

あせもと湿疹、何が違う?見分け方と正しい対処・予防法【薬剤師が解説】
「これ、あせも?それとも湿疹?」夏になると肌に現れる赤いブツブツに悩まされる方は少なくありません。
見た目が似ていても、実は原因も対処法もまったく違います。
この記事では、薬剤師の視点から“あせも”と“湿疹”の違いをわかりやすく解説。
それぞれの症状に応じたセルフケアや市販薬の選び方、再発を防ぐ予防法まで丁寧にご紹介します。


第1章:あせもと湿疹の違いは?見た目と原因で見分けるコツ
「赤いブツブツができて、かゆい……これ、あせも?それとも湿疹?」
肌トラブルが出たとき、まず悩むのがこれ。
見た目が似ている分、判断が難しく、対処を間違えると悪化の原因になります。
ここでは、あせも(汗疹)と湿疹の違いを、原因・症状・見た目という3つの観点から整理していきます。
間違えやすい肌トラブルこそ、きちんと見分けるコツを知っておくことが大切です。
■ あせも(汗疹)は“汗の出口トラブル”
あせもは、医学的には「汗疹(かんしん)」と呼ばれます。
汗腺の出口(汗管)が詰まり、皮膚の中に汗がたまることで炎症が起こるのが特徴です。
高温多湿の環境で大量に汗をかくと、汗の成分や汚れによって汗管がふさがり、ブツブツや赤みが現れます。
特に汗をかきやすい首・脇の下・背中・おしりなどに出やすく、子どもや赤ちゃんによく見られますが、大人にも起こります。
■ 湿疹は“バリア機能の低下がきっかけ”
一方の湿疹は、原因がもう少し複雑です。
皮膚のバリア機能が乱れたところに、化学物質や紫外線、摩擦、花粉、金属などの刺激が加わり、炎症が起こります。
さらにアレルギー体質・乾燥肌・皮脂の乱れなどの内的要因も関与するため、原因が一つに特定できないこともよくあります。
湿疹はかゆみが強く、繰り返しやすいのも特徴です。
皮膚科では「皮膚炎」と呼ばれることも多く、接触性皮膚炎・アトピー性皮膚炎・汗かぶれなどがこのカテゴリーに含まれます。
■ 見た目で見分けるときのポイント
見た目だけで断定はできませんが、いくつかの特徴を知っておくと判断のヒントになります。
あせもは比較的浅い炎症で、皮膚の表面近くにとどまります。
一方、湿疹は炎症が深く広がりやすく、ジュクジュクしたり、皮膚がごわついてくることもあります。
判断に迷ったときの参考ポイント
症状が現れるタイミングや部位も、判断材料になります。
汗をかいたあとに首や背中がかゆくなった場合は、汗疹の可能性が高めです。
広範囲に赤みが広がっていたり、かさぶた・皮むけ・再発を繰り返しているようなら、湿疹の可能性が高いです。
ただし、あせもが悪化して湿疹に移行することもあるため、症状が長引く場合やかゆみが強い場合は皮膚科を受診するのが安心です。


第2章:症状が出たときの対処法と市販薬の使い方
赤みとかゆみ、そして小さなブツブツ。
「とりあえず冷やせばいい?」「保湿して様子を見る?」と自己流で対処していませんか?
あせも(汗疹)と湿疹では、ケアの仕方も市販薬の選び方も大きく違います。
適切な対処を知っておかないと、悪化したり長引いたりすることもあるんです。
この章では、それぞれの症状に合った対処法と市販薬の使い分けについて、薬剤師の視点から解説します。
■ あせもは「冷やす・清潔」が基本ケア
あせも(汗疹)は、汗の出口が詰まり、皮膚の中に汗がたまることで炎症が起こっている状態です。
そのため、まず大事なのは「汗をこまめに拭く」「通気性を良くする」「肌を清潔に保つ」こと。
軽度のあせも
水晶様汗疹のような白っぽい水ぶくれのみで、かゆみや赤みがなければ、特別な薬を使わず自然に治ることもあります。
濡れタオルやシャワーなどで清潔を保ち、通気性のよい服を選びましょう。
かゆみのあるあせも
赤みやかゆみがある紅色汗疹には、非ステロイド系の外用薬や抗ヒスタミン成分入りの薬が効果的です。
特に、汗ばむ季節でも快適に使える使用感の製品がおすすめです。
▶おすすめ市販薬
【レスタミンコーワパウダークリーム】
グリチルレチン酸と抗ヒスタミン配合。
さらっとしたパウダー感で、汗の多い部位にも使いやすい。
【キュアレアa(小林製薬)】
NSAIDsのウフェナマート+抗ヒスタミン成分を配合。
顔のかゆみにも使え、炎症をしっかり抑えたい時に適しています。
深在性のあせも・発熱を伴う場合も
皮膚が青白く盛り上がるタイプや、発熱・全身倦怠感を伴う場合は、すぐに皮膚科を受診しましょう。
日本ではまれですが、放置すると体温調整に影響を与えることもあります。
■ 湿疹は「原因除去+保湿+薬」で治す
湿疹は、皮膚のバリア機能が壊れたところに、アレルギー・刺激・乾燥などが重なって炎症を起こす状態です。
まずは、原因となりうるもの(化粧品、金属、洗剤、衣類など)を避けること。
そのうえで、保湿と薬による炎症のコントロールが必要です。
保湿は「湿疹ケアの土台」
保湿は、単なる“おまけ”ではなく、治療のベースです。
皮膚のバリア機能をサポートし、刺激を受けにくい状態を作るため、薬の効果を高め、再発予防にもつながります。
▶おすすめ保湿剤
【ル・マイルド 高保湿化粧水(健栄製薬)】
医薬部外品。2つの有効成分を配合
・ヘパリン類似物質:高い保湿効果
・グリチルリチン酸ジカリウム:抗炎症作用で肌の赤みやかゆみをケア
無香料・無着色・弱酸性で、敏感肌でも使いやすく、家族で共有しやすい処方です。
✔ 入浴後・洗顔後5分以内が「保湿のゴールデンタイム」
✔ 朝晩2回の保湿が理想的
軽度の湿疹
赤みやかゆみが軽い場合は、抗ヒスタミン単体の市販薬が選択肢になります。
【新レスタミンコーワ軟膏】
ジフェンヒドラミン(抗ヒスタミン)のみを配合したシンプルな処方。肌にやさしく、湿疹の初期対応にも適しています。
かゆみや炎症が強い場合
炎症が広がっていたり、かき壊してジュクジュクしているような場合は、ステロイド外用薬の使用を検討しましょう。
▶おすすめ市販薬
【新リビメックスコーワ軟膏】
プレドニゾロン酢酸エステル(ミディアムクラスのステロイド)配合。顔や首にも使用可能。
【フルコートf(田辺三菱製薬)】
ストロングクラスのステロイドに、抗生物質(フラジオマイシン)をプラス。
かき壊してしまった湿疹・化膿リスクのある患部に。
■ 症状に合った薬を使うことが、早く治す近道
肌トラブルが出たとき、間違った薬を使うと逆効果になることも。
以下の表を参考に、症状に合った薬を選びましょう。
✔ 以下の症状があれば、早めに皮膚科で診てもらいましょう。
・市販薬を5日使っても治らない
・広範囲に広がっている
・ジュクジュクしている
・繰り返し同じ部位に出る
次章では、こうした肌トラブルを起こさないための「予防法」を紹介します。
毎日の生活習慣やスキンケアの見直しで、あせもや湿疹をしっかりブロックしていきましょう。


第3章:肌トラブルを防ぐ!日常でできる簡単予防法
肌に赤いブツブツが出て、かゆくて…となってから慌てて薬を探すより、そもそも肌トラブルを起こさない生活が理想です。
汗疹(あせも)も湿疹も、原因はさまざまですが、共通して言えるのは――
日常のちょっとした工夫が、肌を守る一番の対策になるということ。
ここでは、忙しい人でも取り入れやすいシンプルな予防法を紹介します。
■ あせも・湿疹に共通する3つの基本予防
皮膚トラブルの多くは、「汗」「ムレ」「こすれ」などが引き金になります。
そこで大事なのは、この3つの予防。
1. 汗をかいたらすぐ拭き取る
とくに夏場や運動後は、肌に汗を残さないことがポイントです。
ウェットティッシュや汗ふきシートをバッグに入れておくだけでも安心。
2. 吸湿性・通気性のある服を選ぶ
綿素材や速乾機能のあるインナーは、肌の蒸れを減らしてくれます。
とくに子どもや赤ちゃんには、肌着を重ねすぎないことも大事です。
3. 帰宅後の“汗落とし”ルーティン
外出後はなるべく早くシャワーを浴びる、難しければ濡れタオルで首や背中を拭くだけでも効果的です。
汗の成分は時間が経つと刺激に変わるので、放置しないのが鉄則。
■ 湿疹予防には“バリア機能”の維持がカギ
あせもと違い、湿疹は肌のバリア機能が崩れたところに刺激が重なって起こるケースが多いです。
そのため、日々のケアで“刺激を減らし、バリアを守る”ことがとても大切。
◆ アクセサリー・香料・摩擦に注意
金属アレルギーのある方は、ネックレスやピアスを長時間つけないようにしたり、
香料入りのボディソープや柔軟剤も見直す価値ありです。
特に服のタグや下着のゴムなど、肌に触れる“ちょっとした刺激”が湿疹の引き金になることも。
◆ 保湿ケアは洗浄後すぐに
お風呂上がりや洗顔後は、水分が急速に逃げやすいタイミング。
5分以内に保湿を行うことで、乾燥を防ぎ、バリア機能の回復をサポートできます。
◆ 紫外線対策=肌の防御力アップ
紫外線は、目に見えないダメージを肌に蓄積させます。
外出時はSPF15〜30程度の低刺激な日焼け止めでも充分。
湿疹が出やすい人ほど、紫外線も“刺激”と捉えて予防することが大切です。
紫外線対策について詳しく知りたい方は、『日焼け止め』のコラムも参考にしてください。
■ 肌の健康は生活習慣からも作られる
皮膚は、内臓と同じく「体の内側の調子」がそのまま出る場所でもあります。
実は、睡眠・ストレス・食生活といった日常のリズムが、肌状態に深く関わっているんです。
✔ 睡眠不足 → 肌の修復が追いつかず、炎症が長引く
✔ ストレス → 自律神経が乱れて、かゆみが強まる
✔ 栄養バランスの乱れ → 皮膚細胞の再生に必要な栄養が不足
肌荒れや湿疹が「なぜか毎回同じ時期に出る」などの傾向がある方は、
生活リズムを見直すこと自体が“根本的な予防”になるかもしれません。
肌は「外からの刺激」と「内側の状態」の両方に敏感に反応します。
だからこそ、外からの予防(汗対策・保湿・紫外線ケア)と、内側からのサポート(睡眠・食事・ストレス管理)を
同時に意識していくことが、肌トラブルを減らす近道になります。
次のトラブルが起こる前に、ぜひ今日から取り入れてみてくださいね。
まとめ|「あれ?」と思った時こそ、正しく見極めてケアを
・あせもは汗腺の詰まり:汗をかいた後に小さな赤いブツブツが出る。
・湿疹は皮膚の炎症:赤みが広がる・かゆみが続く・ジュクジュクしやすい。
・ケアの基本は原因別に:あせも=清潔と冷却、湿疹=保湿と刺激回避。
・市販薬の選び方がカギ:症状の強さや範囲で使い分けることが大切。
肌トラブルは「これって何?」と思った時の初期対応がとても大事です。
汗をかいた後のケア、乾燥を防ぐ保湿、ちょっとした刺激を避ける習慣。
どれも今日からできることばかりです。
「出てから慌てる」より、「出さない工夫」を。
自分や家族の肌を守るためにも、毎日の積み重ねが何よりの予防になります。
【参考情報】
この記事の作成にあたり、以下の公式情報を参考にしています。
ご自身での確認や商品選びの際にご活用ください。
◆ メーカー公式製品情報(医薬品・スキンケア製品含む)
・興和|レスタミンコーワ製品情報(レスタミンコーワパウダークリーム・新レスタミンコーワ軟膏 ほか)
・小林製薬|キュアレアa 製品情報
・興和|リビメックスコーワ軟膏 製品情報
・田辺三菱製薬|フルコートf ブランドサイト
・健栄製薬|ル・マイルド 高保湿化粧水(医薬部外品)公式情報