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お薬コラム
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更新日:2022/08/13
外傷に使う消毒薬(殺菌消毒薬)

擦り傷や切り傷、刺し傷といった傷は、日常生活の中でも起こりやすい傷ですよね。

 

今は昔と違って消毒は不要であるという説も出ていますが、全く不要になったわけではなく、今でもさまざまなタイプの消毒薬が販売されています。

このコラムでは、消毒薬の基礎知識から、成分やタイプ、おすすめの製品をお伝えさせていただきます。

監修薬剤師 ハラクロ
薬剤師ライター ひまわりうさぎ

殺菌消毒薬とは?

皮膚用殺菌消毒薬は、切り傷、すり傷などの傷に対して用い、殺菌消毒を行うことで、傷口の化膿を防ぐ働きがあります。
主な目的は傷口の殺菌消毒ですが、最近の製品の中には、皮膚の修復をサポートしたり、かゆみ・痛みを緩和したりする成分などが配合されているものも多いです。
また、液体タイプのものから、スプレータイプ、ジェットタイプと、剤形に関してもさまざまな種類があり、目的に合わせて選択することができるようになっています。

殺菌消毒薬は必要?

一昔前の認識と違って、今現在では消毒はそれほど必要とは認識されていない現実は否めません。むしろ傷の治りを悪くさせる可能性があるとされており、そのため、湿潤療法という傷口のジュクジュクした液をそのままにしておく治療法が主流となりつつあります。
湿潤療法についてはこちらのコラムをご参照ください。
しかしながら、消毒薬が全く不要になったわけではなく、化膿の可能性が高い傷などには医療現場でも用いられています。
また、傷口が化膿して悪化しないために、何より重要なことはしっかり洗浄を行うことであるため、殺菌消毒薬の中には洗浄機能を兼ね合わせているものも多いです。
キャンプや登山、また旅行先など、清潔な水を使って洗浄することが難しい場面においては、殺菌消毒薬を用いて洗浄・消毒をしておくのも一つの手です。
その他、湿潤療法が難しい小さな子供に対しても、場合によっては消毒薬の使用が適している場合もあるでしょう。

現在の消毒薬に関する考え方や傷の初期治療についてはこちらのコラムもご参照ください。

殺菌消毒薬の有効成分

・塩化ベンザルコニウム 、塩化ベンゼトニウム
逆性石鹸と呼ばれる界面活性剤の一種であり、普通の石鹸と混ぜると効果が無くなるので注意が必要です。
手指消毒剤の主成分としても多く使用されています。

・グルコン酸クロルヘキシジン
万が一、口に入ってしまった際も、毒性が強くないため安心です。
製品によっては赤色に着色されていることもあります。

・エタノール
手指消毒としても用いられるエタノールですが、刺激が強いため、傷口にはあまり使用しません。

・ヨードチンキ(ヨウ素)
ヨウ素特有の茶色の液体と匂いが特徴的で、細菌だけでなくウイルスにも効果を示します。
昔はよく使用されていましたが、傷口に使用するとしみ、痛みがあります。

・ポビドンヨード(ヨウ素)
ヨードチンキと比べて皮膚や粘膜の刺激が弱くなったもので、うがい薬としてご存知の方も多いのではないでしょうか。
ポビドンヨード、またヨードは濃度によって用途が変わるため、うがい薬を傷薬として使用する、また逆に傷薬をうがい薬として使用することは絶対避けましょう。

・オキシドール
過酸化水素(オキシドール)は傷の中に流し込むと水と酸素に分かれます。
その時に発生する酸素の泡の力でごみや異物を押し出す作用がありますが、消毒の役割はほとんどありません。
土の中にいる破傷風菌と呼ばれる菌を押し出すため、昔重宝されていました。

殺菌消毒薬に含まれるその他の成分

・アラントイン
粘膜や皮膚の修復をサポートする作用があり、リップクリームや化粧品などにも含まれていることが多い成分です。

・クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン
抗ヒスタミン作用により、かゆみや腫れを抑える作用があります。

・ジブカイン、リドカイン
局所麻酔作用により、痛みを緩和します。

・ナファゾリン
止血作用があるため、傷口からの出血を抑えます。

消毒薬の剤形タイプ

・泡状タイプ
フワッとした泡タイプは、薬剤がその場に定着しやすく、また液体がたれないため、服を汚す心配もなく安心です。

・液体タイプ
多くはこのタイプで、清潔なガーゼなどに染み込ませて塗布します。
成分によっては洗浄に使用することもできます。

・スプレータイプ
スプレータイプは、ガーゼなどがない場合でも広い範囲のキズにまんべんなく、優しく塗布することができます。

・ジェットタイプ
ジェットタイプは勢いがあるため、汚れを落とす力が強いです。

おすすめの市販消毒薬

マキロンs ジェット&スプレー

有効成分:ベンゼトニウム塩化物、アラントイン、クロルフェニラミンマレイン酸塩
製剤タイプ:ジェット、スプレー
特徴:スプレータイプとジェットタイプを切り替えることができるため、傷の程度によって2通りの対応が可能です。
また、アラントインによる皮膚修復作用とクロルフェニラミンによるかゆみや炎症の抑制が期待できます。
アウトドア時への携帯を考慮し、本体は丈夫なアルミ缶でできています。

ムヒのきず液

有効成分:ベンゼトニウム塩化物、アラントイン
製剤タイプ:液体
特徴:子供が親しみやすいアンパンマンがモチーフとなっている製品。
しみにくい設計であることも、より子供に使いやすい要因となっています。
皮膚修復を助けるアラントインも配合されています。

ケーパイン消毒薬泡タイプ

有効成分:ジブカイン塩酸塩、ナファゾリン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ベンザルコニウム塩化物
製剤タイプ:泡状
特徴:ガーゼで有名なケーパインと同じ会社が販売している消毒薬です。
痛み止め成分や止血成分、かゆみ止め成分と補助成分が充実して含まれています。
しみにくい泡状タイプで、子供にも使いやすいよう工夫されています。

原液タイプの消毒薬使用時の注意

塩化ベンザルコニウムやグルコン酸クロルヘキシジンを原液で購入する場合は、希釈して使用する必要があります。
これらは傷口の消毒以外にも手指消毒として使用する場合、また物に対する消毒薬として使用する場合で希釈濃度が変わります。
必ず説明書を読み、「創傷面の殺菌消毒」の項目に書かれた希釈倍率を守って使用するようにしましょう。

まとめ

傷口に使用する殺菌消毒薬の基礎的な知識と、成分やタイプ、またおすすめの製品をお伝えさせていただきました。
消毒薬はそれほど必要ないと言われている現在ですが、単純な消毒作用だけでなく、洗浄機能を兼ね備えた製品や皮膚の修復作用やかゆみ止めなど補助的な成分が充実している製品も販売されています。
傷口が化膿して悪化することを防ぐためには、必要に応じて殺菌消毒薬を使用するようにしましょう。
ただし、すでに化膿が進んでいる傷や、深い傷などは家庭での対処では処置が追いつかないこともありますので、必ず医療機関を受診するようにしてくださいね。
このコラムが殺菌消毒薬をお探しのあなたにとって、お役に立てれば幸いです。