

風邪でお風呂はNG? それとも入浴すべき? 薬剤師が条件別に解説
「風邪のとき、お風呂に入ってもいいのか?」と迷った経験は誰にでもあると思います。
入浴は血行促進やリラックスにつながりますが、体調次第では悪化のリスクも。
本記事では薬剤師の立場から、症状別に入浴可否を整理し、安全にお風呂に入るための条件や注意点を解説します。
迷ったときの判断基準を知ることで、安心して体を休められるようになります。


第1章|症状別に見る「風邪でお風呂 入るべきか」
体温別の判断
発熱が37℃未満の場合(平熱〜微熱)
入浴は可能です。
ぬるめのお湯(38〜40℃)で10〜15分以内なら安心。
血行が促され体が温まると、リラックス効果も得られます。
発熱が37〜38℃の場合(微熱〜中等度の熱)
シャワーにとどめましょう。
湯船に浸かると体力を奪われやすい状態です。
汗や皮脂を軽く流す程度で十分です。
発熱が38℃以上の場合(高熱時)
入浴は控えるべきです。
体温をさらに上げてしまうと心臓や呼吸に大きな負担がかかります。
体調が悪化する危険があるため、体を拭く清拭で対応してください。
症状別の判断
鼻づまりだけ
入浴は可能です。
蒸気で一時的に呼吸が楽になります。
ただし長湯をしても効果は続かないため、短時間で切り上げるのが安心です。
咳が強いとき
シャワーにとどめましょう。
熱い湯気が喉を刺激し、咳を悪化させることがあります。
ぬるめのシャワーで短時間に済ませてください。
強い倦怠感や悪寒があるとき
入浴は控えるべきです。
動くだけで体力を大きく消耗します。
休養と保温を優先してください。
めまい・吐き気があるとき
入浴は控えるべきです。
浴室は転倒リスクが高く危険です。
吐き気も温度差で悪化する可能性があります。
無理に入らず清拭で清潔を保つのが安心です。
風邪で入浴できるかどうかは、体温と症状の組み合わせで決まります。
37℃未満で症状が軽ければ短時間の入浴は可能です。
発熱や倦怠感、めまい、吐き気があるときは控えて休養に切り替えることが安全です。


第2章|風邪時に入浴するメリットとリスク
風邪のときの入浴は、良い効果と悪い効果の両方があります。
ここではそれぞれを整理してみましょう。
メリット|血行促進・鼻や喉の潤い・リラックス
血行促進で体が温まることで、筋肉のこわばりが和らぎます。
だるさが軽くなり、眠りにつきやすくなることもあります。
鼻や喉の潤いは一時的ですが効果的です。
蒸気で粘膜が湿ると呼吸がしやすくなり、喉の痛みも和らぎます。
リラックス効果も大きなメリットです。
副交感神経が優位になり、緊張がほぐれ、心身が休まります。
リスク|体力消耗・湯冷め・発熱の悪化
体力の消耗は見逃せません。
長湯や高温のお湯は汗をかきすぎ、脱水や疲労の原因になります。
湯冷めのリスクもあります。
脱衣所が寒い、髪を乾かさないまま寝るなどは症状を悪化させる原因です。
発熱の悪化も報告されています。
調査では、入浴後に「悪化した」と答えた人が約1割。
体調が重いときに無理して入ると逆効果になりかねません。
風邪時の入浴は、軽症ならプラス、重症ならマイナスになりやすい特徴があります。
メリットを活かすには、短時間・ぬるめのお湯・水分補給・湯冷め防止といった条件づくりが欠かせません。
逆に、高熱や強いだるさがあるときは控えることが安全です。


第3章|薬剤師がすすめる安全な入浴ルール
風邪のときにお風呂に入るなら、「どう入るか」こそが重要です。
正しいルールを守れば回復を助けますが、油断すると逆効果になることもあります。
ここでは薬剤師としての視点から、安心して入浴するためのポイントを具体的に解説します。
湯温は38〜40℃が基本
熱すぎるお湯は交感神経を刺激し、心臓や呼吸器に負担をかけます。
一方でぬるめのお湯は副交感神経を優位にし、リラックス効果や血行促進につながります。
体力が落ちているときこそ、38〜40℃のぬるま湯がベストです。
入浴時間は10〜15分以内
長湯は発汗による脱水・体力の消耗を招きます。
特に風邪のときは基礎代謝が上がり、普段より汗をかきやすい状態です。
10〜15分を目安に、「少し温まった」と感じたところで切り上げるのが理想的です。
入浴前後の水分補給を忘れずに
入浴中は知らず知らずのうちに汗をかきます。
入浴前にコップ1杯、入浴後にコップ1杯の水分補給を徹底しましょう。
おすすめは水・麦茶です。
逆にアルコールやカフェインは利尿作用で脱水を助長するためNGです。
脱衣所と浴室の温度差を小さくする
冬場は特に危険です。
暖かいお風呂から寒い脱衣所に出ると、急激な血圧変動やめまいを起こすことがあります。
入浴前に暖房器具で脱衣所を温めておく、浴室をシャワーで先に蒸らすなど、温度差をできるだけ減らす工夫が欠かせません。
湯冷めを防ぐ工夫を徹底する
せっかく体を温めても、そのあと湯冷めすれば逆効果です。
上がったら素早くタオルで拭き、下着から着替えること。
さらに髪はドライヤーで根元まで乾かすことが大切です。
首や肩を冷やさないように、タオルやカーディガンで保温してから休みましょう。
家族にうつさないための工夫
風邪のときに忘れてはいけないのが感染対策です。
風邪の人は必ず最後に入浴します。
タオル・洗面器・バスマットは共用せず専用に分けるのが鉄則です。
また、入浴後はできれば浴槽の湯を入れ替え、難しい場合も排水・清掃・換気を徹底してください。
風邪のときの入浴は
「ぬるめ・短時間・水分補給・温度差対策・湯冷め防止・感染予防」の6点を押さえることが大切です。
このルールを守れば、入浴は風邪の回復を助ける力強い味方になります。


第4章|よくある質問(Q&A)
本文では伝えきれなかった「生活上の細かい疑問」にお答えします。
日常のちょっとした判断に役立ててください。
Q1. 風邪薬を飲んだ直後にお風呂へ入って大丈夫?
A:基本的には問題ありません。
ただし解熱剤の効果で一時的に熱が下がっているだけのときは、長湯で体力を消耗しやすくなります。
短時間で切り上げることが安全です。
Q2. 子どもが風邪をひいたとき、お風呂はどうしたらいい?
A:元気があり微熱程度なら短時間の入浴はOKです。
むしろ汗を流すと気分が楽になります。
一方で高熱やぐったりしている場合は控えるのが基本。
その場合はタオルで体を拭いて清潔を保ちましょう。
Q3. 入浴後に布団へ直行するのはよくない?
A:よくありません。
お風呂で体温が上がった直後に布団へ入ると、熱が下がりにくく寝つきが悪化します。
結果として睡眠不足が続き、風邪の回復が遅れるリスクがあります。
入浴は就寝1〜2時間前が理想です。
Q4. 入浴剤は風邪のときに使っていい?
A:使用しても大丈夫です。
ただしメントールが強いタイプは咳や喉を刺激することがあります。
おすすめは無香料タイプや保湿系入浴剤。
肌の乾燥を防ぎ、リラックスにもつながります。
Q5. 家族にうつすのが心配。お風呂での注意点は?
A:風邪の人は最後に入浴するのが鉄則です。
タオルや洗面器は共用せず、それぞれ分けて使います。
さらに、浴槽は可能ならお湯を入れ替える・使用後は排水と換気を徹底しましょう。
こうした工夫で家庭内感染のリスクを減らせます。
まとめ|風邪と入浴の最終チェックリスト
風邪のときにお風呂に入るかどうかは悩みどころですが、体調をよく観察して安全条件を満たすかどうかで答えは変わります。
入浴は治療ではありませんが、うまく使えば気分を楽にし、眠りを助けるサポートになります。
大事なのは「無理をしないこと」。これが最短の回復ルートです。
【参考情報】
この記事の作成にあたり、以下の公式情報を参照しています。
ご自身での確認にご活用ください。
・アース製薬|公式FAQ「風邪のときにお風呂に入っても大丈夫?」
・バスクリン|公式コラム「入浴と睡眠」
・プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES