

子どもも高齢者も安心!熱中症対策に最適な飲み物とNGドリンクを徹底解説
熱中症のリスクが高まる季節、特に注意したいのが「水分のとり方」です。
家庭では子どもから高齢者まで、それぞれに合った対策が必要になります。
本記事では、薬剤師の立場から熱中症予防に効果的な飲み物をシーン別・年代別に整理。
逆効果になる“飲んではいけない飲み物”も要チェックです!


第1章:水分補給の落とし穴|熱中症対策に必要な成分とは
1-1. 「水だけ」では防げない理由
「こまめな水分補給が大切」とよく耳にしますが、実は“水だけ”の補給では熱中症対策としては不十分なケースがあります。
汗をかいたとき、私たちの体からはナトリウムやカリウムといった電解質も一緒に失われています。
水だけを大量に摂取すると、体内の電解質バランスが崩れて低ナトリウム血症を招くおそれもあります。
これは血液中のナトリウム濃度が低下し、意識障害やけいれんなどを引き起こす可能性がある状態です。
とくに大量に汗をかく夏場は、ただの水ではなく電解質を含む飲み物が必要です。
体は思っている以上に“塩分”を必要としているんです。
1-2. 熱中症対策に求められる飲み物の条件
効果的な水分補給には、吸収されやすい組成がポイントです。
具体的には、「適度な糖分」と「ナトリウムなどの電解質」がバランス良く含まれていることが重要とされています。
たとえば、経口補水液(ORS)はこのバランスを最も意識して作られた飲料のひとつです。
糖分の量が多すぎても吸収を妨げ、少なすぎても水分と電解質が体にうまく届きません。
この“ちょうどよさ”が、熱中症対策の飲み物に求められているんです。
また、吸収の速さも重要です。
体温が上がっているときは、冷たすぎる飲み物は胃腸を刺激して吸収効率が下がる場合もあるため、常温または10〜15℃程度の「適温」の方が体に優しく吸収されやすいとされています。
1-3. 子どもや高齢者が特に注意すべき理由
熱中症のリスクは、実は子どもと高齢者に集中しています。
その理由のひとつが、「汗をかく機能や体温調節機能が未発達・低下している」という点です。
子どもは体が小さく、体温が上がりやすいにもかかわらず、自分で水分補給を意識することが難しい傾向にあります。
また、言葉で体調不良を伝えることもまだ上手ではないため、周囲の大人が先回りして対応することが大切です。
高齢者の場合は、「喉の渇きを感じにくくなる」という加齢変化が影響します。
そのため、自覚がないまま脱水が進行しやすく、症状に気づいたときには重症化しているケースも少なくありません。
これらのリスクを避けるためにも、定期的な水分補給と、塩分やミネラルの摂取が欠かせません。
「飲みたい」ではなく「飲ませる」「飲む時間を決める」ことが、熱中症予防のカギになります。


第2章:薬剤師おすすめ|目的別に選ぶ熱中症対策飲料5選
2-1. 炎天下での作業・運動時におすすめ
炎天下の屋外作業やスポーツの後は、汗とともに大量の水分と塩分が失われます。
このとき頼れるのが「経口補水液」と「スポーツドリンク」です。
経口補水液の代表例としては、以下の製品が広く知られています。
・OS-1(大塚製薬)
ナトリウム・カリウムなどの電解質をバランスよく配合し、軽度から中等度の脱水に使用されます。
医療現場でも使われており、信頼性の高い製品です。
・アクアソリタ(味の素)
低ナトリウム・低カロリーで、日常使いしやすい経口補水液。
食塩摂取制限がある方にも考慮されています。
一方で、運動時の疲労回復やカジュアルな熱中症対策には、スポーツドリンクが適しています。
・ポカリスエット(大塚製薬)
糖分が多めに含まれているため、長時間の活動後の回復をサポートする一方で、糖分の摂りすぎには注意が必要です。
2-2. 日常の水分補給に最適な飲み物
特別な運動をしていないとき、つまり日常的にこまめに飲むなら、もっと体にやさしい飲み物を選びたいところです。
おすすめは、「麦茶」や「野菜ジュース」などです。
・伊藤園 健康ミネラルむぎ茶
カフェインゼロで、ほんのり含まれるミネラルが体にやさしい。子どもから高齢者まで安心して飲めます。
・カゴメ 野菜一日これ一本
野菜ジュースは、ナトリウムやカリウムといったミネラルが含まれており、軽い発汗時のミネラル補給に役立ちます。
ただし、糖分が多い商品もあるため、無糖・無添加タイプを選ぶことが大切です。
2-3. 手作りで対応|家庭で作れるドリンクレシピ
市販品が手に入りづらいときや、コストを抑えたいときに便利なのが自家製ドリンクです。
以下のレシピで簡単に「家庭用経口補水液」が作れます。
・水:1,000ml
・塩:小さじ1/2(約3g)
・はちみつ:大さじ3~4(または砂糖40gでも可)
・レモン果汁:小さじ1
これを混ぜるだけ。冷蔵庫で冷やしておけば、夏の常備飲料になります。
ただし、手作りの場合は保存が効かないため、1日で飲み切ることをおすすめします。
また、高血圧の方は塩分の量に注意が必要です。
「市販品と何が違うの?」と聞かれたら、糖分や塩分の調整ができる点、添加物がない点がメリットとして挙げられます。
2-4. 子ども・高齢者に適した飲みやすさの工夫
どんなに良い飲み物でも、飲んでもらえなければ意味がありません。
特に子どもや高齢者には、飲みやすさ・続けやすさが重要です。
たとえば、麦茶に少し氷を入れて冷やしたり、レモン汁を加えて風味を出すだけでも「飲みたい」と感じてもらいやすくなります。
ジュース類が好きなお子さんには、野菜ジュース+少量の経口補水液で割るなど、工夫して取り入れることも可能です。
また、「冷たすぎるとお腹を壊す」という方には、常温またはやや冷たい程度の温度がベストです。
朝昼晩で決まった時間に飲む習慣づけをすると、飲み忘れも減らせます。


第3章:逆効果も?熱中症リスクを高めるNG飲料とは
3-1. カフェイン・アルコールのリスク
夏の定番といえば、冷えたビールやアイスコーヒー。
でも、熱中症対策という点では避けたほうがよい飲み物です。
カフェインやアルコールには、強い利尿作用があります。
これは尿の排出量を増やし、結果として体内の水分をどんどん失わせてしまう原因になります。
たとえば、アイスコーヒーをゴクゴク飲んだ直後にトイレが近くなる…という経験、ありませんか?
それ、まさに脱水が進む流れなんです。
ビールも同様で、アルコールを分解する過程で水分を大量に消費します。
さらに体温が上がっている状態でアルコールを摂取すると、自律神経が乱れやすくなり、熱中症リスクが高まります。
3-2. 糖分過多な清涼飲料水やジュース
コンビニや自販機で手軽に買えるジュース類。
見た目も味も爽やかですが、水分補給用としては適していません。
清涼飲料水や炭酸飲料は、糖分が非常に多く含まれています。
糖分を大量に摂ると、血糖値が急上昇し、一時的に“喉が渇きやすくなる”状態になります。
この状態では、「たくさん飲んでるのに潤わない」と感じ、余計にジュースを飲みすぎてしまう悪循環に。
さらに、胃にたまることで食欲を低下させ、夏バテを悪化させる可能性もあります。
「甘さ控えめ」や「カロリーオフ」と書かれていても、糖分ゼロとは限りません。
裏面の成分表示で“炭水化物(=糖質)”の量をチェックするクセをつけると安心です。
3-3. 栄養ドリンク・牛乳の注意点
夏バテや疲労時に頼りたくなる「栄養ドリンク」や「冷たい牛乳」も、熱中症対策の観点では注意が必要です。
栄養ドリンクには、カフェインや糖分が多く含まれていることが一般的です。
確かに“元気になった気”はしますが、利尿作用+血糖値の急変動で、体への負担は大きめ。
熱中症の水分補給としては向きません。
一方、牛乳は栄養豊富ですが、体温を上げやすいという特性があります。
また、胃腸に負担をかけやすく、お腹を下しやすい人には不向きです。
どうしても飲みたい場合は、少量を、食事と一緒に摂るようにしましょう。
タイミングと体調に応じた調整が重要です。
3-4. 避けるべきときの代替案(製品名付き)
「じゃあ、何を飲めばいいの?」という声が聞こえてきそうです。
そこで、リスクのある飲み物の代替案と具体的な製品例をご紹介します。
アイスコーヒー ➡ カフェインレスコーヒー
・UCC おいしいカフェインレスコーヒー 無糖(ペットボトル)
外出先でも手軽に飲めるボトルタイプ。カフェインを控えたい方におすすめ。
ジュース ➡ 野菜飲料や麦茶(無糖・無添加)
・カゴメ 野菜生活100 Smoothie グリーンスムージーMix(砂糖・甘味料不使用)
自然な甘みで飲みやすく、ミネラルやビタミンも補給可能。
・伊藤園 健康ミネラルむぎ茶(ペットボトル)
ノンカフェイン・塩分ゼロで、日常の水分補給にぴったり。
栄養ドリンク ➡ 経口補水液や手作りドリンク
・アクアソリタ(味の素)
日常的にも使いやすい、低ナトリウム・低カロリーのバランス型補水液。
・自作レシピ:
コストを抑えて必要な成分をバランスよく摂取可能。冷蔵保存で1日以内に飲み切りましょう。
飲みやすさの工夫も忘れずに
・麦茶にレモンや梅干しを加えて風味UP
・氷を少量加えて「冷たさ」と「常温」の中間温度に調整
こうした飲み物は、体にやさしく、熱中症予防として継続しやすい選択肢です。
「冷たいから」「味があるから」といった感覚だけで選ぶのではなく、成分と用途で選ぶ視点を取り入れていきましょう。
まとめ
●水だけの補給は不十分
汗で失うナトリウムやカリウムも一緒に補う必要がある。
●吸収されやすい飲み物を選ぶのがコツ
経口補水液やバランスのよいスポーツドリンクが有効。
●日常の水分補給はカフェインフリーが理想
麦茶や無糖の野菜ジュースで、優しく水分を補える。
●糖分が多い飲み物は熱中症対策に逆効果
清涼飲料水やジュースは喉の渇きを悪化させることも。
●栄養ドリンクや牛乳は“体調やシーンに応じて”
暑さで弱った胃腸には不向きな場合があるので注意。
●代替として使える製品やレシピがある
カフェインレス飲料・経口補水液・手作りドリンクが手軽で安心。
熱中症は、「水を飲んでいたのに」起こるケースが本当に多いんです。
大切なのは、“何を・どのタイミングで・どのくらい”飲むかを意識すること。
薬剤師として、いつもお伝えしているのは、
「飲むことは命を守るセルフケア」という感覚を持つこと。
毎日の習慣の中に“ちょっとした知識”を加えるだけで、夏の健康は大きく変わります。
このコラムが、あなたやご家族の体調管理のヒントになれば幸いです。
【参考情報】
この記事の作成にあたり、以下の公式情報を参考にしています。
ご自身での確認や商品選びの際にご活用ください。
◆ メーカー公式製品情報
・大塚製薬工場|OS-1 ブランドサイト(経口補水液)
・味の素株式会社|アクアソリタ 公式ページ(経口補水液)
・大塚製薬|ポカリスエット ブランドサイト(スポーツドリンク)
・伊藤園|健康ミネラルむぎ茶 ブランドサイト(カフェインレス飲料)
・カゴメ|野菜一日これ一本 製品情報(野菜飲料)
・UCC上島珈琲|おいしいカフェインレスコーヒー(ペットボトル)製品情報