市販薬のフルナーゼ点鼻液について薬剤師が解説!ステロイドは安全なの?医療用フルナーゼ点鼻液50μgとの違いは?
「市販のフルナーゼ点鼻薬はどのような薬なの?」
「医療用のフルナーゼとは何が違うの?」
フルナーゼ点鼻液は、2019年11月1日から市販で販売された点鼻薬です。2022年には要指導医薬品から第1類医薬品に変更となり、対面販売のみだったのがネットでの購入もできるようになりました。
今回はこのフルナーゼ点鼻液について、特徴や医療用との違い、注意点などについて詳しく解説します。
フルナーゼ点鼻液とは?
フルナーゼ点鼻液とは、有効成分としてステロイド成分のフルチカゾンプロピオン酸エステルを含む点鼻薬です。フルチカゾンプロピオン酸エステルを含む花粉症用の市販薬として初めて販売されました。もともとは医療用としてのみ使用されていましたが、市販でも購入できるようにスイッチされたものです。
局所で効いて全身への影響は少なくなるように設計されたアンテドラッグステロイドとなっています。アンテドラッグステロイドとは、患部で効いた後は活性の低い物質に代謝されるステロイドのことです。
花粉症用の薬ではありますが、フルナーゼ点鼻液には眠くなる成分が入っていません。そのため、日常生活のパフォーマンスを落とすことなく鼻の症状を抑えられます。
実は効果だけでなく、安全性も高い薬!
フルナーゼ点鼻液は有効成分としてステロイドを含むことから、高い効果が期待できることが特徴です。花粉症で悩まされがちな鼻水、くしゃみ、鼻詰まりの3大症状にしっかりと効果を発揮します。
効果の高さが確認されていることもあり、ステロイドは「鼻アレルギー診療ガイドライン」において軽症から重症まで使用が推奨されている成分です。
飲み薬としてよく使われる抗ヒスタミン薬には、鼻詰まりに対する効果があまりありません。これは、抗ヒスタミン薬には鼻粘膜の血管の拡張を抑える効果があまりないためです。
また、鼻詰まりに即効性のある血管収縮剤入りの点鼻薬もありますが、こちらはくしゃみや鼻水への効果は弱くなっています。
フルナーゼ点鼻液に含まれているフルチカゾンプロピオン酸エステルは、一つで鼻詰まりとくしゃみ、鼻水を抑えてくれる成分です。さらに、局所的に効果を発揮するので全身に大きな副作用が出ることがありません。
抗ヒスタミン薬の飲み薬なら眠気、血管収縮剤なら薬剤性鼻炎といった副作用が出ることがありますが、フルナーゼ点鼻薬はこれらの副作用を気にせず使用できます。
フルナーゼ点鼻液のデメリットとは?
眠気が出ることがなく、鼻詰まりやくしゃみ、鼻水のすべての症状を抑えてくれるフルナーゼ点鼻液ですが、メリットしかないわけではありません。次のようなデメリットも存在します。
即効性が低い
花粉症で出やすい鼻詰まりやくしゃみ、鼻水のすべての症状を抑えてくれるものの、即効性はありません。効果が出るまでに1~2日はかかります。血管収縮剤の点鼻薬のように使って数分後に効果が出るものではないため注意しましょう。
即効性がないので「使っても効かない」と感じる方もいますが、用法用量どおりに数日使っていれば効果を実感できるようになるので安心してください。
花粉症のみにしか使えない
フルナーゼ点鼻液は花粉症の症状専用の点鼻薬です。風邪やハウスダストなどによる鼻の症状には使用できません。花粉症以外のものが原因で鼻の症状が気になる場合は、フルナーゼ点鼻液ではない薬を使用してください。
15歳未満の子どもには使用できない
フルナーゼ点鼻液が使えるのは15歳以上の方からです。15歳未満の方は誤用する恐れがあるため、このように年齢制限が設けられています。
ステロイドが配合された点鼻薬で15歳未満の方でも使用できるものは、市販では取り扱いがありません。
15歳未満でどうしても点鼻薬を使いたい場合は、ステロイドが配合されていないものから探してみてください。参考までに「ロートアルガードST鼻炎スプレー」や「ナザールスプレー(ポンプ)」は7歳から使用できます。
飲み薬との併用はできる!
フルナーゼ点鼻液と飲み薬を併用するのは問題ありません。フルナーゼ点鼻液は局所的に作用する薬のため、飲み薬と併用しても影響が出ることがないのです。目薬とも併用することもできます。ただし、何か薬を併用する場合は念のため薬剤師に相談してから使用してください。
医療用のフルナーゼ点鼻液50μgとの違いは?
医療用には、フルナーゼ点鼻液50μgという薬があります。こちらと市販で購入できるフルナーゼ点鼻液の違いを簡単にまとめてみました。
配合されている成分名や成分量はまったく同じです。ただし、効能効果には違いがあります。
市販のフルナーゼ点鼻液は花粉症による鼻詰まりや鼻水にしか使用できませんが、医療用のフルナーゼ点鼻液50μgはアレルギー性鼻炎や血管運動性鼻炎にも使用可能です。つまり、花粉症だけでなく血管の腫れによって起こる鼻炎やハウスダストにも使用できます。
製品名 | フルナーゼ点鼻液 | フルナーゼ点鼻液50μg |
成分名 | フルチカゾンプロピオン酸エステル | フルチカゾンプロピオン酸エステル |
成分量 (1ml中) |
0.51mg | 0.51mg |
効能効果 | 花粉による季節性アレルギーの次のような症状の緩和: 鼻詰まり、鼻水(鼻汁過多)、くしゃみ |
アレルギー性鼻炎、血管運動性鼻炎 |
使用時の注意点
フルナーゼ点鼻液には、ステロイドが主成分として入っている都合上、いくつか注意点があります。まず、1年間に3か月を超えて使用することはできません。フルナーゼ点鼻液を使用する期間が年間で合計3か月未満となるように使用してください。
また、妊娠中の方や妊娠の恐れがある方は使用できないので注意しましょう。
フルナーゼ点鼻液の主成分であるフルチカゾンプロピオン酸エステルは安全性が高く、妊娠中でも安全に使える成分として知られています。
医療用で処方される場合は問題なく使えるケースがほとんどですが、市販の場合は添付文書に妊娠または妊娠していると思われる人は使わないようにと記載されているため、該当の方は使用しないようにしてください。
まとめ
フルナーゼ点鼻液は、フルチカゾンプロピオン酸エステルを主成分として含む点鼻薬です。花粉症による鼻詰まりやくしゃみ、鼻水の症状の緩和に用いられます。医療用のフルナーゼ点鼻液50μgと成分や成分量はまったく変わりません。
ただし、医療用と違って花粉症の症状のみにしか適応をもたないので注意しましょう。フルチカゾンプロピオン酸エステルは安全性の高い成分として知られていますが、市販の場合は妊娠中や妊娠の可能性がある方には使用できません。どうしても使用したい場合は市販薬を購入するのではなく、医療機関を受診して相談してください。
〈参考資料〉
・フルナーゼ点鼻薬<季節性アレルギー専用> 添付文書 (flunase.jp)
・フルナーゼ点鼻液50μg 28・56噴霧用 添付文書 (gskpro.com)
・「妊娠・授乳と薬」 対応基本手引き(改訂第2版)