

“夏になると毎年咳が出る”あなたへ。それ、家のせいかもしれません【夏型肺炎チェック】
「旅行中は咳が治まるのに、家に戻るとぶり返す…」そんな経験がある方は、家のカビが原因かもしれません。
夏型過敏性肺炎は、風邪のようで実は環境アレルギー。
この記事では、自宅のどこが危険なのか、何に気をつけるべきか、薬剤師としての立場からセルフチェックと対策を紹介します。


第1章:毎年夏に咳が出る人は「夏型肺炎」に注意
夏になると咳が止まらない人へ
「夏風邪かな?」と思っていた咳が、なかなか治らない。
それが毎年くり返されているなら、「夏型過敏性肺炎」の可能性があります。
この病気は季節性のアレルギー性肺炎の一種。
とくに6〜10月に多く、梅雨から真夏にかけて注意が必要です。
原因は“カビ”の一種「トリコスポロン」
夏型過敏性肺炎の原因は、トリコスポロンというカビです。
カビの中でも空気中に「胞子」を飛ばすタイプで、これを吸い込むと肺に炎症が起きます。
このトリコスポロンは、以下のような場所で特に繁殖しやすくなります。
・エアコンの内部
・浴室や洗面所などの水回り
・キッチンや流し台の下
・押し入れや下駄箱など通気の悪い場所
湿度が高く、温度が20℃を超えると一気に繁殖するため、まさに日本の夏は絶好の環境なんです。
症状は風邪そっくり。でも“家を出ると治まる”
夏型過敏性肺炎の症状は、風邪ととても似ています。
・咳が続く
・微熱が出る
・痰が絡む
・全身がだるい
このため、多くの人が「ただの夏風邪」として見逃してしまいます。
でも、ひとつだけはっきりした特徴があります。
家を離れると咳が治まることがあるんです。
たとえば、旅行や実家への帰省中に咳が止まったり、職場では出ないのに家に戻ると咳き込む…そんなケースがよく見られます。
放置はNG。進行すると“肺が弱る”ことも
この病気の怖いところは、何年もくり返しているうちに肺がダメージを受ける点です。
放置すると、息切れしやすくなったり、酸素を取り込みにくくなって呼吸困難に陥るケースも報告されています。
咳が「毎年、夏だけ」「1週間以上続く」「微熱や倦怠感もある」という人は、一度疑ってみる価値があります。


第2章:夏型肺炎の見分け方と受診の目安
旅行先では咳が出ない?家との比較がカギ
夏に咳が続いていても、出張や旅行で自宅を離れるとピタッと咳が止まる。
でも、家に戻ったとたんにまた咳が出始める…。
もしこんな傾向があれば、「夏型過敏性肺炎」を疑ってみるべきです。
この病気は、カビ(トリコスポロン)の胞子を吸い込むことで症状が悪化するので、カビの少ない環境に行くと一時的に良くなることがあるんです。
観察ポイント①:咳の出る時間帯はいつ?
夜になると咳がひどくなる…。
そんな人は要注意です。
副交感神経が優位になる夜間は、気道が狭くなりやすいため、アレルギー性の咳が強く出ることがあります。
特に、布団や寝具にカビが潜んでいると、それを吸い込むことで夜間に症状が悪化することもあります。
観察ポイント②:姿勢と咳の関係
横になると咳き込みやすく、起き上がると少し楽になる。
これもアレルギー性の咳や、肺炎の初期症状に多い傾向です。
重力によって気道や肺の中の分泌物がたまりやすくなるため、仰向け姿勢が咳を誘発するんですね。
観察ポイント③:家の中にカビが多そうな場所は?
夏型肺炎の原因であるカビ「トリコスポロン」は、高温多湿な場所に好んで繁殖します。
とくに注意すべき場所はこちらです。
・エアコンの内部(特にフィルター裏)
・押し入れや下駄箱など、通気性の悪い収納
・浴室、脱衣所、洗面所のすみっこ
・キッチンの流し台の下や排水口まわり
湿気がこもりやすい古い住宅や気密性の高いマンションは、要チェックです。
病院での検査と、行くべき診療科
「風邪っぽい症状が1週間以上続く」「微熱と咳がだるいほどある」「動くと息が切れる」
そんなときは、早めの受診が安心です。
おすすめの診療科は、呼吸器内科またはアレルギー科。
夏型過敏性肺炎の診断には、以下のような検査が用いられます。
・血液検査(炎症反応、白血球数など)
・胸部X線・CT検査(スリガラス状の陰影)
・トリコスポロン抗体検査(確定診断に必要)
これらはすべて医療機関で実施可能な検査なので、「夏になると咳が出る」人は一度きちんと調べてもらうのがベストです。
放っておかないで「見極める」
咳が長引く理由には、アレルギー・感染症・生活環境などさまざまな要因が隠れています。
だからこそ、症状が出るタイミングや場所をしっかり観察することが、早期発見の第一歩になります。


第3章:咳対策は掃除+薬の“ダブル作戦”で
咳を抑えるには「薬」と「環境」の両方から
夏型過敏性肺炎を乗り越えるには、“薬だけ”でも“掃除だけ”でも足りません。
咳を和らげる市販薬の活用と、カビの発生を抑える環境改善の“ダブル作戦”がカギになります。
市販薬でできること|漢方薬の活用
夏型過敏性肺炎のような、アレルギー性の咳に対しては、漢方薬が相性の良いケースがあります。
症状のタイプによって選ぶべき漢方薬が異なるため、自分の咳の“特徴”を意識して選ぶのが大切です。
麦門冬湯エキス錠クラシエ
乾いた咳や、のどのイガイガ感が続くときにおすすめの漢方薬です。
痰が少なく、からせるような咳が出る方に向いており、のどや気道の乾燥を和らげる作用があります。
夜間の咳にも使いやすく、風邪が治ったあとに咳だけ残っているような場面でも重宝されます。
「クラシエ」漢方五虎湯エキス顆粒A
こちらは、痰がからむ咳や、ゼーゼー・ヒューヒューとした咳に適しています。
体力のある方向けの処方で、咳き込みが強いときや、気管支の炎症が関係していそうなケースにも用いられます。
咳だけでなく、胸の苦しさや呼吸のしづらさを訴える方にも選ばれています。
どちらもドラッグストアで手に入りますが、漢方薬は“体質”や“症状の質”に合っていないと効きづらいので、選ぶ際は薬剤師への相談もおすすめです。
病院で処方される薬|ステロイドも選択肢
咳が1週間以上続く、息切れがする、熱が下がらない――
そういった状態が続く場合、病院での受診が必要です。
重症の場合、医師の判断でステロイド薬が使われることもあります。
これは肺の炎症を短期間で抑える強力な治療薬で、長引く過敏性肺炎の症状改善に用いられます。
ただし、副作用リスクもあるため、必ず専門医の管理下で使用しましょう。
掃除の基本は「湿気対策と換気」
カビの温床を断たない限り、いくら薬で症状を抑えても再発リスクは残ります。
以下の環境対策を習慣にすることが、根本治療への第一歩です。
エアコンの掃除
フィルターは2週間に1回を目安に掃除。
使用後に「送風モード」で内部を乾燥させると、カビの繁殖を抑えられます。
水回り・押し入れ・下駄箱など
浴室や流し台の下は、水気を残さず、日常的に乾燥を保つことが重要。
除湿剤の設置、湿度計による管理、こまめな換気も忘れずに。
湿度の目安は「60%以下」が理想です。
掃除時の注意点|不織布マスクを忘れずに
掃除をする際は、必ず不織布マスクを着用しましょう。
カビの胞子はウイルスよりもはるかに大きく、掃除中に空気中に舞いやすいため、吸い込んでしまうと症状が悪化する原因にもなります。
最終手段は「リフォーム」や「引っ越し」
どんなに掃除しても改善が見られない場合、住環境そのものに問題がある可能性もあります。
・古い木材や畳にカビが染み込んでいる
・建物の構造上、どうしても風通しが悪い
・エアコンや換気設備が古く、カビが根づいている
こういった場合は、部分的なリフォームや、思い切った住み替えを検討しても良いでしょう。
慢性的な咳や息切れは、生活の質を大きく下げてしまいます。
根本改善のための“投資”と考えるのも一つの選択です。
今年の夏は本気で「根本対策」を
夏型肺炎のやっかいなところは、「毎年くり返すこと」。
薬だけ、掃除だけでは不十分で、“咳の原因と結果”の両方にアプローチすることが大切です。
夏の咳を軽く見ずに、今こそ本気で“根本対策”。
今年の夏を、快適に乗り切りましょう!
まとめ|くり返す夏の咳とサヨナラするために
・毎年夏に咳が出るなら「夏型過敏性肺炎」を疑う
家を離れると症状が治まるのが大きなヒント。
・原因はカビ「トリコスポロン」
湿度が高いエアコンや水回りで繁殖しやすい。
・チェックポイントは「時間・姿勢・場所」
夜間悪化、仰向けで悪化、自宅で悪化は要注意サイン。
・対策は「薬+掃除」の合わせ技が効果的
麦門冬湯・五虎湯などの漢方と、カビを減らす環境づくりが重要。
・つらい咳が続くなら早めに専門科を受診
呼吸器内科やアレルギー科での検査が確実。
夏になると出てくる咳は、ただの風邪じゃないかもしれません。
薬に頼る前に、まずは家の中を見直すことから始めてみてください。
ちょっとの掃除と意識の変化で、咳のない夏に変わる可能性は十分あります。
【参考情報】
この記事の作成にあたり、以下の公式情報を参考にしています。
ご自身での確認や商品選びの際にご活用ください。
◆ メーカー公式製品情報
・クラシエ薬品|麦門冬湯エキス錠クラシエ(医薬品)
・クラシエ薬品|「クラシエ」漢方五虎湯エキス顆粒A(医薬品)