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お薬コラム
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更新日:2022/05/01
禁煙補助薬(ニコチン製剤)

「子どもができたから禁煙しようかな」
「健康のためにも、そろそろ禁煙をしたい」

このように思っていても、自力で禁煙するのは難しいものです。禁煙にチャレンジしては何度も挫折したという経験がある方も多いのではないでしょうか。そのような方におすすめなのが、禁煙補助薬です。今回は市販で購入できる禁煙補助薬の選び方や注意点などを紹介します。

監修薬剤師 ハラクロ
薬剤師ライター 岡本 妃香里

禁煙が難しい理由

禁煙しようと意気込んでも、数日も経てば「1本くらい…」と、吸いたい欲が出てきてしまう方がほとんどです。よほど強い意志がなければ、そう簡単に禁煙はできません。たとえ強い意志があったとしても、禁煙を成功させるのは難しいでしょう。その理由は、おもに2つあります

ニコチン依存症になっている

禁煙が難しい一番の理由は、ニコチン依存症になっているためです。たばこにはニコチンが含まれており、このニコチンはドーパミンやセロトニンといった快楽や多幸感をもたらす神経伝達物質の分泌を促します。
たばこを吸わないとやる気が出なかったりイライラしたりするのは、ニコチンの働きが切れてドーパミンやセロトニンの量が減ってしまうためです。喫煙を続けると、たばこを吸わなければこれらの神経伝達物質が分泌されなくなります。
イライラや落ち着きのなさなどのニコチン離脱症状が現れ、離脱症状を消すために喫煙を続けることでニコチン依存症になってしまうのです。

喫煙の行為そのものが習慣化している

長い期間にわたって喫煙を続けている方は、喫煙する行為が習慣化しているため、何か口に入れていないと口寂しく感じてしまいます。口寂しさを紛らわせるために吸いたくなるのも禁煙が難しい理由の1つです。

禁煙治療は市販薬でできる?

禁煙治療は市販薬でもできます。ニコチン依存症による離脱症状をやわらげ、喫煙しなくても生活を送れるようにサポートしてくれる禁煙補助薬を使用するとよいでしょう
市販の禁煙補助薬には、パッチ製剤とガム製剤の2種類があります。どちらもたばこの代わりにニコチンを補充するものです。たばこと違い、タールや一酸化炭素などの有害物質は含まれていません。

医療機関を受診すると、チャンピックスという内服薬を処方してもらうこともできます。チャンピックスは、喫煙時の満足感を減らすことで吸いたいという欲求を減らす薬です。市販で購入できるパッチ製剤やガム製剤よりも禁煙の成功率が高いと言われています。
禁煙する意思があり、ニコチン依存症が認められるなど一定の基準を満たせば保険適用での治療が可能です。チャンピックスは全12週間の禁煙プログラムが組まれており、もし途中で挫折してしまった場合はその後1年間は保険適用が認められません。
医療機関での禁煙治療について、詳しくはこちらの記事もご参照ください。

禁煙補助薬を使用するときの注意点

禁煙補助薬は、薬剤師がいる薬局やドラッグストアで購入できます。珍しい薬ではないため比較的簡単に手に入れられますが、使用にはいくつか注意が必要です。

狭心症や不整脈がある方は使えない

禁煙補助薬に含まれているニコチンは、血管を収縮させて血圧を上げる働きがあります。そのため、狭心症不整脈の症状を悪化させる危険性がゼロではありません。該当の疾患がある方は禁煙補助薬を使用できないので注意してください

禁煙補助薬を使用中はたばこを吸ってはいけない

禁煙補助薬を使用しながら喫煙すると、ニコチンの過量摂取になる恐れがあります。吐き気や嘔吐、腹痛や下痢などの症状が出る可能性があるため、禁煙補助薬を使用中は喫煙しないようにしてください

子どもの手が届かないところで保管する

子どもがお菓子のガムと間違って禁煙補助薬を口に入れてしまったり、パッチを舐めたりしてしまう危険性があります。パッチを捨てるときは接着面を内側にして折ってから廃棄するようにしましょう。未使用の禁煙補助薬も子どもの手が届かないところで保管するようにしてください。

市販の禁煙補助薬(ニコチン製剤)の種類と選び方

市販の禁煙補助薬には、パッチ製剤ガム製剤の2種類があります。効果に大きな違いはありませんが、使いやすさや特徴が異なるため、自分のライフスタイルに合ったものを選びましょう。

パッチ製剤が向いている人

• 仕事などの事情によりガムを噛めない
• たばこが吸えない口寂しさはあまり気にならない
• 計画的に禁煙を進めたい方

このような方には、パッチ製剤の使用が向いています。パッチ製剤は1日に1回貼るだけで禁煙時のイライラや集中力の低下などを緩和する薬です。仕事中にガムが噛めない方でも禁煙に取り組めます。
ガム製剤のように口寂しさは緩和してくれませんが、約2か月で禁煙できるようにプログラムが組まれているので、計画的に禁煙を進めることが可能です。市販ではニコチネルパッチというものが販売されています。
最初の6週間はニコチネルパッチ20(ニコチンの含有量:35mg)を使い、その後の2週間はニコチネルパッチ10(ニコチンの含有量:17.5mg)を使用します。

 

ニコチネル パッチ20
ニコチネル パッチ10
ガム製剤が向いている人

• 口寂しさが気になる方
• 自分のペースで禁煙を進めたい方

ガム製剤は、口寂しさが気になる方におすすめです。ガム製剤は、ニコチン成分を口の粘膜から吸収させる必要があります。そのため、頬と歯ぐきの間に味がなくなるまで置くなど噛み方は少し特殊ですが、口寂しさを紛らわせるために1本吸おうという気持ちはやわらげることができるでしょう。
少しずつ1日に使用するガムの量を減らしていき、禁煙を目指します。自分のペースでガムの量を調節できるのがメリットです。市販では、ニコチネルガムニコレットが販売されています。効果に大きな差はないため、値段や味で選んでもらえれば問題ありません。

 

ニコチネル(3種の味、スペアミント、マンゴー、ミント)
ニコレット(4種の味、プレーン、アイスミント、クールミント、フルーティミント)

禁煙補助薬以外の禁煙方法

禁煙補助薬を使わず、自力で禁煙する方法もあります。たばこを吸いたいと感じたら、たばこに手を出すのではなく、代わりに水を飲んだりガムを噛んだりしてみましょう。喫煙の代替となる行動を取るようにすることで、自然とたばこから遠ざかることができます。
たばこでなくても何か吸いたいという気持ちが強いようでしたら、パイポを活用するのもよいでしょう。また、「1本くらい」という気持ちをもたないようにすることも大切です。多くの場合、1本だけでは済みません。その1本が、数十本、数百本の喫煙につながる恐れがあることを強く意識しておきましょう。

まとめ

禁煙の難しさは、チャレンジしようと思った方にしか分かりません。自力で禁煙する方法もありますが、難しい場合は禁煙補助薬を使うことも検討してみてはいかがでしょうか。市販薬にはパッチ製剤やガム製剤があるので、使いやすいほうを選んで試してみてください

より確実に禁煙したい方は、禁煙外来など医療機関を受診するのがおすすめです。医療機関で処方してもらえるチャンピックスという飲み薬は、市販薬よりも禁煙の成功率が高いことで知られています。