2022年からセルフメディケーション税制がさらに使いやすく拡大!制度の基礎から注意点まで解説
「セルフメディケーション税制」という言葉をご存知でしょうか。
あまり知らないという人も多いと思います。
なぜなら、セルフメディケーション税制を利用しているのは国民の中で2.5万人、確定申告を行っている人のおおよそ0.1%しかいないというデータが出ているのです。1)
ほとんどの人が利用していないこの制度ですが、医療費控除より金額のハードルも低い上に、2022年から対象医薬品も増えて利用しやすくなっています。
このコラムではセルフメディケーション税制について、基礎知識から確定申告の注意点まで分かりやすく解説させていただきます。
普段からOTC医薬品を購入する機会が多い人は、知っていて損はないと思いますよ。
どんな制度?
世界保健機構のWHOではセルフメディケーションの定義を「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」としています。
日本でもセルフメディケーションを推奨する動きが出ており、その一環として2017年から始まったのがセルフメディケーション税制です。
セルフメディケーション税制とは、従来の医療費控除の中でも特例として位置付けられ「対象となるOTC医薬品を用いて体調管理・疾病予防を行った際に優遇される節税制度」です。
医療費控除が基本的に世帯合計10万円以上を超えないと還付されないのに対し、セルフメディケーション税制であれば、対象OTC医薬品の購入費用が世帯合計12,000円を超えれば控除を受けることが可能です。
この制度は当初5年間の特例として始まりましたが、2022年よりさらに5年間延長されることになりました。
それと同時に対象となるOTC医薬品の品数も拡大し、より利用しやすい制度となっています。
そのため、1年間大きな怪我や病気がなく、医療機関で10万円を超えるような出費はしなかったけれど、OTC医薬品を使い小まめに家族の体調管理を行なっていた方にはぴったりの制度です。
利用できる人は?
対象となる人は以下の2つの条件を満たす必要があります。
1、対象となるOTC医薬品を購入した合計額(税込)が1月から12月までの1年間で、世帯合計12,000円を超えていること。
医療費控除と同様、申告者本人のものだけでなく、生計を一にする家族(日常の生活財源が同じ家族)の購入分も含むことができます。
2、申告者が以下に挙げるような、健康の増進や病気の予防のための「一定の取り組み」を受けていること。
・健康保険や国民健康保険などが行う健康診査(人間ドッグ、各種健診など)
・市町村が健康増進事業として行う健康診査(骨粗しょう症健診など)
・予防接種(定期接種、またはインフルエンザの予防接種)
・職場で受けた定期健康診断
・特定健康診査(メタボ健診)、または特定保健指導
・市町村が実施するがん検診
※ 市町村が自治体の予算で住民サービスとして実施する健康診査は対象になりません。
この取り組みは申告する本人が受けていればいいものですので、例えばこれらの取り組みを行なっていない配偶者に向けて購入したOTC医薬品も申告対象として構いません。
また、残念ながら新型コロナワクチンの予防接種は取り組みの対象とならないため(2022年7月時点での厚労省の回答)その他の取り組みで申請するようにしましょう。
対象となる医薬品は?
対象となる医薬品は以下の2種類に分かれます。
制度開始当初は1に該当するものだけでしたが、2022年の1月より2も追加となり、対象となる製品の数も大幅に増えました。
1.スイッチOTC医薬品
医師から処方される医療用医薬品のうち、市販でも購入できるよう転用(スイッチ)した、いわゆるスイッチOTC医薬品と呼ばれるもの。
注意)2026年1月1日以降、L―アスパラギン酸カルシウム、フッ化ナトリウム、メコバラミン及びユビデカレノンを有効成分として含有するスイッチ OTC 医薬品は対象外となります。
2.外用鎮痛消炎薬、解熱鎮痛薬、鎮咳去痰薬、かぜ薬、鼻炎用点鼻薬、鼻炎用内服薬、抗ヒスタミン薬またはその他のアレルギー用薬としての効能・効果があると認められるスイッチOTC医薬品以外の一般用医薬品
スイッチOTCではないものの、医療用医薬品との代替性と医療費削減効果が高いとみなされた分野において、厚労省が認定した一般医薬品。
対象となる医薬品には以下のようなマークが包装についていますが、新たに追加された製品に関しては、まだマークの表示が追いついていないこともあります。
そのため、その製品が対象かどうかはレシートに★や◆といったマークが付いているかどうかをチェックするようにしましょう。
購入前に確認するには、メーカーホームページを確認したり、店員さんに尋ねたりするのが確実でしょう。
確定申告を行う際の注意点は?
・医療費控除との併用はできない
医療費控除は1年にかかった医療費全体の合計が10万円を超えた場合に申請することができる制度であり、この中には治療または療養のために購入したOTC医薬品の費用も含まれます。
医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらか一方しか申請できないので注意しましょう。
ここで重要なのは、1年に使用した医療費総額と、対象となるOTC医薬品の購入金額により、どちらの方が節税効果が高いかは変わってくるということです。
どちらも申告できる状況(医療費総額が10万円以上、対象となるOTC医薬品の購入額が12,000円以上)であれば、対象となるOTC医薬品の購入額に88,000円を加えた額が医療費総額に比べて大きいか小さいかで判断することが可能です。
以下の表におおよその目安をまとめました。
どちらが得か | 医療費総額 (対象となるOTCを12,000円以上購入している前提) |
|
セルフメディケーション税制が得 | 12,000円〜100,000円 | |
100,000円〜188,000円 | 対象となるOTC購入額+88,000円 >医療費総額 | |
医療費控除が得 | 対象となるOTC購入額+88,000円 <医療費総額 | |
188,000円〜 |
ただし、医療費控除の対象となるOTC医薬品は、あくまでも治療または療養のために購入したOTC医薬品ですので、セルフメディケーション税制の対象医薬品であっても、その目的に沿っていない場合は医療費控除の申告はできませんので注意しましょう。
・ネットショップで購入した場合、自宅印刷の領収書はNG
ネットショップで購入した品物で領収書が必要な場合は、購入履歴などから自分で印刷することが可能になっている所も多いでしょう。
しかし、セルフメディケーション税制の申告にあたっては、自宅のプリンタ等で出力した領収書等は証明書類の原本として認められないとされているため、ショップが発行した領収書が必要となります。
購入するショップによっても対応が異なりますが、以下のような方法で発行してもらえますので、手元に置いておくようにしましょう。
・配送時に同封してある納品書が納品書兼領収書となっている場合は、それを保管する
・注文時に備考欄に領収書が必要な旨を記載する
・カスタマーセンターやショップに領収書の送付を依頼する
・購入時の領収書・レシートは5年間保管しておく
セルフメディケーション税制には購入時の金額を正確に記載する必要があります。
ドラッグストアでセールになっていた商品であれば、実際に購入した割引後の金額を記載しないといけないため、購入時の領収書やレシートはしっかり手元に残しておきましょう。
また、申告にあたって領収書・レシートを提出する必要はありませんが、明細書の記入内容の確認のため、申告してから5年間は領収書・レシートの提示または提出を求められる場合があります。
医療費控除の場合も同様ですので、万が一に備えて、領収書・レシートは5年間保管しておくようにしましょう。
・「一定の取り組み」に関する領収書・結果通知書も5年間保管しておく
セルフメディケーション税制の申告条件として、「一定の取り組み」を申告者が行っていることが挙げられます。
この取り組みに関する結果通知書や領収書は、レシートと同じく、確定申告書への添付または提示は不要ですが、確定申告期限等から5年を経過する日までの間、税務署から提示または提出を求める場合があります。
そのため、最低5年間はレシートと一緒に保管しておくようにしましょう。
まとめ
セルフメディケーション税制について基本的な知識から、申告における注意点までお伝えさせていただきました。
セルフメディケーション税制は認知度や利用率は低いですが、OTC医薬品を用いて体調を自己管理されている方にはピッタリの節税制度です。
2022年よりアレルギー用薬や解熱鎮痛薬、かぜ薬の分野に対象が拡大したことで、利用できる人、そして金額も増加すると見込まれるでしょう。
医療費控除もしくはセルフメディケーション税制のどちらか一方しか利用することはできませんので、支払った額を比較し、より節税効果の高い方で申告するようにしたいですね。
その際にこの記事がお役に立てれば幸いです。