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お薬コラム
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更新日:2022/03/14
食中毒は、何時間後に発症する?どんな症状?予防、対処方法は?

食事の後に吐き気や下痢を起こし、「もしかして、食中毒かも」と思った経験、誰でも一度はあるのではないでしょうか。
食中毒は、原因となった食べ物によって症状やその発症時期が異なります。今回の記事では、皆さんが「食中毒かな」と思ったとき、どの食べ物が原因になっているのか・どう対応したらよいのか判断できるように解説します。

監修薬剤師 ハラクロ
薬剤師ライター 中山 歩実

食中毒を起こしやすい食べ物

日本で食中毒の原因として多いものを、症状や予防法と併せて紹介します。食べてから症状が出るまでの期間である「潜伏期間」は、自分で原因を考えるときの参考にしてください。

原因 潜伏期間 発熱 嘔吐 下痢 腹痛
ノロウイルス 生の貝類 1〜2日
黄色ブドウ球菌 手で直接握ったおにぎりなど 30分〜6時間
カンピロバクター 加熱不十分な鶏肉 2〜7日
サルモネラ菌 生肉、ペット(鳥や爬虫類など) 半日〜2日
ウェルシュ菌 カレーなどの煮込み料理 6〜18時間

◎:ほぼ必発の症状 ◯:比較的多い症状 △:まれな症状

牡蠣などの貝類:ノロウイルス
ノロウイルスといえば、冬の食中毒の代表です。ノロウイルスで汚染された牡蠣などを生で食べたときに、激しい下痢や吐き気、発熱を起こします。潜伏期間は1〜2日です。ほとんどの場合、数日で自然に軽快します。吐いたものや下痢の中にもウイルスが含まれており、感染性があるため、処理するときにも感染予防に注意しなくてはなりません。

予防法
・ノロウイルスが心配な方は、加熱して食べる。
・生食用ではない貝類を生で食べない。
・牡蠣などを触ったら、他の食材を触る前に石鹸で手を洗う。

手に傷があるときに要注意:黄色ブドウ球菌
黄色ブドウ球菌は、人の腸管内や傷口などに存在している細菌です。手指に傷がある状態でおにぎりを握ったりすることで食品に付着し、増殖します。黄色ブドウ球菌がつくる毒素が食中毒の原因で、加熱しても毒素はなくなりません。潜伏期間は食後30分〜6時間程度と短いです。ほとんど必ず吐き気があり、下痢を起こす場合もあります。

予防法
・調理の前によく手を洗う。
・手指に傷があるときは、直接食べ物を触らない。
・調理したものを常温で放置せず、冷蔵庫へ入れる。

生の鶏肉:カンピロバクター
カンピロバクターは、鳥の刺身やタタキなど、加熱不十分な鶏肉が原因であることが多いです。体内に入った菌量が少なくても、感染してしまいます。潜伏期間は2〜7日と幅があるのが特徴です。1日に10回以上もの下痢や腹痛、発熱が特徴で、吐き気を伴うことも。通常4〜5日で回復しますが、子どもや高齢の方は重症化する可能性があります

予防法
・鳥刺などは、新鮮なうちに食べる。
・鶏肉を扱った調理器具は熱湯消毒するとより確実。

加熱不十分な肉:サルモネラ菌
サルモネラ菌は、生肉や卵の殻に付着しているほか、鳥や爬虫類などのペットの体内にも存在します。原因となる食べ物を食べてから、潜伏期間は半日〜2日程度です。まず吐き気を生じ、その数時間後から腹痛や下痢を起こします。発熱することも少なくありません。

予防法
・生肉を触ったあとは石鹸で手を洗う。
・まな板や包丁は肉を扱ったあとは洗うか、野菜用と分ける。
・肉は、60度で15分以上しっかり加熱する。
・ペットと触れ合ったあとは石鹸で手を洗う。

カレーなどの煮込み料理:ウェルシュ菌
ウェルシュ菌は、人や動物の体内のほか、土壌中にも存在しています。酸素のない環境で増殖するため、カレーやシチュー、煮魚などの煮込み料理が原因になりやすいです。6〜18時間程度で、腹痛や下痢といった症状が出ます。発熱や嘔吐は非常に少ないです。

予防法
・煮込み料理は、常温で放置しない。
・加熱調理をしたあとは、すぐに冷蔵庫へ入れる。

症状への対処方法

では、下痢や吐き気などの症状が出たときには、どのように対応したらよいでしょうか。
以下の点に気を付けてみてください。

基本的に、食中毒の場合は細菌やウイルスが原因となっているため、下痢止めは使用できません。下痢とともに細菌やウイルスを外に排出した方が、治りが早くなるためです。
どうしても何か使用したい場合は、整腸剤をおすすめします。下痢によって乱れた腸内環境を整えるように働きます。配合されている腸内細菌の種類がさまざまありますが、どれでも構いません。

嘔吐は、止めても止めなくても治るまでの期間はあまり変わりません。吐いたものが喉に詰まらないよう、横向きに寝かせてください。小さなお子さまで吐いたものが口の中に残っている場合には、掻き出してあげましょう。

下痢や嘔吐で脱水を起こさないよう、水分をとることも大切です。一度にゴクゴク飲むのではなく、ひとくちずつ、ゆっくりと飲んでください。小さなお子さまであれば、スプーンでひと匙ずつが目安です。
お茶は、含まれているタンニンによって吐き気が強まりますので避けましょう。白湯経口補水液リンゴジュースが適しています。

 

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どんなときに受診するの?

食中毒の場合、必ずしも受診が必要というわけではありません。ですが、次のような場合は、早めに医療機関を受診してください。

・水分がとれない
・下痢に血が混じっている
・下痢や嘔吐が10回以上ある
・ぐったりして意識が悪い

食中毒の症状は、一見すると風邪のようにも感じられるため、受診が遅れてしまいがち。何人かが同時に同じような症状を起こした場合や下痢・嘔吐の回数が多い場合は、食中毒の可能性が高いです。症状が重い場合には、迷わず受診しましょう。とくに、小さなお子さんや高齢の方は脱水を起こしやすいので、こまめに様子を観察してください。
受診の際には、この数日で何を食べたか思い返しておくと役に立ちます。

まとめ

今回は、代表的な食中毒の原因と予防法、症状への対処法についてお伝えしました。食中毒は、症状がさほど酷くなければ医療機関への受診は必須ではありません。下痢止めをなるべく使用せず、脱水にならないよう少しずつ水分をとることを意識してください。
水分がとれないとき、症状が重い場合には早めに医療機関を受診しましょう。

 

<参考資料>
国立感染症研究所
厚生労働省ホームページ:細菌による食中毒
・JAID/JSC 感染症治療ガイドライン2015. 腸管感染症