肩こり、肩の痛み
肩こりは、腰痛と並んで悩んでいる方が多い症状の一つです。肩こりや肩の痛みに悩まされて整体に通ったり自分でマッサージをしたりしている方も多いのではないでしょうか。しかし、仕事や育児が忙しく、なかなか継続して通えない方も少なくありません。
そこで今回は、肩こりや肩の痛みに効果がある市販薬や湿布薬の使い分け、注意点などを詳しく紹介します。慢性的に続きやすい肩こりや肩の痛みですが、自分に適した市販薬を使うことで痛みのコントロールが可能です。
肩こりや肩の痛みが起こる原因について
パソコンやスマートフォンを長時間にわたり使う機会が増えたため、肩こりや肩の痛みに悩まされている方は増加傾向にあるといわれています。痛みに悩まされている方が多いため、国民病と呼ばれているほどです。 |
血行不良
肩こりが起こる原因としては、血行不良がよく挙げられます。筋肉が緊張することで毛細血管が圧迫されて血行不良を起こすのです。血行が悪くなると乳酸などの疲労物質がたまり、この疲労物質が神経を刺激することで肩こりが起きます。
眼精疲労
一見すると関係ないようにも見えますが、眼精疲労と肩こりは切っても切れない関係です。眼精疲労がある方のおよそ50%で肩こりの症状も見られます 。眼精疲労は、交感神経と副交感神経からなる自律神経のバランスが崩れることで起こるものです。
肩こりも同様に自律神経のバランスが崩れて筋肉が緊張することで起こります。眼精疲労と肩こりが起こるメカニズムが同じため、眼精疲労が肩こりの原因となるのです。
老化に伴う関節炎
年齢を重ねることで肩の痛みが出やすくなることがあります。代表的なのが四十肩や五十肩です。肩関節周囲炎や癒着性肩関節包炎とも呼ばれるもので、肩関節の周りに炎症が起こることで痛みが生じます。肩を上げたり水平に保ったりすると痛みを生じることが多いでしょう。
肩こりや肩の痛みに効果がある市販薬
肩こりや肩の痛みに使える市販薬には多くのものがあります。痛みをすぐに取る湿布薬や飲み薬の痛み止めである解熱鎮痛薬、筋肉の疲れを解消して肩こりを起こりづらくするビタミン剤などさまざまです。 |
湿布薬
湿布薬は、肩こりや肩の痛みがある方によく選ばれています。使うことですぐに痛みを和らげられるため、今すぐ痛みを軽減させたいときに便利です。
1日1回貼るだけで効果が持続するもの、患部を温めて血行をよくするものなどいくつか種類があります。
ロキソニンSテープL
医療用医薬品の成分であるロキソプロフェン配合。
1日1回の使用で24時間効果がある貼り薬です。
ロイヒ膏ロキソプロフェン大判
ロキソプロフェン配合の温感タイプの貼り薬です。
湿布特有の匂いが無い無臭タイプです。
解熱鎮痛薬(痛み止め)
飲んで痛みをとる解熱鎮痛薬は、肩の痛みがある方に有効です。即効性があるため、痛みがある時だけ服用することができます。
痛み止めの効果が強いものや、胃に負担がかからないよう工夫されたものなど、様々なタイプがあるため状態にあった痛み止めを選ぶことが重要です。
ロキソニンS
医療用医薬品のロキソニン錠と同量のロキソプロフェン60㎎配合の飲み薬です。
ロキソニンSクイック
鎮痛成分ロキソプロフェンに加えて、胃を守る成分(メタケイ酸アルミン酸マグネシウム)を配合することで、胃への負担を軽減しています。
また、服用後、錠剤がすばやく崩壊する「クイックブレイク製法」が採用されており、即効性が期待できます。
ビタミン剤
肩こりにはビタミン剤も有効です。湿布薬や解熱鎮痛薬のように使用してすぐに痛みを取り除けるわけではないので、痛みをすぐにピタリと止めたい方にはあまり向いていません。
しかし継続して服用することで筋肉の疲れを解消し、肩こりが起きにくい状態を作ってくれます。慢性的に肩こりが続いている方は、ビタミン剤を服用して筋肉をほぐしてあげるのもよいでしょう。
アリナミンEXゴールド
筋肉疲労に効果があるビタミンB1誘導体「フルスルチアミン」や血行を改善するビタミンE「トコフェロール」の他、末梢神経の修復に関与するに「メコバラミン(ビタミンB12)」を配合。
つらい肩こりや痛みに効果があります。
筋弛緩成分
筋弛緩成分は、筋肉の緊張をほぐしてあげる薬のことです。肩こりは筋肉が緊張して毛細血管が圧迫することで起こるため、筋肉の緊張をほぐしてあげれば痛みを和らげることができます。
コリホグス錠
硬くなった筋肉をほぐす筋弛緩成分「クロルゾキサゾン」を配合、肩こりを改善します。
痛み止め成分「エテンザミド」が、肩の痛みを鎮めます。
漢方薬
風邪の引き始めに使われることの多い葛根湯は、実は肩こりにも使われる漢方薬です。葛根湯は体を温めて血行をよくし、こりをほぐしてくれる効果があります。四十肩や五十肩などの痛みには、独活葛根湯(どっかつかっこんとう)が有効です。独活葛根湯は血行をよくし、さらに栄養を与えることで症状を緩和します。
葛根湯エキス顆粒Aクラシエ
肩こりだけでなく、風邪のひきはじめの常備薬として。
肩こりや肩の痛みに効果がある成分
では、具体的にどのような成分が肩こりや肩の痛みに効果があるでしょうか。ここでは代表的な5種類の成分について紹介します。
ロキソプロフェンやインドメタシンなどの解熱鎮痛成分
解熱鎮痛成分は、痛みの原因となる物質が作られるのを抑えるものです。具体的な成分としては次のものが知られています。
〈湿布薬に使われる解熱鎮痛成分〉
・ジクロフェナクナトリウム
・ロキソプロフェン
・フェルビナク
・インドメタシン
・サリチル酸メチル
〈飲み薬に使われる解熱鎮痛成分〉
・ロキソプロフェン
・イブプロフェン
・アセトアミノフェン
・エテンザミド
ビタミンE
〈成分名〉トコフェロール
ビタミンEは毛細血管を広げて血流をよくする働きがある成分です。血流がよくなることで乳酸などの疲労物質がたまりにくくなります。筋肉に栄養素や酸素を届けやすくなることから、筋肉の活動を活性化することも特徴です。
ビタミンB1
〈成分名〉フルスルチアミン
ビタミンB1は、ごはんやパンなどの糖質からエネルギーを作り出す働きを助けます。エネルギーを作り出すことで筋肉や末梢神経の疲労回復を促す成分です。
ビタミンB12
〈成分名〉メコバラミン、シアノコバラミン
特に「メコバラミン」は活性型ビタミンB12と呼ばれており、神経のダメージを修復する成分として知られています。ダメージを受けた神経を修復するためには、たんぱく質やリン脂質といった成分が必要です。ビタミンB12はたんぱく質とリン脂質の合成を促す働きがあるため、神経のダメージを修復することができます。
ビタミンB6
〈成分名〉ピリドキシン
ビタミンB6もエネルギーを作る働きを助ける成分です。肉や魚などのたんぱく質からエネルギーを作るために必要となります。作り出したエネルギーを利用して筋肉や末梢神経の疲労回復をサポートすることが特徴です。
クロルゾキサゾン、メトカルバモール
緊張して硬くなった筋肉をほぐし、痛みを軽減します。筋弛緩成分と呼ばれるもので、市販薬ではクロルゾキサゾンやメトカルバモールが代表的です。筋弛緩成分のみを含んだ市販薬はなく、解熱鎮痛成分がセットで配合されたものが販売されています。
コンドロイチン
解熱鎮痛成分のようにすぐ痛みを止めることはできませんが、コンドロイチンも肩の痛みに効果的だといわれています。コンドロイチンとは、軟骨を構成している成分の一つです。摂取することで軟骨の動きがスムーズになり痛みを取り除くことができます。
関節痛に効果があるビタミン剤によく配合されています。
肩こりや肩の痛みに効果がある外用薬の使い分け
肩こりや肩の痛みがあるとき、多くの方が手に取る外用薬。CMやパッケージの印象でなんとなく選んでいる方もいるかもしれませんが、実は成分や剤形によって効果や特徴、使い心地が異なります。
剤形の違いや特徴
外用薬とは、湿布薬をはじめ塗り薬やスプレーなど皮膚に直接使う薬のことです。同じ成分が含まれている外用薬でも、剤形によって効果や使い心地がやや異なります。
基本的には好みの剤形を選んでもらって構いません。ただし、テープ剤やパップ剤以外のものは衣服でこすれて有効成分が取れやすいため、塗り直しが必要になることがあります。
・テープ剤(プラスター剤)
テープ剤は伸縮性のあるフィルムなどに有効成分を塗ったものです。伸縮性に富んでおり粘着性が高いため、関節付近に貼ってもはがれにくくなっています。「湿布がすぐにはがれて使いづらい…」と感じる方はテープ剤を選ぶとよいでしょう。
・パップ剤
パップ剤とは水分を多く含んだジェル状の軟膏が塗られている外用薬です。テープ剤と比べるとはがれやすいことがデメリットですが、貼るとひんやりすることから熱をもった患部を冷やす効果があります。テープ剤と比べてかぶれにくいのも特徴です。
・クリーム、軟膏、ゲル
必要な分だけ患部に塗って使用します。「有効成分を塗り込んだほうが効く気がする」「服の上から湿布が見えるのが嫌だ」という方は選んでみてください。
特にクリーム剤は患部をマッサージしながら使えるので、筋肉の緊張やこりがあるときには効果的です。
・ローション
ローションも必要な量だけを患部に塗れるタイプのもので、広範囲の使用に適します。クリームなどのように手を汚さず使用できます。肩の痛みが強いときは、テープ剤やパップ剤よりもローションのほうがさっと塗るだけで使用できるので関節に負担をかけずに使えるでしょう。
・スプレー
瞬間的に広範囲を冷却できることがメリットです。ただし、スプレーをするときに周りへにおいが広がりやすいため、学校や職場など人が多い場所では使いにくいかもしれません。
においが気になる方が避けたい成分
外用薬のなかには、においが強いものもあります。においが気になって外用薬の使用をためらっている方もいるでしょう。サリチル酸メチルやメントール、カンフルやハッカはにおいが強い成分です。とくにサリチル酸メチルは、外用薬に特有のにおいを発するものとして知られています。 においが気になる方は、上記の成分を含まない外用薬を選ぶと良いでしょう。 |
解熱鎮痛成分の効果の違い
市販の解熱鎮痛成分のなかでもっとも効果が高いのはジクロフェナクです。こちらは外用薬のみに使われています。痛みを生み出す原因となる物質が作られるのを阻害することで、肩こりや肩の痛みを鎮めるものです。
ジクロフェナクはNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と呼ばれる成分の仲間で、ほかにフェルビナクやロキソプロフェンなども知られています。
逆にもっとも効果が弱いのはサリチル酸メチルです。サリチル酸メチルはジクロフェナクなどとは違い、痛みの原因物質の産生には働きかけません。知覚神経を麻痺させることで痛みを取り除く成分です。痛みが強い方だとサリチル酸メチルでは十分に痛みが取り除かれない可能性があります。
冷感湿布と温感湿布の違い
湿布には貼ると温かく感じる温感湿布と、冷たく感じる冷感湿布とがあります。急に痛み出したり患部が腫れていたりするときは冷感湿布がおすすめです。慢性的な肩こりに悩まされているときは温感湿布を選ぶとよいでしょう。患部を温めることで血流をよくし、痛みを取り除いてくれます。
ただし、厳密に冷感湿布と温感湿布との使い分けは決まっていません。使用して気持ちよいと感じるものを使えば問題ないので、こだわりすぎず自分の好みで選んでみてください。
〈温感湿布に含まれる有効成分〉
・トウガラシ、カプサイシン、ノニル酸ワニリルアミド、ノナン酸バニリルアミド
光線過敏症のリスクがある成分には注意しよう
外用薬に使われている成分のなかには、光線過敏症のリスクがあるものがあります。光線過敏症とは、日光にあたることで赤みや炎症が生じる症状のことです。光線過敏症を起こしやすい成分としては、ケトプロフェンが知られています。市販ではあまりメジャーな成分ではありませんが、湿布を剥がした後は4週間ほど患部を日光に当てないようにしなければなりません。他に有効成分ジクロフェナクも光線過敏症のリスクがあると言われています。外で活動する機会が多い方は、ケトプロフェン、ジクロフェナク以外の成分が含まれている外用薬を選ぶと安心です。
まとめ
肩こりや肩の痛みは、血行不良や眼精疲労、老化に伴う関節炎が原因で起こります。医療機関や整骨院に行けない場合は、市販薬を使って痛みを取り除くのもよいでしょう。代表的なのは解熱鎮痛成分の入った外用薬や飲み薬です。そのほか、ビタミン剤や漢方薬、コンドロイチンなどもあります。今すぐに痛みを取りたい方は解熱鎮痛成分、痛みが出にくいようにケアしたい方はそのほかのものを選んでみてください。