栄養ドリンクとエナジードリンクの違いは?効果や注意点について薬剤師が解説
スーパーやコンビニでよく見かける『エナジードリンク』は、飲むと疲れが飛んで力が湧いてきそうなイメージがありますよね。
そうすると「あれ?栄養ドリンクとどう違うの?」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は栄養ドリンクとエナジードリンクは法律的に全く分類が異なる飲み物です。
それによって効果や注意点などが異なるため、このコラムではそのあたりの違いや、エナジードリンクに含まれる成分や注意点について、詳しくご説明させていただきます。
思わぬ事実に、今後の製品選びが変わってくる可能性もありますので、エナジードリンクと栄養ドリンクを同じ感覚で飲んでいたという人はぜひ最後まで読んでみてくださいね。
法的な分類の違い
栄養ドリンクは、『医薬品』『医薬部外品』、
エナジードリンクは『清涼飲料水』いわゆる「食品」に分類されます。
各々の特徴を簡単に以下の表にまとめました。
医薬品 | 医薬部外品 | 清涼飲料水 | |
分類 | 栄養ドリンク | エナジードリンク | |
特徴 | 病気の治療や予防を目的として製造されたもの | 医薬品と比べて安全性が高い成分を用い、身近な場所でも購入できるようにしたもの | いわゆる食品に分類されるもの エナジードリンクと呼ばれ、栄養ドリンクとは分けられることが多い |
販売 | 登録販売者や薬剤師でないと販売ができない | 販売者に制限がないため、薬局に限らず、コンビニなど、どこでも購入が可能 | 販売者に制限がないため、薬局に限らず、コンビニなど、どこでも購入が可能 |
製品の審査 | 厚生労働省による厳しい審査が必要 | 厚生労働省による厳しい審査が必要 | 特に審査は必要ない |
有効成分 | 含まれる | 含まれる | 含まれない |
表示 | 「効能・効果、用法・用量」を記載することができる | 「効能・効果、用法・用量」を記載することができる | 効能・効果 や用法・用量を記載することはできない |
飲み方 | 用法・用量を守る (1日1本) |
用法・用量を守る (1日1本) |
飲み方や本数に明確な決まりはない |
医薬品と医薬部外品に属する栄養ドリンクは、厚労省の認めた有効成分を配合することで、効能・効果や用法・用量を記載することができ、飲む際には、その用法・用量を必ず守る必要があります。
ただ、エナジードリンクに関しては、あくまで食品であるため、例えばビタミンなど栄養ドリンクと同様の成分が含まれているものであっても、厚労省の審査は受けておらず、有効成分とは認められません。
それにより、用法・用量も定められておらず、飲み方などに対する明確な決まりもないというのが、栄養ドリンクとの大きな違いと言えるでしょう。
また、栄養ドリンクの中でも医薬部外品に属するものは、有効成分の安全性が比較的高いため、コンビニなど身近な場所でも購入できるようになっています。
そういったコンビニや、場合によってはドラッグストアなどにおいても、栄養ドリンクとエナジードリンクが同じ箇所に陳列されていることもありますが、栄養ドリンクには「医薬品」「(指定)医薬部外品」、そしてエナジードリンクには「清涼飲料水」もしくは「炭酸飲料」と製品に必ず表示されていますので、それらを目安に製品の見分けを行うようにしましょう。
エナジードリンクは効果がない!?
上でご説明させていただきました通り、エナジードリンクには国から認められた「有効成分」は含まれず、「効能・効果」も記載することはできません。
そうすると、エナジードリンクは全く効果のない飲み物なのでしょうか。
答えは「効果が全くないとは言い切れません。」
その理由は、エナジードリンクに含まれているビタミンやカフェインなどは、医薬品や医薬部外品として同じ成分が使われていることもあるからです。
同じ成分を使っているのに「効能・効果」の有無が異なるのも変な話だと感じる人もいるかもしれませんね。
これらの違いは、法律の規制や厳しい審査の有無をクリアしているかどうかによります。
栄養ドリンクに含まれるビタミンやカフェインなどは、薬機法で定められた審査基準をクリアすることで、効果効能をうたうことができます。
一方、エナジードリンクに含まれるビタミンなどは、食品衛生法で定められた種類のもののみ、あくまでも添加物の一種として加えられています。
しかし、添加物であることで、栄養ドリンクよりビタミンやカフェインの量を少なくしないといけないなどの決まりはありませんし、人体に効果を示さないわけではありません。
あくまでも、国が認めている「効能・効果」が記載できないだけであり、添加されている個々の成分に期待される効果は少なからずあると言えるでしょう。
エナジードリンクに含まれる成分とは?
エナジードリンクに含まれている代表的な成分をご紹介します。
栄養ドリンク内には、有効成分として含まれていることも多いです。
<ビタミンB群>
ビタミンB群とは、ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン(ニコチン酸アミド)、ビオチン、パントテン酸、葉酸の8種類をまとめて呼ぶ名称です。
個々の成分によって少しずつ働きは異なりますが、主には体がエネルギーを作るための過程をサポートすることで、疲労回復などに効果があると言われています。
また、髪や肌の健康を保つ働きを行うことでも有名です。
<アミノ酸>
アミノ酸は、筋肉などを含む人間の約20%を構成する「タンパク質」の元になる栄養素です。
栄養ドリンクであれば「タウリン」というアミノ酸も有名ですが、医療用の成分であるため、エナジードリンクには成分として含むことができません。
以下に、エナジードリンクに含まれる代表的なアミノ酸をご紹介します。
・カルニチン
抗酸化作用を持つことで、疲労回復に効果があると言われています。
また、脂質の代謝にも関与することで、エネルギーを作り出して肉体疲労を改善するほか、ダイエットにも適した成分であると言われています。
・BCAA
バリン、ロイシン、イソロイシンという3種類の分岐鎖アミノ酸の総称です。
運動中のエネルギー源として使われるため、これらのアミノ酸の摂取により筋肉疲労の回復効果や筋力アップの効果が期待されます。
・アルギニン
疲労物質の1種とされるアンモニアの産生を抑える作用があるため、疲労に対して効果的な成分です。
また、成長ホルモンの分泌を促進することで、脂肪燃焼・筋肉増加に働きかけることも報告されています。
<生薬成分>
生薬は植物や動物の中で効果のある一部を加工したもので、漢方薬の原料にもなる成分です。
エナジードリンクには、その中でも高麗人参根エキスが含まれている製品が多いです。
高麗人参は疲労回復効果、食欲増進効果、血行不良や冷え性の改善効果などが期待できます。
<カフェイン>
覚醒作用があるため、眠気を飛ばしたり集中力を上げたりする効果が期待できます。
そのため、エナジードリンクだけでなく、栄養ドリンクにもよく含まれている成分です。
しかし、カフェインは大量に摂取すると人体にとって悪影響を及ぼす可能性もあるため、摂取量に注意が必要です。
エナジードリンクの過剰摂取は危険!
栄養ドリンクは、基本的に1日1本と用量が定められている製品が多く、服用にあたってはその量を守る必要があります。
しかし、それに対し、エナジードリンクは用法・用量が設定されていません。
そのため、意識せず水分補給感覚で飲んでいると、成分の過剰摂取により、予期せぬ体への影響が現れ、時には命に関わることもあります。
その主な要因となるのが『カフェイン』です。
カフェインはコーヒーやお茶など、身近な飲料に含まれているため、それほど危険な成分であるというイメージはないかもしれません。
しかし、エナジードリンクに含まれるカフェイン量はかなり多めで、他の飲み物と比べても以下のような差があります。
飲料 | カフェイン量 |
コーヒー(ドリップ) | 60mg/100mL |
コーヒー(インスタント) | 一杯あたり80mg |
紅茶 | 30mg/100mL |
煎茶 | 20mg/100mL |
ほうじ茶 | 20mg/100mL |
エナジードリンク又は眠気覚まし用飲料 (清涼飲料水) |
32~300 mg/100 mL (製品1本当たりでは、36~150 mg) |
健康な成人の場合の、1日あたりのカフェイン最大接種量目安は400mgとされているため、仮に1本150mgのカフェインを含むエナジードリンクであれば3本でオーバーしてしまうことになります。
コーヒーやお茶を併用して1日に飲む人の場合は1日2本であっても、目安量を超えてしまう可能性があるでしょう。
体内でカフェインが過剰になると、めまい、心拍数の増加、興奮などといった症状が現れ始め、さらに体内濃度が上がった場合は意識消失や精神錯乱、痙攣などといった重篤な症状に移行します。
その結果、日本においても死者が出ているという報告があります。
エナジードリンクを飲む場合は1日1本〜2本に収めるように心がけ、他のカフェインが含まれる食品、飲料などとの併用に注意しましょう。
また、栄養ドリンクに限らず、風邪薬などの医薬品にもカフェインが含まれることが多々ありますので、飲み合わせには注意が必要です。
医薬品に含まれるカフェインについて、詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご参照ください。
栄養ドリンクとエナジードリンクの使い分けは?
栄養ドリンクは滋養強壮や疲労回復をはじめとした『効能・効果』を期待する場合に選びましょう。
配合成分の違いにより「冷えの改善」や「栄養補給」など、期待できる効能・効果が少しずつ異なってくるため、ご自分が期待する効果に沿った製品を選ぶためには、いくつかのポイントに沿って探すことをおすすめします。
栄養ドリンクの選び方について詳しく知りたい方は、こちらのコラムもご参照ください。
それに対し、エナジードリンクは、個々の成分に効能を期待しすぎることなく、清涼感によるリフレッシュを求めるくらいの心づもりで飲むことをおすすめします。
ただし、味や製品のバリエーションが豊富に用意されていることで、製品選びの楽しみがあるのが利点ですので、好みに合う製品があれば摂り過ぎにならないように楽しみましょう。
まとめ
栄養ドリンクとエナジードリンクの違いについて、法的な分類から「効能・効果」に関する違いや使い分けまでお伝えさせていただきました。
栄養ドリンクとエナジードリンクについては、「効能・効果」と「用法・用量」の有無が最も大きな違いであると言えるでしょう。
しかしながら、エナジードリンクに効果が全くないとは言い切れず、栄養ドリンクに含まれる有効成分と同じ成分が含まれていることも事実です。
国で認められている「効能・効果」を有する栄養ドリンクか、リフレッシュ感や、豊富な製品バリエーションを持つエナジードリンクか、ご自分の需要にあった製品を選ぶことが重要と言えるでしょう。
ただし、どちらを選ぶ際であっても、カフェインの摂取量には注意が必要です。
特に「用法・用量」が明確に定められていないエナジードリンクにおいては、飲み過ぎに注意してくださいね。
このコラムが栄養ドリンクとエナジードリンクで迷われているあなたにとって、お役に立てれば幸いです。
〈参考資料〉
・カフェインの過剰摂取について:農林水産省 (maff.go.jp)
・日本食品標準成分表2020年版(八訂):文部科学省 (mext.go.jp)
・国内初、カフェイン中毒死 エナジードリンク日常的に大量摂取か (1/3ページ) – 産経ニュース (sankei.com)