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更新日:2022/03/12
片頭痛とは?効果的な治療法や予防法を解説

片頭痛は医療機関で治療することで、ただ痛みを抑えるだけでなく片頭痛が起こらないように予防できます。片頭痛は生活の質を下げる大きな原因です。慢性的な片頭痛がある方では、不安や抑うつ症状が強く出やすいこともわかっています。

 

市販の鎮痛薬を使って痛みを抑えている方も多いと思いますが、片頭痛は医療機関で治療することで生活の質を大きく変えられるのをご存知でしょうか。今回は片頭痛とうまく付き合っていくための治療法や予防法を解説します。

監修薬剤師 ハラクロ
薬剤師ライター 岡本 妃香里

片頭痛とは?特徴や見分け方

片頭痛とは、脈打つような痛みが片側に現われる頭痛のことです。両側が痛くなることもあります。頭痛が起きる前に目がチカチカしたりギザギザした光が見えたりと前兆が起きやすいことも特徴です。
片頭痛が起こる原因

一説によると、脳の血管が拡張することで神経が刺激され、それにより頭痛が起きるといわれています。そのほか、三叉神経から炎症を起こす物質が作られているのではという説もありますが、明確なメカニズムはまだわかっていません。

片頭痛は一次性頭痛のひとつ

一次性頭痛とは、ほかの疾患がとくにないのに起こる頭痛のことです。片頭痛のほかに、緊張型頭痛や群発頭痛も一次性頭痛に分類されます。一次性頭痛とは違い二次性頭痛は、くも膜下出血や脳梗塞など、何かしらの疾患によって起こる頭痛のことです。

片頭痛かどうかを見分ける方法

片頭痛には、痛みが始まる前に前兆が起こるものと、とくに前兆がなく痛みが始まるものとがあります。

国際頭痛分類第3版(ICHD-3)では、
とくに前兆がない場合は次のように診断することが一般的です。

A.B~Dを満たす発作を5回以上経験したことある
B.頭痛発作の持続時間は4~72時間(未治療もしくは治療が無効の場合)
C.頭痛は以下の4つの特徴の少なくとも2項目を満たす
①片側性
②拍動性
③中等度~重度の頭痛
④日常的な動作(歩行や階段昇降など)により頭痛が増悪する。あるいは頭痛のために日常的な動作などを避ける。
D.頭痛発作中に少なくとも以下の1項目を満たす
①悪心または嘔吐(あるいはその両方)
②光過敏および音過敏
E.ほかに最適なICHD-3の診断がない

痛む場所や痛み方、強さやそのほかの症状などを基準に診断されます。
前兆がある場合は、次のように診断することが一般的です。

A.BおよびCを満たす発作を2回以上経験したことある
B.以下の完全可逆性前兆症状が1つ以上ある
①視覚症状
②感覚症状
③言語症状
④運動症状
⑤脳幹症状
⑥網膜症状
C.以下の6つの特徴の少なくとも3項目を満たす
①少なくとも1つの前兆症状は5分以上かけて徐々に進展する
②2つ以上の前兆が引き続き生じる
③それぞれの前兆症状は片側性である
④少なくとも1つの前兆症状は片側性である
⑤少なくとも1つの前兆症状は陽性症状である
⑥前兆に伴って、あるいは前兆出現後60分以内に頭痛が発現する
D.ほかに最適なICHD-3の診断がない

前兆の種類や起こり方などが診断基準となります。

片頭痛の治療法は?

片頭痛の治療は鎮痛薬を使って痛みを抑える方法トリプタン製剤やエルゴタミン製剤を使って血管を収縮させる方法制吐剤を使って吐き気を抑える方法がメインです。

市販では鎮痛薬しか手に入りませんが、

医療機関を受診するとその他のさまざまな治療法を選択できます。
鎮痛薬

アセトアミノフェンイブプロフェンロキソプロフェンなどを使い、痛みを抑える治療です。一般的に鎮痛効果はロキソプロフェン>イブプロフェン>アセトアミノフェンといわれています。ただし、片頭痛の場合はどれを使っても大きな差はないようです。

トリプタン製剤

トリプタン製剤は、医療機関でしか処方されない薬です。広がった血管を収縮させることで片頭痛の痛みを鎮めます。片頭痛治療の第一選択薬として使われている治療薬です。片頭痛の痛みが始まったらなるべく早く服用してください。早めに服用することで痛みを抑える効果が高くなります。

<主なトリプタン製剤(成分名)>
・イミグラン(スマトリプタン)
・ゾーミッグ(ゾルミトリプタン)
・アマージ(ナラトリプタン)
・レルパックス(エレトリプタン)
・アマージ(リザトリプタン)

エルゴタミン製剤

エルゴタミン製剤も医療機関でしか処方されません。トリプタン製剤と同じく、血管を収縮させることで痛みを抑える薬です。ただし、現在は積極的にエルゴタミン製剤を使うことがあまりありません。
痛みが中等度から重度の場合だと効きづらいこと、副作用で嘔吐が見られることもあり、現在はトリプタン製剤がメインで使われています。

<主なエルゴタミン製剤の商品名(成分名)>
クリアミン配合錠(エルゴタミン、無水カフェイン、イソプロピルアンチピリン)

制吐薬

片頭痛に伴う吐き気や嘔吐の症状を鎮める薬です。痛みそのものを止める働きはないため、鎮痛薬やトリプタン製剤などと併用する形で使用されます。こちらも市販では取り扱いがないため、貰うためには医療機関の受診が必要です。

<主な制吐薬の商品名(成分名)>
・ナウゼリン(ドンペリドン)
・ガスモチン(モサプリド)

片頭痛の予防治療とは?

片頭痛には予防薬も存在します。発作の頻度が高い方は、予防治療を始めることも検討してみてください。

飲み薬や注射で片頭痛は予防できる

片頭痛は薬により予防できますが、鎮痛薬やトリプタン製剤のように飲んですぐに効果が出るものではありません。3か月以上は続けて服用することが基本です。

また、予防薬の服用を始めたからといって、必ずしも片頭痛の発作がゼロになるわけではありません。人によっては発作を消失させることができますが、頻度の減少にとどまることもあります。

予防薬には種類がいくつかあるので、複数の薬を組み合わせたりほかの薬を試したりして様子を見ながら服用していくことがほとんどです。

片頭痛の主な予防薬

片頭痛予防薬には、主に次のものがあります。

・ミグシス(ロメリジン)
・デパケン(バルプロ酸ナトリウム)
・トリプタノール(アミトリプチン)
・インデラル(プロプラノロール)
・エムガルティ(ガルカネズマブ)

これらもすべて市販では取り扱いがないため、貰うためには医療機関の受診が必要です。

なかでも新しい予防薬として知られているのがエムガルティです。2021年1月に承認された薬で、ほかの予防薬とは違い眠気やめまいの副作用がほとんどありません。発作の回数を抑えるだけでなく、発作時の痛みを軽減する効果もあります。

ただし、片頭痛の発作が1か月に平均4日以上あり、ほかの予防薬では十分な効果が見られないときなどにしか使用できません。また、飲み薬ではなく注射薬のため、月に1度の通院が必要です。

日常生活で片頭痛を予防する方法

片頭痛は、特定の条件で発作が起こりやすくなることがわかっています。薬を使って予防するのも効果的ですが、日頃の生活のなかでもできるものは行ってみましょう。

睡眠を適度に取りストレスをためないようにする

睡眠は不足しても取りすぎても片頭痛の原因となります。適度な睡眠を取るように心がけましょう。また、疲れやストレスも原因の一つです。ストレスを感じたときだけでなく、解放されたときにも発作が起こりえます。日頃からストレスをためないこと、こまめにストレスを発散することが大切です。

アルコールを摂りすぎない

アルコールのうち、とくに赤ワインが片頭痛を誘発しやすいことで知られています。アルコールとポリフェノールに血管を拡張する働きがあるためです。赤ワインを飲むと片頭痛が起こりやすくなると感じている方は摂りすぎないように注意しましょう。

バランスのよい食事を心がける

片頭痛もちの方では、脂肪分の多い食事を摂ったりコーヒーやお茶をよく飲んだりする方が多いことがわかっています。適正体重を維持することが片頭痛の慢性化を防げるともいわれているので、日頃からバランスのよい食事を心がけましょう。

まとめ

片頭痛は市販の鎮痛薬でも痛みを抑えられますが、治療の第一選択薬といわれているトリプタン製剤は医療機関を受診しないと処方してもらえません。そのほかにもエルゴタミン製剤や制吐薬、予防薬などもすべて市販にはない薬です。

片頭痛で悩まされている方は、市販の鎮痛薬を使い続けず医療機関を受診するようにしてください。専門の治療を受けることで、痛みに振り回されない生活を送れるようになるでしょう。

 

<参考資料>
慢性頭痛の診療ガイドライン2013
国際頭痛分類第3版
ガルカネズマブ(遺伝子組換え)製剤の最適使用推進ガイドライン(片頭痛発作の発症抑制)について