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更新日:2022/10/06
ワセリンは保湿だけじゃなく皮膚保護作用で活躍シーン多数!基礎知識からおすすめ製品までご紹介

保湿剤の一つであるワセリンは、医療現場だけでなく市販でも昔から販売されており、馴染みのある方も多いのではないでしょうか。

ワセリンはただ保湿するだけでなく、皮膚を保護する効果にも優れているため、傷口の回復サポートや、おむつやマスクによるかぶれまで、あらゆる場面で活躍してくれます。

ただ、いざ購入しようと思っても医薬品から化粧品までさまざまなワセリン製品が販売されているため、迷ってしまいますよね。

今回はワセリンがもつ効果などの基礎知識から、ワセリン製品の選び方のポイントやオススメ製品まで幅広くお伝えさせていただきます。

監修薬剤師 ハラクロ
薬剤師ライター ひまわりうさぎ

ワセリンとは?

ワセリンは、昔から重宝されている保湿剤ですが、実は石油から作られています。
初めは石油本来の黄色味がありますが、不純物を取り除き、精製を重ねるごとに白色に近づいていきます。
純度によってワセリンの名称は異なり、純度が高い順にプロペト、白色ワセリン、黄色ワセリンと呼ばれます。
純度が高いものほど不純物の割合も少ないため、赤ちゃんや敏感肌の方などでも使いやすいでしょう。
また、医薬品ではありませんが、プロペト同様、白色ワセリンの精製度を高めることで、目の周りなどにも使えるように設計された、サンホワイトという製品も存在します。
こちらは化粧油に分類されるため、医師から処方されることはありませんが、市販薬と同じく薬局やインターネットにて購入することが可能です。

ワセリンの保湿剤としての効果は?

ワセリンは「エモリエント効果」と呼ばれる仕組みにより、保湿を行います。
あまり聞きなれない言葉かも知れませんね。
そもそも保湿剤は大きく「エモリエント効果」「モイスチャライザー効果」と呼ばれるものに大きく分類されます。
まずはその2つの効果の仕組みについてご説明させていただきますね。

・エモリエント効果
皮膚に油性の膜を張り、水分の蒸発を防ぐことで、皮膚の潤いを保つ効果があります。
成分自体に水分を与える効果があるわけではないですが、皮膚を保護する作用に優れています。

・モイスチャライザー効果
皮膚の内部で水分と結合し、水分が逃げないようにすることで、潤いを維持する効果があります。
皮膚内部からしっかり保湿する作用がありますが、エモリエントに比べると皮膚保護作用は低く、値段も高価なものが多いです。

ワセリンは主に、エモリエント効果によって保湿を行います。
他にも、亜鉛華軟膏やラノリンなどがエモリエント効果をもつ医薬品に分類されるでしょう。
一方、モイスチャライザー効果をもつ保湿剤にはヘパリン類似物質(ヒルドイド)や尿素クリームなどが挙げられます。

ヘパリン類似物質について詳しく知りたい方は、こちらのコラムもご参照ください。

また、保湿剤全体について、またその選び方について詳しく知りたい方は、こちらのコラムもご参照ください。

ワセリンのメリット・デメリット

ワセリンを他の保湿剤と比較した時のメリット・デメリットをご紹介します。

<メリット>

①皮膚刺激が少ない
原料の石油は天然成分であり皮膚への刺激はほとんどないと言われています。
そのため、皮膚のデリケートな方にも比較的安心して使ってもらえる保湿剤です。
不純物による皮膚刺激を気にする場合は、純度の高い製品を選ぶとより良いでしょう。

②保護作用に優れている
エモリエント効果により、皮膚を保護する作用が高いです。
外部の刺激から患部を守ることができるため、おむつかぶれや傷口の保護などにも適しています。

③安価
モイスチャライザー効果のあるヘパリン類似物質などと比較すると、かなり安価で販売されています。

<デメリット>

①内側から保湿する力はない
エモリエント効果に長けていますが、ワセリン自体に水分を保持する効果はありません。
内部からの乾燥にお困りの方はモイスチャライザー効果のある保湿剤の方が適している場合もあります。

②油分が多いため、ベタつく
ワセリンは油膜により皮膚を保湿・保護する作用がある反面、どうしてもベタつきが出るという面は免れません。

③ニキビなどを悪化することもある
ニキビは皮脂が毛穴に詰まって、そこにアクネ菌が繁殖することで起こります。
ワセリンにより油膜で覆ってしまうことで、皮脂の詰まりが悪化し、ニキビにとっては逆効果になる可能性もあります。

ワセリンの使用場面

ワセリンは保湿剤として、皮膚の乾燥を抑える他にも、さまざまな用途に使うことができます。
例えば以下に挙げるような場面でワセリンが活躍するでしょう。

・傷、やけどした皮膚の保護
・赤ちゃんのスキンケア(おむつかぶれなど)
・マスクかぶれ
・唇の乾燥
・日焼け後の肌ケア
・靴ずれ対策・保護
・デリケートゾーンのかぶれ
・花粉症対策(鼻の内側に塗る)

特に傷ややけどを負った皮膚の保護として用いる際は、ワセリンを塗った後にラップなどで中の傷口を覆う「モイストヒーリング」と呼ばれる方法でケアすると、傷口の回復にとって良いと言われています。
「モイストヒーリング」のやり方など、詳しくはこちらの記事もご参照ください。

また、刺激が少ないながら皮膚保護作用に優れていることから、赤ちゃんの肌や顔・デリケートゾーンのかぶれなどにも効果的です。

ワセリン製剤の選び方

<精製度で選ぶ>

先ほどもご説明しましたが、ワセリンは精製度によりプロペト、白色ワセリン、黄色ワセリンと分かれます。
プロペトは精製度が最も高く、眼科領域にも使用できるとされています。
現在医療用で処方されるものは、プロペトか白色ワセリンであることが多いでしょう。
しかし、それでは黄色ワセリンが品質的に劣るかというと、そうではありません。
黄色ワセリンも医薬品であれば、厚労省の厳しい審査を受けており、品質はきちんと保証されています。
敏感な肌や、顔まわりなどのデリケートな場所を中心に使用するのであれば、精製度の高いものを意識してもいいと思いますが、黄色ワセリンを使ってはいけないということではありません。

<医薬品・化粧油の分類で選ぶ>

ワセリン製品は大きく医薬品と化粧油に分類されます。
医薬品は厚労省の審査を受け、対面では登録販売者のいる薬局やドラッグストアでしか購入することができません。
それに対し、化粧油に分類される製品は、化粧品の一種であり、厚労省の審査は必要ありません。
購入も薬局などに限らず、スーパーやベビー用品店など幅広い場所で購入することができます。
ただ、医薬品であれば厳しい審査が必要な分、ある一定の品質は保証されていますが、化粧油に属する製品はそういった保証はありません。
そのため、化粧油に属する製品は信頼できるメーカーのものを選ぶようにしましょう。

おすすめのワセリン製品

プロペト ピュアベール

分類:医薬品
特徴医療用医薬品であるプロペトと同一成分であり、製造も医療用と同じ製薬会社が行なっているため、安心して使用できるでしょう。
広範囲に使用するための100gチューブに加え、小容量の30gチューブもあります。

日本薬局方 白色ワセリン

分類:医薬品
特徴:堅苦しい名前が付いてはいますが「日本薬局方」とは、医薬品の品質を適正に確保するために必要な規格・基準を満たす製品のことですので、つまり国が基準としている白色ワセリンです。
50gのボトルで、チューブタイプは販売されていません。

ベビーワセリン

分類:化粧油
特徴:化粧油に属してはいますが、販売しているのは健栄製薬といい、医療用の白色ワセリンも手がけている会社です。
名前の通り赤ちゃんの肌にも使えるよう、高い純度で作られています。

ヴァセリン オリジナル ピュアスキンジェリー

分類:化粧油
特徴:馴染みのあるボトルで、見たことがある人も多いのではないでしょうか。
アメリカのユニリーバという会社で140年前から販売されており、日本では黄色ワセリンに位置付けられています。
40gから200gまでさまざまな容量から選択することができます。

まとめ

ワセリンについて、基本的な保湿作用の説明から、使用の用途、おすすめ製品までご紹介させていただきました。
幅広い用途に使用できるワセリンですが、メリットと共にデメリットも存在するため、ご自身の症状や用途に合っているかを確認して使用することをオススメします。
また、製品を買う際は、医薬品から化粧油までさまざまな製品が販売されているため、精製度や分類を意識して選ぶと良いでしょう。
このコラムがワセリンの購入を迷っているあなたにとって、お役に立てれば幸いです。