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お薬コラム
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更新日:2022/03/14
胃痛

「胃痛」とは、だいたいみぞおちのあたりが痛むことを指します。
ただ、痛みの感じ方は人それぞれで、食事前になんだかシクシク痛む方や、緊張するとキューッと差し込むような痛みを感じる方もいるでしょう。
そんな胃の痛みに対して、なんとなくで胃薬を選んでいませんか?
この記事では、胃痛を原因や種類に分けて考えることで、あなたに合った治療薬を選ぶお手伝いをさせていただきます。

監修薬剤師 ハラクロ
薬剤師 ひまわりうさぎ

胃痛の原因

胃痛の原因は、基本的に『胃に対する攻撃力が強い(主に胃酸の出過ぎ)胃の防御力の低下により、胃内の攻守バランスが崩れること』であると言えるでしょう。
このバランスを乱す主な要因を以下に挙げました。

①ストレス・睡眠不足・疲労
ストレスや睡眠不足、疲労の蓄積によって自律神経が乱されると、『胃酸の分泌増加』『胃を保護する粘液の減少』といった形で、胃に影響が現れます。
このダブルパンチによって、胃の荒れ、そして痛みが生じます
また、過度なストレスや疲労により激しく自律神経が乱れた場合は、胃の痙攣を起こすこともあります。

②食生活や生活習慣
● 食べ過ぎ・早食い
● アルコール・タバコ
● 香辛料・コーヒーなどの刺激物
これらの要因により、胃酸が過剰に分泌されたり、胃の粘膜が直接刺激されたりすることで、胃の荒れ・痛みを引き起こします。

③ピロリ菌
ピロリ菌は胃の粘膜に棲み着く細菌で、感染すると胃粘膜を傷つけ、胃の防御力を低下させてしまいます。
ピロリ菌は薬によって退治しない限り胃の中に棲み続けるため、長期間の感染を放置しておくと、慢性的な胃炎から、胃潰瘍や十二指腸潰瘍にまで悪化することもあります。

④細菌・ウイルス感染・アニサキス
細菌やウイルスにより胃粘膜が攻撃されると、急激な胃の痛みが起こることがあります。
こういった症状は食中毒と呼ばれることが多く、嘔吐や下痢を伴うこともあるでしょう。
またアニサキスは魚やイカに寄生する寄生虫の一種で、誤って生きたまま飲み込んでしまうと人間の胃を食い荒らすため、強い胃の痛みに襲われます。

⑤薬の副作用
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれる痛み止めは、空腹時や長期に渡る服用などで、胃粘膜を傷つけてしまう副作用が報告されています。
高齢者など、胃粘膜が弱っている方は特に注意が必要です。
たまに胃の痛みを止めるために、誤ってNSAIDsを飲んで状態を悪化させてしまうケースも見受けられるため、やはり症状がなかなか治らない場合は医師や薬剤師に相談する必要があるでしょう。

胃痛の種類

それでは、続いて胃痛がどのようなタイミングで起きているか、種類分けすることで、それぞれに効果のある薬を考えていきましょう。

①起床時や食前に痛む
胃酸の出過ぎで胃が荒らされている可能性があります。
有効な薬:胃への攻撃力を下げる薬(H2ブロッカー&制酸薬)&胃の防御力を上げる薬(胃粘膜保護薬)
注意:空腹時にひどい痛みを感じる頻度が高く、またその状況が続いている場合は十二指腸潰瘍の可能性も。
②食後に痛む
荒れた胃に対して食事が負担になっている可能性があります。
有効な薬:胃の防御力を上げる薬(胃粘膜保護薬)
注意:一時的な食べ過ぎや飲み過ぎだけでなく、毎回食後に痛む場合は胃潰瘍の可能性も。
③食事に関係なく、差し込むような痛み
胃への攻撃・防御とは関係のない作用で胃痛が起こっている可能性があります。
胃痙攣と呼ばれ、自律神経が乱れることで胃の収縮が強く起き、痙攣を起こしている状態です。
有効な薬:鎮痙薬(抗コリン薬)

注意:胃潰瘍や十二指腸潰瘍はただ粘膜が荒れている状態とは異なり、粘膜が溶かされて穴が空いてしまっている状態です。
その原因のほとんどがピロリ菌・薬の副作用であると言われています。
ただ、ストレスや乱れた食生活などが症状を促進する要因ともなるので注意は必要です。
重症になると、吐血や血便、または貧血による目眩が起きて入院が必要になることもありますので、胃の痛みが継続している場合は早めに医療機関を受診しましょう

胃の痛みに効果のある成分

H2ブロッカー

・ファモチジンニザチジンなど
胃にあるH2受容体をヒスタミンという物質が刺激することで、胃酸の分泌が促されています。
H2ブロッカーはこのH2受容体の刺激を抑えることで、胃酸の分泌を抑える役割をします。
医療用医薬品としても需要が高いH2ブロッカーは、比較的副作用などのリスクも低いため、市販でも購入することができます。
胃酸の出過ぎを抑えるため、胸やけやムカつきにも効果があり、大変使いやすい薬ですが、胃潰瘍や十二指腸潰瘍に気づかない可能性もあるので注意も必要です。

制酸薬

・沈降炭酸カルシウム無水リン酸水素カルシウム水酸化マグネシウムケイ酸アルミン酸マグネシウムなど
胃酸を中和することで、出過ぎた胃酸に対する攻撃力を弱めます。
制酸薬は単剤で用いられるよりも、胃の消化を助ける成分や、胃粘膜保護成分と組み合わされて販売されていることが多いです。
一部の制酸薬は医療用の抗生物質などと相性が良くないため、併用する場合は薬剤師に相談しましょう。

胃粘膜保護

・テプレノンスクラルファートアルジオキサ銅クロロフィリンカリウムなど
弱っている胃の粘膜を保護することで、胃酸などの刺激に対する防御機能を高めます。
食前、食後どちらに痛むかを問わず、胃痛全般に幅広く効果を示しやすいです。

抗コリン薬(鎮痙薬)

・ロートエキスブチルスコポラミン臭化物など
ストレスや疲労などで乱れた自律神経にアプローチすることで、胃の過度な収縮を抑え、胃酸の分泌を抑える効果もあります。
抗コリン作用により、目のかすみ、異常なまぶしさ等の症状があらわれることがあるので、車の運転は避けましょう。
また前立腺肥大の方や、緑内障の種類によっては症状が悪化することがあるため注意が必要です。

漢方

漢方は上に挙げた薬などとは作用の仕方が異なり、自律神経の乱れそのものを改善したり、胃の働き全体をサポートしたりするなど、不調の根本的な箇所にアプローチするものが主となっています。
胃痛に効果のある漢方はいくつも存在し、不調の箇所や、体質などによって使い分けられています
その中から代表的なものを以下に挙げました。

・安中散
比較的体力がない方で、胃酸が多いタイプの胃痛へ。
特にストレスによる胃痛に効果的です。
市販の漢方胃腸薬は、安中散を基本につくられていることが多いです。
・六君子湯
体力がない方で、胃が全体的に弱って、食欲が無く、胃が痛む人へ。
・芍薬甘草湯
急に起こる筋肉の痙攣に対して用いられる漢方。
即効性もあるため、胃の収縮による痛みが起きたときに効果的です。

製品紹介

ガスター10

有効成分:ファモチジン
特徴:その需要の高さから、飲み薬として国内で初めてスイッチOTC(医療用で使用されていた成分が市販でも買えるようになった医薬品)として指定された薬です。
医療用はファモチジンが20mg入ったものが使われることが多いですが、市販品は10mgで作られています。
自己判断で倍量飲まないように注意しましょう。

アシノンZ錠

有効成分:ニザチジン
特徴:錠剤タイプの他、アセロラ味の内用液タイプも販売されています。
こちらも良く使われる医療用の成分量と比較すると、半量で作られています。

サクロン錠

有効成分:銅クロロフィリンカリウム、無水リン酸水素カルシウム、沈降炭酸カルシウム 、水酸化マグネシウム、ロートエキス
特徴胃酸を中和する制酸薬の成分が3種類配合されています。
また、植物由来の胃保護成分、銅クロロフィリンカリウムが胃粘膜保護の作用を示します。

セルベール

有効成分:テプレノン、生薬(ソウジュツ、コウボク)
特徴:医療用医薬品でもよく使用される胃粘膜保護成分のテプレノンに、胃の働きを助ける生薬成分がプラスされています。
同ブランドの新セルベール整胃プレミアムでは、消化を助ける成分もさらにプラスされました。

スクラート胃腸薬(顆粒)

有効成分:スクラルファート、アズレンスルホン酸ナトリウム、Lーグルタミン、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、ロートエキス
特徴メインである有効成分のスクラルファートが胃粘膜を保護し、そこへ炎症を抑える成分のアズレンや、制酸薬のケイ酸アルミン酸マグネシウム、抗コリン薬のロートエキスも加わり、胃の痛みに対して総合的にアプローチします。

太田漢方胃腸薬II

有効成分:安中散+ブクリョウ
特徴:安中散に精神安定作用のあるブクリョウを加えることで、ストレスによる胃痛への効果をさらにアップさせています。
こちらは胃痛に特化した薬ですが、社名にもなっている代表薬である太田胃散は7つの生薬を配合しており、胃の全体的な不調に用いることができます。

大正漢方胃腸薬

有効成分:安中散+芍薬甘草湯
特徴:胃痛に効果のある2種類の漢方を合わせることで、多方面から胃痛に対してアプローチします。5歳から服用できるため、子供の胃痛にも使用できます。

まとめ

胃痛を起こす原因とその症状から、それぞれ効果を示す治療薬をご紹介させていただきました。
今起こっている胃痛に対して、その要因と痛み方の傾向を知ることで、より自分に合った胃薬に出会えることが期待できます。
ただし、ピロリ菌や細菌・ウイルスなどによる胃痛、また薬の副作用による胃痛に対しては、市販品でのセルフケアは逆効果になることもあります。
医師の診断のもと、的確な医療用医薬品が必要となりますので、こういった要因に限らず、胃痛が長引く場合は必ず医療機関を受診するようにしましょう。
つらい胃痛でお悩みのあなたにとって、この記事がお役に立てることを祈っております。