「どうしても不調が抜けない」「食べる元気が出ない」――。
そんなときこそ、薬の出番です。
ただし、あくまでこれは“補助的な選択肢”。
まずは食事・睡眠・冷え対策を軸に体調を整えること。
それでもつらさが続くとき、体に合った市販薬でそっと後押ししてあげましょう。
ここでは、夏バテのタイプ別におすすめの市販薬を紹介します。
【冷房バテタイプ】冷えと自律神経の乱れが主な原因に
このタイプは「なんとなくだるい」「イライラする」「眠れない」「食欲が落ちた」など、
いわゆる“冷え+自律神経の不調”がセットで現れるのが特徴です。
こうした体調の波には、漢方薬が相性◎です。
◆ おすすめ市販薬:加味逍遙散(かみしょうようさん)
・冷え性で、ストレスを感じやすい女性向けの処方
・自律神経のバランスを整えつつ、気分の浮き沈みや食欲不振にも対応
【注意点】
・効果が出るまでに数日~1週間かかることもあります
・「冷え」が少ない方には不向きです
【食冷えバテタイプ】胃腸が冷えて働かない、そんなときの整え方
食べるとすぐ胃がもたれる、下痢しやすい、便がゆるい――。
このタイプには、「胃をあたためて元気にする」処方が適しています。
◆ おすすめ漢方薬:六君子湯(りっくんしとう)
・胃が弱く、食欲がないタイプに
・「気虚(ききょ)」というエネルギー不足に対応し、胃腸機能をサポート
◆ 補助的に使える整腸薬
・腸内環境が乱れている方は、乳酸菌製剤・酪酸菌製剤の力を借りるのもおすすめです。
・整腸薬は即効性ではなく、数日~1週間かけて腸内環境を整えていくイメージで使用しましょう。
ビオスリーHi錠
強ミヤリサン(錠)
【栄養不足バテタイプ】体の“エネルギー不足”を感じるときに
食事のバランスが崩れ、栄養が足りていないと、エネルギーが生まれず、疲労感や無気力が続きます。
このタイプは、「疲れがとれない」「何もしたくない」といった状態が特徴的です。
◆ おすすめ栄養補給系市販薬
アリナミンEXプラスα
ビタミンB1誘導体配合。末梢神経の回復や疲労感の改善に実績あり。
キューピーコーワiプラス
血流促進成分やビタミン群配合で、だるさや目の疲れにも対応。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
「胃腸が弱く疲れやすい人向け」の漢方。
夏バテで食事がとれない人におすすめ。
どれも、「元気が出ないけど、薬に頼ってもいいのかな?」というときの心強い選択肢です。
■ 長引く不調は「体からのサイン」
夏バテのつらさは、本人にしかわからないもの。
だからこそ、自分に合ったケアとペースで向き合うことが大切です。
薬は「最後のひと押し」。
生活改善で整えた土台の上に、薬を乗せることで、回復へのスピードが加速します。
それでも「1週間以上つらさが続く」「だんだん悪化している」――
そんなときは、迷わず医療機関を受診しましょう。
無理せず、あなたの体と心にやさしく。
夏を、軽やかに乗り越えていきましょう。
まとめ:夏バテの食欲不振に打ち勝つためのポイント
●夏バテは“冷え”や自律神経の乱れが原因になることも
暑さだけでなく、冷房や冷たい飲食物が不調の引き金になります。
●タイプ別のセルフケアで体を整えることが第一歩
冷房バテ・食冷え・栄養不足など、原因に合わせて生活改善を。
●それでもつらい時は“補助的に”市販薬を活用
漢方・整腸薬・ビタミン剤など、体質に合ったものを選びましょう。
●1週間以上続くなら医療機関へ相談を
夏バテの影に他の病気が隠れていることもあるため、放置はNGです。
夏の食欲不振は、“生活の乱れ”が原因になっていることが多いです。
まずは冷え・栄養・リズムを見直すのが基本。
それでもつらいときは、自分に合った市販薬で負担を軽くするのも有効です。
ただし、長引く不調は医師に相談を。
【参考情報】
この記事の作成にあたり、以下の公式情報を参考にしています。
ご自身での確認や商品選びの際にご活用ください。
◆ メーカー公式製品情報
・ツムラ|漢方処方製品情報
・アリナミン製薬|アリナミンブランドサイト
・ミヤリサン製薬|ミヤリサン製品情報
・アリナミン製薬|ビオスリーHi錠
・興和株式会社|キューピーコーワシリーズ製品情報