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更新日:2022/10/08

健康に良い炭?薬用炭について薬剤師が解説。

炭といえばキャンプで火を起こすのに使ったり、脱臭効果を期待して靴箱や冷蔵庫に入れたりして使うイメージがあるかと思います。しかし、実は健康のために「飲む炭」があるのをご存知でしょうか?

 

炭を飲むなんて信じられないと思われるかもしれませんが、医療用として効能効果もしっかりと認められています。この記事では、薬として使われる薬用炭の効果や特徴などについて詳しく見ていきましょう。

監修薬剤師 ハラクロ
薬剤師ライター 岡本 妃香里

「炭」と「焦げ」の違いとは?

炭とは、高温で木材を蒸し焼きにすることで作られるものです。炭の種類にもよりますが、500~1,000℃もの温度にすることで作られます。

一方で焦げとは、炭水化物やたんぱく質などが化学変化によって水分を失うことで作られるものです。200℃程度で炭水化物やたんぱく質は焦げるため、炭と比べるとかなり低温の状態でできることがわかります。

ところで、「焦げた肉を食べると体によくない」と言われたことがありませんか?肉や魚が焦げたものには、発がん性物質の一つであるヘテロサイクリックアミンが含まれています。

ヘテロサイクリックアミンは、国際がん研究機関や米国国家毒性プログラムにおいて発がん性が確認されている物質です。このように、炭と焦げにはできかたのほかに発がん性物質が含まれているかどうかという大きな違いがあります。

薬用炭とは?構造と効果は?

薬用炭とは、有効性や安全性などが認められた活性炭のことです。活性炭はほかの炭と比べると吸着性が高いため、有害物質や臭いの除去などの使用に向いています。

薬用炭の構造

薬用炭は、微細な穴を多くもつことが特徴です。直径1~20nmほどの穴があり、所狭しと並んでいます。
わずか1gあたりの薬用炭の表面積は約500~1,300m2にもなることを考えると、薬用炭がいかに多くの穴をもっているのかがわかるでしょう。

薬用炭の効果

薬用炭には、物理的に腐敗物質やガスなどを吸着する働きがあります。吸着したまま離すことなく便と一緒に排出されるため、体内にたまった毒素を取り除くことが可能です。

薬用炭はどのように使われている?

薬用炭には、大きくわけて医療機関で処方されている「クレメジン」と、市販で購入できる「クレンジル」の2つがあります。

どちらも薬用炭を使用していることには変わりありませんが、使われる目的はまったく異なるので注意しましょう。

医療用の「クレメジン」

医療用のクレメジンは、慢性腎不全の患者を対象に使われる薬です。慢性腎不全によって起こる吐き気や食欲低下などの尿毒症の症状を改善したり、透析をしなくて済むように腎臓の負担を軽減したりするために使われます。

尿毒症とは、腎臓の働きが正常な方の1/10程度まで低下することで、老廃物や毒素を排出する力が弱くなり全身の機能に影響が出てくる病気のことです。

毒素の一つとして知られているインドキシル硫酸は、腎臓の働きを低下させることがわかっています。クレメジンは、インドキシル硫酸の元となる物質であるインドールを吸着することで、尿毒症を改善しさらに腎臓の負担も軽減してくれるのです。

市販薬の「クレンジル」

薬用炭を使った市販薬には、小林製薬から販売されているクレンジルという商品があります。クレンジルは医療用のクレメジンとは違い、お腹の調子を整えるための薬です。

薬用炭によって腸内にたまった滞留便やガスなどの老廃物を吸着し、腸内環境を整えます。医療用のクレメジンとは効能効果がまったく異なるため、代わりとしては使えません。

市販薬『クレンジル』について

クレンジルは、「老廃物を吸着して出すことで腸内環境を整える薬」という新しいタイプの薬として2012年に発売された市販薬です。

従来の便秘薬や整腸剤では満足のいく治療効果を得られていない方が多いことに着目し販売されました。

クレンジルの効能効果

クレンジルがもつ効能効果は、次のとおりです。

• 便秘
• 整腸
• 軟便
• 胃部・腹部不快感
• 食欲不振
• 消化不良
• 胃弱
• 食べすぎ
• 飲み過ぎ
• 胸やけ
• 胃もたれ
• 胸のつかえ
• 吐き気
• 嘔吐

便秘や軟便以外に食べすぎや飲み過ぎ、食欲不振などさまざまな胃腸症状に効果を発揮します。

クレンジルの有効成分

クレンジルは、薬用炭だけでなく生薬成分も配合された市販薬です。アカメガシワエキスとゲンノショウコエキスが腸内環境を整え、アロエ末とダイオウエキスが便の排出を促します。

有効成分(1日量あたり) 分量
薬用炭 0.4g
アカメガシワエキス 0.5g(原生薬換算量5g)
ゲンノショウコエキス 0.2g(原生薬換算量2g)
アロエ末 0.15g
ダイオウエキス 20mg(原生薬換算量0.2g)

クレンジルを使うときの注意点

〈便が黒くなることがある〉
薬用炭は吸収されずにそのまま便の中に排出されるため、普段より便が黒っぽく見えることがありますが問題はありません。ただし、色が黒くてどろっとした便が出る場合はクレンジルの影響ではない可能性があるため、早めに医師に相談しましょう。

〈ほかの薬と同時の服用するのは避ける〉
クレンジルには吸着作用があるためほかの薬と同時に飲むのは避けてください。薬の成分も一緒に吸着されて併用する薬の効果が十分に出ない可能性があります。

ほかの薬を飲む場合、1時間以上は空けるようにしましょう。なお、医療機関に通院している方は、念のため担当の医師や薬剤師にクレンジルを飲んでいることを伝えるようにしてください。

〈長期にわたる服用は避ける〉
クレンジルには、腸を刺激する働きのあるアロエ末やダイオウエキスが配合されています。腸を刺激する成分は、長期間にわたり服用をすることでくせになって効き目が悪くなる可能性があるものです。

クレンジルには通常の便秘薬と比べて少量しか配合されていませんが、漫然と使用するのは控えましょう。

まとめ

炭にはいろいろな種類があり、そのなかでも薬用炭は疾患の治療としても使えることが特徴です。薬用炭を使った医療用の薬としては、クレメジンがよく知られています。クレメジンは慢性腎不全の方の尿毒症を改善したり透析の実施を遅らせたりするものです。

市販ではクレンジルという商品が販売されており、こちらは老廃物を吸着して排出することで胃腸の調子を整えることを目的としています。

薬用炭には同時に使う薬まで吸着してしまう可能性があるため、使用する場合は医師や薬剤師の指示に従って服用してください。市販のクレンジルは、1時間以上あけてからほかの薬を飲むように推奨されています。