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更新日:2022/05/15
腟カンジダ

急にデリケートゾーンの痒みや匂いが生じた経験はありませんか?その症状は腟カンジダかもしれません。

腟カンジダは、女性の約2割が経験するというポピュラーな感染症。今回は、腟カンジダについて、また、市販されている治療薬についてご紹介します。

監修薬剤師 ハラクロ
薬剤師ライター 中山 歩実

腟カンジダって何?

腟カンジダは、デリケートゾーンの病気ですが、性感染症ではありません。一体どんな病気なのか、今一度確認していきましょう。

腟カンジダの原因は「カビ」

腟カンジダの原因は、カンジダ菌という名前のカビです。
カンジダ菌は、もともと人の体内に住みついているカビで、普段は悪さをしていませんが、以下のような原因で過剰に増殖し、症状を起こすようになります。

・ストレスや睡眠不足で免疫力が低下したとき
・抗菌薬を使ったとき
・妊娠中
・ピルの服用    など

こうした免疫力の低下などの原因でカンジダ菌による症状が現れるようになった場合は、治療の対象です。性交渉とは関係なく発症しますが、症状が出ているときに性交渉をするとパートナーにも症状が出るようになるため、注意してください。

腟カンジダの多彩な症状

腟カンジダは、デリケートゾーンに以下のような症状が出る病気です。

・腟や外陰部のかゆみ、灼熱感(ヒリヒリ感)
・白っぽく、ボソボソ、ドロドロした感じのおりもの
・おりものの異臭(刺激臭)
・性交時痛

ただし、性感染症なども似たようなデリケートゾーンの症状を起こすので、区別は難しいです。性交渉の経験がない方、しばらく性交渉をしていない方で上記の症状がある場合は、腟カンジダが疑わしいでしょう。

腟カンジダの治療方法は?

腟カンジダは、匂いや痒みによって日常生活に支障をきたします。どのように治療するのでしょうか。

まずは病院へ

基本的には、病院を受診して診察を受けましょう。婦人科・産婦人科・レディースクリニックなど、どこでもOKです。おりものを検査し、カンジダ菌が増殖しているかを調べます。検査は痛みをほぼ感じないため、あまり不安に思わずに受診してください。
腟カンジダを放置した場合、自然によくなることも少なくありません。しかし、症状が重い場合には腟カンジダが慢性化してしまうこともあります。

婦人科はちょっとハードルが高いと感じられるかもしれませんが、デリケートゾーンに違和感があるときには早めに受診してください。初期に対応した方が、治療が短期間ですむことが多いです。

腟カンジダの市販薬は?

腟カンジダの治療薬は、ドラッグストアなどで市販もされています。
ただし、購入できるのは、過去に病院で腟カンジダだと診断を受け、治療を受けたことがある方だけです。後ほどご説明しますが、腟カンジダ以外の病気である可能性を除外しなくてはいけません。

治療薬は、腟の症状に使う「腟錠・腟坐剤と、外陰部の症状に使う「クリームに分けられます。どちらにも、カンジダ菌を殺菌する成分が含まれ、症状のある部位によって使い分けます。すべて、薬剤師による説明を受けてから購入する薬です。

成分名 商品名 腟錠 腟坐剤 クリーム
クロトリマゾール エンペシドL
エンペシドLクリーム
ミコナゾール シュトガード腟カンジダ坐剤
メディトリート
シュトガード腟カンジダクリーム
メディトリートクリーム
オキシコナゾール フェミニーナ 腟カンジダ錠
イソコナゾール メンソレータムフレディCC膣錠
メンソレータムフレディCC1※
メンソレータムフレディCC1A※
メンソレータムフレディCCクリーム

※はインターネット販売不可の薬

あまり症状を感じなくても、「腟錠・腟坐剤」と「クリーム」を両方使うのがおすすめです。「腟錠・腟坐剤」と「クリーム」を併用するときは、同じ成分の薬を選ぶとよいでしょう。治療が効かなかった場合に、使用方法がうまくいかなかったのか、成分に耐性があったのかなど判断しやすくなるためです。

腟錠・腟坐剤」は、うまく挿入できずに出てきてしまうことがあります。その時、周りが溶けた状態であれば、もう1度入れ直す必要はありません。すぐに出てきてしまった場合は、そのまま入れ直してください。
腟錠」を入れるときに少し痛みを感じる方は、「腟坐剤」の方がよいでしょう。「腟坐剤」は表面が固い油脂でできているため、腟錠に比べて滑りがよく、挿入しやすいです。
腟錠・腟坐剤」を使用して、良くなったように感じられても、説明書に書かれている通りに6日間使用を続けてください。きちんと決められた日数治療を続けなければ、生き残ったカンジダ菌によって再発を起こすほか、薬が効かなくなってしまうことが考えられます。
膣カンジダの市販薬の選び方に関しては、こちらのコラムもご参照ください。

腟カンジダと似た病気は?

腟カンジダと似たような、デリケートゾーンの痒みやおりものの異常が生じる病気はいくつもあります。

・腟トリコモナス症
・細菌性腟炎
・子宮頸管炎
・骨盤内炎症性疾患

おりものの色や性状の違い、発熱や腹痛の有無など、それぞれに少しずつ違いはありますが、自分で判断するのはなかなか難しいです。
腟カンジダの再発だと考えて市販薬を使ったのによくならない、熱や出血があるなど「おかしいな」と感じられたら、早いうちに婦人科などを受診しましょう

例えば骨盤内炎症性疾患は、女性の腹部にある子宮や卵巣、卵管などに細菌が入り込んで生じる感染症のことで、おりものの異常や腹痛、発熱などが特徴的な疾患です。この骨盤内感染症は、自然とよくなることはまずなく、慢性的に骨盤痛が残る、繰り返すと不妊になるなど、長期的な影響があるとわかっています。
似たようなおりものの症状だからと、自己判断で放置しないようにしてください。

まとめ

今回は、多くの女性に関係する「腟カンジダ」と市販の治療薬について解説しました。
腟カンジダは、ストレスや疲れ、薬の服用などによって体の免疫力が低下したときに発症しやすい感染症です。必ずしも性交渉とは関係がなく、性交渉の経験がない方でも発症することがあります。
再発の方は、市販薬でも治療をおこなうことが可能です。「腟錠・腟坐剤」、「クリーム」を症状に合わせて選びましょう。なかなかよくならない場合は、腟カンジダ以外の可能性もあるため、婦人科などを受診してください。

 

<参考資料>
・産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2020
東京都福祉保健局. 東京都制感染症ナビ:性器カンジダ症