乗り物酔い
「せっかくの遠出や旅行なのに、乗り物酔いのせいで台無しになってしまった」という経験はありませんか?吐き気やめまい、頭痛などの症状が続くとつらいですよね。そのようなときに活用したいのが、乗り物酔いを予防したり症状を抑えたりする効果のある酔い止めです。
一見すると酔い止めはどれも同じように見えてしまうかもしれませんが、実は商品ごとに違いがあります。今回は、乗り物酔いの原因や酔い止めの特徴、酔いを予防する方法などを詳しく見ていきましょうO
乗り物酔いとはどのような状態?
乗り物酔いは、動揺病とも呼ばれている人工的な病的反応の一つです。はっきりとした原因はわかっていませんが、目が車や船などの加速や減速によって受ける情報と耳が受ける情報とに差が出て脳が混乱することで症状が出ると考えられています。
吐き気のことを表す「nausea」という英語は、船のことを意味するギリシャ語の「naus」が語源だとする説があるように、乗り物酔いが古くから私たちを悩ませてきたことがわかるでしょう。
一般に乗り物酔いは、大人よりも子どもがなりやすいことが特徴です。4~12歳頃までは前庭小脳という体のバランスを保つ器官が発達している途中のため、大人と比べて酔いやすくなります。
乗り物酔いの症状は?
頭重感や頭痛、生つばやあくびなどは乗り物酔いの代表的な初期症状です。吐き気やめまい、頭痛などの症状が代表的です。症状が進むと、嘔吐してしまうこともあります。手足が冷たくなったりふらついたりなどの症状が出る方もいるでしょう。
乗り物酔いに効果がある成分、市販薬とは?
乗り物酔いに効果がある成分は、大きく3つにわけられます。それぞれどのような特徴があるのか、どういった市販薬があるのかを見ていきましょう。
抗コリン成分
成分名:スコポラミン
抗コリン成分は、乗り物酔いの予防に優れた効果があります。酔い止めに使われる抗コリン成分は、スコポラミンが代表的です。副作用として口の渇きやドライアイなどの症状が出ることがあります。
トラベルミンR
11歳から服用できる酔い止めです。乗り物酔いの予防に効果があるスコポラミンをはじめ、自律神経の異常な興奮を抑えるジフェニドールや感覚の混乱を予防するカフェインが配合されています。ジフェニドールは酔ってからでも効くため、トラベルミンRは乗り物酔いの予防としても治療としても使用可能です。
ポード
乗り物酔いの予防に効果があるスコポラミン、眠気や頭痛を緩和するカフェイン、神経機能を正常化させるピリドキシン塩酸塩が配合されています。眠気が出やすい成分が入っておらず、さらにカフェインも配合されているので「乗り物酔いを予防したいけど、お出かけや観光もしっかり楽しみたい」という方に向いているでしょう。
抗ヒスタミン成分
成分名:クロルフェニラミン、マレイン酸フェニラミン、ジフェンヒドラミン、メクリジンなど
抗ヒスタミン成分は、酔ってからでも効く成分です。乗り物酔いの予防効果もありますが、抗コリン成分のスコポラミンと比べると効果は高くありません。副作用として眠気が出やすいので、移動時間を寝てやり過ごしたい方にも向いています。
トラベルミン
抗ヒスタミン成分のジフェンヒドラミンが配合された酔い止めです。ジフェンヒドラミンの効果を高めて眠気の副作用を減らすジプロフィリンも配合されています。4時間以上の間隔を空けて1日3回まで服用可能です。
トラベルミンチュロップぶどう味・レモン味
飴タイプの酔い止めで、5歳から服用できます。抗ヒスタミン成分のクロルフェニラミンと、抗コリン成分のスコポラミンの両方が配合されているため、予防薬としても酔った後の治療薬としても使えることが特徴です。
アネロン「ニスキャップ」
抗ヒスタミン成分のマレイン酸フェニラミン、抗コリン成分のスコポラミンなどが配合されています。胃粘膜をマヒさせて吐き気を緩和するアミノ安息香酸エチルも配合されているため、吐き気が強いときにも使いやすいでしょう。1日に1回の服用で効果が持続します。
その他の有効成分
酔い止めは抗コリン成分と抗ヒスタミン成分がメインの成分ですが、ほかにも症状の緩和を助けてくれる成分がいくつかあります。
・ジフェニドール
めまいの治療にも用いられる成分です。自律神経が以上に興奮するのを抑えて乗り物酔いの症状を緩和します。抗コリン作用をもっているため、口やのどの乾きが起きやすい成分ですが、眠気はあまり出ません。
・アミノ安息香酸エチル
麻酔作用のある成分です。胃粘膜の神経伝達をマヒさせることで吐き気を緩和します。
・カフェイン、ジプロフィリン
中枢を興奮させることで、感覚の混乱を予防する成分です。眠気の副作用を軽減する効果もあります。
・ピリドキシン
吐き気やめまいの軽減を目的として配合される成分です。
薬を使わないで乗り物酔いを予防する方法
緑内障や前立腺肥大症などがある方だと、症状が悪化する可能性があるため酔い止めの薬が使えない場合があります。また、乗り物酔いを防ぐには、酔い止めを使うだけでなく予防することも大切です。酔い止めが使えない方、予防したい方は次の方法を試してみてください。
・前方の遠くのほうを見るようにする
・進行方向を向いた席に座る
・カーブの際は、遠心力に任せず頭を内側に傾ける
・空腹の状態で乗り物に乗らない
・窓を開けて換気をする
・好きな音楽を聴く
・乗り物に乗っているときは寝て過ごす
乗り物酔いは「酔うかもしれない」という不安や緊張によっても症状が出てしまうものです。「乗り物にのっても自分は酔わない」と自己暗示をかけることも予防に効果があります。
まとめ
乗り物酔いは脳が混乱することで起こる病的反応です。とくに4~12歳頃の子どもで起こりやすく、大人になると次第に症状が出にくくなることがほとんどでしょう。酔い止めの成分には、乗り物酔いの予防に効果がある抗コリン成分と、酔ってからでも効く抗ヒスタミン成分とがあります。
どちらの成分も入っている酔い止めをもっておくと安心です。入っている成分のほか、液体や飴など好みの剤形で選んでも構いません。酔い止めを予防で使う場合は、乗り物に乗る30分前には服用するようにしてください。