

くしゃみ・鼻水…それ、風邪じゃなくて猫アレルギーかも?見分け方と正しい対処法
「くしゃみが止まらない」「風邪じゃないのに鼻水が…」。
それ、実は“猫アレルギー”のサインかもしれません。
猫の毛やフケに含まれるアレルゲンは、思った以上に空気中に残り、鼻や目に影響を及ぼします。
この記事では、猫アレルギーの主な症状の見分け方、便利な検査方法、そして対処法まで、薬剤師の視点でわかりやすくまとめました。
猫との暮らしを諦めたくないあなたに、役立つ情報をお届けします。


第1章|猫アレルギーの症状と風邪との違い
「鼻水が止まらない」「なんだかくしゃみも増えたし、でも熱はない…」
そんなとき、つい「軽い風邪かな?」と思ってしまいますよね。
でもその症状、実は『猫アレルギー』が原因かもしれません。
猫アレルギーは、風邪や花粉症とよく似た症状が出るため、見逃されがち。
特に猫と暮らしている人、猫カフェや実家などで猫と接触する機会がある人は、知らず知らずのうちにアレルゲンに反応しているケースもあります。
ここではまず、猫アレルギーの症状と、風邪との違いを整理してみましょう。
■ 猫アレルギーの主な症状とは?
猫アレルギーによく見られる症状には、次のようなものがあります。
・透明でサラサラした鼻水が続く
・くしゃみが何度も出る(特に猫との接触後)
・鼻づまり、喉のイガイガ、声のかすれ
・目のかゆみ、充血、涙が出る
・肌が赤くなったり、かゆみが出る(触れた部位)
・咳や息苦しさ、喘鳴(ヒューヒュー音)などの呼吸器症状が出ることも
これらは風邪とも共通する点が多いですが、決定的な違いがいくつかあります。
■ 鼻水の違いで見分けるポイント
猫アレルギーによる鼻水の特徴は「無色透明でサラサラ」。
風邪のように時間が経ってもドロッとした鼻水や黄色い鼻汁にはなりにくく、熱・だるさ・関節痛といった全身症状もあまり見られません。
一方、風邪では以下のような症状が出やすくなります。
「風邪のようで風邪じゃない」そんな症状が続く場合、猫アレルギーを疑ってみる価値はあります。
■ 猫アレルギーの原因とは?
猫アレルギーの主な原因物質は、Fel d 1(フェルディーワン)というタンパク質。
これは猫の唾液・フケ・皮脂腺・涙などに含まれており、毛づくろいによって全身に広がります。
このFel d 1のやっかいな点は、その「軽さ」と「小ささ」。
・空気中に長く浮遊する
・壁やカーテン、家具、衣類にも付着しやすい
・猫がいない部屋にも残留する
つまり、直接触れていなくても、その空間にいるだけで反応が出る人もいるということです。
アレルギー体質の人ほど、少量でも症状が出やすくなります。
■ “猫だけ”が原因とは限らない
ここで誤解してはいけないのが、「猫が近くにいた=猫アレルギー」という短絡的な判断。
実は、猫を飼っている室内では、
・ハウスダスト
・ダニ(特に布製品に多い)
・カビ(湿気が多い空間)
といった他のアレルゲンも同時に存在していることが多いのです。
たとえば、
・実家で子どもが症状を出したが、実はダニが原因だった
・猫のいる部屋ではなく、掃除の行き届かない場所で症状が出た
といったケースも実際にあります。
「猫に会ったあとに鼻水が出た=猫アレルギー」とは限らない。
あくまで“可能性のひとつ”として、冷静に判断することが大切です。
まずは冷静な見極めを
猫アレルギーの症状は風邪と似ていて、自己判断が難しいものです。
原因が猫なのか、それとも別のアレルゲンなのか──正しく見極めるには、少し冷静な視点が必要です。
次章では、自分が猫アレルギーかどうかを簡単に確認する方法や検査の受け方について解説します。


第2章|猫アレルギーか見極めるチェック方法
「これって風邪?それともアレルギー?」と迷うとき、猫との接触が関係しているなら一度は“猫アレルギー”を疑ってみる価値があります。
この章では、自分でできる簡単なセルフチェックから、医療機関での検査方法までをわかりやすく解説します。
■ 自分でできる猫アレルギーのセルフチェック
まずは、以下のような観点で日常の様子を観察してみましょう。
・猫と触れ合った後に、くしゃみ・鼻水・目のかゆみが出るか?
・その症状はどのくらいの時間続くか?(数時間〜1日程度が多い)
・熱がないのに風邪のような症状が毎回出るか?
とくに「猫と同じ部屋にいた直後から症状が出る」「帰宅後に改善する」など、明確なタイミングで変化がある場合は、猫アレルギーの可能性が高まります。
■ 似た症状が出る他のアレルギーにも注意
ただし、猫だけが原因とは限らないのが難しいところ。
猫の毛やフケには、ハウスダストやダニ、花粉がくっついていることもあり、複数のアレルゲンが重なって症状が出ているケースもあります。
とくに猫が外に出る習慣のある家庭では、花粉や土ボコリを室内に持ち込んでいる可能性も。
■ 判断が難しい場合は、血液検査や皮膚検査も
「なんとなくアレルギーっぽいけど確証がない」
「猫と一緒に暮らしたいけど体調が心配」
そんなときは、医療機関での検査を受けるのが確実です。
IgE抗体検査(特異的IgE)
最も一般的なのが、「特異的IgE抗体検査」と呼ばれる血液検査です。
アレルゲンに対する免疫抗体(IgE)の量を調べるもので、猫アレルゲン(Fel d 1)を含め、スギ花粉、ダニ、ハウスダストなど疑わしい項目を個別に指定して調べます。
・全国の病院・クリニックで実施可能
・結果は通常2~7日後
・健康保険適用時の自己負担:約1,000~3,000円
ドロップスクリーン検査
最近注目されているのが、少量の血液で40項目以上のアレルゲンを一括で調べられる検査です。
指先からの採血だけで済み、当日中に結果が出るケースもあります。
「猫かどうかだけでなく、そもそも何に反応しているか分からない」という場合に適しています。
・一部の医療機関で対応
・保険適用時の自己負担:約4,000〜5,000円
・初期スクリーニングに便利
プリックテスト(皮膚テスト)
アレルゲンを皮膚に少量つけて反応を見る方法で、即時型アレルギーの診断に適しています。
アレルギー専門のクリニックや皮膚科で行われることが多く、肌への刺激が強く出ることもあるため、敏感肌の方や子どもには注意が必要です。
・全国の皮膚科などで実施可能
・保険適用時の自己負担:約1,000~3,000円
■ どのタイミングで検査を受けるべき?
以下のようなケースでは、市販薬で様子を見るよりも早めに検査を受けた方がよいでしょう。
・市販の鼻炎薬を使っても症状が改善しない
・咳やゼーゼーする音が出るなど、呼吸器に症状が出ている
・今後、猫と長く暮らす予定がある(新生活・結婚など)
“はっきりさせる”ことが安心につながる
猫アレルギーは見極めが難しいですが、症状のタイミング・持続時間・季節との関係を意識することで、ある程度の傾向はつかめます。
ただ、原因を正しく把握しないまま対策しても、的外れになる可能性があるため、不安が続く場合は迷わず検査を受けることが大切です。
猫との共生をあきらめないためにも、きちんと原因を知ることがスタートラインになります。
次章では、そんな人のために、市販薬や暮らしの中でできる猫アレルギー対策をご紹介します。


第3章|猫アレルギーの鼻水対策と薬の選び方
「猫は手放したくないけど、鼻水やくしゃみがつらい…」
そんな方に向けて、日常生活でできる工夫や市販薬の選び方をわかりやすく紹介します。
アレルゲンとの“完全な遮断”が難しいからこそ、症状をコントロールする工夫が大切です。
■ すぐ始められる生活環境の工夫
まずは、身の回りの環境を整えるだけでも、症状の軽減が期待できます。
こまめな掃除・換気
フケや毛に含まれるアレルゲンは空気中を漂います。
フローリングは拭き掃除、カーペットは掃除機+スチームがおすすめです。
寝室は猫と分ける
一日の1/3を過ごす寝具にアレルゲンが蓄積しないよう、「猫の立入禁止エリア」をつくるのが理想。
空気清浄機を導入
HEPAフィルター搭載タイプが効果的。
24時間運転がベスト。
布製品の見直し
カーテンやクッション、ぬいぐるみなど、ホコリがたまりやすい素材を減らす工夫も有効です。
■ 猫側のケアでアレルゲンを減らす
実は、猫の体表や生活環境の清潔さもアレルゲン量に大きく関係します。
定期的なブラッシング
抜け毛を減らすことでアレルゲンの飛散を軽減。
屋外でブラッシングできると理想的。
トイレのこまめな掃除
猫の排泄物にもアレルゲン(Fel d 1)が含まれます。
1日1〜2回の掃除が目安。
アレルゲン除去用の猫用シャンプーやスプレー
週1回程度のケアでアレルゲン量を減らす効果が期待できます。
市販品でも獣医師監修タイプが安心。
■ 鼻水・くしゃみに有効な市販薬
猫アレルギーによる鼻水やくしゃみには、「抗ヒスタミン薬」が効果的です。
ここでは、比較的副作用が少なく、日常生活に支障をきたしにくい市販薬を3つご紹介します。
1.アレグラFX
1日2回の服用で、比較的即効性があります。
第2世代抗ヒスタミン薬であり、眠気が非常に出にくいため、運転や仕事にも影響しにくいのが特長です。
アレルギー性鼻炎の初期対策として多くの方に支持されています。
2.アレジオン20
1日1回の服用で済む持続性の高いタイプです。
眠気も少なく、忙しい方や服薬の継続が難しい方にも適しています。
抗アレルギー作用も比較的強めで、「効き目重視」で選ぶ方にも向いています。
3.アルガードクイックチュアブル
水なしで服用できるチュアブル錠タイプで、外出時にも使いやすいのが魅力。
鼻づまり症状にも効果がある成分が含まれており、「鼻が詰まってつらい」と感じる方にも向いています。
■ 点鼻・点眼薬との併用もおすすめ
飲み薬と併用することで、目や鼻のつらさをより効果的にコントロールできます。
1.ナザール「スプレー」
アレルギー性鼻炎による鼻づまりや鼻水に即効性あり。
ポンプ式スプレーで使いやすく、特に「今すぐ何とかしたい」というときに有効です。
ただし、連用は避け、短期間の使用にとどめることが推奨されています。
2.ロートアルガードコンタクトa
コンタクトレンズを装着したまま使える点眼薬。
アレルギーによる目のかゆみや充血に対応し、日中の不快感をやわらげます。
メガネに切り替えなくても点眼できるのが大きなメリットです。
■ 市販薬の注意点
眠気の有無を確認し、運転や仕事に支障が出ないものを選ぶ
他の薬との飲み合わせにも注意が必要(特に風邪薬・花粉症薬との併用)
副作用が少ないとはいえ、症状が強い場合や長引く場合は医師の診断を優先してください。
■ 市販薬で効果がない場合は…
以下のようなケースでは、市販薬だけに頼らず受診をおすすめします。
・市販薬を数日続けても改善しない
・咳、呼吸困難など気管支の症状がある
・猫との暮らしを本格的に考えている
舌下免疫療法という選択肢も
現在、猫アレルギーに対する舌下免疫療法(根本治療)は一般的ではありませんが、スギ花粉やダニアレルギーが併存している場合は治療対象になる可能性があります。
これにより、アレルギー全体の閾値を下げることで、猫に対する過敏反応が軽減される例も報告されています。
猫と暮らすための“工夫と対策”を
猫アレルギーを理由に「猫と一緒に暮らすのは無理」と決めてしまうのは、まだ早いかもしれません。
生活環境の見直しや市販薬の活用で、十分に共存が可能なケースも多いのです。
まずはできるところから対策を始め、症状が改善しない場合には専門医に相談してみましょう。
猫との快適な暮らしをあきらめないために、正しい知識と行動を。
まとめ|猫アレルギーと鼻水対策のポイント
・猫アレルギーの症状は風邪に似ている:鼻水・くしゃみ・目のかゆみなど。熱が出ないのが特徴。
・自己チェックで傾向を見極められる:猫との接触直後の症状や季節との関係性に注目。
・検査でアレルゲンを特定できる:血液検査(IgE検査やドロップスクリーン)で原因を把握。
・生活環境と猫のケアが重要:掃除・空気清浄機・ブラッシングなどでアレルゲンを減らす。
・市販薬でコントロールも可能:眠気が出にくい抗ヒスタミン薬や、点鼻・点眼薬の活用。
「風邪じゃないかも…?」と感じたら、まずは生活の中で“症状の出るタイミング”を観察してみてください。
猫と暮らすこと自体は悪いことではありません。正しい対処をすれば、多くの人が共存できます。
市販薬で症状が落ち着けばそれでもOK。
でも、もし改善しなければ無理せず検査を受けて、一歩踏み込んだ対策を始めましょう。
猫との暮らしを続けるために、早めの一手が大切です。
【参考情報】
この記事の作成にあたり、以下の公式情報を参考にしています。
ご自身での確認や商品選びの際にご活用ください。
◆ メーカー公式製品情報(医薬品・サプリメント含む)
・久光製薬|アレグラFX 製品情報
・エスエス製薬|アレジオン20 製品情報
・ロート製薬|アルガードクイックチュアブル 製品情報
・佐藤製薬|ナザール「スプレー」 製品情報
・ロート製薬|ロートアルガードコンタクトa