

春や秋に不調が続くあなたへ。季節の変わり目に強くなる生活術5選
「春や秋になると体調が安定しない…」
それ、季節の変わり目にありがちな“自律神経の乱れ”が原因かもしれません。
でもご安心を。
日々のちょっとした工夫で、不調はしっかりケアできます。
薬剤師として、習慣に取り入れやすい予防法を厳選してお伝えします。


第1章:なぜ春や秋は体調を崩しやすい?
春や秋になると、なんとなく体調がすぐれない。
頭が重い、寝つきが悪い、気持ちが不安定になる…。
「毎年この時期になると調子が悪くなる」と感じる人は、実は少なくありません。
その理由は、寒暖差や気圧の変化、日照時間の短縮といった、季節の変わり目特有の環境ストレスが関係しているからです。
これらの変化が続くと、私たちの体に備わっている自律神経がうまく働かなくなり、さまざまな不調として現れるようになります。
気温差・気圧差が自律神経を乱す
春や秋は、1日の中で気温の差が大きくなりやすい時期です。
朝は肌寒いのに昼は汗ばむほど暖かくなる――この寒暖差が、体にとっては思っている以上のストレスになります。
また、この時期は低気圧と高気圧が頻繁に入れ替わるのも特徴です。
気圧の変動を感知するのは、耳の奥にある「内耳」。
内耳が変化を感知すると、それが神経を通じて脳に伝わり、結果として交感神経が刺激されてしまいます。
交感神経が過剰に働くと、血圧上昇・心拍数増加・筋肉の緊張が起きやすくなり、頭痛、めまい、肩こり、不眠といった不調へとつながっていきます。
春になると感じる、あの違和感
薬剤師として多くの相談を受ける中でも、「この時期は体がついていかない」という声は毎年聞かれます。
私自身も、春になると眠りが浅くなる日が増え、朝の目覚めが重たくなります。
当初は仕事の疲れかと思っていましたが、気温差と気圧の変動に体がついていけてないことに気づきました。
日照時間が変わる影響も見逃せません。
特に秋は、日照時間が短くなることでセロトニン(心の安定を保つ神経伝達物質)の分泌が減少し、気分の落ち込みやイライラが起こりやすくなります。
“なんとなく不調”には理由がある
「季節のせい」と一言で片付けてしまいがちなこの時期の不調。
でも、それにはきちんとした科学的な根拠があります。
寒暖差、気圧の変動、日照時間の変化。
これらの環境変化が、自律神経という体のバランス機構に負担をかけることで、私たちの心と体に不調が現れているのです。
大切なのは、「なんとなく不調」にも仕組みがあるということを知ること。
次の章では、この時期にできるだけ快適に過ごすための生活術5選を、薬剤師の視点からご紹介していきます。


第2章:薬剤師がすすめる生活術5選+セルフケア薬
体調が崩れやすい春や秋。
不調を感じてから対処するよりも、あらかじめ『整えておく』ことが何より大切です。
この章では、薬剤師としての視点から、日常にすぐ取り入れられる生活術5選を厳選。
さらに、不調を感じたときに役立つセルフケア用の市販薬やサプリについても紹介します。
毎日の習慣にしたい5つの生活術
① 朝日を浴びて体内時計をリセット
起床後1時間以内に日光を浴びると、脳内の「体内時計」がリセットされます。
この光刺激により、セロトニンの分泌が促され、交感神経がスムーズに働き始めます。
朝のぼんやり感や無気力感の対策にもつながるため、特に季節の変わり目には意識して取り入れたい習慣です。
② 朝食は抜かずに、ビタミンB1を意識
朝食をとることで、夜間に下がった体温が上がり、自律神経が活動モードへ切り替わりやすくなります。
中でもビタミンB1は、糖質をエネルギーに変えるために不可欠で、神経の働きを支える栄養素。
おすすめは、玄米・豚肉・納豆など。忙しい朝でも手軽に取り入れられます。
③ 湯船につかる:副交感神経を高める
ぬるめ(38〜40℃)のお湯に10~15分つかるだけで、副交感神経が優位になり、リラックス状態に切り替わります。
シャワーだけでは不十分なこともあるため、夜は意識して湯船を使ってみてください。
入浴剤を活用すれば、香りや保温効果でよりリラックスできます。
④ 「内関」のツボを押して不調を緩和
「内関(ないかん)」は、手首のしわから指3本分ひじ側にあるツボです。
このツボは、めまい・吐き気・不安感などの緩和に役立つと言われています。
少し響く感覚のある部分を、3〜5秒ほどじんわりと押すのがポイントです。
特に乗り物酔いや気圧変化に弱い方は、こまめに刺激してみましょう。
⑤ ウォーキングなど軽いリズム運動を継続
過度な運動はストレスになりますが、軽いウォーキングやストレッチなどのリズム運動は、自律神経の安定を促します。
運動中はセロトニンが分泌され、心のバランスも整いやすくなります。
目安は1日15〜30分、話しながら歩ける程度の強度が理想です。
薬剤師がすすめる市販薬・サプリ
不調が出てしまったときには、セルフケアとして市販薬やサプリメントの活用も有効です。
以下に、薬剤師として実際にすすめることが多いものをいくつか紹介します。
■ 漢方薬
・苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう):めまいやふらつき、耳鳴りなどに対応。
・抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ):イライラや不眠、緊張感の強い方におすすめ。
これらは「気象病」や「自律神経の乱れ」が関わる不調に向いています。
体質に合えば、予防的に使うことで改善につながるケースもあります。
■ ビタミンB群サプリ・医薬品
・アリナミンEXプラスなどの医薬品
・ディアナチュラスタイル ビタミンB群などのサプリ
ビタミンB群は神経の代謝と疲労回復に役立ちます。
特に睡眠の質が悪い人、ストレスが多い人にはおすすめです。
■ 疲労回復ドリンク剤
・チョコラBBローヤル2
・ユンケル黄帝など
「今日はなんとか乗り切りたい」そんな一日には、アミノ酸やビタミンが入ったドリンク剤も一つの選択肢です。
常用するのではなく、“ここぞ”の場面で使うと効果的です。
使用前に確認したい注意点
漢方薬やビタミン剤は手軽に手に入りますが、「自分に合っているか」を見極めることが大切です。
特に、妊娠中・授乳中・持病がある方や、薬を複数服用している方は、必ず薬剤師または登録販売者に相談しましょう。
また、漢方薬は「合えばよく効く」けれど、「合わなければ効かない」という特徴もあります。
自己判断で長期間使うより、早めに相談することが安心です。
次の章では、こうしたセルフケアや市販薬でも改善しない場合に、医療機関をどう活用すべきかについてご紹介していきます。


第3章:生活改善でも治らないときは?医療機関の活用も選択肢に
生活術や市販薬を取り入れても、どうしても体調が戻らない。
そんなとき、「もう少し様子を見よう」と先延ばしにしてしまう方は少なくありません。
ですが、症状が続いているときには、医療機関を頼ることも大切な選択肢です。
「気のせいかな?」「歳のせいかも…」と自分に言い聞かせるよりも、早めの受診が安心につながります。
セルフケアには限界がある
市販の漢方薬やビタミン剤は、『不調の初期』には効果が期待できるアイテムです。
また、生活リズムを整えることも、根本的な改善には欠かせません。
ですが、それでも体調が改善しない、あるいは日常生活に支障が出てくるレベルになったときは、自己対処では限界です。
こんな症状が続くなら、受診を考えて
体の声を無視せず、医療機関の受診を検討すべき目安として、次のような状態が挙げられます。
・頭痛やめまいが1週間以上続いている
・朝から強い倦怠感があり、仕事や家事に集中できない
・気分が沈んだり、イライラ・不安感がひどくなってきた
・動悸が続く、深く呼吸できない感じがある
これらは、単なる自律神経の乱れを超えて、精神的・身体的な疾患の初期サインであることもあります。
受診が早ければ早いほど、対応もしやすくなります。
受診するなら、どの診療科?
「この症状って、どこを受診すればいいの?」と迷う方も多いと思います。
まずは、身近な内科で構いません。
症状が精神面に強く出ている場合や、不安感・緊張感が続くようなら、心療内科も選択肢になります。
最近では、自律神経外来や漢方外来を設けているクリニックも増えてきているので、症状に合わせて探してみるのも良いでしょう。
「セルフケア+医療」で安定したケースも
以前、40代女性の患者さんで、春先の不調に悩み「漢方薬と生活改善」を試していた方がいらっしゃいました。
最初は軽快していたものの、次第に倦怠感が強くなり、日常生活に影響するほどに。
そこで内科を受診してもらったところ、軽度の自律神経失調症と診断され、薬とカウンセリングで徐々に改善しました。
こうしたケースを見るたびに、私は「セルフケア+医療」の組み合わせが一番安全で確実だと実感します。
頼ることは、弱さじゃない
「ちょっと疲れてるだけ」「春だから仕方ない」――その言葉の裏で、つらさを我慢していませんか?
生活習慣や市販薬で整えられる範囲もありますが、それだけで解決できないこともあります。
そんなときに無理をせず、プロの手を借りることは、弱さではなく『賢さ』です。
体と心の声に耳を傾け、必要なときには迷わず相談すること。
それが、季節の変わり目を健やかに乗り越える、いちばん確実な方法です。
まとめ
●季節の変わり目は自律神経が乱れやすい時期:寒暖差や気圧変化、日照時間の変化が影響する。
●『なんとなく不調』には科学的な理由がある:体内で起こる反応を知ることで、不安が減り対策がとりやすくなる。
●生活習慣の見直しが体調管理の第一歩:朝日・朝食・入浴・ツボ・運動の5つでリズムを整える。
●市販薬やサプリも適切に使えば心強い味方:ビタミンB群や漢方薬など、体質に合えば効果が期待できる。
●症状が長引く場合は医療機関の受診を:内科や心療内科、自律神経外来の活用も選択肢として考える。
季節の変わり目に体調を崩しがちな方は、まず「なぜそうなるのか」を知ることから始めてみてください。
理由がわかると、気持ちも少しラクになります。
生活習慣のちょっとした見直しや、セルフケアアイテムの取り入れ方を工夫することで、毎年つらかった時期を乗り越えられるようになるかもしれません。
『備えること』が、最大の対策になります。
【参考情報】
この記事の作成にあたり、以下の公式情報を参考にしています。
ご自身での確認や商品選びの際にご活用ください。
◆ メーカー公式製品情報
・アリナミン製薬|アリナミンEXプラス(医薬品)公式サイト
・エーザイ|チョコラBBシリーズ ブランドサイト(医薬品・サプリメント含む)
・クラシエ薬品|クラシエ漢方製品情報(苓桂朮甘湯・抑肝散加陳皮半夏 ほか)
◆ 関連医療・健康情報
・アリナミン健康サイト|気象病と自律神経の関係