化膿性皮膚疾患
子供に多いとびひや赤くて痛みのあるおでき、またカミソリ負けして赤くブツブツになった肌、これらは全て細菌などが原因で皮膚が化膿している状態です。
こういった化膿性の皮膚炎に対しては市販の塗り薬でも十分対応することが可能です。
ただ、いざ薬を探そうとしてもそれらしき軟膏の説明文には『効能・効果:とびひ・めんちょう・毛のう炎』と書いてあって、一体どういう状態に使っていいか分からないという人もいるのではないでしょうか。
こちらのコラムでは、化膿性皮膚炎について基礎知識からオススメの市販薬まで分かりやすくお伝えさせていただきますね。
化膿性皮膚炎(とびひ・めんちょう・毛のう炎)とは?
化膿性皮膚炎は皮膚が細菌などによって化膿している状態を指します。
原因となる細菌は主に黄色ブドウ球菌などですが、できる場所や症状により「とびひ」「めんちょう」「毛のう炎」などに分かれます。
それぞれを詳しくご説明させていただきますね。
<とびひ>
医学的には伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)と言い、黄色ブドウ球菌や溶血性連鎖球菌(溶連菌)などが原因で発症します。
赤みやかゆみを伴う水ぶくれができたり、厚いかさぶたができたりします。
接触によって感染するため、掻きむしった手指が触れたところに瞬く間に広がってしまいます。
その様子が火事に似ていることから「とびひ」と言われるようになりました。
転んでできた擦り傷や、あせも・虫刺されなどの細かい傷などに感染して発症します。
<めんちょう>
俗にいう「おでき」は、毛穴の奥の毛根を包んでいる部分に細菌が入り込み、痛みや赤みを持った強い炎症を起こしている状態で、医学的には「せつ」と言われます。
「めんちょう」はこの「せつ」が顔の真ん中(ほとんどの場合鼻の頭)にできている状態を指します。
一見するとニキビの症状と似ていますが、原因やできる場所が異なります。
ニキビは毛包に皮脂が詰まり、そこにアクネ菌と呼ばれる細菌が繁殖している状態で、顎やおでこなど、皮脂分泌が多い箇所であれば、顔のどの場所にでもできます。
それに対して、めんちょうは黄色ブドウ球菌などが原因で、顔の中心部にできやすく、痛みや炎症が強い傾向があります。
原因菌が異なることで、治療に使われる軟膏や対処法も異なるため注意が必要です。
<毛のう炎(毛包炎)>
毛のう炎は毛包炎とも呼ばれ、細菌などが原因となり、毛根を包む毛包や毛のうに炎症が起こった状態のことです。
赤みを帯びたぶつぶつや、毛穴に白や黄色の膿を含む盛り上がりなどができ、軽い痒みや痛みが伴うこともあるでしょう。
皮膚表面にできた小さな傷口やひっかき傷、カミソリ負けした肌などで起こりやすく、ステロイド外用薬を長期で使用し、肌のバリア機能が弱っているところからも感染しやすいです。
主な原因は細菌ですが、マラセチアと呼ばれる皮膚の常在菌である真菌が原因になることもあります。
また、毛のう炎が悪化すると、毛包の奥まで症状が進み『せつ』に発展することもあります。
化膿性皮膚炎に効果のある塗り薬の成分
化膿性皮膚炎に対しては、化膿している原因となっている細菌を抑える抗生物質、また炎症を抑えるステロイド成分が効果を示します。
<抗生物質>
オキシテトラサイクリン塩酸塩、コリスチン硫酸塩、バシトラシン、クロラムフェニコール、フラジオマイシン硫酸塩など
化膿性皮膚炎を起こしている原因となる細菌に対して効果を示します。
抗生物質によって効果のある菌の種類は微妙に異なりますが、化膿性皮膚炎に効果があると表示されているものであれば、主な原因菌である黄色ブドウ球菌などにはしっかりと抗菌力を発揮してくれるでしょう。
<ステロイド>
フルオシノロンアセトニド、プレドニゾロン、ベタメタゾン吉草酸エステル、ヒドロコルチゾンなど
ステロイドは、もともと身体の中で作られるホルモンの一種で、アレルギーや炎症など、過剰な免疫反応を抑える作用があります。
ステロイドには成分によって強さのランクがあり、場所や症状によって適切な強さのステロイドを使用することが大切です。
例えば顔やデリケートゾーンは手のひらに比べて10倍以上ステロイドの吸収が良いと言われているため、それらの場所に使用する場合は弱いランクのステロイドを選ぶ必要があるでしょう。
おすすめの化膿性皮膚炎の塗り薬
<炎症がそれほど強くない人、ノンステロイドで探している人>
ドルマイシン軟膏
有効成分:コリスチン硫酸塩、バシトラシン
特徴:2種類の抗生物質が患部の化膿を防ぎます。
化膿性皮膚炎の他に、擦り傷や切り傷といった傷口の化膿止めにも使用できる軟膏です。
クロマイ-N軟膏
有効成分:クロラムフェニコール、フラジオマイシン硫酸塩、ナイスタチン
特徴:2種類の抗生物質に加え、抗真菌成分であるナイスタチンが含まれています。
毛のう炎の原因となり得る真菌(マラセチア菌)にも効果を示してくれますし、同じくマラセチア菌が原因で背中などにできるニキビにも有効です。
<背中や手足など比較的皮膚が強い場所へ使用する場合>
フルコートf
有効成分:フルオシノロンアセトニド、フラジオマイシン硫酸塩
特徴:市販で購入できるランクでは最も強い「ストロング」クラスのステロイドを配合しています。
赤みやかゆみなどの炎症反応が強い場合におすすめです。
<顔や陰部など比較的皮膚がデリケートな場所へ使用する場合>
テラ・コートリル軟膏a
有効成分:オキシテトラサイクリン塩酸塩、ヒドロコルチゾン
特徴:配合されているステロイドは最も弱いランクのヒドロコルチゾンであるため、デリケートな場所にも適しています。
医療用のテラ・コートリル軟膏は口内炎や外傷への適応がありますが、市販のものにはそういった適応がないため、自己判断で使用しないように気をつけましょう。
おすすめの化膿性皮膚炎の飲み薬
化膿性皮膚炎に対して、病院では塗り薬と併せて、抗生物質の飲み薬を処方することもあるでしょう。
しかしながら、市販では抗生物質の飲み薬を購入することはできません。
その代わり、化膿性皮膚炎に適応がある漢方薬であれば市販でも手に入れることが可能です。
十味敗毒湯エキス錠クラシエ
有効成分:サイコ、キキョウ、センキュウ、ブクリョウ、レンギョウ、オウヒ、ボウフウ、ドクカツ、カンゾウ、ケイガイ、ショウキョウ
特徴:体力が並程度にある人の化膿性皮膚疾患に。
皮膚トラブルに幅広く対応する漢方で、炎症を伴うニキビや蕁麻疹、水虫にも使用することができます。
ワグラスD錠
有効成分:カンゾウ、キキョウ、キジツ、ショウキョウ、タイソウ、シャクヤク
特徴:排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)と呼ばれる漢方と同じ構成生薬をもつ製品です。
化膿・炎症疾患に広く対応する漢方で、皮膚疾患以外にも歯槽膿漏や中耳炎、リンパ腺炎、乳腺炎などに効果を示します。
まとめ
化膿性皮膚炎について、基礎知識からおすすめの製品までお伝えさせていただきました。
とびひやめんちょう、毛のう炎などは、どれも細菌がメインとなって起こっている化膿性の疾患です。
そのため、細菌自体の働きを抑制する抗生物質や、炎症を抑えるステロイド成分が入っている軟膏が効果を発揮してくれるでしょう。
炎症の強さや症状のある場所によって、適した薬は異なるため、ご自身の症状に合った塗り薬を選ぶようにしましょう。
また、漢方薬を用いることで飲み薬としても市販薬でも対応することは可能です。
しかし、これらの塗り薬や漢方薬を使ってもなかなか症状が治まらない場合や、赤みや痛みが非常に強い、発熱があるといった場合は、化膿がだいぶ進んでしまっている可能性があります。
その際は皮膚科を受診し、抗生物質の内服など適切な処置を受けるようにしましょう。
このコラムが化膿性皮膚炎でお困りのあなたにとって、お役に立てれば幸いです。