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更新日:2022/05/29
口腔カンジダ症とは?

舌に白っぽい汚れが付着していたり、痛みを感じた経験はありますか?もしかすると「口腔カンジダ症」というカビの一種が原因の病気かもしれません。
今回は、口腔カンジダ症とは何か、また予防のためにどうしたらよいか、解説します。

監修薬剤師 ハラクロ
薬剤師ライター 中山 歩実

口腔カンジダ症とは?

口腔カンジダ症はどういった病気なのでしょうか。まずは口腔カンジダ症について詳しくみていきましょう。

原因菌はカビ

口腔カンジダ症の原因は、カンジダ菌という名前のカビです。
もともと、カンジダ菌は半数程度の人の口内に存在しています。通常であれば、からだの持つ免疫力や、唾液・うがいなどによって舌に付着することなく除去され、からだには全く影響がありません。また、他の菌ともバランスよく共存しているため、カンジダ菌だけが異常に増えないようになっています。
何かしらのきっかけによってカンジダ菌が増殖し、症状を呈するようになったものを、口腔カンジダ症と呼びます。

口腔カンジダ症の種類別の症状

口腔カンジダ症は、見た目も自覚症状もさまざまなものがあります。3つの種類別にご紹介します。

<偽膜性カンジダ症>
偽膜性(ぎまくせい)カンジダ症は、舌や頬粘膜に白い苔のようなものが付着するタイプの口腔カンジダ症です。白い苔は「白苔(はくたい)」と呼ばれ、症状が出てから放置していると範囲が広がっていきます。
偽膜性カンジダ症の場合、白苔は比較的剥がれやすいですが、剥がした後の部分は出血してしまうことが多いです。場合によっては、味が感じにくくなる方もいます。

<肥厚性カンジダ症>
肥厚性(ひこうせい)カンジダ症は、偽膜性カンジダ症から進行するものが多く、白苔が厚く固くなるという特徴を持ちます。舌の上だけでなく、歯と接触する部分に潰瘍ができる場合も少なくありません。
肥厚性カンジダ症になると、舌の表面だけでなく、粘膜にまでカンジダ菌が入り込んでいます。白苔が舌にしっかり付着して剥がれにくくなっているため、あまり自分でいじらないようにしましょう。

<萎縮性カンジダ症>
萎縮性カンジダ症は、舌が真っ赤に腫れたようになる口腔カンジダ症です。白苔はつかないのですが、舌の痛みが強いという特徴があります。
慢性的な萎縮性カンジダ症は、「義歯性口内炎」と呼ばれることもあり、入れ歯との接触面に生じることが多いです。入れ歯が悪いのではなく、入れ歯のお手入れが不十分なことが原因といわれています。

口腔カンジダ症の引き金は?

カンジダ菌は通常なら問題ありませんが、以下のような場合には過剰な増殖で症状を呈する可能性があります。

・ステロイドの内服や吸入を使っている
・糖尿病や膠原病などの免疫が低下する疾患がある
・抗がん剤治療をしている
・口の中が乾燥している、衛生状態がよくない
・ストレスや疲労が溜まっている

カンジダ菌の増殖に抵抗するための免疫力が低下していたり、洗い流すための唾液が不足していたりすると発症してしまうのです。
ご高齢の方は、加齢と共に唾液の量が減るほか、薬の副作用で口の中が乾燥することもあり、ある程度、口腔カンジダ症を発症しやすいといえます。

口腔カンジダ症の予防・治療法

それでは、口腔カンジダ症にならないために気を付けること、口腔カンジダ症かもと思ったときにしたい行動について、解説します。

口腔カンジダ症を起こさないために

口腔カンジダ症を起こさないために、まずは口の中を清潔に保つことが大切
歯磨きやうがいをするほか、乾燥がある方は口腔保湿剤を使用するのも効果的です。保湿によって、口の中の細菌が増殖してしまうのを防ぐことができます。口腔カンジダ症を繰り返してしまう方は、薬の副作用で口が乾くものがないかどうか、そして薬を変更できないかどうか、医師や薬剤師に相談してみるのもよいでしょう。
<口腔保湿剤>オーラルピース クリーン&モイスチュア

また、入れ歯をきちんと洗浄することも大切です。目に見えなくとも、小さな汚れやカンジダ菌が付着していますので、入れ歯用のブラシや洗浄剤を使って洗うようにしてください。入れ歯が合っていない場合にも口腔カンジダ症になりやすいといわれています。入れ歯は、一度作ればそのサイズで一生大丈夫というものではありません。痩せたり、長期間入れ歯を使わない期間があったりすると、入れ歯のサイズが合わなくなってしまうのです。入れ歯が外れやすい、食べ物が噛みにくいと感じたら、歯科で入れ歯の調整をしてもらう必要があります。

在宅療養をされている方の中には、歯科には医院へ出向かないと受診できないと思っている方も多いです。往診で入れ歯の応急処置をしてくれるクリニックもありますので、まずは相談してみましょう。

口腔カンジダ症かなと思ったら

口腔カンジダ症は、耳鼻咽喉科歯科で治療することが可能です。軽いものであれば、かかりつけの内科などで対応できる場合もあります。
治療には、カンジダ菌を殺す「抗真菌薬」を使用しなければなりません。抗真菌薬が配合された塗り薬やうがいを使用します。市販されているうがい薬では治療ができないので、痛みなど辛い自覚症状があるときには早めに受診しましょう。

医師に指示された期間、しっかりと治療を続けなくてはすぐに再発してしまいますので、治療期間は守るようにしてください。

まとめ

今回は、舌などに白苔がついたり痛みを感じたりする「口腔カンジダ症」について解説しました。口腔カンジダ症には3つの種類があり、白苔や痛みの有無、原因が少し異なります。予防のためには、口の中を清潔に保ち、乾燥させないことが大切です。
口腔カンジダ症を疑ったときには、耳鼻咽喉科や歯科などを受診して治療を受けましょう。

 

<参考資料>
1. 坂口英夫. 高齢者における口腔カンジダ症の治療と予防. 日本医真菌学会雑誌 第58巻 第2号 平成29年.
2. 公益社団法人 日本口腔外科学会 口腔外科相談室
3. 日本歯科薬物療法学会 口腔カンジダ症薬物療法ガイドライン制定委員会. 口腔カンジダ症薬物療法の指針