栄養ドリンクの基本的な知識からシーン別での選び方を薬剤師が伝授!
ここぞという場面で元気が欲しい時に、強い味方の「栄養ドリンク」。
ただ、薬局、ドラックストア、コンビニなど、さまざまな場所でたくさんの種類の製品が売られているため、どの製品を選べばよいのか迷いますよね。
「値段が高い方がその分よく効く気がする。」
「薬局で売っているものの方が効果は高いんでしょう?」
あながち間違いではありませんが、値段や販売場所によって、効果の優劣が決まるとは言い切れません。
そこで、このコラムでは、栄養ドリンクの分類など基本的な知識から、代表的な成分、そして、シーン別にどの成分が入った栄養ドリンクを選んだら良いか、をお伝えさせていただきますね。
栄養ドリンクとは?
栄養ドリンクは健康を増進することを目的としたドリンクで、風邪の時や疲れた時の栄養補給や、滋養強壮(身体の弱い部分を栄養素で補給し、体質を改善して強い身体をつくること)などに効果を示します。
ビタミン群やアミノ酸を初め、生薬や漢方薬など、多種多様にわたる成分が配合され、成分の種類や、審査の内容などといった法律の規制により「医薬品」「医薬部外品(指定医薬部外品)」「清涼飲用水(食品)」の3つに分類されます。
ただ、その中でも「清涼飲用水」に属するものは『エナジードリンク』といって、栄養ドリンクとは違う名称で呼ばれることが多いです。
詳しくはこちらのコラムもご参照ください。
コラム:栄養ドリンクとエナジードリンクの違い
栄養ドリンクの分類
栄養ドリンクは大きく、医薬品、医薬部外品、清涼飲用水と、以下の3つに分類されます。
各々の特徴を簡単に以下の表にまとめました。
分類 | 医薬品 | 医薬部外品 | 清涼飲用水 |
呼び方 | 栄養ドリンク | エナジードリンク | |
特徴 | 病気の治療や予防を目的として製造されたもの | 医薬品と比べて安全性が高い成分を用い、身近な場所でも購入できるようにしたもの | いわゆる食品に分類されるもの エナジードリンクと呼ばれ、栄養ドリンクとは分けられることが多い |
販売 | 登録販売者や薬剤師でないと販売ができない | 販売者に制限がないため、薬局に限らず、コンビニなど、どこでも購入が可能 | 販売者に制限がないため、薬局に限らず、コンビニなど、どこでも購入が可能 |
製品の審査 | 厚生労働省による厳しい審査が必要 | 厚生労働省による厳しい審査が必要 | 特に審査は必要ない |
有効成分 | 含まれる | 含まれる | 含まれない |
表示 | 「効能・効果、用法・用量」を記載できる | 「効能・効果、用法・用量」を記載できる | 効能・効果 や用法・用量を記載することはできない |
医薬品と医薬部外品に属するものは、厚労省の認めた有効成分を配合することで、効能・効果や用法・用量を記載することができます。
ただ、清涼飲用水に関しては、あくまで食品であるため、例えばビタミン群など栄養ドリンクと同様の成分が含まれているものであっても、厚労省の審査は受けておらず、有効成分とは認められません。
また、医薬品と医薬部外品を比べると、医薬品の方が作用は強く、使用に関して注意することも多いことから、薬剤師や登録販売者のいる場所でしか販売できません。
有効成分の安全性が比較的高いため、身近な場所でも購入できるようになった製品が医薬部外品に分類されています。
コンビニなどでも購入できることから、食品感覚で飲む人もいますが、医薬品に準ずるものですので、必ず用法・用量は守りましょう。
栄養ドリンクの成分にはどんなものがあるの?
栄養ドリンクに含まれる代表的な成分には大きく以下のような項目が挙げられます。
それぞれ、簡単にご説明させていただきますね。
・ビタミン群
・アミノ酸(タウリンなど)
・ミネラル(鉄やカルシウムなど)
・生薬
・カフェイン
<ビタミン>
ビタミンは体の中でエネルギーとなる糖質、脂質、タンパク質の代謝を助ける役割を持つ栄養素であり、体の中で作ることができないため、食事など体外から摂取する必要があります。
栄養ドリンクには、ビタミンの中でも特に、疲労回復などに効果のある、ビタミンB群(ビタミンB1、B2、B6、B12、ナイアシン、ビオチン、パントテン酸、葉酸の8種類をまとめた名前)やビタミンCが用いられることが多いです。
<アミノ酸>
アミノ酸は、筋肉などを含む人間の約20%を構成する「タンパク質」の元になる栄養素です。
スポーツの後などに摂取することで、失われたタンパク質を補給する働きをしてくれますし、ミネラルバランスを整えたり、新陳代謝を促したりする働きもあります。
また、特にタウリンと呼ばれるアミノ酸は、「血圧上昇を抑制する作用」と、「肝臓の働きを助ける作用」があると言われており、栄養ドリンクによく含まれています。
<ミネラル>
鉄やカルシウム、マグネシウム、カリウムなどのミネラルが含まれている栄養ドリンクも多いです。
鉄であれば貧血防止、カリウムはむくみの改善、マグネシウムとカルシウムは骨の強化と、それぞれ目的に沿って配合されています。
<生薬>
生薬は植物や動物の中で効果のある一部を加工したもので、漢方薬の原料にもなる成分です。
成分ごとに効果は異なりますが、栄養ドリンクに含まれる生薬は、滋養強壮を目的として、製品ごとにさまざまなレシピで配合されています。
貴重な生薬を用いているものは製品自体も高価になる傾向があり、栄養ドリンクの価格差に繋がりやすい成分です。
<カフェイン>
覚醒作用により、疲労を感じにくくしたり、眠気を覚ましたりする効果があるため、栄養ドリンクに含まれていることも多いです。
ただ、カフェインの過剰摂取は時に体にとって毒ともなりますので、コーヒーなどと掛け合わせてカフェイン量が多くなりすぎていないか注意しましょう。
シーン別の栄養ドリンクの選び方
疲れ、疲労感がある方
疲労感を緩和してくれる「ビタミンB群」や「ビタミルC」「カルニチン」「アミノ酸」が配合されているものがおすすめ
ビタミンB群は、人間の活動に必須である糖質・脂質・タンパク質といったエネルギーの生成を助ける働きをしてくれます。
また、昨今、疲労の原因は体の中に過酸化酸素がたくさん生成されることであると言われているため、抗酸化作用のあるビタミンCやカルニチンも疲労回復に有効です。
また、スポーツ後の疲れに対しては、失われたタンパク質の生成を補助する、アミノ酸のグリシン、アルギニン、リジンなどが入っているものが有効です。
〈製品例〉
・リポビタンD
風邪を引いている方
「ビタミンB群」や「ビタミンC」「体を温めたり回復を促したりする効果のある生薬」が配合されているものがおすすめ
風邪の時は体が外から侵入したウイルスなどと戦っているため、普段以上にエネルギーを必要としている状態です。
しかし、栄養が大切と分かっていながらも、風邪の時には食欲がなくなることも多いため、エレルギーの生産をサポートしてくれるビタミンB群や、ビタミンCの摂取がおすすめです。
また、生薬が配合された栄養ドリンクも効果的です。
ショウキョウなど体を温める生薬や、ニンジンなど消耗した体力の回復を促す生薬が含まれると良いでしょう。
ただ、あくまでも栄養ドリンクは「風邪の時の栄養補給」を目的としたものであって「風邪を治す」ものではないため注意しましょう。
市販の漢方薬や風邪薬と組み合わせることで生薬成分が重複したり、カフェインが過剰になったりしていないか確認するのも重要です。
〈製品例〉
・ルル 滋養内服液ゴールド
肌荒れ、貧血などにお悩みの女性の方
女性に不足しやすいミネラル「カルシウム」や「鉄分」配合のものや、美肌成分「ローヤルゼリー」「コラーゲン」などが配合されたものがおすすめ
女性は疲れが溜まると、疲労感と共に肌荒れなども気になりますよね。
そのため、疲れをカバーするビタミン群などと共に、肌の状態を整えるローヤルゼリーなどの成分が入ったものがおすすめです。
また、女性は貧血になりやすいため、疲労感の原因になっていることもあります。
そのため、貧血症状を改善する鉄分が配合されたものも有効でしょう。
その他、カルシウムなども骨や歯の形成に大切な成分ですが、女性に不足しやすいミネラルであるため、栄養ドリンクからの摂取でカバーするという手もありますよ。
〈製品例〉
・アルフェ ネオ
寝る前の栄養補給
・アミノ酸の「グリシン」が入ったものがオススメ
・「カフェインが入っていない」製品を選ぶ
寝ている間にも人間はたくさんエネルギーを消費します。
そのため、寝る前に栄養状態を良好にしておくことは、質の良い睡眠に繋がります。
特にグリシンはスムーズに睡眠に入り、睡眠の質を高める効果があると言われているため、寝る前の摂取がおすすめです。
また、カフェイン入りの製品は覚醒作用により寝つきが悪くなるため、摂らないよう注意が必要です。
〈製品例〉
・アリナミンナイトリカバー
まとめ
栄養ドリンクについて、法的な分類など基本的な知識から、代表的な有効成分、また、シーン別にどの成分が入った栄養ドリンクがおすすめかをお伝えさせていただきました。
栄養ドリンクは医薬品と医薬部外品に属するものを指し、清涼飲料水に属するエナジードリンクとは分けて考えられていることが多いです。
厚労省が認めた有効成分が含まれることで、風邪の時や疲れた時の栄養補給や滋養強壮に効果が認められていますが、定められた用法・用量はしっかり守る必要があります。
また、医薬品は医薬部外品のものより作用が強いとされていますし、価格の高いものほど貴重な成分が含まれていますが、それが今のあなたにとって必要な成分で、期待している効果に対して優れているとは限りません。
疲労の時や風邪の時、また貧血時や寝る前など、それぞれシーンによって適した成分は異なりますので、成分表示も目安に栄養ドリンクが選べるようになると良いですね。
このコラムがその際、お役に立てれば幸いです。