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お薬コラム
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更新日:2022/03/13

鼻水、くしゃみ、鼻づまり

「鼻づまりがつらい」「花粉症がひどくて集中できない」
このように、鼻の症状でお悩みの方は多いでしょう。実際、日本人の40〜50%が鼻炎であるという報告もあります。スギ花粉症の子どもも年々増加傾向です。
たくさんの方が悩んでいる鼻の症状がなぜ起こるのか、そして、症状や年齢に合わせた市販薬の選び方について解説します。

監修薬剤師 ハラクロ
薬剤師ライター 中山 歩実

鼻水・くしゃみ・鼻づまりのメカニズム

鼻水・くしゃみ・鼻づまりは、鼻から侵入したウイルスや花粉に対する体の防御反応です。

鼻水・くしゃみは鼻をきれいに保つ役割がある

鼻水は、花粉症のシーズンや風邪をひいたときだけでなく、日頃から「粘液」として毎日1リットルほど作られています。鼻の中を加湿したり、細かいほこりなどを取り除いたりするのが代表的な役割です。くしゃみも鼻水と同様、ほこりなどの異物を排出するために働きます。
鼻の粘膜にウイルスや花粉などの異物が付着すると、アレルギー反応の元になる「ヒスタミン」という物質が体内で放出されます。すると、異物を体の外へ出すために鼻水が多く分泌されたり、くしゃみが出たりします。鼻水やくしゃみは、ある程度は止めずに出しておいた方が、異物の排出のためによいのです。

鼻づまりは腫れが原因

鼻づまりは、大まかに3つの原因が考えられます。
① ウイルスや花粉が侵入するのを防ぐために粘膜が腫れる、鼻水が増える
② 「副鼻腔」で炎症が起き、膿がたまっている
③ 「鼻中隔」が曲がっている
市販薬で対応できるのは、主に①の粘膜の腫れ、いわゆる鼻炎・アレルギーです。鼻炎の薬には、大きく分けて2つの種類があります。

鼻炎の薬の選び方

鼻炎の薬には、大きく分けて2つの種類があります。

抗ヒスタミン:くしゃみ・鼻水を鎮める
血管収縮薬:鼻づまりを改善する

ヒスタミンは、アレルギーの原因物質が鼻の粘膜に付着したときに分泌されて、鼻水やかゆみの原因となる物質です。抗ヒスタミン薬は、分泌されたヒスタミンが働かないように邪魔します。
血管収縮薬は、鼻粘膜にある血管を収縮させることで、粘膜の腫れを抑えて鼻づまりを解消する薬です。毎日漫然と使用するのではなく、どうしてもつらいときにだけ使用します。

抗ヒスタミン薬の選び方

抗ヒスタミン薬は、市販薬の中でも種類が多いです。病院でもらえる薬と同じ成分のものもたくさんあります。
比較的安全に使用できますが、副作用はさまざまありますので、自分に適したものを選びましょう。

下記一覧は抗ヒスタミン薬の成分ごとに、対象となる疾患(花粉症、風邪への効果)、眠気副作用の有無、高齢者が安全に使用可能かどうか、基礎疾患(腎臓病、緑内障、前立腺肥大症)を持っていても服用可能かどうかを示したものです。

成分名 花粉症 風邪 即効性 眠気 高齢 腎臓病 緑内障 前立腺
肥大症
クロルフェニラミン × ×
ジフェンヒドラミン × ×
クレマスチン × ×
ケトチフェン × ×
メキタジン × × × × ×
セチリジン × × × ×
ロラタジン × × ×
エピナスチン × ×
フェキソフェナジン × × ×

眠気が出やすい薬は、車や自転車の運転をする方、テスト前の方などには向きません。眠いと自覚していなくても、判断力が低下していることがあるため、運転は避けてください。眠気が出にくい・出ないとされている薬でも、人によっては眠気を感じます。安全のために、初めて飲むのは運転をしない日にしましょう。

即効性のある薬は、症状が悪化している状態で今すぐ効果がほしい場合・頓服薬として使用したい場合に向いています。ただし、副作用として便秘・喉や口の渇き、動悸などがあげられるほか、緑内障と前立腺肥大症のある方は使用できません。高齢の方も避けた方がよいとされています。

鼻炎の薬に限りませんが、高齢の方・腎臓病の方は避けた方がよい薬がいくつかあります。市販薬を購入する前に、薬剤師や登録販売者に確認してください。

 

〈眠気が出にくい市販内服薬〉 アルガード クイックチュアブル

比較的眠気が出にくいとされている抗ヒスタミン成分「メキタジン」を配合しています。
花粉などのアレルギー性鼻炎だけでなく、風邪が原因のくしゃみ、鼻水等の急性鼻炎にも効果があります。
水なしでいつでも飲めるチュアブルタイプです。

〈眠気が出ない市販内服薬〉 アレグラFX

医療用医薬品アレグラ錠60㎎と同じ有効成分「フェキソフェナジン」を配合しています。
最も眠気が出にくいとされている鼻炎用内服薬の一つで、服用後の車の運転は可能です。

〈即効性の高い市販内服薬〉 コルゲンコーワ鼻炎フィルムα

即効性の高い抗ヒスタミン成分「クロルフェニラミン」を配合しています。
水なしで服用できるフィルム剤ですので、外出先でも安心です。
ただし、眠気が出る可能性があるので服用後の車の運転などは控えて下さい。

血管収縮薬の飲み薬の特徴

血管収縮薬の飲み薬には、「プソイドエフェドリン」があります。鼻づまりに対して即効性があり、とてもよく効く薬です。
しかし、「プソイドエフェドリン」にはいくつか注意事項があります。
・長期間使うと、薬剤誘発性鼻炎をおこす(使用は2週間まで)
・スポーツ選手の方は、ドーピングに該当するため使用できない
・高血圧、不整脈、糖尿病、甲状腺疾患のある方は使用できない

ふだんは抗ヒスタミン薬を定期的に内服し、大勢の前でプレゼン発表があるなど、どうしても鼻づまり症状を改善したいときに血管収縮薬を飲む、という使い方が推奨されます。

 

〈血管収縮薬配合の市販内服薬〉 新コンタック600プラス

血管収縮薬「プソイドエフェドリン」を配合し、鼻づまりに効果が高い鼻炎用内服薬です。
持続性カプセルで1日2回の服用で効果を発揮します。

点鼻薬の選び方

点鼻薬には、血管収縮薬、ステロイド、抗ヒスタミン薬の3種類があります。

血管収縮薬 ナファゾリン
オキシメタゾリン
テトラヒドロゾリン
ステロイド フルチカゾンプロピオン酸エステル
フルニソリド
べクロメタゾンプロピオン酸エステル
抗ヒスタミン薬 クロルフェニラミン
ケトチフェン

これらが単独のものもあれば、配合されているものもあります。

血管収縮薬は、内服薬と同様に点鼻薬であっても長期間使用するのは避けた方がよいです。試験があるなど、鼻炎を気にせず集中したい日に限定して使うのがよいでしょう。
血管収縮薬は鼻づまりに即効性があるため、頻回に使いたくなってしまう気持ちはわかります。飲み薬と比べると、「点鼻薬は何回も使って大丈夫」と思っている方が多いです。しかし、使いすぎることで帰って粘膜の炎症を引き起こし、鼻づまりが酷くなってしまうかもしれません。血管収縮薬の点鼻薬を頻繁に使いたいほどに症状の重い鼻炎・アレルギーの方は、耳鼻科を受診して根本的な治療をおこなってくださいね。

ステロイドは体内でも作られるホルモンの一種で、炎症を抑える薬です。炎症が起きている鼻の粘膜に直接点鼻することで、鼻水・鼻づまりの症状を改善します。
ステロイドの点鼻薬は、即効性はないですが、定期的に使用することでしっかりと鼻水・鼻づまりの症状を抑えることが可能です。「ステロイド」と聞くと副作用があるのではと不安になってしまう方もいるでしょう。じつは、ステロイドの点鼻薬が全身に作用することはありません。鼻の粘膜にだけ部分的に働いて効果を発揮するため、副作用がとても少ないのです。鼻づまりが気になるときに使用するのではなく、定期的に点鼻してください。

抗ヒスタミン薬の点鼻薬は、飲み薬の抗ヒスタミン薬と同様、少し眠気が出ることがあります。鼻詰まりへの効果は弱いです。飲み薬の種類が豊富なので、点鼻薬はあまり使われません。
現在、抗ヒスタミン薬成分のみの点鼻薬は販売されておりません。(2022年2月時点)

 

〈血管収縮薬配合の市販点鼻薬〉 パブロン点鼻

鼻づまりを改善する、血管収縮薬「ナファゾリン」を配合しています。
即効性の高い抗ヒスタミン成分「クロルフェニラミン」が、素早く、くしゃみ、鼻水を鎮めます。
アレルギー性鼻炎だけでなく、風邪による急性鼻炎にも効果があります。

〈ステロイド配合の市販点鼻薬〉 エージーアレルカットEXc〈季節性アレルギー専用〉

ステロイド成分「ベクロメタゾンプロピオン酸エステル」が、くしゃみ、鼻水、鼻づまりに効果を発揮します。
血管収縮薬や抗ヒスタミン成分を含まないため、副作用が少ない点鼻薬です。

鼻症状には漢方薬も

漢方薬の中にも、鼻症状に効果的なものがいくつかありますので、紹介します。

漢方薬 読み方 鼻水 鼻づまり
小青竜湯 しょうせいりゅうとう ×
葛根湯加川芎辛夷 かっこんとうかせんきゅうしんい ×
荊芥連翹湯 けいがいれんぎょうとう ×
辛夷清肺湯 しんいせいはいとう ×

小青竜湯

水っぽい鼻水が出ているときに向いた漢方薬です。体の水分バランスを調整することで鼻水を解消します。アレルギーや鼻炎によく用いられる漢方薬です。

葛根湯加川芎辛夷

風邪薬で有名な「葛根湯」に川芎と辛夷という2種類の生薬を加えたもの。鼻づまりのほか、慢性的な鼻炎、蓄膿症などにも用いられます。体をあたためる作用があるので、鼻の周囲に冷えを感じる鼻づまりの場合に効果的です。

荊芥連翹湯

慢性的な鼻づまりによく用いられます。熱を冷まして腫れを抑える作用の漢方薬です。含まれる生薬の数が非常に多く、胃腸の負担になることがあるため、体力のない方には向きません。鼻周囲が熱っぽく、炎症を起こしている方に向いています。

辛夷清肺湯

鼻づまりを改善する漢方薬です。胃腸に少し刺激のある生薬が含まれているため、胃腸の弱い方には向きません。鼻の周りに熱っぽさや痛みのある方に向いています。

症状が重いときには受診を

「春になると鼻水が出るから、多分花粉症だと思う」
このように、病院に行ったことがなく我慢をしている・市販薬でずっと対応しているという方も少なくありません。

花粉症の場合、花粉のシーズンになる前から治療を開始してアレルギー症状を抑える「舌下免疫療法」がおこなえる場合があります。

ただの鼻炎と思っていても、じつは蓄膿症であったり、「鼻中隔湾曲症」という病気であったりということも。
症状が重く、毎年つらいけど受診していなかったという方は、この機会に耳鼻咽喉科などを受診してみてはいかがでしょうか。

まとめ

日本人の2人に1人が悩まされている、鼻炎やアレルギーなどによる鼻症状。
たくさんの種類の市販薬が販売されており、中には病院の処方薬と同じ成分のものもあります。生活や仕事に支障が出ないよう、症状を抑えて快適に過ごしましょう。
原因や持病によって、使用できる薬の種類が変わります。今回ご紹介した薬ごとの違いを見ながら、ぜひご自身に合った薬を見つけてください。

 

<参考資料>
・松原篤 他. 鼻アレルギーの全国疫学調査2019(1998年,2008年との比較):速報-耳鼻咽喉科医およびその家族を対象として. 日耳鼻 123: 485-490. 2020.
・日本老年医学会. 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン