紫雲膏はさまざまな家庭のトラブルに応える万能選手!基本的な情報からおすすめ製品までご紹介
赤色が特徴的な「紫雲膏」という漢方の軟膏をご存知でしょうか。
漢方と聞くと、あまり馴染みがなく、敬遠しがちな人もいるかもしれませんね。
ただ、紫雲膏は江戸時代から重宝されており、ちょっとしたやけどや、あかぎれ、あせも、皮膚の痒みや痔の痛みにまで、幅広く使える万能選手です。
このコラムは紫雲膏の基本的な情報から、使用方法、またおすすめの紫雲膏製品まで幅広くお伝えさせていただきます。
紫雲膏とは?
紫雲膏は代表的な漢方の軟膏で、江戸時代に名医として知られた華岡青洲が中国に代々伝わる「潤肌膏」という軟膏に改良を加えることで作られました。
有効成分のシコンによる赤色と、ごま油や豚脂による独特な匂いが特徴です。
炎症を鎮め、皮膚の再生を促す作用があるため、やけどや、ひび、あかぎれ、湿疹から痔の治療まで、幅広く用いることができます。
紫雲膏の効能・効果は?
紫雲膏の効能・効果は、メーカーによって多少の違いもありますが、代表的なものとして、以下の症状が挙げられます。
ひび、あかぎれ、しもやけ、魚の目、あせも、ただれ、外傷、火傷(やけど)、痔核による疼痛、肛門裂傷、湿疹・皮膚炎
また、現在、唯一医療用医薬品として製造されているツムラ紫雲膏の効能・効果は「火傷、痔核による疼痛、肛門裂傷」となっていますので、それ以外の目的では保険適応での処方はできないようになっています。
紫雲膏の成分は?
紫雲膏の成分は「シコン、トウキ、ゴマ油、ミツロウ、豚脂」です。
華岡青洲が創製したものはこちらの5つの成分によって構成されますが、メーカーによって少しずつ成分が異なることもあります。
・シコン(紫根)
解毒作用、抗炎症作用があります。
傷ついた皮膚の肉芽形成を促進し、治癒をサポートします。
・トウキ(当帰)
補血作用という、全身の栄養状態を改善するような作用のある生薬で、血行を促進し、肌を潤す効果があります。
・ゴマ油
料理などにも使われる馴染みのある成分で、肌を潤す効果があります。
出来上がった紫雲膏からはごま油の匂いが感じられます。
・ミツロウ
ミツバチの巣から精製したロウで、解毒や傷跡の再生を促す効能があります。
天然のワックスとして化粧品やリップクリームなど、さまざまな製品に使用されています。
・豚脂
豚の脂の成分で、解毒や肌を潤す作用があります。
また、加えることで軟膏が柔らかくなり、塗りやすさがアップします。
ただ、酸化することで独特の匂いが出てくることや、宗教の問題(ハラール)で避けられることもあります。
紫雲膏の使用にあたって
<使い方>
傷口などの患部に直接塗布します。
その際、ガーゼなどを使用してもいいですし、直接手で塗り広げてもどちらでも構いません。
また、紫雲膏は「モイストヒーリング」を行う際の軟膏として使用することもできます。
紫雲膏を塗った後、ラップなどで密閉して傷口の湿潤状態を保つことで、傷口の回復を促す効果があります。
モイストヒーリングについて、詳しく知りたい方はこちらのコラムもご参照ください。
<副作用>
紫雲膏の成分自体は自然由来のものであるため、副作用が出ることは少ないと考えられます。
しかしながら、人によっては赤みやかゆみが出てくる可能性もあります。
特にごま油を使用していることから、ごまアレルギーの人は要注意です。
使用によって、皮膚に異常が出てくるようであれば、すぐに使用をやめ、医師に相談しましょう。
<有効期限>
基本的には、メーカーが記載している期限を守りましょう。
しかし、紫雲膏は酸化に弱い軟膏でもあります。
成分の一つである豚脂は酸化によりキツイ匂いが出てきますので、酸敗の匂いがひどくなってきたり、変色してきたりするようであれば、その紫雲膏は使用しないようにしましょう。
<注意点>
紫雲膏の赤色はシコン由来のものですが、昔シコンは染料として用いられていた成分でもあります。
そのため、紫雲膏の赤色が衣服などに付くとなかなか取れないので注意が必要です。
衣服で隠れる場所に塗る場合には、摩擦を防ぐ意味合いも兼ねて、ガーゼや絆創膏などで保護するようにすると良いでしょう。
おすすめの紫雲膏
市販されている紫雲膏の中でオススメのものをご紹介させていただきます。
紫雲膏という名前は共通ですが、中の構成成分や製法に工夫を加えることで、軟膏の伸びを良くしたり、匂いを抑えたりといった改良がなされている製品もあります。
<基本の紫雲膏>
クラシエ紫雲膏
特徴:漢方を幅広く手がけるクラシエが製造から販売まで行っています。
チューブタイプで14gと30gの2種類が販売されているため、用途によって容量を買い分けることができます。
紫雲膏ダイコー
特徴:大晃生薬という、昔から漢方製剤を担っている会社の製品で、医療用漢方も手がける大杉製薬から販売されています。
20gのチューブタイプの他、50gのボトルタイプもあるため、広範囲に塗ったり、大容量で欲しい人にオススメです。
<豚脂レスの紫雲膏>
紫雲膏「弘真」
特徴:豚脂が酸化した際の匂いや品質劣化を避けるため、豚脂を省いた設計の紫雲膏です。
豚脂を使わないことで、豚の殺生を禁じるイスラム教徒の人などでも安心して使用することができます。
26gのボトルタイプのみの販売です。
赤色ワグラス軟膏
特徴:豚脂を使用せずとも、軟膏の伸びを良くする独自の製法により、特許も取得している製品1)です。
ドラッグストアなどで販売されていることはあまりなく、店頭で購入したい場合は、漢方専門薬局などであれば取り扱いがあるでしょう。
15gと35gの2種類のチューブがあります。
まとめ
紫雲膏における基本的な情報からその使い方、おすすめの製品までお伝えさせていただきました。
紫雲膏は江戸時代から愛用されており、さまざまな症状に対して使用できるオールマイティな軟膏です。
自然由来の成分で構成されているため、副作用なども出にくく、使いやすい反面、シコン由来の赤い色が衣服に付きやすい、ゴマアレルギーの人は使用できないといった注意点もあります。
また、豚脂を含むことで酸化に弱かったり、宗教上の問題で使用できなかったりという問題もありますが、その点を考慮し、豚脂を省いた紫雲膏も現在は販売されています。
家庭に1つあるとさまざまなシーンで活躍してくれることが期待される紫雲膏、今までその存在を知らなかった人も、ぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。
このコラムがそのきっかけとなれば幸いです。