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お薬コラム
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更新日:2022/08/13
夜尿症(おねしょ)

「小学校高学年になるのに子どもの夜尿症が治らない」

「夜尿症はどうすれば治るの?」

 

とお悩みではありませんか?夜尿症は決して珍しいものではなく、7歳児では10人に1人で見られる病気です。

とはいえ、濡れた布団を毎日のように洗うのは大変ですし、「もしかしたら何か病気があるのかも」と不安になりますよね。

 

そこで今回は、夜尿症の原因や治療方法、市販薬での対処方法などについて解説します。

監修薬剤師 ハラクロ
薬剤師ライター 岡本 妃香里

夜尿症(おねしょ)とは?

夜尿症とは、寝ている間のおねしょが長期間にわたり続くものです。具体的には、「5歳以上で1か月に1回以上の夜尿が3か月以上続くもの」と国際小児尿禁制学会によって定義されています。

おねしょは小さな子どもなら普通に見られるものですが、5歳以上になっても続く場合は夜尿症の可能性が高いと考えられるでしょう。

ただし、夜尿症が見られるのは何も小さな子どもだけではありません。多くの方は成人するまでに治りますが、15歳以上の方でも1~2%は症状が継続するといわれています。

夜尿症(おねしょ)の原因

夜尿症はある一つの原因が引き金となっていることもあれば、複数の要因が絡み合って起こることもあります。発達の遅れや遺伝的要素によることもわかっていますが、とくに原因となりやすいのが、次に紹介する3つのものです。

夜間の尿量が多い

夜間に分泌される抗利尿ホルモン(バソプレシン)の量が少ないと、尿量が多くなりおねしょをしやすくなります。抗利尿ホルモンとは利尿を妨げるホルモンのこと、つまり尿量を減らすホルモンのことです。夜尿症の方は、抗利尿ホルモンの分泌量が低下しているといわれています。

膀胱の働きが未熟

膀胱や腎臓にも体内時計があり、通常であれば夜は腎臓で作られる尿の量が減り、膀胱はたくさんの尿をため込めるように容量が大きくなります。
しかし、夜尿症の方ではこのリズムが崩れているため夜間でも排尿が起こりやすくなってしまうのです。また、睡眠中に膀胱が過度に収縮することも関係しています。

睡眠が深い

夜尿症の方では、深く眠りについていることが多く、起こしても起きないことが多いことが特徴です。また、睡眠時無呼吸症候群があると排尿を促すホルモンの分泌量が増えることもわかっています。

夜尿症の生活上の注意点

夜尿症を治療するうえで生活指導が行われることも少なくありません。しかし、なかにはあまり効果がなかったり、子どもや親にとって負担となったりすることもあるので注意が必要です。

夜中に起こしてまでトイレに行かせる必要はない

夜間に起こしてトイレに連れていくことで、体内時計に変化が起きてかえって夜間の尿量が増えたという報告があります。睡眠障害が起こる可能性もあるため、むりに起こす必要はありません。

一方で、4~5歳の子どもであれば夜に起こすことが夜尿症の治療に効果を発揮した例もあります。ただし、夜尿症が長期的に改善されたのか、再発はしなかったのかについてはわかっていません。

水分摂取量やタイミングに注意する

夕方から夜にかけての水分摂取量が多くなると、それだけ夜間に排尿してしまう確率も上がります。寝る前に多量の水分摂取をする習慣がある場合は量を減らし、日中に水分補給するようにしてみてください。また、塩分やたんぱく質の過剰摂取も夜尿症に関係していると言われているため、これらの摂取を控えるのもよいでしょう。

体が冷えやすい方は温める

体が冷えると、膀胱に溜められる尿量が減少します。靴下を履いたり掛け布団を1枚増やしたりなど、睡眠中に体が冷えないように対策を行いましょう。

夜尿症の治療をするには?

夜尿症の治療をするためには、まず小児科や泌尿器科を受診することが基本です。夜尿症は子どもの自尊心を傷つける原因ともなるため、早めに適切な治療を受けましょう。

排尿訓練を行う

排尿訓練とは、できるだけ排尿を我慢したり、決まった時間にトイレに行ったりすることで正しい排尿のリズムを身につけていく治療です。
子どもの生活リズムに合わせた排尿訓練の方法を医師が提案してくれるので、それに従って実施していきましょう。

抗利尿ホルモンの点鼻薬を使う

尿量を減らす働きのあるホルモンの分泌量を増やすデスモプレシンという薬は、夜尿症の治療によく用いられています。鼻にスプレーするタイプの薬なので、薬の服用によって水分の摂取量が増えてしまうことはありません。6歳以上の子どもから使用できます。

漢方薬を使う

症状が軽かったり、ほかの薬で効果が見られなかったりした場合は漢方薬も候補となります。口の渇きを減らして水分摂取量を減らしたり、睡眠の質を高めたりすることで夜尿症の症状緩和を目指すものです。

夜尿症に効果のある市販薬は?

医療機関で一般に使われている夜尿症の治療薬は、市販では扱いがありません。そのため夜尿症が気になる場合は、市販薬を使うのではなく医療機関の受診をおすすめします。

ひとまず治療を始めてみたい方、どうしても病院に行く時間が取れない方は次のような市販薬を使ってみてもよいでしょう。なお、市販薬では漢方薬のみの取り扱いとなります。

小建中湯(しょうけんちゅうとう)

過剰に収縮してしまう膀胱の動きを抑える漢方薬です。体力があまりなく、疲れやすくて冷えやすい方に向いています。夜尿症のほかに、夜泣きの改善にも効果的です。

桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)

体力があまりなく、ストレスを感じやすい方に向いています。精神的な要因が関係している夜尿症の治療に向いている漢方薬です。神経の高ぶりを鎮める効果もあるため、夜泣きや不眠などにも効果があります。

まとめ

5歳以上になってもおねしょが続く場合は、夜尿症の可能性を疑ってみてください。夜間の尿量が多かったり、膀胱がうまく働かなかったりすることで起こります。

夕方から夜にかけての水分摂取量を減らしたり、体を温めたりすることで改善されることもありますが、しっかり治療したい方は医療機関を受診しましょう。

市販薬で対処したい場合は、漢方薬が選択肢となります。夜尿症に対して漢方薬の効き目はゆるやかだといわれているため、できれば受診して専用の治療薬を処方してもらうようにしてください。

 

〈参考資料〉
夜尿症診療ガイドライン2016
『おねしょ』(夜尿症)が治らない | 日本泌尿器科学会 (The Japanese Urological Association)